このストーリーは、unnameの代表とメンバーが、事業、マーケティング、キャリア、ビジネスなど、様々なテーマについて思考していくPodcast番組「累積思考FM~明日役に立たないラジオ~」を記事にしたものです。
ベトナムで感じた2つの「壁」
弘松:2024年から始まった「累積思考FM」というポッドキャストの文字起こし記事、第二回目になります。「累積思考FM」とは、unname代表取締役・宮脇啓輔とデザイナー・弘松陸の対話を通じ、unnameの価値観をゆるく伝えていくポッドキャストです。
私たちは先日ベトナムに出張に行きましたが、宮脇さんの方から出張の目的について教えていただけますか?
宮脇:今回のベトナム出張の主な目的は、弊社のマーケティング支援サービスに関連するものでした。具体的には、我々がよく使うフレームワークやアウトプットの一部をツール化しようという計画があり、その開発をベトナムのオフショア開発会社にお願いすることになったんですね。そのキックオフミーティングが主な目的です。
ベトナムは近年、IT人材の豊富さと技術力の高さで注目されています。また日本との時差も少なく、コミュニケーションがとりやすいということも大きな理由の一つでした。2月が旧正月ということで、現地の文化に触れる良い機会にもなると考えました。
弘松:そうだったんですね。実際にキックオフミーティングを行ってみて、どのような印象を持ちましたか?
宮脇:予想以上に難しさを感じました。主に二つの壁がありましたね、一つは言語の壁で、もう一つは前提知識の壁です。
まず言語の壁について。通訳の方に入っていただきましたが、それでも コミュニケーションにはかなりの時間がかかりました。日本語で話した内容を通訳の方が理解できる形で伝えなければならず、それだけでも一苦労でしたね。
そして前提知識の壁というのは、例えば「カスタマージャーニー」や「ペルソナ」といった、日本のマーケティング業界では当たり前に使われている用語が、全く通じなかったんですね。
日本人同士で何気なく使っている言葉でも、文化や背景が異なる人には全く伝わらない。「これってわかりますか?」と通訳の方に確認するたびに時間がかかり、プレゼンがスムーズに進まなかったです。
弘松:そういった経験から、何か学びはありましたか?
宮脇:たくさんありました。まず、事前準備の重要性を痛感しました。もっと参加者の背景や知識レベルを事前に確認し、それに合わせた資料を用意すべきだったと反省しています。また、スライドの枚数を減らして、より簡潔に伝えることの大切さも学びました。この経験は、今後の海外展開を考えるうえで非常に貴重なものになると思います。
ベトナムの平均年齢は30歳(日本は48歳)
弘松:ビジネス面以外で、ベトナムの文化や経済について印象に残ったことはありますか?
宮脇:たくさんあります。まず驚いたのは、街の活気です。特に若い人が多いことに驚きました。ベトナムの人口は約1億人で、平均年齢が30歳なんです。対して日本は48歳くらいですよね。この差は本当に驚きでした。
弘松:街の雰囲気も全然違いましたね。
宮脇:街を歩いていても、エネルギーを感じました。それと、経済の勢いも感じました。例えば、銀行の金利が5%もついているんです。
日本だと0.1%にも満たないのに、ベトナムでは5%。これだけでも経済の勢いの違いを感じました。ほかには、交通事情も印象的でしたね。バイクが非常に多くて、しかも信号無視が日常茶飯事。でも、みんな徐行しているので、意外と事故は少ないらしいんです。
弘松:日本とは全然違う交通文化でしたね。
宮脇:最初は怖かったですが、慣れてくると不思議と自然に感じられるようになりました。
あと、個人商店が多いのも印象的でした。例えば一つの通りを歩いていると、豆腐屋さん、八百屋さん、魚屋さんなど、小さな個人商店が並んでいるんです。日本の昔の商店街のような感じですね。
そして、そういった店の上の階に人が住んでいるというのもよく見かけました。職住近接というか、生活と仕事が密接に結びついている感じがしました。
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日本の「当たり前」、世界の「すごい」
弘松:ベトナムでの経験を通して、逆に日本への気づきはありましたか?
宮脇:ありますねえ。まず、日本の製品やブランドの強さです。ベトナムのスーパーマーケットに行くと、キユーピーのマヨネーズやドレッシング、日清やエースコックのカップラーメン、ヤクルトなど、日本の製品がたくさん並んでいたんです。
弘松:日本製品の浸透はすごかったですよね。
宮脇:しかも、ベトナムの人々の多くが日本のことを好意的に見ています。日本のアニメや漫画も人気があるようで、例えば「鬼滅の刃」なんかも有名だそうです。バイクはほとんどがホンダ製で、車もトヨタが圧倒的に多かったです。
弘松:なるほど。日本にいると気づきにくいことかもしれませんね。
宮脇:日本にいると当たり前に思っていることが、実は世界的に見るとすごいことだったりする。この経験を通して、日本の強みを再認識しました。
弘松:今回の経験から、仕事に活かせそうなことはありますか?
