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一皿に込められた可能性の追求──シェフ・杉浦 仁志、ヴィーガンに挑む

「ヴィーガン」とは肉や卵など動物由来の食品から毛皮の衣類まで、動物からの搾取を避けるライフスタイルのこと。食の多様性や持続可能な地球環境を守る観点から、日本でも徐々に注目を集め始めています。今回は日本におけるヴィーガン料理提供の第一人者・杉浦 仁志にフォーカスし、彼の食に対する想いをご紹介します。

健康・食の多様性・地球環境のために

日本におけるヴィーガンは、昨今のインバウンド政策や環境保護の観点から、国際的な食文化のひとつとして少しずつ認知されてきました。しかし、まだまだ関心が薄い現状があります。お客様一人ひとりの健康を提案する上で、他国の食文化に対する理解や、環境への配慮は不可欠です。そして、現在広がるヴィーガンムーブメントにおいて不断の挑戦を続けているのが、LEOC(レオック)のエグゼクティブシェフ・杉浦 仁志になります。

私たちLEOCは食と健康の分野のグローバル企業として、国際社会に対応し、地球環境に配慮したフードサービス事業を展開してきました。社員食堂や病院、老人ホーム、アスリート施設や保育園など、食事提供を行う事業所は全国2,300か所以上に拡大。あらゆる年代ですべての方々の健康的な生活をサポートしています。

国際社会では欧米を中心に、健康や美容のためだけでなく、地球環境の持続可能性という観点からもヴィーガンを取り入れる動きが活発化してきました。LEOCでもヴィーガンをはじめとする新たなメニュー開発に力を入れており、社員食堂でのヴィーガンデリやハラールメニュー提供など、ますます多様化・国際化する食のニーズへ対応しています。



杉浦が貫き続ける信念

杉浦は東京・大阪のレストランで研さんを重ねた後、2009年に渡米。

これまでエミー賞授賞式やニューヨーク・ティファニー本店でのケータリングを担当し、2014年・2015年には、ニューヨークで開催された国連の日本政府代表レセプションパーティーでエグゼクティブシェフを務めました。国内外での活躍が認められ、『ザ・ベスト・シェフ50』や『ベジタリアンアワード2019 料理人賞』など、数々の賞を受賞しています。

杉浦は2019年に、エグゼクティブシェフとしてLEOCに入社。現在はLEOCのモデル店舗を構築する専門部署・エクセレンス本部に所属しながら、健康につながる食のプロデューサーとして料理開発の現場で活躍の場を広げています。

そんな彼の食に対する信念は、非常にユニークなものです。

杉浦 「僕の料理人としての信念に、『アーティストとして、高級で芸術的な料理をつくる人』だけではなく『食の可能性を世の中に広げる料理人』でありたい、というものがあります。

一般的に "良い料理人 ”とは、料理を通して自分の世界観の表現をするアーティストだと考えているんです。そこに魅了され、賛同していただいたゲストがファンとなって、同じ世界観を共有していくような。

でも僕は、その世界の中に食の可能性を閉じ込めてしまうのではなくて、それをもっとたくさんの人に伝えていきたいんです。

そしてもうひとつの信念が、『食を通じて社会に貢献する』ということです。国産野菜の需要拡大やレストランでの国際的な食文化の認知向上など、常に社会貢献を意識しながら取り組んでいます。 食による認知症予防や健康状態改善のためのメニュー監修など、食と医療のコラボレーションもそのひとつです」

彼にとって食は、食べる人やその空間に居合わせる人が楽しむだけのものではありません。一皿の食事に込められた無限の可能性を大きく広げ、ひとりでも多くの人に伝えていくことが、彼が自らに課したミッションなのです。



ヴィーガンは「普通のこと」──アメリカ時代の原体験

杉浦はなぜ、ヴィーガンに注目したのでしょう。

杉浦 「ヴィーガンはまだ 80年くらいしか歴史がない、新しいライフスタイルです。ただ、その人口はヨーロッパやアメリカで伸び続けています。

もっとも、ヴィーガンを実践しているといっても、それぞれ異なる理由やきっかけがあるんですね。健康や美容だけでなく、宗教上の戒律や政治的な信念からヴィーガンになる人もいます。その部分は非常に複雑で、日本での環境はまだ整っていません。

