「選んだ道を、自分たちの手で正解にする」
2026年3月、株式会社メンタルヘルステクノロジーズ(MHT)グループへの参画という、大きな転換期を迎えたインクルード。時を同じくして取締役に就任した小島さんは、この決断の未来を「これからの私たち次第で、より素晴らしいものに変えていける」と力強く語ります。
今回のグループ統合に込められた真意、そして退任する恩師から受け継いだ大切な教えとは何か。さらに、今あえて組織として「MVVの定義」に心血を注ぐ理由に迫ります。変化の先に見据える未来と、組織への熱い想いを伺いました。
小島 邦義 / 取締役
略歴。2019年4月に株式会社ハローワールドへ入社。以降、障害福祉事業に従事し、マネージャー、エリアマネージャーを歴任。
2022年、XBRAINホールディングスのグループ参画に伴い、ゼネラルマネージャーに就任。その後、インクルード株式会社とのグループ統合を経て本部長に就任し、2026年4月より取締役を務める。現在は経営企画室を統括し、事業戦略の立案・推進、新規事業所の開設、組織開発、人的資本経営など、各部門のマネジメントおよびプロジェクト推進を担っている。
MHTグループへの参画と未来への可能性
――今回、MHTグループの一員となるという、組織にとって非常に大きな転機を迎えました。最初にこの「統合」の話を聞いたとき、そして実際に参画した今、どのような想いを抱かれていますか?
率直に、MHTグループの仲間になることは、私たちにとって「必然の選択」だったと思っています。
インクルードが掲げるVision (「障害のある方や、メンタル不調を抱える方の安定就労を当たり前にする 」)をただの絵空事で終わらせず、達成し、さらに発展させていくためには、メンタルヘルス領域で最高峰になることが絶対に必要だと、代表の尾崎とも何度も議論を重ねて決めていました。
この目標は、これまでの延長線上にあるような、順当な事業拡大だけで実現できるものではありません。障害福祉サービスの枠を超えた新規事業への挑戦、より強固な組織開発、さまざまな分野の専門人材の採用や外部とのアライアンスなど、ベンチャー企業として向き合うべき高難度の課題が山積みです。 変化の激しいVUCA時代ですから、今後も決して平坦な道のりではないと思います。
それでも大切なのは、どの選択をしたかではなく、「選んだ選択を自分たちの手で正解にしていくこと」です。この参画がもたらす未来はこれからの私たち次第で、より大きく、素晴らしいものにしていけると確信しています。
――多くの選択肢があった中で、MHT社と共に歩むことを決めた最大の「決め手」は何だったのでしょうか。
いちばん大きかったのは、MHT社が「これからのインクルードに必要な課題を、一緒に乗り越えていける最高のパートナーだ」と心から感じられたことです。
私たちはこれまで数年にわたり、事業を通じてMHT社と関わり合い、一歩一歩信頼関係を築いてきました。これから私たちが障害福祉の枠を超えて成長していくために直面するであろう組織づくりや、専門家との連携といった課題に対して、MHT社なら同じ目線で向き合い、共に解決していける。その確固たる信頼があったからこそ、迷いなく決断できました。
尾崎社長と小島取締役
恩師からのバトン「人を大切にする」精神
――合併を機に、2名の取締役が退任されました。お二人から小島さんが受け取った「最も大切にしたい教えや精神」とは何でしょうか?
「人を本当の意味で大切にすること」です。
会社は、共通の目標を実現するために集まった人たちの組織です。だからこそ、組織の中心には常に「人」があります。
組織には役職がありますが、それは優劣や序列を示すものではありません。それぞれが果たすべき役割の違いに過ぎず、立場にかかわらず互いを尊重し合うことが大前提だと考えています。
また、社員一人ひとりが仕事にやりがいや幸せを感じながら、いきいきと働ける環境でなければ、本当の意味で利用者さんを幸せにすることはできません。
まずは私自身がいきいきと働くこと。そして、私と関わる人がいきいきと働き、その輪が組織全体へと広がっていく。
もちろん、「いきいきと働く」の形は一人ひとり異なります。 大切にしたい価値観や目標、理想の働き方は人それぞれです。 それでも、嬉しいことはともに喜び、困ったときには素直に相談し、支え合える。そんな安心できる関係性が、組織全体をいきいきとさせる土台になると信じています。
私は、この考え方こそが人的資本経営の本質だと捉えています。だからこそ、制度づくりや人材育成、日々のオペレーションに至るまで、一人ひとりが成長と働きがいを実感できる組織づくりに、これからも全力で取り組んでいきたいと考えています。
社員総会にて、退任する取締役への花束を贈呈する様子
MVVが「教科書の中の言葉」から「最大の武器」に変わった転機
――以前の経営統合を通して「MVVこそが答えだった」と感じられたそうですね。そう確信するに至った背景について教えてください。
前回の経営統合で、異なる背景や文化を持つ組織を一つにまとめるという経験を通して、「MVVの力」を痛感したんです。
組織が違えば、スタッフ一人ひとりが持つ支援への考え方や、理想とする職場風土、仕事に対する価値観も当然異なります。それらを制度やルールだけで統一しようとしても、表面的にはまとまっても、本当の意味で一つの組織にはなりません。
