Yozo Otsukiのプロフィール - Wantedly
合同会社Kurasu, CEO 京都生まれ。幼少時代はマンハッタン、ニューヨークで育ち、高校からカナダに留学。ウォータルー大学卒業のち、ゴールドマンサックス証券日本法人入社。 日本の文化を世界へ伝えたい思いと、幼い頃に両親がジャズ喫茶を営んでいたことに影響を受け、日本のコーヒー文化の魅力に着目。 ...
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「コーヒーを通じて人々の生活を豊かにすること」をビジョンに掲げるコーヒースタートアップ、Kurasu。2013年に小さなオンラインストアとして始まり、現在では、国内外の実店舗、オンラインストア、そして自社焙煎所を通じて、世界中に高品質なスペシャルティコーヒーと日本のコーヒー器具を届けられるようになりました。
Kurasuのオンラインストアは、ECプラットフォーム「Shopify(ショッピファイ)」を使用して運用しています。そして2025年2月、国内向けストアでオーダー1万件を達成したことを記念し、Shopifyから「マイルストーン」をいただきました。
一人で始めた小さなビジネスがここまで大きく成長できたのは、幸運な出会いや情熱を持つチームメンバーの参画、そしてKurasuを支持してくれたお客様の存在があってこそ。この機会にKurasuの創業者で代表のYozo(大槻洋三)がこれまでの歩みを振り返ります。
——ECサイト立ち上げを決意したきっかけを教えてください。
僕は2013年から4年間、オーストラリアのシドニーに住んでいました。通訳や翻訳の仕事をしながら現地で生活するうちに、日本や日本製品が海外でいかに愛されているかを再認識するようになり、「これをビジネスにしてみよう」とひらめきました。
日本の家庭用品を海外で販売するならオンラインがいいだろうと考え、Shopifyを使ってオンラインストアを立ち上げたのがKurasuの始まりです。最初はコーヒー器具に限らず、日本のいろいろなアイテムを販売していたのですが、コーヒー関連のアイテムが売上の6割を占めていると気づいて、コーヒー器具に特化することにしました。
——なぜECプラットフォームにShopifyを選んだのでしょうか。
当時の僕にはECビジネスやコーディングの知識がまったくなく、どうやってオンラインストアを構築すればいいのかわからず、調べるうちに見つけたのがShopifyでした。Shopifyは2004年に設立されましたが、僕が調べ始めた2013年時点でも「すこし存在感が出てきているものの、まだまだ新しいブランド」というイメージでした。特に、日本人で使っている人は極めて少なかったと思います。当時はまだ日本法人もありませんでしたし、日本語対応もしていませんでした。
MagentoやBigCommerceなど他のプラットフォームも触ってみましたが、Shopifyが一番初心者に優しい設計でした。ウェブサイトを作ったことがない人でも、ノーコード、ドラッグ・アンド・ドロップで始められるのが魅力的でしたね。しかもブランディングが恰好よくて、無料のテンプレートが充実していて、好みのデザインでオンラインストアを作れることにも惹かれました。
——最初はすべて一人で運営されていたのですか。
はい、商品の撮影から登録、売れた後の梱包や発送など、ほとんど一人でやっていました。ネットの情報を読み漁ってEコマースやマーケティングに関する知識を身につけ、オンラインストアと同時に立ち上げたInstagramアカウントの二軸で運用していきました。
(写真:初期のECサイト)
初期は、コーヒーを抽出する様子を自撮りして投稿するなど、かなり僕自身を表に出していましたね。武器が自分自身しかなかったこともありますが、会社ではなく個人で運営しており、「自分が本当にいいと思えるものをキュレーションして届けている」とアピールしたほうが信ぴょう性が出ると考えたためです。
初めて商品が売れたときのことは、今でも忘れられません。月兎印のエナメルポットを梱包し、折り鶴と手書きのカードを添えて発送したのがオンラインストアの第一歩でしたね。
(写真:当時は仕入れの数もほんのわずかだった)
その後、日本で働いてくれるメンバーを増やし、僕はシドニーでオンラインストアの運営をしつつ、2016年8月、京都に初の実店舗「Kurasu Kyoto Stand」をオープンさせました。
——その後、KurasuのECサイトがどのように成長していったのかを教えてください。
2013年の立ち上げ以来、売上は少しずつ伸びていたのですが、大きな転機は2017年12月に訪れました。Shopifyのクルーが、彼らの拠点であるカナダのオタワから、はるばる日本までインタビューをしに来てくれたんです。
Shopifyは2017年11月に日本法人を立ち上げたばかりで、日本での知名度はほとんどありませんでした。それで、認知拡大のため、英語サイトしかないときからShopifyを使っているKurasuを事例として紹介したいとオファーがあった次第です。
丁寧にKurasuのことをインタビューをしていただき、その記事はShopifyのトップページに長期間掲載されました。越境EC×Shopifyの事例がまだ珍しかったこともあり、広告にも使ってもらえて、露出はかなり増えました。
(写真:Shopifyのトップページに登場。友人からも「Shopifyを開いたらYozoがいた!」と驚きの連絡が来たとか)
——Shopifyが日本で大きくなろうとしたタイミングと運よく重なったのですね!
