2024年12月16日に投稿された記事です。
この記事は dotD Advent Calendar 2024 16日目の記事です。
今年の10月に、Claudeでお馴染みのAnthropic社から、AIがPCを操作できる「Computer use」のパブリックベータ版が発表されました。これはClaudeのLLM機能で、人がするのと同じようにPCの画面を認識しながらカーソルやキー操作を行い、インターネット検索やエクセルの編集などのタスクをこなすことができ流というものです。
この「AIがPCを操作できる」という技術は、一見するとRPAのような単なる自動化の一環のように思えます。ですが、この技術の少し未来を想像すると、ビジネスにおける非常に大きな可能性があると考えることができます。つまり、日常的な業務の効率化にとどまらず、我々の負担を軽減し、創造的なタスクに集中できる環境を提供するなど、ビジネスにおいて大きな変革をもたらす可能性を秘めています。
本記事では、AIの進化の理解を通して、この技術が私たちの仕事にとって今後どのように活用できるかを考えるきっかけとなれば幸いです。
目次
- RPAと何が違うのか?
- AIがPC操作を可能にすることで何が変わるのか
- ステップ1: 単純な繰り返し作業の自動化
- ステップ2: 高度なPC操作と意思決定支援
- ステップ3: リアルタイムでの協調作業
- ステップ4: 自律的な業務遂行
- ビジネスモデルの変革と新たな可能性
- まとめ
RPAと何が違うのか?
では改めてRPAと何が違うのか?ですが、このRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、定型的なルールに従った作業を自動化するツールで、特定の手順を繰り返す作業には優れています。一方でAIはというと、その枠を超え、状況を理解し、より柔軟に対応することができます。
RPAは業務の自動化において非常に有効で、反復作業を効率化することができますが、その範囲はルールベースのタスクに限られます。これに対して、AIは人間のように学習し、状況に応じて最適な判断を下すことができるため、業務の自動化範囲が広がります。
例えば、顧客からの問い合わせがあった場合、RPAは定型文を送ることができますが、AIは問い合わせ内容を理解し、顧客のニーズに合った具体的な回答を提供することができます。
Web情報を収集する場合も例に挙げると、RPAは「ブラウザを開く→URLを入力→ 〜」と、タスク定義をする必要がありますが、AIは「この商品の価格を主要サイトから集めて」と指示するだけで直接Webから情報を取得し、整理してくれます。といった具合です。
AIは文脈を理解し、より柔軟に対応できる点で、これまでの自動化技術とは一線を画しています。RPAが効率化を追求するのに対し、AIはさらに高度なレベルでの適応力と学習能力を持ち、企業のニーズに応じて進化していくことができると言えますね。
AIがPC操作を可能にすることで何が変わるのか
ここからは、Claudeのcomputer useという考え方が今後のビジネスにどうのような影響を与え得るのかについて、いくつかのシナリオを通して考えてみたいと思います。
ステップ1: 単純な繰り返し作業の自動化
先ほどRPAとの違いを書いたものの、RPAに限らずAIも単純な繰り返し作業を自動化することが得意です。例えば、メールの送受信、スケジュールの管理、ファイルの整理といった定型的な業務ですね。このような手間のかかる単純作業はをAIが業務を担当することで、従業員は煩雑なルーチンタスクから解放され、付加価値の高い業務に専念できるでしょう。
AIは人と違い疲れを知りませんから、疲労や集中力の欠如などから起きるヒューマンエラーはないため、繰り返し系の作業に対する業務品質の向上とミスの減少も期待できます。
ステップ2: 高度なPC操作と意思決定支援
次第にデータが蓄積されると、AIがそれら大量のデータを理解し、そこから重要なパターンを見つける能力を学習していきます。すると、AIはデータを分析し学習した結果に基づいてユーザーに最適な行動を提案したり、意思決定をサポートしたりするようになっていくと考えられます。
例として、AIが過去の売上データを分析し、需要予測することを考えてみます。AIは蓄積された過去の販売データを基に、その販売傾向から在庫が不足しそうなタイミングを見つけ、まるで同僚や部下があなたに提案してくれるかのように事前に補充を提案してくれます。それも最適なタイミングで。
