IT関連のスタートアップでは、ユーザー数やアクセス数が急増する時期でもシステムを安定稼働させる必要があります。Wewillが手掛ける分業管理プラットフォームSaaS「SYNUPS(シナプス)」は、まさにユーザー数が増えているタイミング。
その屋台骨を支えるCTO/開発部部長が鳥居良光さんです。多岐にわたる開発スキルとチームづくりの知見を生かし、開発部の環境を構築してくれています。
そんな鳥居さんに、開発部の仕事内容やチームの雰囲気、今後の方向性について聞きました!
プロフィール|1987年生まれ。東京工業大学(現:東京科学大学)大学院を経て、2010年に株式会社ライブドア(現:LINEヤフー株式会社)に入社する。インフラから開発まで多岐にわたる業務を経験。2018年に浜松へUターン。個人の活動でも、月間約60万PVを超えるローカルWebメディアの立ち上げ、地域コミュニティの代表就任など、開発×チーム力×新規事業を軸に活躍。
開発部の仕事の“腹落ち感がちょっと違う”のはなぜ?
――はじめに、開発部の仕事について教えてください。
鳥居:Wewillでは、分業管理プラットフォームのSYNUPSを通じて、お客さまのバックオフィス業務支援を行っています。SYNUPS内に業務が集約・整理され、担当者の知見がノウハウとして蓄積され、協業をスムーズにしていく。そのように、Wewillの事業の根幹をなすシステムがSYNUPSで、その保守運用や機能拡張を担っているのが私たち開発部です。
保守運用では、SYNUPSが日々安定して稼働しつづけられるよう、システムの稼働状況の監視やトラブル対応、バックアップ対応などをしています。開発は、バックエンドからフロントエンド・デザインまで、すべて自社完結です。
あわせて機能拡張の業務としては、社内外のSYNUPSユーザーからフィードバックが上がってきますので、それらの中から対応すべき点を検討してSYNUPSのアップデートをかけています。
フィードバックは社内から上げられる仕組みを作ってこのように(下図)要望が整理されています。
――どうしてこれだけの数の要望を定常的にもらえているんですか?
鳥居:ありがたいことに、カスタマーサクセスチームが日ごろからSYNUPSを利用してくれていて、かつ、お客さまとよく対話してくれていますのでたくさんの意見要望を持ってきてくれます。改善点はもちろんのこと、「便利になった」「すばやく反映してくれて助かった」などポジティブな声も届けてくれます。
ですから、私たちもあらゆるフィードバックを、“お客さまのビジネス成長を支えるヒント”として大切にしています。バックオフィスに携わる皆さんの幸せを叶えたい――そうした風土がWewillにそもそも根付いていることが、たくさんの要望をいただける秘訣かもしれません。
――よい形で開発部の業務が回っているのを感じます!チーム作りでも何か工夫があるのでしょうか?
鳥居:WewillのMVVを前提として、メンバーそれぞれが専門性を発揮し、自律的にプロジェクトを進められるよう、一定の自由度を持たせたチーム運営を心がけています。
とくに私が意識しているのは、以下の3つでしょうか。
- 心理的安全性を担保すること
- モチベーションが維持できる案件管理をすること
- モダンな開発環境やツールを積極的に取り入れること
まず、心理的安全性を担保すること。たとえば、「自分で5分調べて分からないときは、ほかのメンバーに聞いてもOK」と何度も伝えています。エンジニアは課題解決のプロと言われますが、それゆえに自分自身でなんとかしないといけないと思い込みがちです。とくに、真面目で誠実な人ほど、人に聞くのは失礼なことと気にしてしまうこともあります。
だから、私から率先して「30分も40分も抱えていたら辛いでしょ。何に困っているか、チームで共通認識を持つのも大事だよ」と伝える。聞かれた側が正解を知っているとも限りませんから、そうなったら「一緒にググろう!」って進めばいい。
今はAIに聞いたりするので言葉は古いかもしれませんが(笑)、チームで協力して最適解を見つけるという姿勢が大事で、みんなが互いに尊重しあい、高めあっていけることが前提となるチームを作っていきたいんですよね。
そもそも論で、心理的安全性が担保されないチームでは発言しても無意味で、やがて上司や仲間に意見や相談をしなくなり助け合いもしなくなり……結果、チームが崩壊します。そういう雰囲気はなんか嫌ですよね。なんでこのチームで一緒に働いてるんだっけ?ってなりません?(笑)
