会社が次に何をやろうとしているかは、たいてい予定表に最初に出ます。
見たことのない業種の社名が1件入る。まだ誰にも共有されていない打ち合わせが1本増える。その数週間後に、それが事業の話として社内に降りてくる。
トリノ・ガーデンで、その予定表をいちばん早く見ているのは、代表のとなりの席にいる人です。
■ 第3章に入って、増えたのは情報の量だった
私たちトリノ・ガーデンは、サービス業のオペレーションを動画分析で可視化・改善するコンサルティング会社です。2025年10月から「第3章」——オペレーション分析を世の中に広げるフェーズに入りました。外食・小売に加えて、建設の現場、オフィス、大学の研究室、投資ファンドからのご相談も増えています。
人数は28名のままです。増えたのは、会社を通る情報の量のほうでした。誰がどこで何を決めようとしているのか。どの案件がどこで詰まっているのか。それを整理して、必要な人に必要な形で渡す仕事の重さが、この1年で明らかに変わりました。
■ 議事録になる前の話が、そのまま耳に入る
支える側の席のいちばんの特徴は、情報が加工される前の状態で届くことです。商談がどう転んだか。どのチームが何で止まっているか。代表が次に何を決めようとしているか。きれいにまとまった報告としてではなく、起きたままの形で入ってきます。
私たちは、現場で起きたことを1コマずつ数えて事実を取り出す会社です。人づてに聞いた話で判断せず、実際に何が起きたかを見にいく。その考え方は、社内の情報の扱い方にもそのまま出ます。又聞きを重ねて薄まった話ではなく、一次情報のまま受け取って、そこから判断する。支える側の席は、その一次情報がいちばん早く着く場所です。
■ 私たちの本業も、地味な作業でできている
私たちが現場でやっていることは、はっきり言って地味です。映像を何時間も再生して、人が何歩あるいたか、何度しゃがんだか、どの言い回しを使ったかを、一つずつ記録していく。効率だけで考えれば、まったく割に合いません。
だから、ほとんどの会社がやりません。そして誰もやらないから、そこに手つかずの答えが残っています。従業員の負荷を歩数で測る。接客の差を語尾と声の高さで測る。看板の効果を「何秒見たか」で測る。どれも、面倒なだけで、測れないものではありませんでした。
■ うまくいっている時ほど、何も起きない
支える仕事は、成果の出方が独特です。予定が重ならない。資料が揃っている。先方への返信が止まらない。そのとき社内は静かで、誰もその話をしません。逆にどこか一つが崩れると、その瞬間に全員の手が止まります。
何も起きていない状態を保ち続けること自体が、この仕事の成果です。これは、1コマずつ数える仕事と同じ構造をしています。積み上げている最中は誰にも見えず、崩れたときだけ全員に見える。だから私たちの社内では、地味な積み上げを軽く見る人がいません。全員が、自分の仕事でそれをやっているからです。
■ 28名で、1,000店舗の常識と向き合っている
松屋フーズ、ドトールコーヒー、JR東日本。名前を知らない人がいない企業と、28名で真剣勝負をしています。人数が少ないぶん、会社で起きていることのほぼ全体が、一人の視界に収まります。
担当が細かく分かれた会社では、自分の担当した仕事がどこへ行き、どんな結果になったのかが見えないまま終わることがあります。ここではその距離がありません。自分が整えた予定から商談が生まれ、その現場で数えたものが、大手チェーンの運営ルールを書き換えるところまで、ひと続きで見えます。
■ 頼まれる前に、渡す
この席で効いてくるのは、言われたことを正確にやる力だけではありません。この打ち合わせには前回の資料が要るはずだ、この件は営業より先に分析チームが知っておいたほうがいい、この予定は続けて入れると現場が持たない。そういう判断を先回りでしていける人がいると、会社の動き方が変わります。
最初からできる必要はありません。会社で起きていることを一通り見ているうちに、どの情報が誰に効くのかが分かってきます。そこまで来ると、予定を組む仕事が、会社の進み方を設計する仕事に変わります。
■ 名前のない仕事が、たくさん残っている
28名の会社なので、担当が決まっていない仕事がいくつも転がっています。来客の迎え方、契約書の保管の仕方、社外への返信の型。誰かがやらないと止まるのに、誰の担当でもなかったものたちです。
それを見つけて整えるたび、会社は少しずつ動きやすくなります。自分のやったことが会社の形として残っていく感覚は、大きな組織ではなかなか味わえないものだと思います。
■ 誰も見向きもしなかった場所を、掘る
私たちのフィロソフィーは「Make It Fun」です。
派手な場所を取りにいくのではなく、誰も見向きもしなかった地味な場所を掘り下げた先にこそ、本当の面白さがある、という信念です。
1時間に何歩あるいたかを数える仕事も、予定表を整えて情報を渡す仕事も、外からは同じくらい地味に見えると思います。それでも、そこを丁寧にやった会社だけが持てる答えがあります。私たちはそれを毎日確かめています。
同じ面白がり方ができる方と、一度話をしてみたいと思っています。