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売上を伸ばして給与を上げても社員の幸せは増えなかった。14期連続増益を達成した飲食店が大切にする価値観とは?

飲食店では、どこで働いても似たような環境なのだろうか。いま、多くの飲食店がお客様や食材、働くスタッフを大切にしていると謳っている。しかし実際には、社員がお店の売上責任を背負い込みながら、不満を抱いているケースが多くなっているのかもしれない。
しかし、こんな飲食店がある。創業から14期連続増益を達成。加えて、大手飲食メーカーや大学での講演依頼を受け、働きやすい環境作りや飲食店の可能性について意見を求められることもあるほどだ。数多の飲食店の中でも、働きやすさという面で輝きを見せているのが、なかめのてっぺんなどを運営する株式会社MUGENだ。
社員は120名を超えるが、店舗には活気が溢れ、ミシュランで一つ星を獲得する店舗まで現れた。しかし、多くの社員が集い、幸せに働けるようになるまでには大きな転換期があった。社員の幸せを追求する中でぶつかってきた壁。そして、幸せに働ける飲食店を作るために大切にした価値観を株式会社MUGEN代表 内山正宏に聞いた。

受けた恩は、他の誰かに受け継ぐことで回っていく

-まず最初に、内山さんが飲食業界を志した理由を教えて頂けますか?
僕が幼少期の頃、両親によく連れて行ってもらった小料理店があったんです。両親がお店の常連だったこともあって、僕は大将にとても可愛がってもらいました。高校の夏休みには、店舗の2階に泊めてもらいながら、お店の手伝いをするほどでした。
実際にお店で働いてみると、両親と同じような常連さんがとても多いことに気付きました。大将の人柄に惹かれてお客様が集まり、お客さんが楽しそうに食事をしている。この場所に憧れを抱いたことが、飲食業界で働きたいと思った原体験になっています。
-大将のお世話になる中で、印象に残っている言葉はありましたか?
正直、私がお店で働かせてもらった時は、できることがほとんどありませんでした。お鍋を温めたり、ビールを注いで運んだり、お皿を片付けたり。全く働いた経験のない高校生でしたから、それくらいしかできなかったんです。
ただ、営業が終わると必ず「ありがとね〜!」「助かったよ!」と声をかけて、ご飯にも連れて行ってくれました。その時、こんな言葉を掛けられたんです。
「オレに恩を返そうなんて思わなくていいからな。でも、もし家族に何かあったら息子をよろしく頼むな」って言われたんです。この言葉を掛けられた時に、大将のお店に人が集まる理由が分かった気がしました。自分がもらった恩は、次の人に受け継ぐことで関係は作られていくんだと。この感覚はいまでも大切に実践しています。

売上を伸ばしても社員の幸福度は上がらなかった。

-その原体験を元に、飲食の道へ進まれるんですね。
はい。専門学校を卒業した後、料亭に勤めました。ただ、ふつふつと疑問も抱いていきました。もちろん調理の技術は高まりましたが、接客が一切なく、厨房のみで働く環境は自分のやりたいことなのかと。そんな想いは解消されず、数年勤務した後に居酒屋に転職することを決めました。
実際に居酒屋で働いてみると、自分の天職だと感じることができました。自分が作った料理を目の前で美味しそうに食べてくれる。いままでになかった喜びを感じました。自分が目標にしていた、大将が営んでいたお店に似た雰囲気が居酒屋業界にはありました。その後、一緒に働いていた仲間達と共に独立して、いまに至っています。
-実際に独立してみて、いかがでしたか?
多少の波はありましたが、会社は順調に成長していきました。このまま売上や店舗数を拡大して、社員が自己実現できる舞台をつくろう!そう意気込んでいたんですが、簡単はいきませんでした。
店舗の売上は順調なはずなのに、働いてくれているスタッフはどんどん疲弊していったんです。その後の幹部合宿でメンバーから提出してもらったレポートには、私や働き方への不満がたくさん書かれていました。
-なぜ売上が順調なのに不満が溜まってしまったのでしょうか?
当時の私は、会社の業績を高めることがメンバーの幸せだと信じていたんです。店舗が増えて、売上が上がれば、働いているメンバーへの給与が増える。そうすれば、必然的にみんな幸せになると思い込んでいました。
でも、実際は不満が募る一方でした。自分が正しいと思って一生懸命やっていたことが、実は全く正しくなかったわけです。この状況は、言葉に出来ないほど辛い経験でした。