次に、モチベーションが維持できる案件管理を意識しています。モチベーションは、開発の生産性に最も大きく関わる指標だと考えていて、個人的にもとても大事にしています。もし、毎日の仕事がやらされ仕事ばっかりだったら、エンジニアはきっと飽きますよね。モチベーションは下がります。けれど、決められた仕様に沿ってコードを書くという業務の性質上、開発の仕事はモチベーション維持が難しいものです。
そこでたとえば、あえて仕様に余白を残しておきます。「ユーザーがこうやって使う、こういう機能がほしい」という要望は詳細に伝えて、技術スタックや処理の細かいところまでは大枠しか詰めません。すると、工夫できる余地があるので、開発していても楽しいと思うんですよ。ただし、余白を残しすぎると当然「丸投げ」になるので気をつけなければいけません。
ただ、なぜこうした機能が必要なのか、背景・理由・ゴールはしっかりと伝えるようにしています。そのうえで、開発のやり方については、プロ自身に考えて決めてもらうのがベストだよね、という判断です。そして、自信がなかったり、分からなければチームに聞くことで自身のスキルの成長にも繋がります。
そして、モダンな開発環境やツールを積極的に取り入れることです。たとえば、ソースプログラムの管理・共有ツールとして「GitHub®(ギットハブ)」を使うことは業界ではもはや当たり前です。他にも、デプロイ(開発した機能を本番環境へ反映すること)の自動化だったり、Github Copilotを全員使うようにしたりと、その時々のトレンドを積極的に取り入れて利便性を体感しながら、開発環境を構築・改善して効率化を図っています。
SaaSの立ち上げを支えた鳥居さんの開発者・PM・経営者としての多彩なバックグラウンド
――CTOとしてはどんなことを推進しているのでしょうか?
鳥居:大きくわけて3点あります。
1つは、開発部の開発体制づくりです。開発部は現在8名体制で、レベルもさまざまで多彩なバックグラウンドのメンバーが参加してくれています。リモートで遠隔地から参加している人も。ですから、みんなが開発に迷わないように、ドキュメントの管理・更新、開発ルールの文章化、オンボーディングプログラムの整備などを行っています。先ほど話した、チームの雰囲気づくりもこれに含まれますね。つまり、共通認識を増やして目線を合わせることでチームはより効率的になり、不確実性が高い課題に対して強くなります。
2つ目は、SYNUPSを1つの事業として伸ばしていく目標があります。経営戦略に基づき、システムのアップデートを検討、実施しています。そこには、開発部で取り組んでいる機能のアップデートも一部含まれていますし、複数の契約プランを設けるなどサービスの刷新にともなうシステム改修も進めています。
そして3つ目に、会社全体のセキュリティ対策やIT技術・情報の管理などCIOに近い役割を担っています。全社員のPCやiPhoneなどの社用デバイス、Google Workspace®など業務利用ツールの管理など、いわゆる情シス業務も責任範囲の1つとして役割をもらっています。おかげで、カスタマーサクセスチームをはじめ、さまざまな部署の方とお話する機会を持てているのも、開発チームへの風通しという意味で一役買っているかもしれません。
――ITに関して幅広い領域をWewillでカバーしているんですね。Wewillに入社する前、鳥居さんはどんなキャリアを経験してきたんですか?
鳥居:ライブドア(後のLINEヤフー)に入社して、Webエンジニアとしてのキャリアをスタートさせました。その後9年ほどlivedoor/LINEの周辺サービスの開発に携わり幅広い経験を積ませてもらいました。インフラからアプリ開発、セキュリティ、Webメディア関連、ビジネスサイドに近いサービス開発まで何でもやっていました。
その後、31歳を境に浜松へUターンして独立しました。地元のWeb制作会社でお世話になりながら、地元企業から個別に開発や技術コンサルの相談をいただくようになり、自ら会社も作りました。そのときのオフィスとして利用していたのが、The Garage for Startups(Wewillの浜松本社)だったんです。
そこで、代表の杉浦や取締役の八城と交流を持って、SYNUPSの構想が生まれたタイミングあたりから、サービス化に向けて技術的なアドバイスをするようになりました。その後、2023年の年末に「本格的に開発を引っ張ってほしい」とお声がけいただいて……早速年明けからWewillにジョインしていましたね(笑)。
――自分で起業もしていた鳥居さんが、Wewillに入ろうと思った決め手はなんですか?
