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新卒1年目から新規事業開発部門をひとりで回す!?〜東大大学院出身異色の経歴を持つサービスデザイナーの挑戦〜 Part1

こんにちは、VISIBRUITでインターンをしています、平松伊織です。
2回に渡ってVISIBRUITでサービスデザイナーとして働いている新卒1年目の竹内さんについてご紹介します。そもそも「サービスデザイナー」とは何か、どのような経緯でVISIBRUITで働くに至ったのか、その想いを詳しくお聞きしました。

目次

⓵サービスデザイナーについて
②VISIBRUITでの業務について
③入社したきっかけ

ーサービスデザイナー(SD)という職種名を初めて聞くのですが、どんな仕事か詳しく教えていただけますか?

ユーザーの目線から、どのようにプロダクトやアプリケーションを作っていくことが求められているのか、それがサービスとして成立するのかというところまで考えるのが、サービスデザイナーの仕事です。

かつて、製品を世に出して顧客がそれを購入してくれたら価値提供は終わりといういわゆる売り切り型ビジネスの時代が長くありました。しかし、社会の成熟に伴って生活者のニーズが多様化・複雑化する中で、電化製品や自動車、日用品などの有形プロダクトを製造・販売しているメーカーであっても、自社製品を購入した人やそれを使う人がどのように使い、最終的に処分するのかという製品ライフサイクル全体を考えてビジネスを展開しなければならない時代がきています。新規事業や起業に興味のある人であれば、SaaS (Software as a Service)、MaaS (Mobility as a Service)などの言葉を耳にしたことがあると思いますが、ここ数年で、全ての製品・ソリューションをサービスとして提供するべきだとして、XaaSという概念が提唱され、社会に浸透しつつあります。

全てがサービスになっていく時代においてビジネスを成立させるためには、サービスが求められ続けるための顧客価値の設計や競合を退け続けるエコシステムの構築が求められます。このような社会背景の中で、ビジネス創出や運用の複雑さが増し難易度が上がっているからこそ、サービスデザイナーのようなサービス・事業創出のプロフェッショナルへのニーズが高まっています。

サービスデザイナーが創出するのは、サービスや事業だけではありません。デザインアプローチでサービスや事業を設計していくノウハウを活かして、ブランディングや経営戦略策定を行うこともあります。この場合のアウトプットは、複数のサービスを思想的につなぐブランドコンセプトやプロダクトをつくる際のデザイン面での構造やルールを定めたデザインシステム、今後数年間の経営方針を示す中期経営計画書などになります。

SDと似ている仕事として戦略コンサルタントが挙げられますが、アプローチがユーザー目線起点なのか、企業目線起点なのかという違いがあります。ユーザー目線からサービスやそれをデリバリーするためのビジネスを構築するSDは、デザイン思考などのデザイン的なアプローチを用いるため、UIやWebなどの領域のデザイナー出身者も多いです。そのため、インターフェース面でのユーザー体験に強みがあります。また、近年の新規サービスの形態として最も一般的なデジタルアプリケーションの情報設計やUIデザインなどの開発工程までワンストップでできるという強みもあります。


ーVISIBRUITではどんな業務をしていますか?

サービスデザイナー(以下、SD)として大きく分けて3つの仕事をしています。

・大企業の新規事業開発支援
 クライアント企業が新規事業を創出するための支援。デザインアプローチを用いたワークショップ形式でクライアントボードやチーム内の課題感・やりたいこと(Will)を明確化したり、さまざまな発想フレームワークを用いて創出した事業アイデアをターゲットユーザーへの定性・定量調査によって妥当性検証するほか、ビジネス分析の手法を用いてアイデアの採算性を評価し新たなビジネスモデルを構築したり、サービスプロトタイプの情報設計などを行う。

・採用人事向けプロジェクトマネジメントツール「トルミエ」の企画・開発業務
 弊社が開発している確率論に基づいた新卒採用担当者向けの採用プロジェクト支援サービスの企画および開発を行っている。大規模採用を新たに実施する企業や、採用人材の質を高めたい大企業の採用プロセスの設計やプロセス中の進捗に応じた日次・週次・月次でのリアルタイム再設計をサポートする。設計、デザイン、プロモーション等を一貫して主導している。

