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ベトナムでピザ屋の「多店舗展開」を成功させた人材採用のポイント

2022.7.15 に掲載いただいたクーリエ・ジャポンさんの記事を引用したものです。

コロナ禍で飲食業が大打撃を受けているなか、ベトナムで着実に成長を遂げた日本人経営のピザ屋がある。同国で5都市26店舗を展開する「Pizza 4P’s」だ。

立ち上げた益子陽介は元IT企業勤務とあって、飲食店経営にもテクノロジーをふんだんに活用している。たとえば、ピザの調理にAIを活用。そうすることで、安定したクオリティーを保てるだけでなく、従業員が接客の方に意識を集中させることができる。

人材採用とテクノロジー導入のポイントを聞いた。

ベトナムでピザ屋を起業

2年以上も続くコロナ禍により、世界の飲食業界は深刻なダメージを受けてきた。しかし逆風が吹き荒れるなか、敢然と事業拡大に挑む経営者がいる。

「もちろん、弊社もコロナの影響は受けています。でも見方を変えれば、今は撤退する飲食店が多いため、条件の良い物件に入りやすいタイミングとも言える。僕はむしろチャンスだと捉えています」

歯切れよくそう語るのは、益子陽介だ。2011年、彼はベトナム・ホーチミン市にピザレストラン「Pizza 4P’s」をオープンさせた。自家製チーズをふんだんに使ったピザやイタリア産のナチュラルワイン、オリジナルの柚子ビールといったこだわりのメニューが好評を博し、2020年にはベトナム飲食業界の“Vietnam Restaurant & Bar Awards”において、“Restaurant of the Year”と“Social Responsibility”の2部門を受賞した。

現在はベトナム5都市、カンボジア1都市の計6都市でレストランを27店、デリバリーセンターを3ヵ所展開している。

Pizza 4P’sが提供する自家製チーズも高い評価を得ている

Photo : Aaron Joel Santos for The New York Times


これまで順調に成長してきた4P’sだが、そもそも商社やサイバーエージェントなどでの企業勤務経験しかなく、飲食業界は未経験だった益子は、なぜ起業にあたってピザを選んだのか。

「よく聞かれますが、ピザが好きだということが大きいです。自分で作れるわけではないんですが、学生時代から自宅に窯を作り、友人や近所の人を招いてピザパーティーをやっていたんです。その時、集まった人たちがみんな嬉しそうで、自分自身もすごく楽しかった。そういう体験を多くの人に共有してほしいという思いから、ピザ屋を始めることにしたんです」

起業の地にベトナムを選んだ背景には、サイバーエージェントに勤務していた頃、同国で投資事業に関わっていたという縁もあった。

「店を始める前に、東南アジアやヨーロッパなど世界各地を旅して回り、日本も含めてどこがいいのか検討しました。その結果、自分の手持ち資金や競合関係、経済成長率の高さを考えてベトナムのホーチミンに決めました。

なにより、僕はこの国の『人』が好きなんです。たとえば、子どもが隣の家に遊びに行けば、当たり前のようにご飯を食べさせてくれる。そういう『昭和の日本』のような濃厚な人間関係が気に入っています」

人材採用は“人間性”を重視

海外でスタートした会社だけに、全従業員約2000名のうち、1970~1980人はベトナム人が占め、残る20~30人はマレーシア人やフィリピン人、日本人などだという。

さまざまな国からやってくるスタッフの採用にあたっては、人間性を重視している。

「弊社はコアバリューとして『おもてなし』『改善』『オーセンティシティー』『コンパッション』の4つを掲げているんですが、人材採用にあたっては、接客業ですから『おもてなし』の精神と、『オーセンティシティー』、つまり素直さや率直さを重視しています。

具体的には、ペーパーテストで『こういう場面ではどう動きますか』といった質問をして、人柄を見る。店のお金をスタッフに盗まれるという苦い経験をしているので、採用には気を遣いますね」

スタッフのモチベーションを高めるためのインセンティブも随時、工夫している。

「ベトナムの人はお金と幸せが直結しやすいのかなと思います。弊社では毎月、『ハッピーサーベイ』(従業員の満足度などを調査)を取っているんですが、給与が変わるとスコアが大きく変動する。

