先日策定された、インクルード独自の“ぶれない支援の土台”である「支援Value」。プロジェクトを牽引した4名の座談会インタビュー後編をお届けします。
前編では、支援Value誕生の背景にあった現場の課題や、完成までの試行錯誤について伺いました。後編では、完成した支援Valueを「作って終わり」にせず、全国のセンターへ本気で浸透させるために取り組んできた過程に迫ります。
「支援はチーム戦!」という共通言語が根付き始めた現場では、利用者さんや支援員にどのような変化が生まれているのか。そして、これからインクルードの仲間になる方へ伝えたい想いとは。支援Valueが組織にもたらした変化と、その先に描く未来について伺いました。
【対談前編】『支援Value』誕生秘話|9ヶ月の議論を経て完成した"ぶれない支援の土台" | インクルード株式会社
形骸化させない仕組み。現場へ浸透した瞬間と利用者さんの変化
ーー支援Valueを“きれいごと”で終わらせず、実際に現場へ浸透させるために意識したことはありますか?
Bさん: 完成した後の「伝え方」と「説明の量」に徹底的にこだわりました。11月に文言が完成した後、12月にはまずマネージャーやサビ管への伝達研修を行い、1月には各センターの支援員さんに向けて研修を実施しました。
実は、支援員だけでなくマーケティング部門をはじめとする間接部門も含め、全社向けの説明会やワークショップを10回以上開催しました。時間をかけて繰り返し全社員に丁寧に伝えることで、「これは会社として本気で取り組む大切な価値観なんだ」というメッセージを発信し続けたことが、浸透の大きな後押しになったと感じています。
Cさん: 一方的に「これが支援Valueだから守ってね」と上から提供する形にせず、双方向のやり取りを大事にしたのも良かったですよね。
オンラインではありましたが、各センターのメンバーとしっかり説明をして研修を行ったことで、支援Valueに対する質問を一つひとつ丁寧に受け付けることができました。「距離感の定義って?」「この場面ではどう適用する?」といった現場ならではの疑問をその場で解消し、みんなで納得感を持てました。
また以前より、各センターの朝礼や終礼でMVVや支援Valueに触れる時間を設けており、その日意識するValueを共有し、終礼では実践できたことを振り返っています。特に支援Value完成後は約2カ月間は支援Valueを重点的に取り上げることで、特別なものではなく日常業務の中で自然に活用する仕組みづくりを進めてきました。
Aさん: あとは、私たち発信する側の本気度も何より重要だと思っています。
私は現在、新入社員向けのValue研修を担当していますが、支援Valueについても「なぜ必要なのか」「どのような想いを込めてつくったのか」を毎回しっかり伝えています。どれだけ良い言葉を作っても、発信する側に熱量がなければ、ただのスローガンとして流されてしまいます。だからこそ私たちは、Valueを説明するだけでなく、自ら体現し続けることを大切にしています。
その熱量こそが、支援Valueを形骸化させず、組織文化として根付かせるための最も重要な要素だと考えています。
ーー実際に運用が始まってから、現場やメンバーの行動に具体的にどのような変化がありましたか?
Bさん: 現在、支援Valueに紐づいた6種類のオリジナルスタンプを運用しているのですが、支援員が「今日、利用者さんにこんなお声がけをしました」「このような面談を行いました」と日々の支援内容を共有した際に、周囲のメンバーがその行動に合った支援Valueのスタンプを自然と送り合うようになりました。
また、スタンプだけではなく、日常の支援に関する会話の中でも、支援Valueに沿った言葉が自然と飛び交うようになっています。
Dさん:私が「支援Valueが浸透してきたな」と実感するのも、現場で支援員の口から支援Valueの言葉が自然に出てきたときです。誰かに言われたから使うのではなく、自分たちの共通言語として日常の中に溶け込んでいる。その様子を見たときは、本当に嬉しかったですね。
Cさん:私のセンターでは、支援Valueに従い、担当している利用者さん以外のケースについても、終礼などで支援員同士が積極的に意見交換をする機会が増えました。以前よりも、「一人の利用者さんをチーム全体で支えていこう」という意識が強くなったと感じています。
また、現在は週に1回、Valueをベースにしたケース検討を行っています。その中で、メンバー一人ひとりが目に見える行動だけでなく、その背景にある“見えない課題”にも目を向けながら支援を考えるようになりました。
利用者さんの安定就労とその先の活躍の実現に向けて、 本質的な課題解決を目指そうという意識が、以前より確実に高まっていると感じています。
Aさん:私は現場の支援員から支援について相談を受けたときに、支援Valueの効果を実感しています。
以前であれば、「それはこうした方がいいよ」と私自身の考えを伝えることが多かったのですが、今は「今回のケースを支援Valueに照らし合わせるとどう思う?」という対話ができるようになりました。すると、相手も自分で考えながら答えを見つけられるため、納得感がまったく違うんです。
共通の物差しである支援Valueがあることで、お互いの感覚や経験だけに頼るのではなく、より建設的で質の高い支援の対話ができるようになったと感じています。
ーー支援Valueの導入によって、利用者さんの訓練や自立に向けた歩みに好転した事例はありますか?
