目次
金型とは何か? そして、その重要性とは?
ものづくりの根幹、それが金型
日本の製造業が強かった理由、それは金型技術
金型づくりの魅力とは?
金型が日本のものづくりの未来を作る
金型とは何か? そして、その重要性とは?
皆さんは「金型(かながた)」という言葉を聞いたことがありますか?
もしかすると、あまり馴染みのない言葉かもしれません。しかし、私たちの身の回りにあるほぼすべての工業製品は、金型なしでは成り立たないと言っても過言ではありません。
金型とは、プラスチックや金属などの材料を、決まった形に成形するための「型」です。たとえば、スマートフォンのボディ、自動車の部品、家電製品の外装、ペットボトルのキャップ──これらのほとんどが金型を使って作られています。つまり、金型がなければ、今私たちが便利に使っている製品のほとんどは生まれてこないのです。
しかし、金型産業というのが世間になかなか認知されていない。そしてその重要性も伝わっていない。ものづくりに携わる一人として、これが悔しいし勿体ない。だから本日は金型というものについて少しお話できればと思います。
ものづくりの根幹、それが金型
では、なぜ金型がそんなに重要なのでしょうか?
それは、製品を「大量に、精密に、同じ品質で」作るために欠かせないからです。たとえば、一つひとつ手作業でスマートフォンのケースを作るとしたら、どれだけの時間がかかるでしょうか?それに、手作業では微妙な誤差が生じてしまい、部品がきちんと組み合わさらないかもしれません。
「全部手作業で作っているから、ちょっとガタガタしても味があっていいよね」とはならない。
しかし、金型を使えばまったく同じ形のものを何千、何万個と作ることができます。しかも、ミクロン単位の精度で寸法をコントロールできる。この寸法精度というものが、製品の品質を均一に保つために、ものすごく重要なことなのです。
たとえばプラスチック部品同士を嵌め合わせようと思っても、精度が合わなかったら「ポロッ」と外れてしまったり、「バキッ」と破損させたりしてしまったりします。見た目が同じようなものは作る事ができても、その嵌め合わせる寸法精度というのは中々注目されにくかったりします。
日々の生活の中では意識しにくいけども、私たちの生活において当たり前にあるものが、その金型の精度によってもたらされている事は多いんですね。
日本の製造業が強かった理由、それは金型技術
かつて日本の製造業が世界をリードしていた理由の一つが、この金型技術の高さでした。日本の金型職人たちは、驚異的な精度で金型を作り上げ、世界最高品質の製品を生み出すことができたのです。
「ものづくり大国・日本」と呼ばれた時代、精密なカメラ、家電、自動車などが世界市場を席巻しました。その裏には、目立つことはなくとも、優れた金型技術があったのです。金型は、まさに日本の製造業を支える“縁の下の力持ち”でした。そのため、町工場が密集している地域では、多くの金型職人や企業が存在しており、まるで「石を投げたら金型屋さんに当たる」と言われるほどだったのです。
また、日本人は昔から「日本刀」など細部にこだわった職人気質を持っています。この緻密さやこだわりは、金型産業においても大きな強みとなります。金型は、わずかな寸法の違いが品質に直結するため、高い精度を追求する日本人の特性が最大限に活かされる分野なのです。
「そんな事までこだわるなよ」という効率性を求められる昨今の世の中において、「そんな事までこだわれる事」が武器になる。こだわった先に金型の価値が高まってくる。そこの会社でしか作る事の出来ない金型になってくる。こだわれるって、すごく楽しい事なんです。
しかし、近年では金型技術の重要性が十分に認識されず、「どこでも作れるもの」と思われがちです。その考えが広がってしまうことが金型産業を苦しめることになりました。言葉を選ばずに言ってしまうと「金型の良し悪しを判断できない人が、金型の評価を価格だけで決めてしまうようになった」のです。
その結果、海外へ製造拠点を移したり、金型職人の減少が進んだりしています。しかし、金型技術は完全に失ってしまうと簡単には取り戻せない。数十年のノウハウの積み重ねが大切で、機械や設備を揃えてなんとかなる業界ではないんです。日本国内から完全に金型技術を失ってしまったら、おそらく日本の製造業が世界に誇れる時代は終わってしまうでしょう。
金型づくりの魅力とは?
金型を作ることの魅力は、決して同じものを繰り返し作るわけではないという点にあります。一見、同じ形の製品を大量に生産するための道具に思えますが、実は一つひとつの金型はオーダーメイド。すべてが「ワンオフ(One-off)」の設計・製作なのです。
「この形状をどうやって加工しようか?」「どの構造にすれば、要求精度を出せるだろうか?」「もし修理する時に、修理しやすい機構にしないと」──そんなふうに、常に考え、試行錯誤しながら設計し、作り上げていく。単なる製造ではなく、まさに“創造”の仕事なのです。
「金型つくりって、こんなに面白いのに」
そうやって言ってくれる社員さんも多いです。金型というものを作っていく技術者たちは、経験と知恵を駆使しながら、より精度が高く、より効率的な金型を追求し続けています。そのため、毎回新たな挑戦があり、ものづくりの面白さを存分に味わうことができるのです。
金型が日本のものづくりの未来を作る
私たちが今後も世界で戦える製造業を続けるためには、金型技術を大切にし、進化させていくことが不可欠です。金型は、単なる「ものを作るための道具」ではありません。そこには、日本のものづくりの魂が詰まっているのです。
普段意識することはないかもしれません。しかし、あなたが手にしているスマートフォンや、自動車、家電製品などを見渡してみてください。そのすべてが、金型なしでは存在し得なかったことに気づくはずです。金型こそが、私たちの生活を支え、日本の製造業の未来を拓く鍵なのです。
今こそもう一度、金型の価値を見直す時ではないでしょうか?金型技術者を日本国内で再度増やしていきたい。日本に金型技術を残しておきたい。そんな想いが私の中で芽生えるようになってきました。
もしあなたが「金型ってどんなものなんだろう?」と興味を持ったなら、それは新しいものづくりの世界への入り口かもしれません。金型を知り、金型を一緒に作り、私たちと一緒に未来の製造業を支える仕事に挑戦してみませんか?
あなたの手で、新しい技術と文化を生み出していくことができるのです。