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新卒でスタートアップに飛び込み、その後LINE Pay、マルケト、Salesforceと大手・外資系企業でキャリアを積んできた阿部さん。安定した環境で実績を重ねる中で、なぜ再びスタートアップという不確実な道を選んだのか。パートナーマーケティングという未開拓の市場で、CS組織の立ち上げに挑む阿部さんに、キャリアの選択基準と、今描く組織の理想像について聞いた。
阿部健人/Head of Customer Success
新卒よりB2B SaaSベンダーのシャノンにて、プロジェクトマネージャーを経て、カスタマーサクセス責任者として部門立ち上げを経験。2017年よりマルケト(現アドビ)にてカスタマーサクセスマネージャーとしてB2B/B2C問わず企業のマーケティング支援に従事。 2019年よりLINE Payにて事業開発・アライアンス、B2Cマーケティングを担当。 その後、Salesforceのアライアンス事業部におけるシニアパートナーとして、Salesforceパートナーエコシステム戦略設計・推進を経験し、パートナープロップに参画。
元Salesforceアライアンス担当が語るキャリアの選択
ーー阿部さんのこれまでのご経歴について教えて下さい。
新卒でスタートアップに入社しました。当時はまだ50名にも満たない規模で、右も左も分からないまま、しかし任される責任は大きく、現場で学びながら走る日々でした。うまくいかないことの方が多かったと思います。それでも、壁を乗り越えてチームで一つの成果をつかんだ瞬間の高揚感や「みんなでやり切った」という感覚は、今でも鮮明に覚えています。キャリアの初期から責任ある立場を任される環境で、失敗も成功も濃度高く経験できたことが私のキャリア観をつくりました。
その後、LINE Pay、マルケト(現アドビ)、Salesforceなど、国内外の大手・外資系テック企業で経験を積みました。Salesforceでは買収した製品のアライアンスの立ち上げを担当し、グローバル本社と日本市場の間でパートナー・プログラムや運用プロセスを再設計するとともに、国内パートナーとの Go-to-Market(GTM)を推進する役割を担っていました。
新旧プロダクトのエコシステム統合や、日本市場特有の商習慣へのローカライズなど、調整が必要なテーマは多岐にわたりましたが、パートナーと共に市場を切り拓き、成果につながる瞬間に大きなやりがいを感じていました。
こうした経験を通じて、「ベンダー・パートナー・顧客の三者をつなぎ、事業を前に進める」という現在のキャリアの基盤が形成されたと思っています。
ーーやりがいのある環境だったと思うのですが、なぜ転職をしようと決めたのですか?
大企業なので、どうしても制約が多くなります。プロダクトや顧客体験の根幹となる部分に対して、仕組みを大胆に作り替えるような動きはしにくくなります。そんな中で私自身は、まだ型がない領域で自ら0→1の型を作ってみたい、と思うようになりました。
だからこそ、スタートアップの現場に戻ろうと決めました。仕組みも境界線もはっきりしていないところに自分で仮説を立て、仲間を巻き込み、検証し、再現可能な「型」に昇華していく。その循環そのものが、私にとっての仕事の喜びであり、キャリアの核ではないかと思いました。
未開拓市場で「圧倒的当事者意識」で挑む熱量
ーー輝かしいキャリアを積んだあと、なぜパートナープロップに入社を決められたのでしょうか?
パートナープロップに惹かれた理由は大きく二つあります。ひとつは、事業領域の“空白”がはっきり見えていたことです。SFAやMAの領域には強力なプレイヤーがいますが、「パートナーシップを基点にした市場創出」という文脈は、グローバルでもまだ決定的な勝者がいない。“この領域はまだ白地だ”と示されたスライドを見た瞬間、マーケティングオートメーションの進化を現場で見てきた自分としてここは自分がやるべき場所だという感覚が湧き上がってきました。
もうひとつは、圧倒的に「人」の魅力です。入社を決める前、当時からパートナープロップにいたメンバーとの会話の機会や、CEO井上さんとホワイトボードを前に2時間以上もこれからのキャリアや事業の構想を徹底的に議論する時間をいただきました。
そこで感じたのは、一人一人に熱量があり、会社全体で”ポジティブさ”に溢れている会社という印象でした。決められたルールの中で消化するのではなく、自分の言葉で「やりたい」を提示すれば、周囲が本気で応援してくれるということを感じました。
安定を捨て、心が動く方へ
ーーそんな魅力があるパートナープロップですが、実は他社からも内定をもらっていたと噂で聞いたのですが、迷いはなかったですか?