Cさん:そうですね。 利用者さんと支援員の関係性という面で、ポジティブな変化がありました。
過去には、特定の支援員と利用者さんとの間で、過度な「依存関係」が生まれてしまうケースがときにありました。何かと話すと長くなってしまう場合や、面談の機会が増えてしまうような状態です。
しかし、Valueを支援員全員が強く意識するようになってから、いつもすぐに手を差し伸べるのではなく、あえて一歩引いて、ご本人に選択・決定していただく場面を意識的に作れるようになりました。
その結果、利用者さん側にも支援員との適切な距離感を意識してもらえるようになり、「自分で決めて進むんだ」という自立の意識が芽生え始めています。主体的に就職・復職に向けて歩まれる好転事例が、少しずつですが確実に増えてきているなと感じます。
未経験者にもベテランにも。これからのインクルードが目指す支援の未来
ーーValue共有後、既存の支援員や新入社員からは、どのようなポジティブな反応がありましたか?
Bさん: 1月に全体への伝達研修を行った際、ある程度支援のキャリアが長い支援員たちから「ものすごく納得感がある」というフィードバックを多くもらいました。
自分が普段から感覚的に大事にしてきたこと、心掛けてきたことが見事に言語化されていたため、いい意味で「これまでの自分の支援の答え合わせになった」という前向きな反応が多かったのが印象的でしたね。
Cさん: そうですね。これまでは、何か起きたことに対して自分の考えをベースにお伝えしていた部分もあったベテランの支援員もいたと思うのですが、そうではなく、これを元に支援に対してのお話をすることで、より意識ができたり、皆さんで共通認識を持てるようになったりと、現場を前向きに捉え直してくれています。
Dさん:私も、完成して間もない頃に、現場の支援員から「支援Valueがとても分かりやすくて、本当に良いと思います!」と直接声をかけてもらいました。突拍子もないルールが降ってきたのではなく、自分たちの想いが形になったものとして、みんなが歓迎してくれています。
Aさん: 新入社員向けの研修でも、特に他の福祉現場を経験されてきた方から「今まで自分が大切にしたいと思いながらも、なかなか言葉にできなかったことが言葉になっている。すごく共感できる」と言っていただけることが多く、確かな手応えを感じています。
ーーこれから新しくインクルードに仲間入りする人にとって、支援Valueはどんな存在になると思いますか?
Aさん:既存のValueなども含めると合計14個のValueがあるため、最初は「覚えることが多くて大変そう!」と驚かれる方もいるかもしれません(笑)。しかし、内容自体は非常に具体的でイメージがしやすいものばかりです。
特に未経験からスタートする方にとっては、「ここを目指して行動すれば間違いない」という大きな安心感につながるはずです。
Dさん:そうですね。経験の有無を問わず、全支援員にとっての「支援の土台」であり、迷った時にいつでも安全に立ち戻れる、そんな存在になってほしいですし、実際にそうなっていくと確信しています。
Bさん: インクルードには現在、教育業界や接客業など、本当に多様な異業種から転職してくる方がたくさんいます。対人援助の経験があっても、教育関係で働いていた人だとつい「指導する、上から何かを与える」というスタンスを支援でも持ってしまいがちだったり、接客経験が長い人だと利用者さんを「お客様」だと思って必要以上に遠慮してしまったりと、福祉独特の“距離感”に最初は誰もが難しさを感じるんです。
この支援Valueは、教育とも接客とも違う「支援員と利用者さん」という、私たちが大切にすべき唯一無二の距離感を、入社して最初に正しくインプットできる素晴らしい存在になると思います。
Cさん: 私たちの行う「就労移行支援・リワーク支援・自立訓練 」という福祉の分野は、入所施設などの施設で生活を支える福祉とは異なり、「最終的に支援の手が離れていくこと、支援の終わりが来る福祉の分野」です。
だからこそ、過剰に手を貸すのではなく、いかにしてご本人の自立を促し、就職・復職に向けて支援の手を離していくかという関わり方の難しさがあります。
支援Valueには、そのためのエッセンスが多く含まれています。新しく入る方にとっても、自分自身の支援スキルをプロフェッショナルへと引き上げるための、最高のガイドラインになるはずです。
ーー支援Valueを、今後どのように活用し、組織としてどう成長していきたいですか?
Bさん: 今行っている朝礼や終礼での確認といった取り組みはしっかりと継続していきます。その上で、今後は支援の質を客観的に高めていくために、各センターの評価基準の一つとして、この支援Valueをどれだけ意識し、体現した支援ができたかという指標を仕組みの中に紐付けていけると、より深vく浸透していくのかなと考えています。
Cさん: 現場のサービス管理責任者やマネージャーといったリーダー陣が、今後もブレずに旗を振り続け、伝え続けていくことが何より大切だと思っています。
継続していくことで、意識してValueを使う段階から、やがて「自然とこの支援Valueを生かした支援ができる」という状態へ、全支援員が当たり前に辿り着けるはずです。そこを目指して、現場を引っ張っていきます。
Aさん: そうですね。今、Bさんさんが言ってくれた評価基準や仕組みとの連動に関しては、実は私もこの支援Valueを作っている時から、何かしらの形で関係させたいなと密かに構想を練っていた部分でした(笑)。Valueを体現することが自分たちの誇りになり、利用者さんへの貢献に直結しているという実感をもっと持ってもらいたいです。
そして支援員の皆さんには、朝礼の場だけでなく、目の前にいる利用者さんに対して、リアルタイムでこの支援Valueを「使い倒して」ほしい。
「この方の可能性は何だろう?」「今の自分の距離感はベストか?」と、日々リアルに思いながら使い倒していくことで、インクルードの支援の質をどこまでも高め、より多くの利用者さんを最高の形で社会へと送り出せる強い組織を作っていきたいです。
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ありがとうございました。インクルードの「支援Value」に込められた熱い想い、伝わりましたでしょうか?