代表プロフィール
株式会社 narrative 代表取締役「大久保 泰佑」。東京生まれ、埼玉育ち、40歳。
金融機関で新社会人としてスタート。政府系金融機関の立場で、公益性と収益性を常に意識しながら業務に従事。官民ファンドとの観光ファンド、地域金融機関とのファンド、宿泊事業者とのファンドなど多数のファンド組成・運営を行い、地域事業者への多様なファイナンスに取り組む。
その後、プライベートエクイティファンドで数年勤務しつつ、株式会社narrativeを設立。奈良県内で地域金融機関と組みながら地域資源を活用したまちづくりを行っている。
2018年には地元の酒蔵とともに世界初の”SAKE HOTEL”を、2020年には奈良最古の醤油蔵を“泊まれる醤油蔵”として復活。2022年には廃銭湯「宝湯」を活かした“GOSE SENTO HOTEL”、2024年には薪火を用いて奈良の食を提供するオーベルジュ“VILLA COMMUNICO”などを開業。現在は、50億円規模のビッグプロジェクトに向けて目下進行中である。
仕事を趣味としており、休日も家事や子育て以外は基本的にデスクに向かっている。体調を崩すこともなく、淡々と仕事をこなす、その姿を見る娘からは「鉄人」と揶揄されている。
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narrativeの創業経緯を教えてください!
兵庫県丹波篠山市にある株式会社NOTEとの共同出資にて、2018年2月に設立されたのが事の始まりです。
NOTEとは、当時勤めていた政府系金融機関でファイナンスにいたことから縁が始まり、たまたま仕事上で関係の深かった奈良(南都銀行)にて、同様の事業を展開することになりました。
ただし、その時はこの事業を本業とするというよりは、当時勤務していたプライベートエクイティファンドとの二足の草鞋を履く働き方を想定していました。ゆえに、一番最初に取り組んだ”SAKE HOTEL”は、自ら施設運営をするのではなく、別の企業に運営を委託する形で取り組みました。
不動産開発に近い感じで、資金調達をして、古民家を借りて、設計して、改修する。そして改修された古民家を別の運営事業者に賃貸するような枠組み。当然メンバーもいないので私1人でやっていたんですけど、最初は本当にそういう案件でした。
その後も似たような案件が何度か続くわけですが、全然面白くなかったんですよ。
やはり、まちづくりをするなら、自分たちで運営しなきゃなと。それでファンドを辞め、少しずつ人を増やしながら、現在の会社スタンスに変更していきました。
そうして、2023年6月にミッションを再定義するとともに、全国展開を踏まえて「株式会社narrative」に社名変更。現状は多数のメンバーを抱えながら、自主的な経営下で各事業を展開しています。
地方創生を行う中で感じる市場課題は何ですか?
結論から言うと、地方の財政状況は厳しいんですよ。
例えば、全国には様々な市町村があって、自治体ごとに毎年予算を組むんですね。要するに行政が住民にどうお金を使うかみたいな話なんですが、そのお金がどこから来てるかっていうと、実は半分以上が東京から来ているんですよ。
つまり、住民の方々が納めた税金だけでは市町村運営ができない。これは奈良に限らず、全国1,741ある自治体のうち、約98%が同じ状況。東京などの大都市圏で集まったお金を国が回収し、地方交付税交付金という形で全国の地方自治体に分配している。全く自立できていない。構造的にそういう現状なんですね。
結局、地方で持続可能かつ自立的な事業をいかに作れるかが重要でして、国から貰ったお金で箱物を作っただけでは意味がないんですよ。当然、維持費は自分たちで賄わなければならないし、稼げなければ人はどんどん離れていくし、若い人たちは東京に稼ぎに行ってしまう。そうして地方はひっそりと縮小していくんです。
こういったことが全国各地で起きています。だから、私たちが裏から持続可能かつ人が集まるような面白い事業を作っていく。それは宿泊施設かもしれないし、温浴施設・物販・レストランかもしれない。いずれにせよ『文化財をまもる、いかす』というミッションを実現することが、我々の使命です。
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地方の再生事業に可能性はありますか?
