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【保坂社長と対談!vol.1】エンジニアとしての源流はエレクトロニクスだった ――日の丸半導体の没落と、デジタル技術との出会い―

【プロフィール】

1975 年生まれ。京都大学工学部電気電子工学科卒、情報学研究科修士課程修了。自己組織化マップの応用研究やデジタル信号処理を通じた無線回線の大容量化に関する研究に従事する。

 6年半にわたり、NTT ドコモにおいて無線アクセスネットワークの研究開発及びオペレーション&メンテナンス業務に従事。

2008 年より当社に入社し、札幌開発センター・センター長に着任。
2011 年より代表取締役就任。


より高い規律のサービススタンダードを持つ事業に変えていくために、組織開発に腐心する。
現在は、高付加価値型のアウトソーシング事業への転換を目指して努力中。
仕事と子育てにあたふたしながら YouTube を見て寝落ちするのが日課。

──エンジニアリングの世界に本格的に足を踏み入れたのは、いつ頃からですか?

大学に入学した時が、エンジニアリングの世界に本格的に足を踏み入れた瞬間でした。知人から半導体業界を勧められたことがきっかけで、当時の日本は半導体技術で世界をリードしていたこともあり、その道に進もうと考えていました。

その前後で、NHK スペシャル「電子立国日本の自叙伝」の書籍版を読み、エレクトロニクス産業への思いを強くしていきました。

ただ、電気電子の専攻に進んだ後、半導体の分野は電磁気学, 固体物理学, 量子力学を初めとして、基礎的な所からかなりしっかりと勉強することが必要だと、気づきます。要するに、かなり真面目な学生生活を送らないと難しいかな、と。もちろん、優秀な人であれば学問と充実したキャンパスライフを両立させることは苦も無くできると思いますが。

──大学生活の中で、どのような変化があったのでしょうか?

私は男子校出身で、大学で初めて共学の環境に身を置くことになりました。新しい環境で色々な刺激に晒される中、結果として、勉強に打ち込むのは難しくなってしまった(笑)。この結果、私は一年留年しましたので、真面目に勉強を積み重ねていなくても、ある意味挽回できるような、比較的新しい領域に自然に目が行きます。そして、計算機シミュレーションやニューラルネットといった情報系の領域にたどり着きました。

──その頃、時代背景はどのようなものでしたか?

ちょうどその頃は、ITの勃興期であり、ドットコムバブルが訪れる直前の時代でした。IT革命という言葉が飛び交い、世の中は急速に変化していました。一方、私もこの分野は前々から気にはなっていました。中学時代はパソコンゲームにそこそこ嵌まっていたのですが、ゲームそのものだけでなくPC ゲーム雑誌を通じて伝わってくる、パソコンゲーム業界の活気のある雰囲気に惹かれました。中学生の頃は将来ゲームを作る人になりたいと思ったほどです。

──IT技術やデジタル技術には、どのような魅力を感じたのでしょうか?

デジタル技術の魅力あるいは脅威は、破壊的イノベーションを起こす力にあります。こうした新しい基軸のテクノロジーは、今から一から勉強を始めても、その分野に比較的すぐに入り込めるという点が伝統的な学問領域とは大きく異なっていました。ちょうどそのころに一般書籍でも取り上げられるようになってきた、複雑系システムや計算機プログラミングによって模擬された人工生命といったテーマも大変刺激的で、ニューラルネットワークという数学モデルに興味を持つようになりました。これは、現在のディープラーニングの基礎となる技術です。

所属した研究室は無線通信をテーマとしていましたが、自己組織化マップというニューラルネットを応用して、端末の位置推定に使うことを考えました。無線端末を人間に置き換えて例えると、大きな会場に集められた、目隠しをされた総勢数百人の参加者から、それぞれ誰の声が聞こえたか、という情報を集め、その情報から誰がどこら辺にいるかを精度よく推定する、という状況に近いかもしれません。この過程で Linux の画像プログラミングなども覚え、計算機シミュレーションの面白さを実感しました。思う様な結果も残せて、ようやく研究活動にスイッチが入ったような気がします。

──大学院進学後の進路について教えてください。

大学院進学時には、ちょうど携帯電話が急速に普及し始めた時代でした。学部時代とは研究テーマを変え、無線通信のためのデジタル信号処理を選びました。今、携帯電話や Wi-Fi で普通にみられる、複数アンテナによる多入力多出力システムの研究が出始めた頃です。