では、どうすれば異なる価値観を持つ人たちが同じ方向を向けるのか。その答えが、MVVでした。
多くの人は、MVVとは「掲げるもの」「覚えるもの」、あるいは耳障りの良い言葉が並んでいるものだと捉えがちです。「すべての人が活躍する社会」「安定就労を当たり前に」に共感します!そうですよね、良い言葉ですもん。
しかし、本当の共感とは言葉そのものに惹かれることではありません。スタッフ一人ひとりが、自分自身の人生や働く目的、大切にしている価値観と、インクルードのMVVが重なり合っていると実感できることだと考えています。
つまり、スタッフ一人ひとりの「生きる目的」や「大切にしている価値観」を、組織のMVVと結びつけていくこと。それこそが、多様な人材が同じ方向を向いて進むための土台であり、組織を本当の意味で一つにする方法です。
この経験を通じて、理念は単なるスローガンではなく、人と組織をつなぎ、成長を支える「武器」なのだと確信するようになりました。
――組織が成長し、大きくなっていくほどMVVの存在はより重要になる、ということでしょうか。
その通りです。組織が大きくなればなるほど、一人ひとりの想いや価値観をMVVでつなぎ合わせることを当たり前にするカルチャーが欠かせないと考えています。
例えば、10人の組織であれば、コミュニケーションの組み合わせは45通りですが、100人では4,950通り、1,000人では約50万通りにまで増えていきます。組織が成長するほど、多様な価値観や考え方、提案が交わる機会も飛躍的に増えていきます。
その中で、組織として共通の軸となるカルチャーがなければ、一人ひとりがそれぞれの「正義」で動き、組織全体としての一体感は失われてしまいます。
私は、組織が大きくなるほど外へ広がろうとする「遠心力」が働くものだと考えています。その遠心力に対して、MVVという強い「求心力」が組織を一つにつなぎ、同じ方向へ導いていく。これこそがカルチャーの力であり、組織が持続的に成長し、大成するために欠かせない本質だと思っています。
言葉の前提を揃える重要性と、一人ひとりが「本当の活躍」をするための定義
――現在、マネージャーの皆さんとMVVにある「安定就労」や「活躍」といった言葉の定義について議論を重ねられていると伺いました。こうした言葉の定義を組織全体で揃えることには、どのような意義があるのでしょうか。
「言葉を定義する」というよりは、「前提を揃える」という感覚に近いですね。
言葉は一見同じでも、人によって解釈が異なります。その前提が揃っていないまま議論を進めると、話が噛み合わなくなってしまうことが少なくありません。
例えば、「安定就労」という言葉一つをとっても、「同じ会社で長く働き続けること」と考える人もいれば、「たとえ転職や離職があっても、自ら働く場所を見つけ、就労を継続できる状態」と捉える人もいます。
どちらが正しいという話ではありません。ただ、前提となる解釈が異なれば、目指す支援のあり方や支援のスタイルも変わってきます。だからこそ、まずは言葉の意味を揃え、お互いの前提を共有することが重要だと考えています。
――以前配信された社内報では、「言葉の解釈が1ミリでもズレていれば、ゴールにたどり着く頃には修復できないほど大きなズレになる」と綴られていました。
そうですね。例えば会議一つをとっても、「今日は何を決める場なのか」という目的や前提が曖昧なまま議論を始めると、話が少しずつズレていき、気づけば「結局、何を決める会議だったのだろう」となってしまうことがあります。
言葉も同じです。解釈が違えば、議論の前提も変わり、やがて価値観や判断基準のズレにつながっていきます。
だから私は、まず前提条件を揃えることを何より大切にしています。時には、そのためだけに1〜2回分の会議を費やすこともあります。しかし、その時間は決して遠回りではありません。最初に認識を揃えておくことで、その後の議論や意思決定の質、そして組織としての成果は飛躍的に高まると確信しています。
――では、ミッションにある「全ての人が活躍する」の、現時点での暫定的な小島さんの考えを教えてください。
私は、「活躍」を次の3つの要素で定義しています。
- S:Strength(強み)
自分が社会に還元できる強みやスキルは何か。 - P:Purpose(目的)
自分は何のために働き、何を実現したいのか。人生の目的や社会的な意義は何か。 - I:Influence(影響)
周囲の人や組織に対して、良い影響を与えられているか。
私は、この3つが重なり合った状態こそが、「本当の活躍」だと考えています。
だからこそ、活躍への第一歩は、自分自身と向き合うことです。自分の強みは何か、何を大切にして働きたいのか、そして周囲にどのような価値を届けたいのかを考えることから始まります。
もちろん、最初からすべてを見つける必要はありません。まずはSPIのどれか1つでも構いません。自分が納得できるまで真剣に向き合ってみてください。その積み重ねが、やがて残りの2つにも良い影響を与え、本当の意味での「活躍」につながっていくと信じています。
ありがとうございました。
前半では、MHTグループへの参画に込めた想いや、MVVを軸とした組織づくりについてお話を伺いました。後半では、MHTグループへの参画を経て描くこれからの事業戦略や、目指す未来について詳しく伺います。お楽しみに!