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技術を技術で終わらせない。人が幸せに生きるために。

「AI×DATAで世界中の価値を最大化する」をミッションに掲げ、HR Techをはじめ、Sales TechやAI DX事業など幅広く事業展開するXAION DATA。その裏側にいる人たちは、どのような想いを持っているのだろうか。

今回お話を聞いたのは、CEOの佐藤泰秀さん。彼はXAION DATAの創業によって、どのような社会・世界を見据えているのか。そこには、彼が抱える純粋な想いが込められていた。


佐藤 泰秀 / Yasuhide Sato

日立製作所新卒入社後、公共システム部門において大規模基幹系システムの導入・構築プロジェクトをPLとして対応。大規模システム更改プロジェクトにおいては、事業所技術賞を受賞。その後、アメリカ・シリコンバレーのAIスタートアップ企業にジョインし、アメリカにて市場開拓やファイナンス関連の業務に従事。アメリカ・日本市場開拓責任者を担い、日本の東証一部上場のHR企業のCVCから調達を実施。本社COOを経て、日本子会社設立および、同社代表取締役に就任。2020年1月、XAION DATAを共同創業。

人生を変えた、シリコンバレー在住エンジニアの一言

―― XAION DATA創業のきっかけを教えてください。学生時代から、起業を視野に入れていたんでしょうか?

佐藤泰秀(以下、佐藤):いえ、そんなことはなかったですね。新卒のキャリアでも、大手企業に入りましたし。自分はもともとバックグラウンドがエンジニアなので、当時考えていたのは、「技術を通じて、より多くの人に価値提供したい」ということでした。それもあって、公共の福祉に資する、という考えから、自治体や官公庁をお客さんに持つ部門を希望して働いていました。

―― 希望していた場所で働くなかで、違和感が大きくなってきたのでしょうか?

佐藤:やはり大手企業のいち社員として働く中で、純粋に自分がやっていることが世の中に本当に価値提供できているのか、自分のキャリア価値につながるのか、という点は非常に悩んでいました。自分がなんのために働いているのか分からないまま過ごしているのが、しんどくなってきたっていうのはありましたね。

―― 具体的に、どういうしんどさを抱えていたんですか?

佐藤:人の価値って、他人や社会との関わりの中で感じるものだと考えていて。人から承認されたり、人の役に立って初めて感じるもの。それを全く感じられなかった状態が辛かったですかね。

―― なるほど。

佐藤:自分の価値を自分で認知できている人って思った以上に少ないと思っていて。それって結構不幸なことだと思うんですよね。人って承認欲求に成り立っている部分が少なからずあると思っていて、それが満たされない状況ってすごいネガティブだなと。だからこそ、「あなたにはこういう価値があるんだよ」って救いの手を差し伸べてくれる存在がいたら、救われる人は多いんじゃないか、って。

―― そこから、人が持つ“価値”にフォーカスするようになったんですね。その想いにが原動力で起業したのですか?

佐藤:いや、自分で何かチャレンジしたい、という想いを抱えながらもなかなか踏み切れない日々が続きました。正直なところ大企業を辞めること自体、自分の中でも大きな決断でしたしリスクなんじゃないかという気持ちがどうしても拭えない部分はありました。

―― 何かきっかけがあったんでしょうか?

佐藤:シリコンバレーのAIスタートアップで仕事をしたのが大きかったですね。その時はエンジニアとしてではなく、事業開発として仕事をさせていただき、​​マーケットリサーチから、資金調達まで、幅広く任せてもらう機会をもらいました。

―― 大きな環境変化ですね。

佐藤:はい。当時わたしがいたオフィスでは、毎週金曜日にピッチコンテストが開かれていたんです。そこで、自分と歳の変わらない人たちが、起業家として自分の事業についてプレゼンする姿を目の当たりにして。誰しもが、熱っぽく理想の社会や世界を力強く語っている。

―― 当時の佐藤さんと同じように大企業から飛び出した方もいそうですね。

佐藤:おっしゃる通りで、大企業出身者も多く、新卒で年収1000万円なんてよくある話でした。優秀な大学を卒業してそのままスタートアップを立ち上げている人もいれば、大手企業を辞めてチャレンジしている人たちもいて。そんな彼らが、想いを体現するためにリスクを取って、全力で自分の想いと向き合っていました。

―― その人たちと自分を重ねて気付くことが色々とあったんですね。

佐藤:はい、そんな姿を毎日のように見ていると、大手企業という立場にしがみついている自分が、恥ずかしく思えてきましたね。最後の決めては同僚の中国人エンジニアの言葉でした。

―― 言葉?