120人のメンバー全員と面談。各々が求める幸せの実現へ。

-そんな状況にどう立ち向かっていったんですか?
当時悩んでいた私は、経営者などが多く参加するセミナーに足を運びました。そこで、いくつかの質問を受けることによって、自分の価値観を変えることが出来ました。
特に印象に残っているのが、『あなたは何を大切にして会社を続けていますか?』という質問でした。「働いてくれる仲間達を幸せにするため」私はすぐに答えを出すことができました。
次に『実際に仲間の顔を思い浮かべた時に、彼らは何を欲しがっていると思いますか?』という質問をされたんです。その質問に対して、全く答えることができませんでした。一緒に働いている仲間たちが何を求めて働いているのか。私には全く理解できていなかったんです。
その時、人はお金以外にも欲求を持っていることを教わりました。自分の時間を大切にしたい人、家族との時間を大切にしたい人、夢を実現したいこと。仕事に対しての欲求は人それぞれなのに、私は給与を上げればみんなが幸せになれると勘違いしていたことに気が付いたんです。
-売上を伸ばすことが正解ではなかったんですね。
そこからは、社員が本当に働きやすい環境を作ることを目指していきました。みんなにとっての幸せは何か。それを知るために、毎年120人全員と面談してパーソナルな情報を全て頭に入れるようになりました。
海外に旅行に行きたくて1週間休みを取りたい人がいること。休日は会社の一大イベントよりも家族との時間を大切にしたい人。もっと昇進して責任を持って働きたい人。自分の腕で勝負するためにお店を持ってみたい人。いままで見えなかった社員の想いを、初めて理解することができたんです。
そこからは、店舗や売上を高めることから、社員のやりたいことを叶えられる方向に舵を切ることができるようになりました。

一緒に働くメンバーが本当に幸せになれる組織を目指して

-実際に目指すべき方向性が変わって、何を感じていますか?
株式会社MUGENでは、『すべての人の「幸せの力」に』というビジョンを掲げています。以前までは一番近くにいてくれたメンバーに対して、それができていなかった。ただ、本当の意味で、ビジョンに向かうことができるようになって、私自身が寛容になることができたと思います。海外旅行のために1週間お休みを取りたいと言える空気感を作り、参加必須だった社員イベントを見直し、昇進したいメンバーの目標を実現できるような仕組みに作り直していきました。
そうすると社員たちは、お店で一緒に働いてくれているアルバイトのスタッフの幸せを考えてくれるようになっていきました。僕が目指していた、受けた恩が他の誰かに受け継がれていく。そんな流れを感じました。
結果的に、売上を追求しなくても自然と伸びていくようになったんです。美味しい料理の提供ができていて、メンバーがコンディション良く働けていれば自然と好循環に入っていく。
だからこそ、店長が集う会議では、売上の話やプレッシャーをかけるようなことは一切なくなりました。お店で働く社員やスタッフが楽しく働けているか?どうしたらもっと働きやすくなるのか。その一点をひたすら話し合うように変わっていきました。
-最後に、内山さんはどんな方と一緒に働きたいと思っていますか?
私達の特徴は、なんと言っても人間力です。メンバーが働きやすい環境をどこまでも追求して、コンディション良く楽しんでパフォーマンスしてもらう。
その結果、お客さんの満足に繋がり、年々成長を続けることができています。だからこそ、飲食という仕事の可能性を信じている方や、楽しんでいける方と一緒に働けたらと思っています。


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