そこで、僕自身が発信源となって、そういう国際的な食文化が伝わりやすい環境を整えていきたいと思っています」

ヴィーガンの背景には、日本では中々馴染みがないほどの社会的要素が絡み合っています。食に込められた深い意味を伝えたい杉浦にとって、ヴィーガンはこれ以上ない題材でした。

こうした彼の信念と実力をつくり上げたのが、10年前の渡米経験です。

杉浦 「2009年に渡米しました。目的はさまざまなお客様をもてなす技術を磨いたり、最先端の知識を得たりすること。多様な料理に対応する技術と知識を得るには、フランスやイタリアではなく、異文化が集まっているアメリカしかないと思っていたんです。やっぱりアメリカの食文化は非常に進んでいて、国際的なバリエーションのある食事を学ぶのには非常に適した国でしたね」

日々実力を磨く中、彼は徐々にアメリカの食の多様性に魅せられていきます。

杉浦 「ニューヨークのレストランで勤めていたとき、普通にベジタリアンのオーダーが通っていたんですよ。最初は戸惑いましたし違和感もありましたが、次第に環境に慣れていく中で、ベジタリアンやハラルといった国際的な食習慣のルールを、身をもって学ぶことができました。

食文化への魅力を感じたというよりも、これが国際社会で生きていく上で、ごく普通のことなんだと認識できたんです。ヴィーガンは特別なものでなくて、シンプルに選択肢のひとつにあるだけだなと」

杉浦自身は、ヴィーガンではありません。しかし、多民族国家・アメリカで腕を磨くうち、多様な食習慣が共存し、誰もが食べる喜びを感じられる環境のすばらしさに深く飲み込まれていったのです。




最後に語る、ヴィーガンの未来

杉浦は、少しずつ日本にも広まり始めたヴィーガンの未来について、どのように考えているのでしょう。

杉浦 「日本でヴィーガニズムを実践するには、まだハードルが高いと感じています。

しかし、家畜の飼育・加工が気候変動に影響を及ぼしていることや、健康な食生活への関心から、大企業が次々に対応している現状があります。昨今のインバウンド需要拡大や、東京オリンピックをはじめとした国際イベントの開催、海外アーティストの来日など、ヴィーガンの普及には追い風の状況が続いているのではないでしょうか。

ただ、単に欧米の真似をするだけでは一過性のブームになってしまうかもしれません。でも日本には優れた和食の文化があって、ヴィーガンに当てはまるものも多いんですね。そういう日本独自のスタイルを確立していければと思っています」

一方で「ただ厳格なヴィーガニズムを実践すれば良いという問題でもない」と杉浦は語ります。

杉浦 「現代の食事において、動物由来の成分を完全に避けることは非常に困難です。だからといって、単に動物由来の食事を非難するのではなく、しっかりと理解した上で可能な限りヴィーガンへの取り組みが支持されていくことが重要です。あくまでヴィーガンは特別なことでなく、用意されるべきひとつの選択肢なんですよ。

ヴィーガンは健康にも紐づくものですし、 LEOCがヴィーガンの正しい認識を発信し、国際社会に対応できるような社員食堂でのフードプロモーションや、レストランクリエイトを行っていくのが大切ではないかと思っています」

杉浦は現在の状況と向き合い、今後、自身がやるべきことがあると言います。

杉浦 「僕自身、いろいろな企業とのコラボレーションやプロモーション活動をさせていただいています。それは僕が、食と文化を伝えるハブとして自分自身を捉えているからです。

先日いただいた『ベジタリアンアワード2019』は、ヴィーガンの新しい市場開拓への貢献に対する功績として受賞させていただきました。賞の受賞は素直に嬉しく、受賞に対する責任も強く感じました。

これまでさまざまな経験と機会を与えてくださった方々に対して感謝し、その恩返しをしていきたいです。これからも食に関わる社会問題へアプローチしながら、食の未来をつなぐ活動へ、もっとたくさんの方々とチャレンジし続けたいと思います」

想いと経験を生かすため、杉浦が次のステージに選んだのが給食という世界。前述のヴィーガンデリ提供も、杉浦の所属するFMD本部が中心となって行った企画でした。彼の中には、LEOCを舞台に実現したいアイデアが、まだまだたくさんあるといいます。

杉浦の挑戦はまだ始まったばかり。私たちはこれからも彼とともに、食の持つ無限の可能性と、国際的な食文化の発展を追求し続けていきます。

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