・ PE Techをキーワードとした新事業
 People Experience(働くことの体験、以下PE)をTech(技術)によってよくしていくというコンセプトのもと、理想的なPE の実現を支援する新事業を開発する。PE自体が新しい概念なので、概念の定義から入り、就職/転職活動に対する社内での課題感を取りまとめながら、事業アイデアを構想している。

他にも、弊社にはまだ専任のグラフィックデザイナーやエンジニアがいないので、

・UIデザイナー
・Webデザイナー
・アートディレクター
・クリエイティブディレクター
・アプリケーションエンジニア
などの職域も兼務しています。
まさに新規事業に関わる部分やデザインアプローチで解決できる部分の業務はなんでもやる、といった感じです(笑)

オンライン会議用の背景フィルター画像も社内で頼まれて作りました。


ーなぜVISIBRUITに入社したのですか?

ちょっと話が長くなっちゃうんですが、なぜ理系出身者がデザイナーキャリアを選んだのかから話してもいいでしょうか?(笑)

もともと小さい頃から、手を動かしてものをつくるのと定量的に考えるのが好きでした。おもちゃ売り場で「みんな持ってるもん!」とゴネている同い年くらいの子どもを見て、「それってクラスの何人くらいだろう?」とか思っているマセた子どもでした(笑) 高校生の時に理系の選択をしたのですが、どの領域を極めて仕事にするのか決める判断材料を持っていなかったので、学部2年生の夏まで進路選択を延長できる東京大学への進学を選びました。新しいことを学んで今までできなかったことやわからなかったことがわかるようになるのがおもしろいと感じていたので、自分の限界に挑戦しつつ、学ぶ楽しさを共有できる友人が欲しいと思っていたのもあります。

大学では、経済物理学という統計力学(熱力学の実験則を量子力学的アプローチで説明しようとする物理学の一領域)をベースにした学問にハマり、経済・経営工学系の専攻を選びました。経済物理学は、物理学のエネルギーやエントロピーといった概念を人と人の間でやりとりされる情報に対して適用することで、株価・通貨レートの変動、消費者の購買行動、フェイクニュースの伝播などの経済現象・社会現象を分析・予測しようとする分野です。こういった領域を志していたので、将来はマーケティングや経営企画系の仕事に就こうかなと思っていました。

しかし、所属専攻の講義でブランドデザインに出会ったことが、僕にとっての転機になりました。講義では「そなえるデザイン」というテーマでコンペ形式のチームワークショップを行いました。東日本大震災のような生活様式を大きく変える災害に対してしなやかに対応するにはどのようなブランドやサービスがあるべきか、について、講師のデザイナーさんたちにメンタリングしてもらいながらチームで考えました。災害によって価値観や生活様式を変えざるをえない。では、その変化が急激でストレスのかかるものにならないようにするには、どのような考え方で何を提供すればよいかという目線で僕たちのチームは考えていきました。長期間の避難先となる学校の体育館等で、突然薄くて低いついたて1枚で仕切られただけの生活に移行せざるをえないことで、家族ごとのプライバシーが担保されなくなることが課題だと捉え、避難生活1日目から周囲の目や耳を意識せずに安心できる空間をできるだけ広く確保することが大切なのではないかと考えました。また、サブ課題として、生活に変化が乏しく気分がふさぐことや、周囲の家族とのコミュニケーションをする気にならない・きっかけもないことを捉えていたので、プライバシーを保つ壁の形が可変だったらいいねとか、壁をつくることが周りの人と話したり協力したりするきっかけになればいいねといったことをチームで話しながらアイデアを練っていきました。最終的には、「避難所内に集合住宅を建てる」というブランドと、それを実現するためのブロック状の建材をプロダクトとして提案しました。ブロックを積み上げることで、ついたてよりもしっかりと空間を仕切ることができるだけでなく、2階以上の空間をつくることができるようになり1家族あたりに割り当てられる空間を増やすことができます。また、ブロックを組み直すことで模様替えのようなことができるようになるほか、年配の方など自分のスペースを組み立てることが難しい人たちを周囲の家族が助けることで、コミュニケーションが生まれたり連帯感を強めるきっかけになったりすることもできます。ブロックは普段は避難所のデスクやチェアの形で利用できることから、別途保管場所を確保する必要がなく、いざ必要なシーンで倉庫の奥にしまいこまれていて取り出せないといった事態も防ぐことができます。