鳥居:地元浜松発のスタートアップ企業が考える新規事業の立ち上げに関わることが楽しそうだと思ったんですよね。
判断基準は、自分の歩んできたキャリアを生かせるかどうかでした。自分で会社を立ち上げて地元で独立して生き残ってきた経験と、livedoor/LINEでの第一線の事業サービスでの長年のエンジニアキャリアは大いに役に立つし、Wewillはチャレンジングな環境だと考えました。同時に、経営陣に技術専門の人間を入れてもらえるならば勝負する価値はあるぞと思ったんです。
また、SYNUPSのような大型のSaaSを開発・運用していくとなると、チームで助け合うことが大前提になり、チーム運営もまた課題の1つになります。なので、いかに経験者として適切にチームをマネジメントできるか、それも数年単位のスパンでということを今も考え続けています。取締役として1年が経ちましたが、自分にはできないことがはっきりしてくる中で、私自身、みんなに助けてもらわないとダメだなって思っています(笑)。
最近も、チームメンバーがドキュメント類の作成をがんばってくれたおかげで、新入社員のエンジニアメンバーが迷わない体制もできてきて、オンボーディングがなんとか機能するようになったりと組織としてちゃんとした体制を作れつつあります。各々抜かりなく動いてくれて本当にありがたいです。Wewillに入社して、チームワークの力を感じています。
――鳥居さんのお話を聞いていると、開発が本当に好きなんだなと伝わってきますし、そういう環境をチームにも作っていきたいという気持ちが伺えます。
鳥居:はい、やはり開発は好きですね。ユーザーさんが困っていることやほしい機能を聞き、プロトタイプを作って、改良して、それがちゃんと現場で使えるものになったとき、すごくやりがいを覚えます。
さらに、「この間の対応、本当に助かっています!」と感想をもらえたときなんかもう、ニヤニヤが止まらなくなってしまいます(笑)。そうしたいい仕事をできる環境が作れたらと思いますし、何よりメンバーに助けられているのは私自身ですので。「Wewillの開発部って楽しそうですね」と言われると、すごくうれしいです。
リーダー・PM候補も歓迎!チームの力を強化してみんなにステップアップしてほしい
開発部でのコーヒーミーティング(雑談会)の様子。この日のテーマは「こだわりのマイキーボードについて」。
――では、開発部の今後の展望について教えてください。
鳥居:まず、開発部の方向性としては、事業としてのSYNUPSの拡大を支えていくことになります。より多くのお客さまに使っていただけるようアップデートを加速していきますが、混沌としたあれこれを根気強く整理して乗り越えなければいけない拡大期をご一緒できる開発メンバーに加わってもらいたいと考えています。
開発経験については、自分で勉強していくことができる方ならそこまで問いません。一方で必要なのは、お客様が求めている本質的な課題を解決する力です。SYNUPSの目的を考えると、お客さまの事業や業務に対して「ドメイン知識を増やそう」「きちんと向き合おう」と思えるマインドは必須です。
開発に際しては、カスタマーサクセスのメンバーともよく会話しますし、ときには創意工夫よりもとにかく手を動かすことが優先されることもあります。そういったチームワークを大切にすることも含めて、「お客さまのビジネス成長と幸せを叶える開発」や「大規模なSaaS開発」に興味がある人は挑戦しがいがあると思います。
また、クライアントワークが大得意だ!という方は事業開発部でお客さんのシステムを一緒に伴走しながら作る・改善するというチームもあります。Wewillの開発チームが少しでも気になったら、声をかけてくださると嬉しいです。
――さいごに、メッセージをお願いします!
鳥居:独立自尊というカルチャーが根底にあって、チームメンバーがお互いに信用しているからこそ、絶妙な緊張感とバランスで組織が運営されているところはWewillならではの魅力だと思います。
リード職に挑戦したい、切磋琢磨してさらにスキルアップしたい、そうした目的意識を持ったメンバーも多いので、ぜひこのチーム環境を生かして成長してもらえたらうれしいです!