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【あびら職員#5】"職人"として生きる。教育学部卒「土木技師」の働き方

室山 大悟(Daigo Muroyama)

1990年7月29日生まれ。北海道千歳市出身。大学卒業後、建設コンサルタント会社に就職。様々な現場経験を経て、安平町役場建設課に土木管理技師として入庁。土木・公園グループに所属し、2019年4月にオープンして年間80万人が利用した道の駅「道の駅あびらD51ステーション」の外構工事などを手掛けた。趣味は野球で、高校時代はエースとして新聞に取り上げられたことも。

野球尽くしの子ども時代。野球との関わりを続けるため、教員の道を目指す。

僕は安平町の隣の千歳市で生まれました。小さい頃からずーっと野球尽くしでしたね。中学の時はチームが結構強くて、全道大会まで行くことができました。ただ、その時は本当に練習がキツかったので、高校に入ったら野球はやらないつもりだったんですが、監督に強豪チームから来たことがバレてて半ば強引に入部させられました(笑)。

そのまま続けてた野球でしたが、高校3年の時に中学時代の監督とバッタリ再会したことがありました。その時、「室山、新聞で見たぞ!頑張ってるなあ!」と声をかけてもらったんですね。とにかく厳しくて怖い印象しかなかった先生から、全く違う言葉をかけてもらった。そこで初めて「自分は見守ってもらってたんだな」と気づくことができて、感謝の気持ちが生まれたんですね。そこから野球部の監督になるのって楽しそうだなと思い始めて、教員を目指すことにしました。

教育実習で気づいた、本当に自分のやりたいこと。後先考えずに飛び込む!

東京の教育学部のある大学に進学しました。東京に出てみたかったのでその大学を選びましたが、キャンパスは八王子にあり、自分のイメージしてた「東京暮らし」とはちょっと違いましたね(笑)。それでも寮の生活がとにかく楽しくて、色んな仲間といつも騒いでました。

勉強もそれなりに頑張って卒業単位もなんとか取得できて、あとは最後に教育実習だけって時でした。「あ、僕がやりたいのはこの仕事じゃない」と思っちゃったんですよ(笑)。よくよく考えてみると、「野球を教えたい」とは思っていたけど、「生徒に勉強を教えたい」とは思ってなかった(笑)。大学には教育学部だけど教職に就かない友人もいて、彼らとも色々話したんですが、改めて自分のやりたいことはこれじゃないと思いました。

じゃあ何がしたいのかと考えた時、建設会社をやってる自分の父親が大きな建物を作ってることが思い浮かんだんです。自分もあんな建物を世の中に残したいと思うようになり、建設業の世界に飛び込むことを決意しました。


必要なのは「最低限の知識」。あとは素直に教えてもらう。

そうは言っても、僕は土木学科どころか理工学部ですらないんですね。色んな会社の募集条件を見ても、全く合わない。なので、落とされるのを前提でエントリーシートを送りまくることにしました(笑)。「なんとかなるさ」という想いだけは強かったんですね(笑)。

いくつかの会社に面接してもらいましたが、「2年くらい具体的なスキルを勉強してきたら採用します」と言われました。当たり前ですよね(笑)。でも、自分はすぐに入りたかった。諦めずにエントリーし続ける中で、札幌の建設コンサルタント会社が「そんなにやる気なんだったら」ということで採用してくれたんです。自分でも驚いちゃって、「やっぱり何事もやってみないと分からないものだよな」と改めて思いました(笑)。

ただ、意気揚々と入社したものの、そんなに甘い世界ではありませんでした。僕の最初の仕事はたまたま安平町で、暗渠(あんきょ)を通す設計図面を書くものでした。畑の水はけを良くする工事ですね。ただ、僕には何の知識もないんです。「とにかく素直に教えてもらおう」と思って色んな方に質問していました。取引先の方に「こんなことも分からないの?」と言われたこともあります(笑)。それでも知らないんだから聞いて当たり前だと開き直っていたのですが、一方で「最低限の知識がないと、話が出来ない」ということに気づきました。何を聞いても自分が理解できないので、先輩も教えようがない。「ならば最低限の知識がすぐに必要だ」と思って、寝ずに勉強しました。幸いにも上司に恵まれることができて、教えてはくれないけどヒントはもらえたんです。「あの本に載ってるよ」というところまで言ってくれる。そこから自分で必死に勉強しました。この頃に色々考える癖がついたことは、今でも自分の大きな財産となっています。