十分にありますし、なんなら物語は東京より地方の方が溢れています。
東京も下町は文化的な土壌が色濃く残ってますが、例えば、豊洲のタワマンエリアで地域資源を活かしたまちづくりをしようにも無理な話なんですよ。なぜなら、人が興味を示すような文化財があるわけでもなければ、埋立地で20〜30年前は海でしたみたいなことで歴史があるわけでもない。それに対して、地方は紐解けば紐解くほど色んな物語があるわけです。
例えば、2020年に奈良最古の醤油蔵を「醤油蔵 兼 宿泊施設」として復活させたんですが、醤油作り自体も70年ぶりに再開させたんですね。醤油の原材料は大豆・小麦・塩に加え、酵母・麹という菌類なんですけど、その菌類が奇跡的に70年間生き残っていたと。
ただ、現当主の祖父が醤油を作っていたので当時の製法が分からない。それで当主が古文書を解き明かして、3年ぐらいの試験醸造を経て、やっと「これがおじいちゃんのお醤油だ!」とバチッとハマったものを今まさに提供しているわけです。創業335年の醤油蔵で70年ぶりに作られた当時の醤油。魅力しかないじゃないですか。
他にも、その醤油蔵がある田原本(たわらもと)は桃太郎が生まれ育った場所でもあるんですよ。桃太郎と言えば岡山が有名ですけど、実は鬼を成敗しに行ったのが岡山だった。当時、岡山を含む中国地方にはたたら場(鉄の精錬所)が沢山あって、そこで働く人たちの顔が火傷で真っ赤だった。それが鬼の元ネタとなったわけです。
そういった話の元ネタが日本書記、古事記、風土記などには沢山載っていて、1,200〜1,300年前の歴史がそのまま残っていることが地方の魅力。一方で、その魅力を事業化できる人が地方にはほとんどいない。もちろん個人単位の小規模プレイヤーはいるんですけど、組織的に取り組んでいる事業体は本当に限られますね。
narrativeの強みは何ですか?
資金調達から企画・設計・施工・流通・運営の全てをまんべんなく出来ることですね。そして、自ら事業リスクを取れることですね。
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まちづくりと一口に言っても、地域ごとに様々な課題があるわけです。例えば、欲しているのはホテルではなく、単純に住居が足りないということかもしれない。逆に観光消費を作らなきゃいけないから住居じゃなく、圧倒的に食でお客さんを集めることを求められるかもしれない。色んな引き出しを持っているからこそ柔軟に対応できる。
これがもともと飲食をやっていた人が「古民家を活用します」となっても、やはり飲食店や宿泊業に留まってしまうわけです。再生事業においてはあらゆる引き出しを持つことが1つの提供価値になりますし、それゆえに私たちが指名されている理由にもなっていると思っています。
特にこれからの世の中は、オペレーションをやれる存在の方が希少価値が高くなると思います。お金や不動産はいっぱいある。でも、それを扱える組織や人の方がいない。そこを今、組織として取りに行っているところでもあります。
どのような社会や市場を理想としていますか?
集落単位にしろ、市町村単位にしろ、自立している有機的な経済構造ができると良いなと思っています。
例えば、限界集落と呼ばれる場所。山奥に10戸〜20戸ほどの建物しかなく、おじいちゃんおばあちゃんしか住んでいませんと。地方交付税交付金と社会保険に支えられ、たまに野菜を作りながら、自給自足的な感じでどうにか細々暮らしてますみたいな。こういうのはめちゃくちゃ多いんですよ。
それ自体を全く否定するつもりはないです。ただ、新しい人たちが結婚し、子供を養えるような生計を当たり前に描けるかというと難しい。普通に休みを取りながら、月30〜40万円を稼げるかというと中々稼げないんですよね。だから、そこで稼げるような観光業であったり、宿泊施設であったり、超一線級のレストランであったり、稼げる事業を作らなければならない。
稼げれば人が養えて、移住者も増える。移住者が増えるとそこに生態系が生まれる。様々な業態で外貨を獲得しつつ、地域の熱源は太陽光発電と間伐材の薪で賄うようなオフグリッド化したような世界線を確立するみたいな。そういうのを地域単位、集落単位で作れると良いと思いますし、出来ると思います。
今は東京から降りてくる税金のほとんどが地元の建設業に流れて、そのお金で人を雇って、その建設業の人たちが居酒屋に行ってみたいな、そういう経済構造になっているんですよ。そうではなく、自分たちで稼ぎながら地域循環を作っていかなければならない。
これは東京であれば、各ディベロッパーが既にやっていること。資金調達をして、ビルを建て、テナントを入れる。場合によっては自分たちで一部運営する。三井不動産なら日本橋だし、三菱地所なら大手町でやっていることです。
しかし、それを地方で行えるプレイヤーが本当に少ない。だから、我々が地方のプレイヤーと一緒になって開発や運営、持続可能な事業を作る。本当のまちづくりですよね。それができるような存在になっていきたいなと思っています。
その上で会社としてのビジョンを教えてください!
narrativeという会社自体も持続可能でなければならない。だから、少なくとも10年後は私に代わって、誰かがこの事業を率いていて欲しいと思ってます。
それこそ、いつも「もし自分が死んだら」っていう話をするんですよ。というのも、地方創生業界の多くは個人商店で、個人名では売れてる人がいっぱいいる。でも、会社の蓋を開けてみると、従業員が数名で、、ということが非常に多い。つまり、その人がいなくなると会社も終わってしまう。
組織として、まちづくりを本格的にリスクを取ってやるような会社も本当に少ない。それゆえに我々には一定の市場価値や存在意義があるわけですけど、そこに慢心せず組織として有機体を作っていかなければならないな、という気持ちですね。
5年後、3年後だとあまり変わらないかもしれないですが、直近だと奈良を飛び越えて山陰エリア、泉州エリアなどでの面的なプロジェクトが進んでいます。あとは東京で過去最大級の古民家再生プロジェクトが進行中なんですよ。それがちょうど3年後ぐらいにローンチ予定なので、その時は本当に唯一無二な存在になってるんじゃないかなと。
それこそ地方で持続可能な事業を作るとか、文化財の活用するみたいな文脈なら「narrativeしかないよね」という状態になっている。もちろん個人プレイヤーはたくさんいるんだけど、narrativeが安牌だよねみたいな、少なくともそういう状態にはなっているのかなとは思っています。
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現状の課題は何ですか?
