「営業で成果を出したいけど、無理な売り込みはしたくない」「成長できる環境で働きたいけれど、自分の時間も大切にしたい」。ちょっとワガママな願いでしょうか? でも、京都府八幡市の中古車販売会社・株式会社カーボックスには、その両立を目指せる環境があります。
高年式・低走行の希少車を中心に扱い、全国のお客様に販売する当社。社長をはじめ4人の少数精鋭で年商10億円を実現し、現在はさらなる成長を目指しています。その一方で、残業は月10時間未満。「売り込む営業」に頼らず、未経験からでも無理なく活躍できる仕組みを築いてきました。長期的には年商100億円を目指すビジョンも描いています。
なぜ少人数で成果を上げながら、働く時間も短くできるのか。その仕組みと今後の展望について、代表の西村 厚志さんに聞きました。
【この記事の登場人物】
株式会社カーボックス
代表取締役 西村 厚志
2003年に地元の中古車販売会社へ入社し、整備や自動車販売などを経験。2011年に広告代理店へ転職し、自動車部門の立ち上げに携わる。電装部品の取り付けを手がける個人事業を経て、2016年にカーボックスを法人化。事業の仕組みづくりや仕入れ、社員教育に注力している。
洗車のアルバイト、できますか? 1本の電話から始まった経営者への道
—西村さんが自動車業界に入ったきっかけを教えてください。
若い頃から車が好きで、当時は地元の仲間とよく、車で広い駐車場などに集まっていたんです。その帰り道に中古車販売会社があるのを見つけて、「洗車のアルバイト、できますか?」と電話をしたのがきっかけでした。特に求人を出していたわけではないんですが、運良く採用してもらえたんですよ。
その会社には8年間お世話になりました。中古車営業や販売後のフォロー、整備のお手伝い、新車販売など、いろいろと経験しましたね。当時はまだ小さい会社でしたが、私が在籍している間にどんどん成長。22〜23歳の頃には「自分もいつかこの業界で独立したい!」と思うようになっていました。
その後、転職した広告代理店では社長に声をかけてもらい、自動車部門をゼロから立ち上げる経験をしました。
—若い頃から独立・起業を目指していたんですね。そこから、どのように創業につながったのでしょうか?
立ち上げた自動車部門が軌道に乗ったところで退職し、その後は個人事業で車の電装部品の取り付けを始め、創業のための自己資金を貯めたんです。
独立するときに考えたのは、お世話になった会社と競合しないよう、扱う車や売り方を変えること。かつて在籍した中古車販売会社は当初、来店型の軽自動車専門店だったので、私は普通車を扱い、ネットを入り口に販売する形としました。
経営の考え方は、中古車販売会社時代の社長から教わったことが今も土台になっています。やり方は時代に合わせて変えていますが、教わったことの多くを、今度は私が社員に伝えている感覚ですね。
—最初から、今のような高価格帯の車を扱っていたんですか?
いえ、創業当初は数十万円で買える普通車が中心でした。お金に余裕があったわけではないので、まずは地道に業績をつくり、金融機関から融資を受けられる力をつけようと考えたんです。
毎年事業計画をつくり、金融機関の担当者さんには毎月進捗を報告していました。ここまでやる経営者って、意外と少ないみたいです。そうやって金融機関からの信頼を積み重ね、大きな金額を融資してもらえるようになり、仕入れられる車の品質も少しずつ上げていきました。
大きな転機はコロナ禍です。「オンラインでも安心して買ってもらえる車を揃えよう」と考え、高年式・低走行の車を充実させたんです。だから今の仕組みは、最初から完成形があったわけではないんですよ。
「選ばれる1台」を仕入れる努力が、営業成果と働きやすさにつながる
—高年式・低走行に加えて、希少な車に注目しているのはなぜですか?
中古車の仕入れは業者向けオークションでの調達がメインですが、人気車種は、仕入れたいと考える競合販売店も多いんです。1台の車を100社が仕入れようとすれば、当然オークションの落札価格は上がります。そこで私は、競争の激しい車種を避けることにしました。
一部のお客様だけが探しているような珍しい車に目を向ければ、仕入れの競争相手が一気に少なくなります。ほかのお店ではあまり扱っていないので、お客様が車種や年式、装備などで検索条件を絞るほど、当社の車が候補に残りやすくなるんです。
もちろん、珍しければ何でもいいわけではありません。お客様にとってお買い得で、会社としても利益が出る。両方が成り立つ車を探すのが私の仕事です。
—その「お買い得」を、どのように見極めているんですか?