宮脇:いくつかあります。まず、グローバルコミュニケーションの重要性ですね。言語の壁だけでなく、文化や前提知識の違いを乗り越えるコミュニケーション能力が必要だと感じました。
若い世代が多い市場特性を理解することの重要性も感じました。ベトナムのような新興国市場では、若者向けのマーケティングが特に効果的かもしれません。そして、日本のブランド力の強さを再認識したことで、それを活かしたグローバル戦略の可能性も感じました。
弘松:具体的に考えたこととかていますか?
宮脇:例えば、日本の「品質」や「信頼性」といったイメージを前面に出したブランディングや、日本の文化やライフスタイルを取り入れた製品開発などが考えられます。また、若い世代をターゲットにした日本のポップカルチャーとのコラボレーションなども面白いかもしれません。
一方で気をつけなければならないこともあります。例えば、現地の文化や習慣を尊重することの重要性です。日本のやり方をそのまま持ち込むのではなく、現地に合わせたアプローチが必要だと感じました。
オンラインコミュニケーションには改善の余地がある
弘松:今回のベトナム出張を経て、今後の海外戦略とか考えていますか?
宮脇:今回のツール開発プロジェクトを成功させることはもちろん、将来的にはベトナム市場向けのサービス展開も視野に入れています。
ベトナムの急速な経済成長を考えると、大きな可能性を感じます。ただ、先ほども言ったように、現地の文化や商習慣をしっかり理解した上で進めていく必要があります。
次に考えているのは、他の東南アジア諸国への展開です。例えば、インドネシアやタイなどにも興味があります。それぞれの国で経済状況や文化が異なりますが、ベトナムでの経験を活かせる部分も多いのではないかと思っています。各国の特性を理解しながら、徐々に展開していければと考えています。
また、日本企業の海外進出支援というサービスの可能性も感じています。今回の経験で、海外展開する際の難しさや注意点を身をもって感じましたから、それを活かしたコンサルティングサービスなども考えられるかもしれません。
ただ、これらの戦略を実行に移すには、まだまだ準備が必要です。特に人材育成が重要だと考えています。グローバルなビジネス展開には、語学力はもちろん、異文化理解力やコミュニケーション能力が不可欠です。
弘松:なるほど、いいっですね具体的にどのような取り組みを考えていますか?
宮脇:まず、語学研修の強化を考えています。英語はもちろんですが、ベトナム語や他の東南アジアの言語にも触れる機会を増やしたいと思います。また、海外からのインターンシップ生の受け入れや、社員の短期海外派遣プログラムなども面白そうですよね。
弘松:なるほど、座学だけでなく実践的な経験ですね。
宮脇:そうです。机上の学習だけでは得られない経験が、海外ビジネスには必要だと感じています。それと、WEB上でのグローバルコミュニケーションについてもスキルアップが必要だと考えています。
例えば、オンライン会議ツールの効果的な使用方法や、異なるタイムゾーンでの協業のコツ、文化の違いを考慮したメールやチャットでのコミュニケーション方法など。今回の出張でも、事前にもっとオンラインでのコミュニケーションを重ねていれば、対面でのミーティングがよりスムーズに進んだかもしれません。
日本とベトナムは、強みを活かしあえる
弘松:ベトナムのビジネス文化において、日本との違いを特に感じた部分はありますか?
宮脇:はい、いくつか印象的な違いがありました。まず、時間に対する感覚の違いが大きいと感じました。日本では時間厳守が当たり前ですが、ベトナムではもう少し柔軟な感覚があるようです。例えば、ミーティングの開始時間が少し遅れても、みんなあまり気にしていない様子でした。最初は戸惑いましたが、これも文化の一つなのだと理解するようになりました。
コミュニケーションのスタイルも違いを感じました。日本では「察する」文化がありますが、ベトナムではもっと直接的なコミュニケーションが一般的なようです。例えば、ミーティングの中で意見を求められた時、日本人は遠慮がちに話すことが多いですが、ベトナムの方々はもっと積極的に自分の意見を述べていました。これは新鮮でしたね。
意思決定のプロセスにも違いを感じました。日本では集団での合意形成を重視しますが、ベトナムではより迅速な意思決定が行われる印象を受けました。違いを理解するだけでなく、それぞれの文化の良い点を取り入れていくことも大切だと思います。
弘松:ベトナムのIT人材について、どのような印象を持ちましたか?
宮脇:非常に優秀だと感じました。特に若い世代のIT人材の層の厚さに驚きましたね。新しい技術に対する吸収力も高いと感じました。
我々が提案した新しいフレームワークや技術に対して、すぐに理解し、さらに改善案を提示してくれたり。彼らの多くが複数のプログラミング言語を使いこなし、最新のテクノロジーにも精通していました。
ただ、技術力だけでなく、ビジネスへの応用力も重要です。その点では、日本の「モノづくり」の精神や、顧客志向のアプローチを伝えていくことも大切だと感じました。
日本とベトナムの人材が協力することで、お互いの強みを活かせると考えています。例えば、日本側がビジネス要件の定義や品質管理を担当し、ベトナム側が実際の開発を担当するといった役割分担です。
弘松:そういった協業モデルは、今後ますます重要になりそうですね。
宮脇:はい。ただ、そのためには言語の壁や文化の違いを乗り越える必要があります。今回の経験を通じて、技術面だけでなく、グローバルなチームマネジメントのスキルも磨いていく必要があると感じますね。
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