佐藤:「ヤスは何を目指しているんだ? 若くて想いもあるのに、なんで挑戦しないんだ?」

―― 厳しくも労いの言葉ですね。

佐藤:はい、それがターニングポイントでしたね。その時に、在籍している企業の肩書で勝負するのではなく、自分自身で、自分の力でマーケットに対して直接アプローチして、何かを変えるために挑戦しようと思いました。直後にそのAIスタートアップにCOOとして入り、シリコンバレーで事業開発や資金調達等の業務に携わった後、日本の子会社設立を経験し、その後XAION DATAを起業しました。


暗闇から価値を照らし出す、スポットライトのような存在になりたい

―― 次はXAION DATAについてお聞きできればと思います。おふたりで創業したんですよね?

佐藤:そうですね、シリコンバレーで一緒だった(石崎)優人さんと創業しました。

一緒に立ち上げた理由は、お互いが見ている世界観、目指したい世界観が一緒だったところですかね。優人さんは優人さんで、「埋もれた人の価値に光を当てる」というコンセプトで新規事業を考えていたことがあったみたいで。優人さんと一緒に仕事をしている中で、お互いのビジョンや世界観を共有したら「一緒だ!」ってなったところが大きかったと思います。

―― そんな運命みたいな話あるんですね。

佐藤:本当に運が良かったと思います。

―― だからミッションが「AI × DATAで世界中の価値を最大化する」なんですね。

佐藤:はい。優人さんとわたしが思い描いていた世界感をそのまま表現しました。このミッションは、人の価値を見出し、最大化してあげる仕組みをテクノロジーを通じて実現し、テクノロジーで人の幸福に寄与できる企業・事業を作りたいという思いが込められています。

我々は今、ウェブ上の公開情報の収集基盤と、それに合わせたサービスプラットフォームの構築を行っていますが、これは、世界中の様々なデータの中から、本人の価値を見出し、最大化できるような技術の基盤を構築していくことで、XAIONのミッション実現につながると考えているからです。

人や企業、プロダクトやサービス、ただのデータであっても、それぞれが持つ価値を見出し、最大化することで、一人ひとりが尊重されるような社会のあり方を目指しています。

―― 「世界中の」という文言を入れているのは、やはりグローバル展開も視野に入れているんでしょうか?

佐藤:そうですね、創業当初からアメリカにもチームを持っていて、走りながら事業構想を立ち上げています。我々も含めて社内にも英語ができるメンバーが揃っているので、海外での事業展開を前提とした事業づくりをしています。

―― XAION DATAという社名も、ミッションと関わりがあるんでしょうか?

佐藤:そうですね。XAION DATAという社名は、“AI × DATA”を“keep ON going”していく、つまり、”AI×DATAで世の中を前進させる”という意味から来ています。文字通り、AI×DATAで価値相乗をしていき、世界を変えていこうと。

―― そういう意味があったんですね。

佐藤:コーポレートカラーも、XAION DATAでは青色とオレンジ色を使っているんですけど、青色は深いデータの海、オレンジ色はそれを照らす光を表しているんです。

データの海から埋もれた価値あるデータを太陽が照らし、獲物を狙う鷹の様に見つけ出す。埋もれてしまっている価値にスポットライトを当てて輝かせようという、そんな意志が込められています。


技術を技術で終わらせたくない

―― 世界中の価値を最大化した先に見据えている世界が、ビジョンに掲げている「日常に“AI”を」なんですね。

佐藤:おっしゃる通りです。最初にお話しておくと、実はこの文言には二つの意味があるんです。一つは「人工知能」という意味でのAI。もう一つはローマ字読みで「愛(あい)」という意味でのAI。

―― 愛ですか?

