①今回改めてシェアグリとは何なのか伝える
産地間リレーで農家の人手不足解消を目指す
シェアグリでは特定技能の外国人人材の派遣事業を行い、農業の一番大きな課題である農繁忙期における人手不足の解消、また人件費の削減を大きなテーマに掲げて、事業を行っています。
具体的な方法としては、農繁期の数ヶ月単位で人材派遣を利用している農家さん、またはJAの出荷場などに、必要なとき、必要な分だけの人材を派遣するような仕組みを作り上げています。ただ派遣をするだけではありません。複数の産地間の人材のシェア、ないしはリレースタイルという新しい仕組みを作っているところが特徴です。
葉物野菜を例に挙げると、春夏に農繁忙期を迎える産地があればそこに行き、秋が来たら秋に農繁忙期を迎える産地、秋が終われば冬に農繁忙期を迎える産地、そして冬が終われば、また以前と同じ産地に戻るといった具合に1年間を回すという仕組みを作っています。これによって、どんどんプロの人材を育成できますし、安定供給にもつながるのです。さらに「産地間リレー」と呼ばれるこの仕組みを回すことができれば特定技能人材をシェアできるようになるため、外国人実習生にいちから教育をする必要がありません。言葉の壁の存在が不安だったり、外国人への支援体制が整っていなかったりする農家さんも安心して派遣要請ができるというわけです。
そして、この仕組みづくりの大きなポイントとなるのが人件費の削減です。これまで技能実習生や日本人を直接雇用してしまうと、通年で人材採用をしなければならず1年間、繁忙期・閑散期にかかわらず人件費がかかっていました。しかし、私たちはシェアグリのシステムでは本当に人手が欲しいときだけ、スポットで人材を派遣できますので、年間の人件費を考えると圧倒的に安くおさめられるのです。試算してみたところ、年間で1人当たり180万円もの人件費を削減できることがわかっています。
②JAアクセラレーターとは何なのか?
「食と農」のすぐれた起業家を選出するJAアクセラレーター
JAアクセラレーター第2期は「食と農とくらしのイノベーション」をキーワードに、農業、地域社会が抱えるさまざまな課題を解決し、次世代に残る農業を育てて、地域のくらしに寄り添い、場所や人をつなぐパートナーとして、革新的な商品・サービスを創造する起業家・事業家を募集するプログラムです。起業家や事業家は自身のアイデアやテクノロジーをJAグループのサポートを受けながら、新しい時代に向かって創造・革新していきます。
第2期では最終的に163社からの応募が集まり、そのなかから選ばれた8社は6か月間をアクセラレーター期間として、実証実験をはじめとするさまざまな活動を行いました。
この期間はまさにコロナ禍のアクセラレーターとなり、163社から最終的に8社を選ぶビジネスコンテストも、5月の緊急事態宣言下に開催されています。
当初は延期も検討しましたが、「こういう時期の中でも歩みを止めたくない」ということで、オンライン形式を取り入れて決行しました。さまざまな制約があり、ネガティブな部分も見られましたが、オンラインを使うことで得られた収穫もあり、最終的には「決行してよかったな」と感じています。
期間の後半には地方へ出張できるようになり、オンラインとオフラインのハイブリッドで使い分けをしながら、いろいろな活動ができました。たとえば8社の中には3社、九州の会社が入っていますが、オンラインを使いながらスムーズなやりとりが実現されたのです。
昨年は100名程度で開催していたデモも、今年はオフラインとオンライン両方で展開していますので、多くの方々に一般公開して、視聴いただくことができています。結果的にメリットを活かしたアクセラレータープログラムになったのではないかと思います。
また、第1回目のアクセラレータープログラムは農林中金の伴走者が中心でしたが、第2回目となる今回は、農林中金と全農から約10人の伴走者にご協力いただいて、バラエティに富んだバックグラウンドで実施できました。全農と農中、そして男性・女性混じり合ったバラエティに富んだチームでうまく実施できたと実感しています。
③ 今回 JA Accelerator に採択されたことで行った新しい取り組み(実証実験)について
JA・単協と協力し合って産地間リレーを実現
半年間でのアクセラレーター期間では、農業協同組合全体としてのJAさんや市町村単位のJAである単協さんそれぞれに窓口となっていただきました。そのうえで私たちと農家さんをつなぎあわせていただけるような立ち位置や仕組み作りを、話し合いをしながら進めました。