正直に言えば、最後の最後まで入社に迷ってました。周囲からは「なぜ安定した道を捨てる必要があるのか」とも言われました。確かに、キャリアの見栄えだけでいえば、そちらの方がわかりやすい安心感があったのかもしれません。
それでも最終的にパートナープロップに決めたのは、誰も正解を持っていない領域を、自分の手で定義し、型にする。その先頭に立てる環境は滅多にないと思ったからです。「ここは自分がやるしかない」そう腹を括った瞬間、迷いは自然と消えました。後から考えると、私にとっての判断基準はシンプルでした。“安定か挑戦か”ではなく、“自分は何に心が動くのか”。その問いに対して、私は明確に後者を選んだのだと思います。
ーー実際に入社してからイメージとの違いはありましたか?
入社後に感じたギャップもあります。想像より整っている部分が多く、「この規模でここまで仕組み化されているのか」と驚きました。一方で、当然ながら未整備の領域も多いです。特に、我々が定義しようとしている「パートナーマーケティング」そのものが新しい概念であるがゆえに、顧客のニーズも、価値の言語化も、提供の型も、常に磨き続ける必要があります。見た目はスマートでも、実態は泥臭い試行錯誤の連続です。ただ、そこにこそ立ち上げの醍醐味がある。正解がないから面白い。悩みながらも一歩ずつ前に進める実感が、日々の仕事を前進させています。
オフサイトにて発表する阿部さん
CS組織における「型」の設計と再現性の追求
ーーアライアンスの立ち上げをしていた阿部さんの視点からみてパートナーマーケティングにおけるCSの役割とはどのように考えていますか?
我々が挑んでいるパートナーマーケティングという領域では、エコシステムの設計が重要です。Salesforceなどでの経験から最も大事なことは企業と企業のビジネスを伸ばしていけるような共創ベネフィットを作れるかということです。もちろん、インセンティブ設計や教育プログラムもすごく大事です。しかしそれ以上にお互いにとってメリットのある関係であるというのが重要です。
例えば、同じターゲットの共同顧客がいる場合、どのような訴求ポイントがあってどう営業していくかを一緒に考えていったり、目標を決める際も短期的な目標だけでなく、中長期的にどうやって製品を売っていくのかを考えていくことで一緒にビジネスを作っていく事を当時Salesforceで働いていた時は意識していました。
そのために製品を活用いただくだけでなく、関係を超えて、パートナーと一緒に検証を行い、成果を事例化して他のパートナーにも活用できるナレッジに展開していくというエコシステムの設計をしています。そのためにCSは、その循環を設計し回し続けるオーケストレーターであるべきだと考えています。
具体的には、パートナーと共同で仮説検証を行う「実証案件」を計画的に走らせ、得られた知見をテンプレート・プレイブック・計測指標へ落とし込みます。これを社内外のイネーブルメントに組み込み、パートナーの自走を支援する。同時に、外部への発信を通じて“新しい当たり前”を提示し、マーケットの認知と期待値を揃える。研究→実験→型化→伝播→市場での再実証というループを粘り強く回すことが、空白地帯を“市場”へと変えていく鍵だと思っています。
ーー現在のCS組織について教えて下さい。
今、私たちのCS(カスタマーサクセス)組織は、直近でメンバーが一気に加わり、新たなフェーズに入っています。
私が入社した直後は、従来のやり方を棚卸しして、うまくいったこと・うまくいかなかったことを徹底的に振り返るタイミングでした。オンボーディングの設計や、ハイタッチ/ロータッチのバランス、プロダクトの使いこなしに至るまで、プロセスを分解して、ゼロベースでの組み直しを行いました。いわばCS組織の立ち上げ期だったといえます。