そうなんです。僕は2018年に日本に帰ってきて、当時Shopifyのオフィスがあった原宿のWeWork(ウィーワーク)に呼んでいただいたり、登壇を何度かしたりしました。
2018年10月に京都で開催された「Shopifyミートアップ in 京都」のゲストスピーカーとしても呼ばれ、Shopifyとは何か、どう使っているのかという話をしました。Shopify側も日本での初期フェーズだったので、実際のユーザーの声を一般の方に届けたい気持ちがあったのだと思います。同じ日にゲストスピーカーを務めた、京都から世界へ弁当箱の魅力を発信するBENTO&COの代表、トマ・ベルトランさんとつながれたのもうれしい出会いでした。
また別のシーンでは、当時日本で勢力を拡大していたPinterestの活用について話したり、Facebookの本社でShopifyとFacebookを連携する方法について話したりしたことも。2018年を振り返ると、オンラインでもオフラインでも、初期ユーザーの成功事例という形で取り上げていただく機会がたくさんありましたね。
(写真:MeetUpの様子)
——2020年に新店舗Kurasu Ebisugawaをオープンさせたそうですが、どんな背景があったのでしょうか。
京都市中京区の夷川通に「Kurasu Ebisugawa」をオープンさせたのは、コロナ禍真っ只中の2020年7月のこと。このお店は、コーヒーを提供するカフェであり、Kurasuの原点であるコーヒー器具の展示と販売を行うショールームでもあります。
2016年から営業しているKurasu Kyoto Standでも器具は販売していましたが、小さな坪数で立ち飲みスタイルのお店なので、器具を置くスペースを十分に確保できなかったんです。それで、もっとしっかり展示・接客・販売ができるスペースが欲しいと考えて、Kurasu Ebisugawaを作りました。Fellow Stagg EKG 電気ケトルを絶対に置きたかったので、そのケトルがぴったりはまるようにカウンターを設計したほどです。
コロナ禍でのオープンでしたが、みんながカフェに行けない分、自宅でおいしいコーヒーを飲みたいという需要は増えると予測していましたし、オンラインストアの売上も堅調だったので、あまり不安はありませんでしたね。
——2021年には、国内向けに器具のオンライン販売を始めたそうですね。それまでは海外向けだけだったのに、国内向けも始めた狙いをお聞かせください。
Kurasu Ebisugawaのオープンをきっかけに、2021年7月から海外のコーヒー器具ブランドを取り扱うセカンドブランド「Kigu」を国内向けに始めました。
アメリカのプロダクトメーカーFellow社とやりとりをして、店舗でFellow Stagg EKG 電気ケトルを展示・販売できるようにしたので、どうせならオンラインでも販売しようと思ったんです。日本にFellowの代理店がなかったので、誰もやっていないなら自分たちでやろう、見てくれたお客様もほしくなるかもしれないし、と。
Fellow社側にも「日本のマーケットは魅力的だが、自社だけではなかなか難しいので、パートナーを見つけて一緒にやっていきたい」という気持ちがあったようです。Fellow社がそう考えているなら、他の海外メーカーも日本へ進出したいのではないかと思い、デンマークの著名なロースターであり器具メーカーでもある「April」、ニュージーランド出身のRamseyが香港を拠点に創設した「Varia」などに声をかけ、ラインアップを増やしていきました。
——国内向けの器具のオンラインストアにもShopifyを利用したのですか。
はい、2013年からShopifyを利用していて、ノウハウもありましたから。最初は1サイトだったのですが、海外向けのサイト(https://kurasu.kyoto/)と、国内向けのサイト(https://jp.kurasu.kyoto/)に切り分け、その後、2021年に海外のコーヒー器具専門サイトとして「Kigu」を作りました。(※Kiguは2024年10月に国内向けのサイトと統合)