この会社では2年ほど働きました。そろそろ環境を変えようかなと考えていた時、父親から「転職するならウチで働いてくれ」と言われたんです。やることにすると、「すぐに函館の現場に行ってくれ」と言われ、スーツケース1つで函館に行って、10ヶ月ほど滞在して高速道路の橋を作る現場に入りました。そこからは函館を拠点に現場監督の仕事をしていました。

会社の仕事にも慣れてきて、少しずつ楽しくなってきた時に、会社の会長である祖父から突然「安平町役場の建設課の仕事が出てるぞ。受けてこい」と言われました。「マジかよ!」と思ったのが正直なところなんですが、冷静に考えるとそれも悪くないなと思ったんですね。というのが、民間の仕事はどうしてもスポット業務なんです。「橋を作る」と言っても、「ウチはここからここまでを作る」というのが基本で、他の部分は違う会社さんがやる。日本の建設業は大きなゼネコンを中心とした分業構造が出来あがってるんです。一方で、役場仕事は発注側なので、「全体」を考えることができる。「こういうモノを作りたい」という構想からスタートできると思ったんです。また、技術者としての自分を考えた時はどちらもできるようになりたい。自分を成長させる環境にもなるなと思い、役場の採用試験を受けることにしました。

人間の仕事に「絶対解」はない。刻一刻と変化する状況に、全力で向き合う。

安平町役場には平成28年に土木施工管理技師として入りました。仕事は楽しいですね。自分がいる建設課では、自分で仕事を取りにいかないと仕事が回ってこない。そういう環境で働けるのはありがたいことです。民間と比較すると業務内容は多岐に渡るし、自分たちで方向性を決めるので責任も大きい。そういうプレッシャーも感じながら仕事に取り組んでいます。

土木仕事をしていて常に思うことは「絶対解は無い」ということです。普通、土木仕事って道を作ったり建物を作ったりするから、基準通りやってれば大丈夫でしょって思いますよね?でも、全く違います。例えば道路を作る時の「標準」というのは決まっています。それでも、その道がどこに作られるか、地盤はどうなっているのか、材料は何を使うのかという現場の条件によって、成果は大きく変わってくるんです。以前、自分が直したところがその直後に起こった大雨によって壊されたことがあります。修繕の方法に問題は無くても、修繕を行ったことで新たに生じる外力をしっかり把握できていなかった。そのことをすごく反省しています。

「土木は経験工学だ!」とよく言われます。経験工学とは「経験の蓄積と継承によって、より良いものにしていこう」ということです。ちゃんと土木にも様々な基準やマニュアルが存在しますが、すべての現場にそのまま適用できるとは限りません。土木工事は、野外の構造物であり、ほとんどが一品生産なんです。まったく同じ条件下というものは存在しないんで、基準やマニュアルを基に、どう設計し、どう施工するかは、担当者の経験に培われた判断になります。当然その経験を裏付ける理論も必要です。また、新しい技術や材料もどんどん開発されていて、予算に限りがある中でどういう仕事に落とし込むかというのは、結局は担当者の力量に委ねられていると思います。役場職員というよりは、"職人"のような働き方かもしれませんね(笑)。

自分の目標としては、安平の町中に「中心」となるような空間を作りたいと思っています。日本でも海外でも、観光に行って素敵な町って、どこかに魅力的な中心地があると思いませんか?今の安平は地震の影響などで町中でも修繕が必要な箇所が多くあるので、思い切って魅力的な中心地を作れたらいいななんて思ってます。もちろんお金のことを含めて課題だらけですが、長期的にはそうしたことに挑んでいきたいですね。

役場職員を志す若者に向けて

これから役場職員を目指す方に対しては、「甘い気持ちで公務員になるな」と言いたいですね(笑)。公務員だから楽ができる時代はとっくに終わっていて、ただ作業をこなせばいいという仕事じゃなくなりました。むしろ、公務員にこそ「町のために自分がやりたいことや実現したいことは何か?」という問いが求められると思っています。給料だけなら民間企業の方がいいかもしれないし、自分の業務に加えて「公務員として求められる副次的な業務」も発生する。それでも公務員になるって言うなら、「何のために公務員になるの?」という問いに対する自分なりの答えを持っていてほしいと思います。

その中で、自分の強い想いがあるなら、その想いに答えられる環境が安平町には揃っていると思います。このインタビューに答えてる他の職員も言っていますが、やっぱり安平町の人は優しいし、皆さんを支えてくれると思います。自分の想いと覚悟を決めた方には、ぜひこの町に飛び込んできてほしい!

一緒に面白い町を創っていきましょう!!

\安平町を支える職員をご紹介します!/

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