PROFILE
岡村 邦博(Material Dept)
2008年に武蔵野美術大学卒業後、フリーランスとしてスタートアップのデザイン業務に従事。2014年から株式会社ベーシックにてCDO(最高デザイン責任者)を務め、デザインとプロダクト開発をリード。2018年にスタートアップ支援を行う株式会社Nextstageを設立し、2023年にはデザイン定額サービス「ホームページヒーロー」を提供する株式会社MakeHEROを設立。2024年9月よりクロステック・マネジメントにジョイン。
自由な働き方と「ヒーローを増やす」使命が導いたキャリア
──これまでのご経歴について教えてください。
大学では建築を学びましたが、卒業前にバイク事故で入院したため、就職活動はしませんでした。一般的なゼネコンや個人事務所での働き方は激務であり、20代では評価されにくいと感じていました。その頃、成長著しいインターネットの世界に面白さを感じ、フリーのWebデザイナーという自由な働き方に憧れてITの道へ進みました。
最初はmixi経由で出会った会社で業務委託として1年ほど働き、そこから本格的にフリーランスとして仕事を受けるようになりました。その後、当時1年ほどフリーランスとして関わっていた株式会社ベーシックから誘われ正社員としてジョインしました。ベーシックではCDOとして2〜3年在籍し、その後独立・法人化しています。
法人化した理由は、ベーシックを辞めるタイミングと、自分でもサービスを作りたいと思った時期が重なったからです。そこからスタートアップを次のステージへ支援する株式会社Nextstageを設立し、さらに2023年にはデザイン定額サービス「ホームページヒーロー」を提供するMakeHEROを立ち上げました。
僕の会社のミッションは「ヒーローを増やす」ことです。誰かに感謝されることや成果につながる瞬間って、すごく楽しいじゃないですか。それを自分も増やしたいし、周りにも増やしたい。それで、得意領域で誰かの次のステップを後押しできる事業を作ったという流れです。不得意なことでも「とりあえず断らない」ことを決めていて、そうやって挑戦してきたことで得することが多かったなとも思います。とにかく、ヒーローになりたいし、ヒーローを増やしたい。そこに尽きますね。
恩返しから始まった、新たな教育への挑戦
──今回、クロステック・マネジメントにジョインした理由を教えてください。
きっかけは、現COOの金さんから声をかけてもらったことです。2024年9月からジョインしましたが、最初の相談は「教材版GitHub※のモックを作れる人を探している」という内容でした。「こういうツールを使えば作れそうなんだけど…どう?」と相談され、僕は「是非やらせてください」とお応えしたのが始まりです。
※GitHubとは、エンジニアがプログラムや設計の履歴を共有し、複数人で共同開発するためのプラットフォーム
金さんとは2014年前後に一緒に仕事をして以来、独立後も多くのサポートを受け、親交を深めてきた先輩です。
助けてもらった人たちに恩返ししたいという思いは常にあり、困っていると言われれば、内容にかかわらず参画を決意することは自然な流れでした。
──最初から教育領域に興味があったんですか?
最初は特に強い興味はなかったです。モックを作って動くものを見せられればいいかなくらいで。ただ、美大出身なので芸術教育への興味はありました。プロジェクトが動き出してからは、学園全体のミッションやビジョンを理解した上で、何を作るべきかを僕自身が考えて提案できるようになった。それが自分の得意領域でもあり、もっと関わりたいと思うようになりました。
クロステック・マネジメントや瓜生山学園の掲げる理念である、芸術立国や世界を平和にするという大きなビジョンに対して、長期スパンでプロダクトを作れる環境がある。半年・1年で終わるプロジェクトとは違う視点が求められ、それが面白いと思いました。これは自分がパフォーマンスを出せる領域だと思い、ジョインする流れになりました。
教材と学びの未来を形にする
──現在はどのような業務を担当されていますか?
現在は、教材版のGitHubとも言える知のプラットフォーム「Material Hub」のPO(プロダクトオーナー)を担当しています。最初は、デザインもできる、フロントも書ける、要件定義も担える立場として、少人数で早く動くものを作りたいというニーズに応えて、実際に動くプロトタイプを作っていました。
教材のデジタル化がもたらす価値は大きいと思っています。同じ内容を毎年バラバラな形で作って授業するのではなく、質の高い教材を共通化・更新可能にしていくことで、教育の質を平準化できる。さらに、金銭的な理由、地理的な理由、身体的な理由(視覚・聴覚など)で教育機会を得られなかった人にも、学びの場を広げられる。これは瓜生山学園が掲げる芸術立国にも直結する社会的価値だと思っています。
最初の3ヶ月で、チームが頭の中で共有していた抽象的なイメージを、動く形でアウトプットしました。その後は、必要なチーム構成や連携設計、他の大学DXプロダクトとの繋ぎ込みを整理し、Material Hubを起点に大学全体のDXをどう進めるかという視点も担当しています。現場から少しだけ離れつつ、俯瞰して見られる役割も求められていて、今はその体制づくりに取り組んでいるところです。
自分の強みを活かし、ヒーローとして挑戦できる環境
──クロステック・マネジメントで働く中で、どのような点にやりがいを感じていますか?
一番大きいのは、個々の裁量が大きく、自分の得意を最大化しやすい環境であることです。多くの職場では、「これできそう?」「こういうのお願いできる?」と、与えられた選択肢の中から自分の役割を選ぶことが多いですよね。でもクロステック・マネジメントには、やりたいならやってみたら?という文化があって、実際に手を動かして初めて自分にはこんな得意があったんだと気づけるんです。
僕自身、PO業務は受託ではほとんどやらないし、正直「面倒くさい」と思ってきたタイプなんですが(笑)、やってみると、ステークホルダーのニーズと実際に作るべきものの要点を先回りして整理することが自分の強みだったと分かった。年齢を重ねるほど自分の強みはこれと決めつけがちですが、あえて新しい領域に飛び込むことで新しい気づきが得られる。そこがクロステック・マネジメントの魅力だと感じています。
──その環境の中で、あなた自身はどのような姿勢や価値観を大切にして働いているのですか?
僕には個人的なミッションとして、「ヒーローになる」というテーマがあります。
幼い頃から仮面ライダーや戦隊シリーズ、ウルトラマン、アンパンマンなど、いわゆるヒーローものが好きでした。その中で僕があえて「ヒーロー」という言葉を使う理由は、ヒーローには自己犠牲が伴うからです。ただ得意なことをしてカッコつけるだけではなく、つらいことや難しいことでも誰かのために自分を差し出す存在。アンパンマンはその象徴ですよね。自分の体をちぎって人を助けるという究極の自己犠牲。
アンパンマンの作者・やなせたかし先生は「人生は喜ばせごっこ」と言っています。人を喜ばせれば自分の生きがいが広がり、その喜びが周りに伝播していく。僕はこの言葉に深く共感しています。だからこそ僕は、自分がヒーローになること、そしてヒーローを増やすことをミッションにしています。クロステック・マネジメントや瓜生山学園では、そのミッションと組織の方向性が自然に重なる瞬間が多い。それが、いま僕がここで働く大きなやりがいになっています。