あなたは在庫不足や過多に悩まされることなく、在庫が最適化され、コストも削減できることでしょう。
あ、AIがPCを操作しながらこれらのタスクを実施していると想像してくださいね。
ステップ3: リアルタイムでの協調作業
処理速度や判断能力がさらに進むと、AIは人間の会話や状況を瞬時に理解し、その場で必要な情報を提供したり、タスクを進行する能力を発揮できるようになるでしょう。すると、AIがリアルタイムでPCを操作し、人間と協力して業務を進める段階に移ります。この段階では、AIが会議やプロジェクトの進行中にその場でサポートすることで、チーム全体の効率を大幅に向上させることができます。
例えば、会議中にAIが発言内容をリアルタイムで分析し、関連する資料を即座に提示するシーンを想像してみてください。会議では、多くの情報が飛び交うため、必要なデータをすぐに取り出すことが難しいこともあります。AIがこの役割を担うことで、過去の経緯と発言内容とあなたの意図に基づいて必要な資料やデータをすぐに提供できるため、意思決定のスピードと精度が向上するでしょう。
この段階では、AIがプロジェクトの補佐役として機能し、リアルタイムでメンバー間のコミュニケーションを支援します。これにより、チーム全体が効率的に協力できる環境が整い、プロジェクト全体の生産性が大幅に向上します。AIのサポートは、単なる業務の自動化にとどまらず、人間との協力を通じてより良い結果を引き出すことに貢献できると考えられます。
ステップ4: 自律的な業務遂行
業務経験が積み重なると、これまでに学んだことを活用し、まるで経験を積んだ社員のごとく独自に判断して行動する能力を獲得できると考えられます。その結果、AIが自分でコンピューターを操作し、複数のタスクを同時に進めることができる段階に進みます。
例えば、顧客が過去に購入した製品に基づいて、その顧客にとって有益な情報や関連する製品を提案し、メールを自動で送信したり、面会のスケジュールを自動で調整したりすることができるでしょう。
新人社員がベテラン社員に成長するようなイメージですね。AIは人間のパートナーとして自律的に行動し、より高度な業務の遂行を支援する姿が見えてきます。
ビジネスモデルの変革と新たな可能性
最終的には、AIが業務を自律的に行うことで、企業のビジネスモデルそのものが大きく変わることが予想されます。従来のような縦割りの組織構造から、より柔軟でフラットな組織に変わるかもしれません。AIの自律的な行動によってリアルタイムに情報を分析し即座に判断を下せることによって、上司の判断や部門間調整の必要性がなくなり、意思決定が迅速化し、組織構造が薄れていく可能性があります。
またAIの活用によって、プロジェクトごとに必要なスキルを持ったメンバーを適切に集め、効率的にチームを編成することができるようにもなるでしょう。
例えば、AIが各従業員のスキルやパフォーマンスをリアルタイムで分析し、それに基づいてプロジェクトに最適なメンバーを自動的に割り当てることを想像してみてください。AIは従業員の過去の業務履歴や評価データ、スキルセットを総合的に分析し、プロジェクトのニーズに最も適した人材を選びます。これにより、プロジェクトチームは最適なメンバーで構成され、成果を最大化することができます。
従業員は繰り返しの多いルーチンタスクから解放され、より戦略的で創造的な業務に集中することができます。例えば、AIが日常的な業務をサポートすることで、従業員は新しいビジネスアイデアを考える時間を増やすことができ、企業のイノベーションが促進されます。また、AIは組織内のコミュニケーションを効率化し、部門間の壁を取り払うことが可能です。これにより、より協力的で柔軟な働き方が実現し、組織全体の生産性が向上します。
このように、AIは単に業務を自動化するだけでなく、企業文化や働き方そのものを変革する力を持っています。AIをうまく活用することで、企業はより効率的で創造的な環境を作り出し、競争力を高めることができるのではないでしょうか。
まとめ
AIによるPC操作の技術は、企業の業務効率を大幅に向上させ、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性を秘めています。AIが単純なPC操作を超え、人間と協力しながら業務を進めることで、失われる役割や仕事は数多くあるかと思います。その一方で私たちや企業の生産性、創造性は飛躍的に向上し、より良い働き方が実現する未来がやってくると信じています。
AIが私たちの同僚になった時、あなたや私の価値は何でしょうか?