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【保坂社長と対談!vol.3】現場が創意工夫し、人と技術で創造的に顧客課題を解決できる会社にしたい――事業戦略の核心は何か―

──翻って、会社や事業全般の状況を教えて頂いてもよろしいでしょうか。社長就任後に重視してきたことは何でしょうか。

最初に行ったのは営業同行でした。トライアローには個性的な営業が多く、しっかりと数字を上げている優秀な人材が揃っていました。ただし、社員個人の能力に会社が依存している側面が強く、事業組織としての一体感が欠けていました。各営業メンバがまるで個人商店のように動き、人材サービスに従事するには脇の甘いメンバがまだいて、匿名掲示板に書き込まれてしまったり、共有も合意もないまま支店レベルで独自の施策を走らせたりと、悪い意味での自由さが蔓延していたように思います。内部には時に厳しいフィードバックや統制を行いつつ、同時に掲示板対策を進め、個別に和解に持って行くなどして、沈静化に努めました。今はサービススタンダードとそれに基づく合理的なプロセスを作ろうと頑張っています。

何社もコンサルに入ってもらって、色々な施策を実施してきましたが、社員の意識も随分変わってきましたよ。

──社員の意識の変化について教えてください。

自分の損得勘定よりも、事業組織として良いサービスを作ろうというマインドを持った人が増えていきました。一人ひとりが力技で何とか仕事をこなすのではなく、再現性を重視した発言をしてくれるメンバも増えてきました。また、自分一人の視点ではマイナスに見えることでも、会社全体としてより高い価値を生み出すために考えるような姿勢を持つ社員が増えていったことが一番嬉しいです。

──トライアローの派遣やアウトソーシングは、どのような特徴があるのですか?

通信を筆頭に、IT や建設、プラントなど様々な産業に進出しています。共通点としては、様々な産業機器や装置の導入・運用・保守の工程に関することが多いです。各現場で重要な役割を担っている人が数多くいます。

例えば移動体通信は無線設備の配備や改修、保守点検、アップデートなど、プラントではプロジェクトエンジニアリングなど、あるいは、医療機器やシステムの配備や運用に関わる仕事が挙げられます。

──今後重視していきたい事業領域や、重点目標といったものはありますか?

IT については一つの独立した産業というだけでなく、これからはあらゆる産業の共通基盤として浸透していくと考えています。従って自分達が重視するのは、IT × 〇〇という組合せです。自分達の業務の効率と付加価値を高めるために積極的に IT 化を進めて行く必要があります。

既存の製品やソリューションを十分に使いこなしつつ、足りない機能を自分達で実装していくつもりです。これらは、労働集約型と言われる事業モデルから脱却し、価値創出型を目指していくために必要です。

──アウトソーシング領域での価値創出とは、具体的にどのようなものになるのでしょうか。

例えば、無線通信や医療機器、化学プラントといった社会インフラに関わる現場では、私たちの生活や健康を支えるインフラがどのように導入され、運用・保守されているかについて時に詳しい現場知識があります。他方、製造メーカは、機器や設備が実際に現場でどのように配備され、運用・保守されているか、必ずしも熟知しているわけではありません。

この点に、私たちがより貢献できる余地があると思います。

現場の知見を活かし、私たちがより最適な業務設計になるようサポートしていきたいと考えています。

現時点では、測定や解析、シミュレータなどの領域において専門性を獲得しつつ、顧客の需要を調査する段階です。

将来的に、産業設備の性能や保守効率を最適化するようなソリューションを目指したいと考えています。

これは、工業化社会からデジタル化社会への遷移や、持続的な社会の発展を目指す ESG といった潮流とも軌を一にしています。今後、デジタル技術を活用して設備や機器の配備や保守を最適化し、サブスクモデルの導入によって、購入せずとも柔軟に利用に供されるといったサービスは、大量生産・大量消費する在り方から脱却する試みの中で、より顕在化してくると思います。 

 そして、ESG は競争戦略としてのねらいがある、という説にも注意を払うべきです。 

ESG 推進に欧州が特に積極的ですが、機器や設備を保守し、修理或いはリサイクルして長く使い続けられれば、欧州域内での雇用を生み出しつつ、中国やアジアなど、他地域からの輸入量を減らすことが出来ます。経済的ライバルとの競争を意識した政策的側面があるということでしょうか。 