技術って、生活レベルまで浸透してはじめて世の中に還元されて、人の幸福や愛を感じるものにつながると思っています。どんな技術でも、多くの人が使える状態にならないとインパクトは小さい。本当の意味での、技術が世の中に対して価値を還元することはできないと思っています。

―― 技術が浸透する必要があると。

佐藤:はい。XAIONは、AI技術の連続的な社会実装を実現するために、AIモデルやデータを流通させる基盤を構築しています。AIやデータの流通を促進し、技術が様々な事業領域に実装され、人々の身近なところに技術が浸透していくことで、最終的に技術が人の幸福に寄与するものと考えています。

―― そのレベルまで浸透しないと意味がないと。

そうですね、エンジニアとして、事業を作るものとして技術を技術で終わらせたくない。我々はただテクノロジーを広げたいわけではなく、その技術を通じて人が愛や幸福を感じられる世界にしたい。だからこそ、「日常に“AI”を」というビジョンを掲げています。



―― そのような「幸せ」な社会の形をについて考えるようになったのは、何かきっかけがあったんでしょうか?

大学の時に留学していで暮らしたフィンランドの影響は大きいかもしれません。フィンランドって、個人の価値を最大限に尊重する教育をするんですよ。右向け右、ではなく、その子に合わせた道を用意してくれる。

―― 一人ひとりが、自分に合った道を歩めるんですね。

佐藤:想いや得意を尊重されるとこんなに輝くんだ、ってことを直接経験したのは大きいと思います。小さなことですけど、当日の留学中のルームメイトがめちゃくちゃ石が好きな人だったんです。

―― 石ですか?

佐藤:部屋中に石を飾ってて、ことあるごとにプレゼンしてくるんです。「ヤス! これめっちゃ良い石だろう! 誕生日祝いにあげるよ!」とか(笑)。でもそういう自分の好きなことに真っ直ぐ突き進むことができるのは、周りがそれを許容する環境があるからだなと感じていました。

―― たしかに、もしかしたら日本だと馬鹿にされかねないですね。

佐藤:みんな本気で、自分の好きや想いに向かっている。それぞれの人の価値が認められて、それが最大限に発揮されるって、幸せな状態なんだなと。

だからこそ、「世界中の価値を最大化する」をミッションに掲げ、「日常に”AI”を」というビジョンに向かって突き進んでいるんだと思います。

―― 既にいくつかのプロダクトをリリースしていますが、会社としてこれからどのようなステージに向かうのでしょうか?

佐藤:いまは、ウェブ上に公開されている様々な情報を収集・統合し、膨大なデータの中から情報価値を見出す仕組みをアプリケーションとしてサービス展開しています。今後は、データ統合基盤上に構築したこれらのサービスレイヤーから、データとAIモデルのアセットを収集し、最終的にはプラットフォーマーとして、AIやデータ流通を促進していきたいと思っています。

―― あくまでも、ゴールは自分たちがインフラのような立場になること、なんですね。

佐藤:そうですね。プラットフォーマーとして、世の中のすべての人が、AIモデルやデータを自由に使ったサービスを立ち上げられる。そんな世界観を目指しています。AIが流通することでなにが変わるかって、「人がやらなくてもいいもの」を技術が代行することだと思うんです。つまりはそこに人が介在する価値はないということ。

―― 人は人にしかできないことに集中できるということですね。

佐藤:はい。「人がやらなくてもいいもの」が技術に置き換わっていくと、「人が行うことに意味があるもの」に価値が上乗せされていくと思っています。それは感情かもしれないし、思考かもしれない。人が人であることの意味性や得られる実感価値が大きくなる。

―― それが「世界中の価値を最大化」した先に見据えている世界なんですね。

佐藤:そうですね。なので、「世界中の価値の最大化」と言ってはいますが、究極的には「人の価値の最大化」なのかもしれません。

データの価値であれば、それを利用する人が。企業の価値であれば、そこに在籍する人が。どんな価値を最大化させても、その恩恵を受けるのは人です。

わたしは、人間の介在価値を信じているからこそ、AIやデータを使って、それを最大化させたいんだと思います。

―― なるほど。佐藤さん、本日はありがとうございました!

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