設立から8期目を迎え、SNS支援からショートドラマ、イベントプロデュースへと事業を拡大するmovel(ムーブル)。今回は、AI技術が急速に普及する今、クリエイティブ集団としての組織の価値をどう捉え、未来に向けて歩んでいくのか、共同代表の河合・内堀と、クリエイティブプロデューサー 日吉によるインタビューをお届けします。
AIの浸透によって問われるクリエイティブの価値
ーAI技術の進化により、誰もが一定のクオリティのものを作れる時代が到来する中で、movelの強みや価値とは改めて何でしょうか。
河合:今のところ、ネット上の情報やAIの回答は「ある程度の正解」に過ぎず、例えば「今の若い世代が友人同士で今どんな感情を共有しているか」といった生のインサイトは存在しません。我々の強みは、このフレッシュな生の声に常にアクセスしながらクリエイティブに反映できることです。AIが提示するクリエイティブやトレンドが、本当に今の空気感に合っているかを選別する「感性」や「判断軸」は、今後より一層求められると考えています。
日吉: パートナー企業様とのやりとりの中で、SNSの展開やプロモーション施策において『正解が見つけられない』と方向性に迷われる場面が多々あります。そうした際、データによる数値的な裏付けだけでなく、『こういう動画なら、こういう理由で見たくなる』という若い世代のリアルな声をもとに、AIでは汲み出せないニュアンスを捉えて「これなら届く」と自信を持ってお伝えできる。この環境が組織内にあることは、我々の大きな強みです。
目指すのは、人とAIの「ハイブリッドによる共創」
ーAIの活用はどのように進められていますか。
内堀: 大きく「業務効率化」と「クリエイティブの生成・拡張」の2軸で取り組んでいます。社内にAI特化のチームを新設し、外部のAI先駆企業の専門家から監修を受けながら、AI導入によるデータ活用や業務効率化、生成AIを活用した映像制作の工数削減、既存データの二次編集によるアウトプットの多様化など、先行事例の創出に挑戦しています。
私たちは、 現時点で「AIのみで作ったものが最適」とは考えていません。あくまで「人とAIのハイブリッド」による制作を試み、最も質の高いクリエイティブを提供できる形を追求しています。制作の効率化を目的にAIの活用が加速する一方で、それに頼り切れば、どこかで見たような同質化されたコンテンツが氾濫し、将来的にプラットフォーム側で規制される可能性すらあると考えています。だからこそ、作り手の意図や熱量が込められた「人間味のあるクリエイティブ」こそが、見る人の心を動かし、最終的に最も求められる確かな価値になるはずです。
ーハイブリッドによる共創はどのような付加価値をもたらすのでしょうか。
内堀: 例えば、AIによる二次生成や二次編集を活用することで、従来よりもコストを抑えて倍の数のクリエイティブを制作できたり、同じ予算内でより多くのバリエーションを提供できるようになります。効率化によって生まれる時間を活用して、パートナーとの細部にわたる議論をしたり、アウトプットの質を人的に磨き上げたりすることで、パフォーマンスを大きく引き上げられると確信しています。
河合: AIを活用したクリエイティブにもトレンドがあります。movelのSNSクリエイティブの知見を活かして「SNS×AI」の勝ち筋を判断することで、AIを活用したコンテンツが溢れる中でも、トレンドの起爆剤となるようなクリエイティブを生み出すことを武器に、パートナーの支援ができるとも考えています。
AIには代替できない「作り手の思い」や「リアルの手触り」
ー AIの進化であらゆることの効率化が加速する今、 組織として大切にしていることは何でしょうか。
日吉: クリエイターにとって、ツールによる生産性の向上は心強い助けにはなります。でも、クリエイティブの本質には、必ずといっていいほど「なぜその表現を選んだのか」という独自の設計思想や、作り手の体温が宿っていると思います。クリエイティブチームを率いる立場としては、ただ表面的に完成されたクリエイティブを届けるのではなくて、その根底にある意図や人間らしさを言葉や形にして、相手に届ける努力を怠らない姿勢を大切にしていきたいです。
内堀:AIという新技術を前にしても、「ワクワクと危機感」の間で葛藤しながら、それを自在に操る術を模索し続けてほしいですね。そのチャレンジと探究心こそが、AIとのハイブリッドな共創の鍵を握っていると思います。
ーAIとの共創を推進しつつ、「リアルでの挑戦」にも積極的なのはなぜでしょうか。
内堀: ビジョンである「for one heart m∞ving (感動を生み出し続ける)」を、より手触り感のある体験として形にするため、今年5月に長野県御代田町で「SCRAMBLE FES 2026」というリアルのカルチャーフェスイベントを開催しました。デジタルシフトが極まる今だからこそ、五感で感じて共有する体験価値や、新しいカルチャーを創出するチャレンジをしたかったという狙いがあります。
河合: このプロジェクトは、我々が「プロデュース集団」として進化を遂げるための試金石でもありました。7月には、表参道にて「好きしかない展」というZ世代の価値観を投影した独自の企画展も開催しています。オンライン中心の活動から一歩踏み出し、リアルの場での感動創出に取り組むことで、movelのメンバーの中に「目の前の人を喜ばせるための想像力と行動力」を自ら育み、「人間としての魅力」を磨いていくことに取り組んでいます。
「会いたくなる・頼みたくなる集団」を目指して
ー movelが描く未来の組織像はどんなものでしょうか。
内堀: 究極的には、人とAIの共創を通じてきちんと成果を出すことが私たちの使命ですが、技術革新が進み、企業間のサービス差が縮まる状況において、最後に選ばれる決め手は「一緒にチャレンジしてみたい人かどうか」だと考えています。世の中が効率化に向かう中、私たちはあえて100人規模を維持して、「人が価値の会社」であることを大切にしています。「この分野はmovelのあの人に頼もう」「またmovelのメンバーに会いたい」と思っていただけるような、専門性と熱意あふれる集団を目指していきます。
日吉: デジタルでのやり取りに慣れている若い世代にとって、リアルなコミュニケーションにも重きをおくmovelの姿勢は少しハードルが高い部分もあるかもしれません。でも、人間らしい関わり合いの中にこそ、AIには真似ることができない「共感」や「インサイト」の種が隠れていると思います。これからもたくさんの若い世代の皆さんと共に、人との繋がりの温かさやその価値を肌で感じながら、新しい時代のクリエイティブ作りに繋げていきたいです。
河合:どんなに技術が進化して新しいツールが出てきても、メンバーたちには変わらずにそれぞれの「好き」を武器に輝いてほしいと思います。「好き」を強みに、パートナーの皆様とは単なるビジネスを超えて、強固な絆を築いていきたいと考えています。一人ひとりの魅力や個性を解放して、心揺さぶるクリエイティブを追求し続けることで、変化の激しい時代を一緒に切り拓いていけると信じています。
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