第3回 大学生活と父の死〜自分にしかできないことを探して〜
大学に進学した頃、私は初めて一人暮らしを経験しました。自由な時間が増え、これまで親に管理されていた生活から解放される喜びに胸を躍らせていました。友人たちと語り合い、全国から集まった学生たちの多様な考え方や価値観に触れる日々は、私にとって刺激的で、楽しい大学生活そのものでした。
しかし、そんな中、人生で最も大きな衝撃のひとつが訪れます。父が悪性リンパ腫と劇症肝炎により、52歳でこの世を去ったのです。大学二年生の私にとって、父の死はあまりにも突然で、受け止めきれない現実でした。父は厳しく、時に怖い存在でしたが、その背中には家族を守るために命をかけて働く姿がありました。父の葬儀では、社葬として多くの部下や同僚が泣いていました。その光景を見て、父が仕事人としてどれだけ信頼され、尊敬されていたのかを初めて知りました。
父の死をきっかけに、私は自分自身の生き方を見つめ直しました。「自分にしかできないことは何か」「誰にでもできることではなく、自分の命を燃やせることは何か」と問い続ける日々が始まったのです。兄として家計を支える責任もあり、妹や弟の将来を考えると大学を辞めて働く選択肢も浮かびました。しかし、母から「父の夢は、子どもたちを大学まで行かせることだった」と懇願され、大学を続ける決意を固めました。
自由な大学生活の中で、私は将来の目標を見失い、夜の仕事に流されそうになることもありました。けれど、父の死と向き合う中で、もう一度子どもと関わる仕事に挑戦したいという思いが蘇ってきました。大学の生協で福祉の本を手に取り、児童養護施設での住み込みボランティアの話を知ったとき、「ここなら自分にしかできないことを見つけられるかもしれない」と直感しました。
こうして私は、大学生活の自由さの中で迷い、父の死を経験し、そして自分の人生の軸を探す道を歩き始めたのです。あの時の迷いと痛みがあったからこそ、今の私の使命感や子どもに寄り添う思いが形作られたのだと思います。