 ESG が近い将来、競争戦略としての性質を顕わにしてくるのであれば、設備や機器の運用効率や保守効率の最適化、再生利用の促進についても今以上に真剣な取り組みになると予想されます。 

 大手建機メーカなどは既に、重機のメンテナンスや部品交換、オーバーホールなどの事業を強化し、国内最大手のコマツでは、建機や鉱山機械の売上高の 50% 以上を占めるなど、大きな成果を上げているようです。建機は一般に、高額で販売量が景気の波に大きく影響を受ける一方、長期利用されることから、顧客とメーカの双方にメリットのある方向性だと思います。 

コマツや日立などの大手メーカは、センシングやクラウド技術を駆使した垂直統合型のメンテナンスサービスが可能ですが、世の中には多種多様な機器や設備があり、こうした所に自分達の活躍の余地を求めていきます。 

 何より、我々のような産業中立的な事業会社は、メーカならではの縛りがありません。多くのサービスで配備される機器はマルチベンダで構成されるため、一社の機器だけが効率化されても、サービス事業者の受けるメリットは限定的です。例えば医療機関では、多種多様な医療機器の保守点検を計画していかなければなりません。 

この他、センシングによる故障予兆だけでなく、シミュレーションによる故障予測のニーズも益々高まってくると想定されます。 

令和 4 年に KDDI の交換機障害によって、携帯電話が長時間使えなくなった事件は記憶に新しいところと思います。発生メカニズムは既に明らかになっており、ルーティングの設定ミスが結果として、各交換機や加入者データベースに連鎖的な輻輳を生じさせたとのこと。ネットワークの分散機能が災いし、誤設定が 100% のトラフィックの閉塞をもたらさずに異常検知及び輻輳沈静化の機能が上手く作動しなかった、ということも背景にあるようです。 

 こうしたネットワークノードごとのルールや状態遷移が複雑に絡み合い、解析的に理解したり、シナリオ想定による試験では予測したりできないリスクに対し、シミュレーション技術は威力を発揮します。産業界にもたらす付加価値も相当期待されていると思います。 

今はデジタルツインというコンセプトで、様々な現実世界のデータが取得され、昔より遙かに利用しやすいように流通していますから、今後、シミュレーション技術の応用は特に力を入れていきたいと考えています。 
 


──運用や保守といった分野においても高付加価値にこだわるようになったのは、何か特別なきっかけがあったのでしょうか?

前職では、開発だけでなく保守部門にも約 2 年間所属しました。主な業務の一つは故障対応ですが、無線装置の単純故障を扱うというより、通常の対応フローでは直らない特異故障のエスカレーションを受け、解決に導く部署でした。正直に言うと、自分のメインフィールドは研究開発だと思っていたので、異動当初は意気消沈していましたが、ほどなくして、全国各地より集まった意欲の高いメンバがインパクトのある仕事をしていることに気づきます。特異故障の一部はあからさまに壊れるというより、故障診断に対して反応しなかったり、実に微妙な性能劣化を示したりしますが、装置ベンダの資料や無線データを丹念に読み解き、それが故障ではなくソフトウェアの不具合であることを周到に証明する、そういう成果を立て続けに出していく人たちを目前にし、大きな衝撃を受けました。

そもそも保守というのは最終的なサービス品質を維持するために重要な工程でありながらも、その影響度合いを設計工程と比較すると、個別の事象に向き合うがゆえに限定的であります。ところが実際には、保守の現場でも、全国の設備インフラの品質を改善したり、波及性の高い運用リスクを目に見える形で明らかにしたりする、といった高付加価値な成果も出せるわけです。こうした体験は、トライアローに入社した後に自分達の事業の付加価値創出の着眼点に繋がったと思います。

アウトソーシング業界では、そもそも顧客がコスト削減のために業務の一部を外注するという仕組み上、コスト効率重視になりがちです。しかし、このモデルでは持続的でインパクトのある社員の待遇改善は難しく、そういった状況から脱するには会社のサービスに高い付加価値を持たせることが不可欠です。そのため、私たちは労働集約型から脱却し、より高付加価値なアウトソーシングの形を模索しています。

→保坂社長が見据えている、トライアローの将来とは?

【保坂社長と対談!vol.4】履歴書のハイライトとなるような仕事を増やしたい ―価値創出に向けた事業戦略 | トライアロー株式会社
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