Kiguブランドを本格的に始めたタイミングで、YouTubeにも力を入れるようになりました。コロナ禍でバリスタの時間の余裕もあったし、知らなかった器具を紹介していくコンテンツは、YouTubeという媒体と相性がいいですから。この頃に投稿したコーヒーの抽出動画は、今でもビュー数が一番多いんですよ。
——ここ数年Kurasuは急成長し、新しいメンバーも増えました。オンラインストアの運営スタイルや役割の変化はありましたか。
僕は、自分で勉強しながらトライするのが好きなタイプなんです。すべての分野において一定の知識を持っていたい。だから、店舗を始めたときはバリスタとしてカフェに立ち、焙煎チームにも入っていました。
その経験があるので、経営側に立っている現在も、各チーム・担当者の業務を自ら理解した上で、改善の提案をしたり、新しい知識を取り入れてアイデアを出したりしています。考えてみれば、「手探りで勉強しながら進める」「成長しても学び続ける」というスタンスは、Shopifyを選んだときから変わっていないのかもしれませんね。
——オンラインチームの立ち上げが大きな節目だったそうですね。
はい、2024年にオンラインチームができたことは、Kurasuにとって大きなターニングポイントでした。それまでは僕がアイデア出しや進行をリードしていたんですが、事業が拡大するにつれて、僕一人では手が回らなくなってきたんです。そんなタイミングでオンラインチームができ、自走できる体制が整いました。
(写真:チーム体制が整い、サイトもリニューアル https://jp.kurasu.kyoto/)
大手IT企業出身WebマーケターのKoikeさんや、ITやWebまわりの経験が豊富なKatsumuraさん、Shopifyの知見あるエンジニアのTomoさんが入ってくれたことでオンラインチームが強くなり、サイト上の工夫をしたり、楽天やAmazonといった新販路の開拓もできました。
——デジタルコミュニケーションで工夫していることがあれば教えてください。
Kurasuの原点を忘れず、ブランドのトーンやマナーを守ることを意識しています。また、あまり商業的にならないよう、お客様に寄り添い、しっかりコミュニケーションを取ることも心がけています。そこはオンラインもオフラインも変わらないかな、と。
(写真:ECを始めたばかりの頃、メッセージと折り鶴を入れて梱包していたときの写真。この原点を忘れずにいたい)
それに加えて、新しいツールやメディア、マーケティング手法は柔軟に取り入れ続け、デジタルでの可能性をさらに広げているところです。
——改めて、オーダー1万件達成おめでとうございます。マイルストーンを受賞してどんなお気持ちでしょうか。
素直に嬉しいですね。Shopifyとは長いお付き合いがあり、その中で積み重ねてきたものがマイルストーンという形になって表されたのは感慨深いです。日本でこのマイルストーンをもらっている人って、どれくらいいるんでしょうね(笑)
こうして10年を超えるKurasuの歩みを振り返る機会を持てたことも、よかったと思います。
——最後に、今後のKurasuの展望をお聞かせください。
必要なこと、当たり前のことを一つひとつ着実にやっていくことが大事だと思っています。特にサイトの改善については、チーム内でいろいろなディスカッションが進んでいます。オンラインストア運営、各メディアでの発信、そしてオフラインの実店舗、それぞれに良いチームができているので、連携を強化してよりスムーズに動いていきたいですね。
越境ECは安定しているので、今後は日本のお客様をもっと増やしていきたいと思います。国内へのフォーカスを強めることで、さらに多くの方にKurasuの提供するコーヒーや器具を楽しんでもらえるようにしたいですね。
今のスタンスは間違っていないと思うので、これからも新しいことをどんどん取り入れて、海外のよいものを見つけてお客様に届けていきたいです。加えて、自社プロダクトの開発も進んでいるので、提案できることはまだまだあると感じています。
それには、さらなるチーム体制の強化が必要です。個々のスキルを伸ばしながらチーム全体としても成長できるような環境を作っていきたいと思います。今回の受賞を一つの節目に、Kurasuはこれからも挑戦を続けていくので、ぜひ楽しみにしていてください。