そして今、CSのメンバーも増え「型を自分たちで作れる」フェーズに突入し、圧倒的なスピード感で企画推進と実行が進んでいます。誰かが用意したテンプレートを運用するのではなく、自分たちで仮説を立て、実装し、検証し、失敗を踏まえて改善する。この反復を、3ヶ月という明確な単位で回し続ける。すると、属人の成功体験が、少しずつ再現可能なプロセスに昇格していきます。CSが担うべきは、単に問い合わせへの回答によりプロダクトの活用を支援することではありません。顧客とパートナーの成功の条件を研究し、成果を「型」として抽出し、全員が同水準の価値が出る状態を作ること。そのための設計・運用・成功の伝播のすべてを担うのが、私の考えるCS組織です。
月次レビューにてお酒を片手に語り合いました
ーー阿部さんから見たアーリー期のCSチームに入る魅力についておしえてください。
スタートアップの魅力のひとつは、プロダクトそのものを現場から動かせることがあります。大企業では、本社のロードマップに現場の声を反映させるには長いリードタイムが必要で、根本的な設計変更は容易ではありません。パートナープロップでは、CSが顧客・パートナーの現場で得た知見を、プロダクトやデータモデル、ワークフローの設計に素早く反映できます。CS・プロダクト・セールス・マーケティング・開発が、同じホワイトボードを囲みながら「目的から逆算」して最短の手を選ぶ。役割の境界は目的に従って可変であり、“誰の仕事か”より“何が正しいか”で決める。この価値観の共有が、立ち上げ期の推進力になっています。
ーー今、まさにCS組織を作っている途中だと思いますが、組織としての目標や理想などはありますか?
実は私にとっての理想の組織像は「パートナーマーケティングの研究者集団」です。ひとりひとりが多様なバックグラウンドと多様な関心領域を持ち、テーマを自分で見つけ、仮説を立て、パートナー・顧客と実験し、結果を社内外に共有していく。成果はノウハウとして内製化するだけでなく、再現性のあるアセットに落とし込み、オンボーディングやイネーブルメントのプログラムに取り込む。さらに、パートナーと共に事例を市場へ広げ、業界全体の「当たり前」を変えていく、そんな姿を目指しています。
このために今、力を入れているのが言語化・型化・伝播化という三つの「化」です。まず、成果や失敗の要因を正確に言語化する。次に、その要因をプロセスやツール、トレーニングに落とし込んで型化する。最後に、パートナー/顧客/社内の全てに正しく届くように伝播化する。伝播化は、社内のイネーブルメントだけでは不十分です。パートナーと顧客を巻き込み、共通の前提と共通の期待値をつくる必要がある。ここは難度が高いですが、最初に述べた「空白を定義する」という我々の挑戦において、避けて通れない要所だと思っています。
CSを志す人へのメッセージ
ーー最後にCSに興味を持っている方へメッセージをお願いします。
今のパートナープロップは、「まだ何もない」を「ある」にしていく途上にあります。完成された仕組みの中で役割を全うするより、問いを立て、仮説を組み立て、動かしながら答えを見つけることを楽しめる人にとって、これほど面白い環境はありません。また、パートナーというチャネルの可能性を信じ、会社や市場の価値観を一緒にデザインできる方とぜひ働きたいと思っています。
今、ありがたいことに「一緒にやりたい」と手を挙げてくださる方が増えています。顧客・パートナーと最前線でコミュニケーションを取り、反応をダイレクトにいただきながら、次の挑戦につながっていくダイナミズムを、日々の仕事の中で実感できる。会社をつくる、仕組みをつくる、市場をつくる、そのすべてに一人称で関われるタイミングは、そう多くありません。もし少しでも興味を感じていただけたら、ぜひ一度気軽に話しましょう。