翔空会の原点~子どもたちと共に歩んできた物語~
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第4回 児童養護施設での住み込みボランティア〜子どもと向き合う日々〜
通信制大学で福祉について学び始めた私は、児童養護施設での住み込みボランティアに挑戦することにしました。資格も経験もほとんどありませんでしたが、「自分にしかできないこと」を探すには、まず現場で子どもたちと暮らすしかないと感じたのです。
施設に入ると、そこには予想以上にさまざまな事情を抱えた子どもたちがいました。親がいるけれど一緒に暮らせない子、虐待や家庭の事情で施設に預けられた子……。新聞で読んだ知識や本の中の理想像とは全く違う現実が目の前にあり、言葉を失うこともありました。
最初の頃は戸惑いの連続でした。子どもたちは不安や怒りをぶつけ、泣いたり逃げたりすることもあります。どう向き合えばいいのか、何をしたら安心してもらえるのか、自分の力不足を痛感しました。しかし、子どもたちと同じ空間で暮らし、食事を作り、一緒に遊び、勉強を見守る日々を重ねるうちに、少しずつ信頼関係が生まれていきました。
ある男の子が、初めは私の前でも言葉少なに過ごしていましたが、少しずつ日常の中で笑顔を見せてくれるようになりました。宿題を一緒にやったり、手作りのおやつを分け合ったりする中で、「自分がここにいてもいい」と感じてもらえた瞬間、胸が熱くなったのを覚えています。そのとき、私は気づきました。子どもたちが必要としているのは、特別な教育や難しい指導ではなく、毎日そばにいる大人の温かさと安心なのだと。
住み込みの経験は、自分の人生観も大きく変えました。幸せとは、贅沢なことではなく、温かい食事と安心できる布団、誰かに見守られる日常にあることを知りました。そして、もっと早い段階から家庭や親子の絆を支える活動をすれば、施設に預けられる子どもを減らすことができるのではないか、と考えるようになりました。
この経験が、後の保育園設立や地域福祉の理念の原点となりました。子ども一人ひとりの生活や気持ちに寄り添い、家庭や地域とつながる支援の大切さを、私はこの時、肌で感じたのです。