この半年間で私たちは本当にさまざまな秋冬の産地を中心に、中央会10件、全農1件、単協さん5件、そして全国各地JAさんとコンタクトを取らせていただき、JA組織の関連組織を含め、多くの組織の方々とお話をさせていただくことができたのです。
そのなかでも具体的な事例をいくつか説明しますと、まずは群馬県の嬬恋村ですね。こちらは非常に良い取り組みとなりました。キャベツの一大産地として知られるJA嬬恋村さんでは、昨年6月から5名の人材派遣をスタートして、JAさんや農家さんから非常に高い評価をいただきました。「来年もぜひお願いします」と、あたたかいお言葉をいただき、今年はすでに24件の派遣が決まっています。JA嬬恋村さんからも「全面的にシェアグリを応援する」というコメントをいただいて、すごく励みになりましたね。
また、同じ群馬県内のJA太田市では、2020年11月から7名の派遣がスタートしていてます。中央会さんに協力していただいて、群馬県内にある嬬恋村と太田市、2拠点の産地間リレーを既に完成しました。夏の産地・嬬恋村と秋冬の産地・太田市で年間のシェアのスケジュールを作れたことで、非常に大きな成果を出せたと感じています。場所は変わりますが、九州の鹿児島県でも九州地方全域に人材を派遣する取り組みを打ち出していて、監理団体の方と話し合いを進めています。
千葉県では中央会と競合して、モデル農家をいくつかピックアップし、本来農家さんが払うべき費用の一部を中央会が負担して、シェアグリのサービスを実際に体験してもらう取り組みを2020年12月から始めました。また、同年9月には外国人雇用意見交換会を傘下組織の方々と行いました。これはJAグループの横のつながりを作ることにつながりましたし、シェアグリとしてもより良いサービスの提供を考える良い機会になったと思います。
④ 今後どのようにシェアグリが成長できるか、また今後の期待値
売上1,000万円を達成したシェアグリは順調に成長中
このプログラムを第2期の半年間で行ったことで、1か月の売上が1,000万を超えるほどに成長し、コロナ禍であったにも関わらず、スタートアップ的な成長することができました。
シェアグリの事業は人手不足の解消や人件費の削減、人材の有効活用を目的としていましたが、このプログラム期間中に、農繁期におけるスポットの人材派遣事業は農業者のみならず、特色のある力強い産地づくりに大いに貢献できるという気づきを得られました。スポットで派遣することで日本の農業を強くしていけると感じたことで、今後は日本農業のさらなる競争力強化に向けてJAグループさんのバックアップを受けながら、全国に人材を派遣して人手不足の問題解消に取り組んでいきたいと考えています。
この半年間でJA組織を中心に多くの法人やJAの単協さん、中央会の方を訪問・面談させていただきました。また、実際に嬬恋村にも行き、そこの農家さんや特定技能の方からお話を伺いました。そのなかで農家さんからは、スポット派遣のニーズが非常に高いこと、また話を聞いてくださったJAの方からは、高い関心が寄せられていることを実感しています。実際に派遣にいたったJAさんからは非常に感謝されていることを知って、とてもうれしかったです。
9月17日 外国人雇用意見交換会の様子 Ag VentureLabにて
⑤ 今回、課題となった部分について
シェアグリの知名度向上は今後の課題
JAグループ内におけるシェアグリの認知度は、まだまだ決して高くはありません。ですので、このアクセラレータープログラムが終わった後も、JAグループとシェアグリが協力をして、より多くの農家さんにサービスを提供し、労働力不足の問題を解決できるような取り組みをしていきたいと個人的に思っています。
⑥ 今後の成長のために新たなメンバーが必要であること
一緒に成長できるシェアグリメンバーを募集中!
私たちはこの6か月間のアクセラレーター期間を通じて、日本全国さまざまなJAさんや単協さん、監理団体や農家の方々とお話させていただき、事業の幅を広げることができました。すでに人材派遣が決まっているエリアもいくつかあります。売上も着実に伸びてきていることから、今後はさらなる事業の拡大を期待でき、私たちも目標を達成できるように日々取り組んでいます。
しかし、まだまだシェアグリの認知度は高くなく、もっといろいろな人に知っていただきたいという気持ちは強くあります。
成長過程にある私たちと一緒に事業を伸ばしていきませんか。「食」は私たちの生活に欠かせないものであり、伸びしろはまだまだあると私自身強く感じています。
シェアグリの産地間リレーでJAさんなどの組織も農地で働く方々も、そして私たちもハッピーになれる。そんな世界を一緒に目指していきましょう!