82万人のビザ申請を、誰が処理するのか?——特定技能の「書類地獄」とテクノロジーの出番
あなたの生活は、すでに「特定技能」で回っている
昼休みにコンビニで買う弁当。スーパーの惣菜コーナーに並ぶ唐揚げやポテトサラダ。あのパック詰めされた食品を製造ラインで作っているのは、かなりの確率で特定技能「飲食料品製造業」の外国人です。
金曜の夜に立ち寄る牛丼チェーンやファミレス。ホールで注文を取り、キッチンで調理しているのは、特定技能「外食業」の人たちかもしれません。
出張で泊まるビジネスホテル。部屋のベッドメイキングやフロント対応は、特定技能「宿泊業」の外国人が担っているケースが増えています。祖父母が入居する介護施設。夜勤の現場を支えているのは、特定技能「介護」の人たちです。
在留外国人は400万人を超えました。「外国人労働者」はもはや特定の業界の話ではなく、日本に暮らすすべての人の日常に組み込まれています。
ただ、その日常を支える仕組みの裏側、「ビザ申請」の現場がどうなっているか、知っている人はほとんどいません。
5年で82万人。閣議決定された数字の重さ
2024年3月の閣議決定で、特定技能の受入れ見込み数が再設定されました。2024年4月から2029年3月までの5年間で、82万人。前回(2019〜2023年度)の34.5万人から約2.4倍です。
これは「目標」ではなく「見込み」、つまり「これだけの人数が日本の産業に必要になる」という政府の需要予測です。介護で13.5万人、飲食料品製造で13.9万人、工業製品製造で17.3万人、外食で5.3万人。さらに自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野が新設され、対象は16分野に拡大しました。
2025年6月末時点で約34万人が受入れ済み。進捗率は約40%。残り3年半で48万人の追加受入れが見込まれています。
コンビニ弁当を作る人、ホテルの客室を整える人、介護施設の夜勤を支える人—その一人ひとりに、ビザの申請、更新、届出が発生します。82万人分の手続きを、いったい誰が処理するのか。
特定技能の「書類地獄」—1件あたり何が必要か
特定技能のビザ申請が他の在留資格と決定的に違うのは、書類の量と複雑さです。
たとえば、海外から新たに特定技能1号の外国人を受け入れる場合。必要な書類は大きく3カテゴリに分かれます。
まず「申請人に関する書類」。在留資格認定証明書交付申請書、報酬に関する説明書、雇用契約書、雇用条件書、支援計画書、健康診断個人票、試験合格証明書……。しかも雇用契約書や支援計画書は外国人が理解できる言語への翻訳が必要で、ベトナム語、インドネシア語、ミャンマー語など対象言語は多岐にわたります。
次に「所属機関(受入れ企業)に関する書類」。受入実績に応じて、登記事項証明書、決算書類、法人税の確定申告書(直近2年分)、社会保険料納入状況、労働保険料納付証明書、役員の住民票……。企業側の財務状況から法令順守状況まで、網羅的に証明しなければなりません。
さらに「分野別の書類」。介護なら介護分野固有の誓約書や協議会への入会証明書、建設なら建設特定技能受入計画の認定証……と、16分野それぞれに個別の要件があります。
1件の申請で、ざっくり20〜30種類の書類を揃え、整合性を取り、記入漏れがないか確認し、提出する。これが1人分の1回のビザ申請です。
数千人の外国人を抱える登録支援機関や人材企業は、これを月間で数百件以上処理しなければなりません。しかも在留期間は最長5年で、毎年の更新申請が必要。さらに転職、雇用条件変更、届出義務—書類は申請時だけでなく、その後も延々と発生し続けます。
現場はどうなっているか
いま、この書類処理の大半を担っているのは行政書士と登録支援機関の担当者です。
行政書士は1件1件の申請書を手で作成し、添付書類の整合性をチェックし、入管の窓口に提出します。経験豊富な行政書士は「この組み合わせは通らない」「この数字はおかしい」という勘所を持っていますが、そのノウハウは個人の頭の中に閉じている。開かれた形式知となることは難しい。
登録支援機関の担当者は、外国人の生活支援と並行して書類回収や案内を行っています。支援計画の作成、定期面談の実施、届出の代行—本来は外国人の日常に寄り添う仕事なのに、実態は書類周りに時間の大半を取られている。
82万人の受入れが本格化したとき、この構造のまま持つのか。答えは明らかに「持たない」です。
行政書士の数は全国で約5万人。そのうちビザ申請を専門にしている人は一部。登録支援機関の数は増えていますが、1機関あたりの処理能力には限界がある。行政書士法改正により、登録支援機関が書類の作成まで行うことは明確な法律違反に。業務と法律の線引きが非常に難しく、人を増やして線形に対応する方法では、82万人という規模に間に合いません。
テクノロジーで解くべきことと、専門家にしかできないことの区別
ここで重要なのは、「テクノロジーですべてを置き換える」という話ではないということです。
ビザ申請には、テクノロジーで解くべき領域と、専門家にしかできない領域がはっきり分かれています。
テクノロジーで解くべきなのは、書類リストの生成、書類間の整合性チェック、提出のデジタル化です。申請書の7ページを手書きする必要はないし、申請書と雇用条件書の名目や金額が一致しているかを人間の目で確認する必要はない。過去の申請データを学習したAIが「この組み合わせはおかしい」と事前に警告してくれれば、誤った申請による差し戻しは劇的に減る。
一方、専門家にしかできないのは、判断が分かれるケースへの対応、入管職員との個別具体的な説明や交渉、そして申請人の事情を汲み取って申請の「ストーリー」を組み立てることです。在留資格の該当性がグレーなケース、過去に不許可歴がある申請人のリカバリー、複数の在留資格を比較検討しての最適な申請戦略—これは制度の趣旨を深く理解した専門家でなければできない仕事です。
つまり、本当に必要なのは「テクノロジーが単純作業を巻き取り、専門家が判断と戦略に集中できる」状態を作ること。行政書士や登録支援機関の担当者が、書類作成や回収に消耗するのではなく、本来の専門性を発揮できる環境を作ること。
テクノロジーの役割は、専門家を「置き換える」ことではなく「エンパワーする」ことです。
RAKUVISAがやっていること
私たちRAKUVISAは、まさにこの問題を解くために存在しています。
入管庁・デジタル庁のAPIと直接連携し、申請書や参考様式の生成からAIによる自動検知、行政書士の最終確認、証跡の保存、入管庁への電子送信までを一気通貫で行えるプラットフォーム「RakuVisa」を開発・運営しています。APIと直接つながっているからこそ、申請に関するあらゆる事象がデータとして蓄積されることが圧倒的な強みです。
82万人時代に必要なインフラを、今つくる
2029年3月までに82万人。この数字が意味するのは、ビザ申請の「インフラ」が根本から変わらなければならないということです。紙と窓口の時代は終わりつつある。でも、APIとAIの時代はまだ始まったばかり。
今、私たちは事業の中核を一緒に作る仲間を探しています。CS体制の設計、エンタープライズ顧客のオンボーディング、プロダクトと現場をつなぐハブ—すべてこれから作るフェーズです。
82万人のビザ申請を処理するインフラを作る。その仕事に関心を持っていただければぜひ一緒に仕組みを作っていきましょう。