1番の課題は、人の採用だと思っています。
結論から言うと、我々の取り組みは要求される水準が非常に高いゆえに、個々人の成長意欲が本当に重要なんですよ。
最初は良くも悪くも採用した人を教育し続ければ、いずれ活躍できるんじゃないかと思っていた。それが端的に間違っていた。求められるスキルセットやマインドセットを持っている人をちゃんと雇わないと、働く人も会社も不幸になるんですよね。
要は成長意欲がない人が入ったところで、「そこまで突き詰めて仕事をしたいわけじゃないんです」「家でゲームをしたり、遊ぶ時間の方が私には大切なんです」となると、普通に病むと思うんですよ。。
地方創生という響きの良い言葉だけに興味を示す人は多い。しかし、実際の現場では突き詰めた仕事を皆が必死にしている。その現実を知ってほしい。私としても上辺だけでなく、その現実を正しく伝えられるかどうかが重要だと感じています。
求める人物像を教えてください!
成長意欲と社会貢献に対する重心の掛け方が、6:4くらいの方ですね。
包み隠さずお伝えすると、これまでに辞めたメンバーも多い中、今現在残っているメンバーは成長意欲ガチ勢です。私はあらゆる社員に対して、どの業界・業種・個人・会社でもやっていけるキャリアを形成する責任を負っています。ゆえに中々キャッチアップ出来ない人は辞めるし、成長意欲のある人はめちゃくちゃハマって伸びる。期間で言うと、大体2年ぐらいでどこでもやっていけるようになるかなと。
どこでもやっていけるをより具体的に定義すると、お金を調達して、商品・サービスを作って、人を採用して、マーケティングをして、評価制度を作って、持続可能な事業を作るみたいな。そこの一連の流れを早ければ1年半かつ、色んな業態で経験してもらいます。
現役メンバーだと浦山が最たる例です。彼女はまだ若いですが、自分でピッチ資料を作って資金調達もするし、各事業のプロダクトを作り込んだ上で人を採用し、マーケティングし、KPIを設定しながら事業を回すことができる。
元鉄道員だった彼女は自分のキャリアや市場価値に焦りがあった。現役世代の人たちの中にはワークライフバランスを重視する一方で、「ここで本当に成長できるのか?」「このまま、ぬるま湯に浸かっていて俺って大丈夫なのか?」みたいな。そういう考えの人も結構いると思っていて、我々が求めているのもまさにこういった人たちです。
ちなみに、それをやりがい搾取的に「月給20万円でうちに来い」みたいなことも言いません。私たちのディレクタークラスは年収700〜800万円です。正直、東京のマーケットと比べると競争力はないのですが、地方で、20代後半から30代前半でも報いられる報酬を出していきたいと考えています。
地方企業でまちづくり系の会社の月給は大体20万円代前半。そこに賞与が乗って、年間300万円ぐらいでやれたらいいですみたいな、そんな会社が多い。でも、やっている本人も稼げないと面白くないし、会社もちゃんと対価に対して還元することが真っ当な姿だと思います。
高い報酬を払える産業にすることで、初めてまちづくり業界が産業化すると思います。
最後に求職者の方に向けてメッセージをお願いします!
ボーっと働くのではなく、キャリアを作るということに意識をしてもらいたいですね。
特に20代に関しては、少々ブラック的な発想なんですけど、2~3年ぐらいどこかで狂ったように働くフェーズがあっても良いのかなと個人的に思っています。
なぜなら、キャリアは複利だから。早い段階でスキルセットを構築し、仕事の経験数を増やす。すると経験が経験を生み、複利効果的にキャリアが形成されていく。それを30代に入ってから取り戻そうとすると、かなり苦労するわけです。
だから、20代のどこかで狂ったように働いて自分を高める。そこに正しい指導やキャリアを作る土台があれば、なおさら良い。ちょっと手前味噌ですけど、うちの会社は厳しい一方でその土台があります。
先ほども言いましたが、私はこの事業をいずれ引き継いでくれるような人を探しています。それは、これを読んでいる方の中にいるのかもしれないし、そうでないのかもしれない。でも、私の言葉に共感したり、引っ掛かるものがあるのであればその可能性がある。そんな方はぜひ一度お話をさせていただけると嬉しいですね。
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インタビューにご協力いただきありがとうございました!
narrativeでは共に企業を盛り上げてくれる仲間を募集中です!
【プロジェクトマネージャー】
【古民家 売買・賃貸営業スタッフ】
【宿泊施設のセールス&マーケティングメンバー】
【経営管理スタッフ(経理・労務・総務)】
【建築設計・アーキテクト】
【ホテル支配人】
【ホテル運営スタッフ】
【銭湯番頭】
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