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製造部長に聞いてみた!~2020BYの振り返りと来期の目標~

2020年9月からスタートした今シーズンのお酒造り。

楯の川酒造史上最長の酒造期間でしたが、2021年7月上旬に無事に終了することができました。今シーズンも大きな事故や怪我などなく終えることができ、まずは一安心です。

長期間に渡った今シーズンの酒造りを製造部長・川名に振り返ってもらおうということでインタビューして参りました。

川名 啓介さん
製造部 部長
2014年、楯の川酒造に中途入社。人一倍真面目な性格で、日本酒が大好き。好きを突き詰めることでメキメキと力を伸ばし、今や「楯野川」の製造責任者とも言える立場に。プライベートでは、一児のパパで子育てに奮闘中。

米が溶けず、一苦労!今シーズンの米はとにかく硬かった。

― 毎年、気候によって酒米の性質が変わってくると思いますが、2020BYで使用した酒米にはどのような特徴があったのでしょうか?

川名:全体的に、例年と比べて米が硬かったです。出羽燦々美山錦も米が硬くて溶けにくく、味わいに厚みを出すことに苦労しました。その中でも突出して硬かったのは惣兵衛早生(そうべえわせ)です。自分の今までの記憶にないくらいの溶けなさで、「これはどうしたものか…」と頭を悩ませました。

ー 米が硬く溶けにくい状態の中で、味わいを出すために、どのような工夫をしたのでしょうか?

川名:米の浸漬の段階で、通常より気持ち多めに吸水をさせることで、少しでも米が溶けやすくなるように工夫をしました。製麹(麹づくり)の段階で、しっかりとした麹米をつくって、麹で溶かすことが最善策ではあるのですが、それでも限界があります。吸水率を増やして溶かしやすくすることは、造り手として苦肉の策でした。

(例年以上に米が硬く溶けづらいということで、吸水にはより一層気を付けたそう)

― 今シーズンは「米」の状態で苦労が多かったようですが、逆に「これはよかった!」と満足できた点は何でしたか?

川名:今シーズンは高精白のお酒(=精米歩合の低いお酒)を多く仕込みました。今までは年間でタンク20本前後くらいでしたが、今シーズンでは倍以上に増えたので、高精白のお酒を仕込む技術がグッとあがったシーズンだったと思います。

これは、ベーシックシリーズのお酒にもいい影響を与えています。

お酒を仕込む際、米を磨けば磨くほど、粒の大きさが小さくなることや、発酵に必要な栄養分も減少していきます。これによりお酒を仕込む・管理する際、より精度の高い作業が求められます。言うなれば、狭いストライクゾーンにピンポイントでボールを投げなければいけない…というような感覚です。ベーシックシリーズは50%精米のお酒が主力なので、許容範囲(ストライクゾーン)が比較的に広いのですが、技術を高められたことで、ど真ん中を狙ってボールを投げられる確率が随分と上がりました。

高精白のお酒を多く仕込んだ経験を活かして、ベーシックシリーズの酒質も底上げできたことには満足しています。

ー 「楯野川」は、精米歩合50%以下に絞ってお酒造りを行っていますが、何パーセント精米が最も造りやすいと感じていますか?

川名:意外に思われるかもしれませんが、18%精米が個人的には最もつくりやすいです。50%精米~33%精米までは同じような仕込み方法を採用しているのですが、18%精米以下はより手間をかけてつくっています。

精米後もレーベントクラフトパックで保管していますし、造りの面でも全ての米を10kg単位で手洗いしています。一般的に精米歩合が低いほど酒造りは難しくなるというイメージがあると思いますし、自分たちもそのように感じていましたが、ちょっとした工夫で「いつも以上に手間はかかるけど、狙い通りに造れるぞ」とわかったことは大きな気づきでした。

※レーベントクラフトパック…米に含まれる水分量の変動を少なくする特殊な米袋。通常の紙でできた米袋よりも価格も高い。

今年の「光明」が、過去最高の「光明」だと言える。

ー 今シーズンで「これは上手くいったぞ!」と納得のできた商品があれば教えてください。

川名:先ほどの延長線上になりますが「純米大吟醸 光明」です。高精白米でつくった麹米は突きハゼ型の麹になりづらく、どうしても力価(麹米が掛米を溶かす力)も下がってしまいます。加えて、「光明」が毎年タンク1本しか仕込まないので、細かく検証する時間もなかなか取れませんでした。

しかし、今年は、高精白のお酒を多く仕込んでいたこともあって、1%精米でも「こうすれば例年以上に力価も出せて、より良い麹米がつくれるんじゃないか」と事前に仮説を立てることができました。

結果、狙い通りの麹米もできて、発酵も順調に進みましたので、品のいい香りや味わいに膨らみがありつつも透明感のある綺麗なお酒に仕上げることができたと思います。

ー そうだったんですね!来期は高精白だけを仕込む専用蔵も完成しますし、「光明」や「極限」「十八」も更に美味しくなるのかなと考えると非常に楽しみです!

川名:プレッシャーはありますが、これに関しては新しく設備をいれるわけではなくて、小仕込み用のタンクを増設するくらいなので、いい方向にしか転ばないんじゃないかと思っています。高精白の仕込みが更に増えるという点で、体力的にも大変ではありますが…若手も物凄く頑張ってくれているのでチーム一丸となって取り組んでいくつもりです。

​​若手の「熱さ」とベテランの「手腕」を活かし、製造課をより強い組織へ

ー 最後に来期2021BYで取り組みたいことや、目標があれば教えてください!

川名:製造課の社員も増えて、今度入社する方も含めると社員だけで15名になります。会社の事業拡大にともなって、うち2名は来期終了後に異動予定なのですが、経験のある社員が製造課から抜けることになるので正直言うと痛手ではあります。

しかし、若手社員も非常に貪欲に知識を吸収してくれています。先日実施した勉強会では、若手の"熱さ"に先輩社員がたじろいでしまうほど。製造課は、20代の社員が半分近くを占めていますが、みんな自主的に仕事に取り組んでくれますし、来期はより多くの経験を積ませてあげて、自分があれこれ言わなくても上手く回るような強い組織にしていければいいなと考えています。

ー そうですね!特に製造課は蔵の心臓部ですが、若手の熱さとベテランの落ち着きが丁度いいバランスとなって、非常にいい雰囲気でお酒造りができていると感じます。来期、更に美味しいお酒が飲めることを楽しみにしています!笑

蔵人が心を込めて作った日本酒にご興味のある方は、ぜひこちらからチェックしてみてください!

【公式通販】楯の川酒造│山形の日本酒・純米大吟醸の蔵元
山形初となる全量純米大吟醸蔵。楯の川酒造の公式通販サイトです。鳥海山麓の良質な水と米、豊かな自然と雪国文化に育まれた"きれいな日本酒"を、酒蔵直送でお届けします。
https://shop.tatenokawa.com/

今後の更新もご期待ください。

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