馬場 彩子(R&D)京都大学卒業後、外資系コンピューターメーカーに新卒で入社。2001年、友人の起業をきっかけに創業メンバーとして四次元データへ参画し、開発を中心に事業立ち上げに従事。その後、同社が現シナジーマーケティング株式会社に買収され、開発組織として合流。以降、プロダクト開発に長く携わり、2020年より同社CTOを務める。2025年4月よりクロステック・マネジメントに参画。
作る側に行きたかった。その選択の積み重ね
──これまでのキャリアについて教えてください。
大学卒業後、外資系コンピューターメーカーに新卒で入社しました。理系ではありましたが、学生時代からプログラミングに強く興味があったわけではなく、「ITも面白そうかもしれない」「外資系なら、いつか海外で仕事をする機会もあるかも」という、わりとふわっとした動機でした。
最初はハードウェアを扱う会社で、いわゆるセールスSEのような立ち位置でした。高額なハードウェアを導入するとSEが付いてくる、という時代で、私はその付いてくるSEの役割でした。ただ、実際の開発や実装は外注が中心で、自分は技術的に深く関われている感覚が持てず、そのうち「間に立って調整するより、自分で作る側に回りたい」「自分が手を動かして作ったものが、使われてお金になる仕事をしたい」と思うようになり、2年ほどで退職しました。
ちょうどそのタイミングで、大学時代の友人が起業することになり、声をかけてもらいました。それが現シナジーマーケティングの前身となる四次元データという会社です。創業メンバー6人のうちの一人として参画し、開発を中心に、営業以外のほぼすべてを経験しました。資金的に厳しい時期もあり、泊まり込みに近い形で働いたり、受託開発やSES的な仕事でなんとか会社を回していた時期もあります。
その後、ご縁があって、シナジーマーケティングがSaaSプロダクトを立ち上げる際の初期開発を私たちが担い、そのまま開発組織ごと合流する形になりました。アイデアはあるけれど技術がない、そんな会社を形にする支援をしてきた結果、今があります。気づけばプロダクトづくりに20年以上関わり、現在はシナジーマーケティングでCTOを務めています。
芸術という専門領域を、テクノロジーで拡張する
──クロステック・マネジメントにジョインしたきっかけを教えてください。
一番大きい理由は、芸術という専門性の高い領域に、テクノロジーやAIを本気で掛け合わせようとしている点が、とにかく面白そうだったからです。
京都芸術大学は、シナジーマーケティングにとって長年のお客様でもあり、通信教育を一緒に盛り上げていく中で、新しい取り組みに積極的な姿勢は以前から感じていました。ただ正直に言うと、教育DXの文脈で、ここまで踏み込んだ挑戦をしているとは知りませんでした。
個人的には、美術館に行くのが好きで、芸術の分野にはもともと関心がありました。一方で、長くITの仕事をしてきた中で、「少し違う世界にも触れてみたい」と思っていた時期でもあったんです。そんな中で、通信制大学を調べていたときに木原さんのnoteを読み、Notionと連携した大学DXの話に強く惹かれました。ちょうどその少し前に、NotionのCTOの講演を聞く機会があり、「これは単なるWikiではなく、思想を持ったツールだ」と感じていたことも重なりました。
芸術大学という文脈に、汎用的なITツールやAIをどう組み合わせるのか。その問い自体が、とてもチャレンジングで魅力的だったんです。正直、「教育」そのものに強い思い入れがあったわけではありません。ただ、芸術という人の人生を豊かにする分野を、テクノロジーでどう広げていけるのか。その可能性には、強く惹かれました。さらに、アジアへ向けて芸術教育を展開していく構想を聞き、「日本の外にサービスを届ける仕事ができるかもしれない」と思えたことも、最終的に背中を押した理由の一つです。
──面談で印象に残っていることはありますか?
いい意味で「面接を受けている」という感覚があまりなかったですね。一方的に評価される場というより、これまでやってきたことや考えていることを、自然な対話の中で共有していく時間だったのが印象的でした。皆さんとてもフラットで、構えずに話せる雰囲気がありました。
また、木原さんは京都芸術大学の職員としてシナジーマーケティングを利用されていたので、以前からシナジーマーケティングのことを知ってくださっていました。加えて、小笠原さんも前身の会社のことをご存じで、思いがけず共通の文脈がいくつも重なったんです。そうした接点がきっかけで会話も自然と広がり、「ここなら自分のスタンスのまま価値を発揮できそうだな」と感じました。
「学び × AI」を、現場で使える形にする仕事
──現在はどのような業務を担当されていますか?
R&Dのミッションは「学び × AIで日本一」。その中で私は、学園やクロステック・マネジメントがAIを安心して、思いきり使える状態をつくることを主に担当しています。
一つは情報発信です。新しいAIツールや技術を紹介したり、ハッカソンのような場を企画して、実際に触れる時間を増やす。とにかく「使ってみる」きっかけをつくることを意識しています。もう一つはリスク整理です。AIに対して不安を感じている教職員の方も多いので、「何がリスクで、どこまでなら大丈夫か」を整理し、ガイドラインとしてまとめています。禁止するためではなく、安心して使うための指針ですね。
加えて、AIの可能性を示すために、学びAIや芸術AIのプロトタイプも作っています。プロダクト未満でも、「こういうことができる」という具体例を形にして見せる。R&Dらしい仕事だと思っています。学生はすでにAIを使いこなしています。一方で、教育の現場では「レポートを全部AIが書いてしまうのでは?」といった不安もあります。だからこそ、使わない前提ではなく、「どう使えば学びになるか」を一緒に考える。その橋渡し役を担っている感覚です。
前例がないことを、楽しめる組織
──クロステック・マネジメントで感じている魅力を教えてください。
正直に言うと、まだまだカオスです(笑)。やりたいことは壮大で、全部が整っているわけではありません。ただ、起業や事業開発を何周もしてきたメンバーが多く、「わからない」「未知のもの」に対する耐性がとても強い。何かに直面したときも、「じゃあ、そのやり方を採用するか」と前向きに考える文化があります。
個々の強みや弱みを前提にしたプロセス設計で、無理に型にはめない。全員が業務委託で、入れ替わりもありますが、その分、いろいろな知見が混ざり合って尖っていく感覚があります。
特に面白いのは、AIを試すためにプロトタイプをどんどん作れる環境があることです。
「何に使えるかわからないけど、あったら面白そうだよね」という芸術特化LLMを、実際にサーバーに載せて動かしてみる。そういうチャレンジが許されるのは、この環境ならではだと思います。「まず作ってみる」「やってから考える」を楽しめる人にとっては、とても刺激的な場所ですし、エンジニアを中心とした開発に関わる方々にとって、非常に刺激的な環境だと思っています。