講義中の最終プレゼンの講評の中で、「生活者の目線で実感のある課題を抽出し、その本質を探ることができている」、「ブランドの目指す課題を解決したあとの魅力的な世界をきちんと描けている」、「アイデアをプロダクトに落とし込む際に使用時以外の保管方法などを検討できている」という3つの点で特に高い評価を受けました。この3点は、チーム内で僕が中心になって考えた部分なのでとてもうれしかったですし、グッドデザイン賞の審査を手がけている講師の方に「竹内くんは、デザイナーが普段している思考が自然にできている。他の人の持っているアイデアのよい部分を膨らませたりすることも好きそうだから、ぜひデザイナーになることを考えてみてほしい。」と言っていただいたことで、自分のキャリアの選択肢としてデザイナーを意識するようになりました。デザイナーとしてのキャリアは、当時の僕が抱えていた「周囲の友人ほど論理的思考力や新分野への適応速度の高くない自分がどのように社会で生き残っていくか」という問いに対する1つの答えであるように思いました。特に、ユーザーストーリーを描く部分に携わりたい、チームで共創することを大切にしたいという気持ちは当時から今までずっと変わらない部分ですね。


ブランドデザイン講義で提案した避難所内に集合住宅を建てるためのユニット「aLcoVe」

ブランドデザインとの出会いの後、デザインをもっと本格的に勉強したい、スタイリング(意匠)デザインもできるようになってカッコいいプロダクトをデザインしたいと思って、大学と並行して桑沢デザイン研究所というデザインスクールの夜間部にも通いました。デザインスクールに通うことで、世の中のものを形や色の側面から捉えられるようになり、可視化のスキルが向上しました。それだけではなく、デザインは世の中の課題を解決するための方法論であるという考え方への実感が深まったと思います。

デザインスクールでは工業デザインを先行していたので、就職先はメーカーから見始めたのですが、「デザインとエンジニアリングの両方に専門性があって新製品の企画やブランディングの仕事がしたいです!」という話をしてもなかなか受け入れてもらうことができました。「総合職、デザイナー職、エンジニア職のどれがいいの?企画なら総合職で営業からスタートが一般的だよ。」と言われてしまって。それで、プロダクトデザイン領域に戻ってくるのはしばらく働いてからにしようと思って、複数の職域にまたがって新規事業開発ができるIT系の事業会社とデザインファームを中心に就活しました。

就活中は、1つの事業に深くコミットできる一方で新規事業部門にアサインされるか分からない事業会社にするか、さまざまな案件に携わって事業開発の幅を広げることができる一方で、事業に対してのオーナーシップ面で一番ではないデザインファームにするかで悩みました。最終的には、確実に新規事業創出に携われることを優先して、広告代理店のグループ企業で、大企業の新規事業創出の支援を専門にしているデザインファームを受け、内定をもらいました。

しかし、内定先のデザインファームがコロナ禍で解散してなくなってしまって。就活のカウンセリングを受けていたという繋がりもあって、弊社代表の佐藤からVISIBRUITでクライアントワークも自社事業もやる新規事業部門を立ち上げたいと思っているから、ぜひ来ないかと声をかけてもらったんです。そもそも就職中に最も悩んでいた対立構造を両立できると聞いて、とても魅力的だと思い入社しました。

また、自社の新規事業の根幹にあるPeople Experience Techという概念がおもしろいなと思ったのもあります。従来のHR領域ってものすごく属人的でウェットな領域だと思っていて。定義のあいまいなコミュニケーション力・人間力といったものが就活の中で評価されることや、数回の面接で就職先が決まったりすることに対して、むず痒さを感じていました。近年HR Techと呼ばれる領域が拡充されてきて、企業に関わる人のデータが一元管理されるようになり、これから人材評価の均質性や再現性が高まっていくことになると思います。近いうちに、働く一人ひとりの能力やキャラクターについて、現在の力だけでなく、ポテンシャルも含めて可視化できるようになる時代が来るのではないかと予想しています。また、従来人材評価に用いられてきた学歴や社内からの評価だけでなく、プライベートでの交友ネットワークやヘルスケアデータにも活用の可能性があるように感じています。幅広いデータを様々な観点から分析することでもっとみんなが自分のポテンシャルを積極的に拡張していけるようにしていきたいと思っています。

Part 1はここまでです。
Part 2(https://www.wantedly.com/companies/company_6861606/post_articles/339839)では、業務で楽しいことや今後取り組みたいことなど、竹内さんの今やこれからについてお聞きしていますので、ぜひあわせてご覧ください!


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