たとえば、新車だと800万円ほどする車が、2年落ち・走行距離8,000キロで450万円だったら、魅力を感じる人は多いと思います。こうした相場感をもとに、他社の販売価格も調べ、「いくらで販売すればお客様に選んでもらえるか」から逆算していくらで仕入れるかを考えるんです。
私は毎日、翌日のオークション情報を見て100台ほど候補をピックアップしていますが、その中で実際に買えるのは1台か2台。条件に合わなければ、買えるときをひたすら待つという地道な作業です。
—そうした仕入れの工夫と地道な努力が、営業の成果につながるのですね。
そうです。ほしい車を探しているお客様に、品質と価格の両方で納得できる1台を用意できれば、無理に売り込む必要はなくなります。
商談の入り口は、主に『カーセンサー』などのネット媒体。そこで車の情報を見て来店される方もいれば、オンラインで商談する方もいて、完全にオンラインだけで購入まで完結するケースも約2割あります。こちらから何度もお客様のところへ通うような営業はしていません。
また、状態のよい車なら商品化のための清掃にかかる時間も短くできますし、故障によるトラブルも抑えやすいんです。お客様の安心につながる仕入れが、社員の負担を減らすことにもつながっています。
チームで目標を掲げ、「平均残業10時間未満」で成果を出す
—4人で年商10億円を実現できた理由も、選ばれる1台を仕入れることによる商品力にあるのでしょうか?
そうですね。ただ、少数精鋭という言葉は格好よく聞こえるかもしれませんが、実際のところは小さい会社でなかなか人が来てくれないから、少数精鋭でやるしかなかった、というのが本音ですね。
だからこそ私は、「この少人数でどうすれば大きな成果を出せるか」を考えてきました。人からは「4人で10億円なんて無理だ」と言われたこともありましたが、私は実現するイメージを持っていたんです。そのためにやるべきこと、やらなくてもいいことを分け、やるべきことに集中してきました。
—中古車販売未経験で入社した人も、しっかり成果を出せるようになりますか?
はい。業界未経験どころか、車の知識がほとんどない状態からでも大丈夫ですよ。今のカーボックスのメンバーにしても、元から車好きなのは私しかいませんから(笑)。
入社後は無理なく車の知識が身につけられるよう、教育に力を入れています。基本的な知識が身につくまでには、半年くらいはかかるんじゃないでしょうか。
—知識が身につくまでにもどかしく感じることもありそうですが、その間もチームに貢献できることはありますか?
入社したばかりの人がすぐにできることもたくさんありますよ。たとえば、雨の日にお客様が来られたら傘を渡して、「お足元の悪い中ありがとうございます」と伝える。そんなちょっとした行動を率先してやってもらえるだけでも業績に貢献できるんです。
ちなみにカーボックスでは、個人に営業ノルマや目標を持たせていません。チームで目標を掲げ、全員で協力して達成を目指しています。最初のうちはコツコツと知識を学びながら、どうすればチームに貢献できるかを考えてもらえるとうれしいです。
—高い成果を出す一方で、カーボックスには「月あたりの平均残業時間が10時間未満」という特徴もあります。これに驚く人も多いかもしれません。
誰かが残業し始めると「残業するのが当たり前」になってしまいますし、上司や先輩が残っていたら後輩は帰りにくいですよね。だからカーボックスでは、まず上司、つまり私が無駄な残業をしないように心がけています。
そして「残業しないと仕事が終わりません」とならないように、仕組みを整えることも大切だと考えています。目指すのは、時間内に工夫して成果を出し、利益をしっかり社員に還元できる会社にすることです。
スキルよりもマインド重視。「素直」「勉強熱心」「プラス思考」なら大丈夫
—その先に、年商100億円という大きな目標があるわけですね。
はい。社員は年齢を重ねますし、世の中では物価が上がり続けていくでしょう。その中で給与を上げ続けたいなら、会社も成長し続ける必要があると考えています。
ただし、利益だけを追いかけることは絶対にしたくありません。私はいつも社員に「正しいことを行った結果が利益だ」と伝えています。人としての正しいあり方を守り、お客様に満足していただきながら、社員の所得も上げていく。そのために規模を大きくしたいんです。
具体的には、2050年までに自力で年商60億円規模の会社をつくり、40億円規模の会社をM&Aで迎え入れ、100億円を目指す構想です。自分が退任する時期も見据えながら、次につながる会社にしていきたいですね。
—これから入社する仲間には、どんなことを期待していますか?
私が大切にしてほしいと思っているのは、「素直であること」「勉強熱心であること」「プラス思考で行動すること」の3つです。
わからないことばかりでも、素直さがあれば着実に学んでいけます。勤務時間中にはしっかり勉強し、「こっちのやり方のほうがいいかもしれない」と工夫し続けてほしいと思っています。仕事をする上では大きな壁にぶつかることもありますが、プラス思考であればその壁を乗り越え、自分の力に変えていくことができます。
最初から高い能力を求めているわけではありません。この3つがあれば、能力は後からついてくると思います。
仕事の面では、営業はもちろん、マーケティングや新しい事業を動かす仲間も求めています。こうした仕事にも興味を持ってもらえたらうれしいですね。たとえば海外輸出など、新しい市場や事業をつくる構想もあります。ゼロからイチを生む仕事に挑戦し、社員と一緒に形にしていきたいです。
—最後に、この記事を読んでいる人へメッセージをお願いします。
最初から私や先輩たちと同じように考えたり、行動したりできなくても大丈夫です。まずは人の話をよく聞いて、素直にやってみてほしいですね。
もし面談の機会があれば、転職を考えた理由や、今どんなことに悩んでいるのかを率直に聞かせてほしいです。私もカーボックスという会社について、良い面も悪い面も包み隠さず話します。まずは、お互いのことを知るところから始めましょう!