そんな彼らのモチベーションを高めてもらうためにいろんなインセンティブを設定しますが、そこには会社のメッセージを込めるようにしています。

たとえば、今はデリバリーを重視しているので、30分以内に届けるという目標を設定しています。店舗であれば、お客様がテーブルのタブレットで記入するレビューや、外部のソーシャルレビューなどを基準とするインセンティブを設定しています」

「テクノロジーを導入することで店舗スタッフが接客に時間を割くことができるんです」

Photo : Aaron Joel Santos for The New York Times


テクノロジーで足りない技能をカバー

さまざまな工夫でスタッフの成長を促す一方、同社では先端技術を積極的に取り入れている。

「テクノロジーはいろんな場面で活用しています。たとえば、人材教育の面ではe-learningを活用して、ドリンクの作り方やサーブの方法、POSの使い方などをすべて動画で学べるようにしています。

調理の現場ではピザ窯の上にカメラを設置し、撮影したピザの画像を見て、『エッジが焦げすぎているから80点』とか『形がもうひとつだから90点』というようにAIが点数をつけ、クオリティー向上に役立てています。

さらに窯とガスバーナーをリンクさせて、温度を自動調整するということもやっています。まだ完成形とは言えませんが、ここまでやっているのは弊社だけではないかと思います」

最新テクノロジーを次々と取り入れる益子の柔軟性は、IT企業勤務で培われたものなのだろう。新しいアイデアが次々と湧いてくるという。

「今、やってみたいのはお客様の行動記録を自動で取ることです。この皿はどのくらい残っているとか、食べるスピードはどのくらいだとかを画像で認識できれば、いま人気の料理は何か、すぐわかるようになるでしょう。

今後はQRコードを使ってテーブルからオーダーできるようにして、『注文された料理は今、調理を始めました』とか、『あと何分で提供されます』といったステイタス(状態)まで可視化できるシステムを作りたいですね」

こうした技術の活用は、作業の効率化以外にも多くのメリットをもたらしている。

「テクノロジーを導入することで、スタッフは『人じゃないとできないこと』に注力できるんです。具体的には会話をしたり、丁寧なサービスを心掛けたりと、お客様と接するところに時間を割くことができます。

また、機械化が進むと新店舗の立ち上げもスムーズになります。調理を人に頼りすぎると、熟練の職人が見つかるまで店が出せないということもありえますが、テクノロジーがあればそこはカバーできる」

次はインドに挑戦したい

これまで培ってきたノウハウを活かし、益子は今年、大国であるインドに進出する予定だ。

「カンボジアに出店した際にわかったんですが、別の国で事業を始めるには、一からスタートするのと同じくらいのリソースを使います。それだけリソースを使うんだったら、大きな国で事業をやったほうがいいだろうということで、アメリカやインドネシアなども含めて検討した末、インドに決めました。

インドはピザの需要が伸びているのに、クオリティーが高い競合店はあまりない。また、インドは世界で1、2位を争うほどチーズの質が高いので、おいしいピザを作るためのポテンシャルを秘めています。最初の出店はバンガロールを予定しており、店舗展開のほかにデリバリーや食材の販売も検討しています」

創業以来、新しい試みに次々と取り組んできた益子は、飲食業界の未来と、これから必要な人材像についてはこう分析している。

「レストランというのは、最終的には『人に会いに行く場所』になるんじゃないかと思う。だから今後は『会うと元気になれる人』とか『その人ならではの会話ができる人』といった、付加価値を出せる人材が求められるでしょう。技術面で言えば、ドローンでデリバリーをしてみるとか、創造性の高い人が欲しいですね」

人と食事をする楽しさを世界に

着実にビジネスを拡大する益子には世界中に届けたい理念がある。同店のビジョンとして掲げられた“Make the World Smile for Peace ”だ。

「僕は大学生の終わり頃、親友が亡くなったことをきっかけにうつ状態になってしまったんです。そんなときにピザ窯を囲み、仲間と食事することで、ハッピーで穏やかな気分を取り戻すことができた。

大げさな言い方かもしれませんが、僕があの時に感じたのと同じような気持ちを世界中の人が抱いてくれたら、この世界は変わるし、戦争もなくなるんじゃないかと思っているんです。Pizza 4P’sは、そういう世界観を実現するための手段でもあります」

長引くコロナ禍によって私たちが忘れかけていた「人と食事をする楽しさ」を、Pizza 4 P’sは思い出させてくれる。

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