ニューラルネットとは打って変わり、中々結果が出ない。天邪鬼な性格も手伝って、研究室で積み重ねられてきた方法論ではなく、かなり異なるアプローチを取った事も災いしました。修論の締め切り2か月前まで徹夜の日々が続き、ようやく特性が出た土曜日の朝の光景は、今でも目に浮かびます。

こうして、大学院では少し消耗してしまい(笑)、会社に入ったら、純粋な研究というよりも、開発とか事業部よりの仕事を選ぼうと思っていました。そして、デジタル信号処理だけでなく、携帯電話システム全体がどのように動いているのかを知りたいという気持ちが強かった。ちょうどそのころ、第 3 世代通信方式として W-CDMA が世に出されようとしていました。純粋な研究だけでなく、商用導入に向けて測定車なども駆使し、開発部門が活発に動いている様子を知り、NTTドコモの開発部を志望しました。

──ドコモでの業務内容について詳しく教えてください。

開発部に配属されましたが、装置の開発ではなく、方式検討が仕事でした。主に計算機シミュレーションによって、セルラネットワークの容量やパフォーマンスを推定したり、通信プロトコルのパラメータを最適化したりするというものです。

明確な改善効果が得られる場合、商用網に採用されることもあり、これは大きなモチベーションになりました。記憶に残る仕事としては、無線区間の多重再送を抑制する方式の提案や、新幹線のような高速移動時の無線資源を制御するパラメータの最適化、高密度のトラフィックスポットに対するレイトレーシングを使った基地局オーバレイ配置の効果検証などです。

振り返ると、学部時代から一貫して、計算機シミュレーションを扱ってきました。これは昔のシミュレーションゲーム好きから繋がっているのかも知れません。ただゲーム自体は大変下手でした。Age of Empire などリアルタイムシミュレーションが特に好きでしたが、自分がやるよりも、コンピュータ同士の対戦を眺めている方が楽しかった。

あと、研究開発と言えば独自性が大事ですが、幼少期から少しその気があった気もします。小学生の頃、皆がファミコンを買ってもらっている中、一人だけスーパーカセットビジョンを選んだり。どちらも定価が同じだったから、皆と違う機種にした方が、併せて楽しめるソフトの種類が増える、と単純に考えたのでしょう。しかし現実は、友達同士のカセット(ソフト)の貸し借りが自然に発生しますから、同じ機種を持っている人数が増えるほど、選択肢が増えていきます。いわゆるネットワーク外部性というのでしょうか。結果、ソフトを交換する相手がほとんどいなくて、遊べるソフトが少なすぎる、という羽目になりました。それでもマイナー路線を選好する性分は持続し、PC エンジンから(プレステではなく)セガサターンへという風に、敢えて王道を外し、人と違うものを選ぶ事に価値を感じていました(笑)。

仕事自体も、人とは違ったオリジナリティを加えて結果を出すことに強くこだわって来ました。大変な作業も多かったですが、実際の測定データと対比させてシミュレーションを洗練させて行く工程などは、学生時代には得られなかった、大きな醍醐味であったと思います。

──トライアローに入社された経緯を教えてください。

一言で言うと、事業継承です。創業者は機械エンジニア出身で、元々はプラント設計事務所として出発し、派遣法の成立と共にアウトソーシングにシフトしていました。化学プラントの計装関連の設計を手がけており、よく昔の自慢話に出てきましたから、大手重工やプラントエンジ会社からの評価も高かった様です。定期的に実家に役員とエンジニアが集まっては宴会していた光景を覚えています。

私が入社した 2008 年にはほぼ完全に派遣会社となっていました。アウトソーシング業界そのものは営業やサービスが重要な役割を担う事業ですから、転職に際しては悩み抜きました。今振り返ってもあの頃の葛藤は、結構大きかったと思います。

──転職してのスタートはいかがでしたか?

最初は全社的な営業施策を見ながら、札幌にあるソフトウェア開発拠点を率いていくことになりました。そして、就任直後にリーマンショックが発生してしまいます。各企業は予算を大幅に削減し、派遣先を失ったエンジニアたちを受け入れる役割を担う計画でした。しかし、結果としてその役割は全うできなかった。


我々の能力不足のために、エンジニアの雇用を維持することが出来なかったということです。

→トライアローへ入社した保坂社長。待ち受けていた試練とは・・・?!

【保坂社長と対談!vol.2】競争の厳しさを知る原体験 ―携帯電話業界の栄枯盛衰 | トライアロー株式会社
──トライアローに入社された経緯を教えてください。一言で言うと、事業継承です。創業者は機械エンジニア出身で、元々はプラント設計事務所として出発し、派遣法の成立と共にアウトソーシングにシフトしてい...
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