田川産業株式会社(TAGAWA) - 漆喰・珪藻土メーカー
100年続く漆喰(しっくい)珪藻土メーカーの田川産業株式会社。大阪城の大改修でも使用された漆喰製品「城かべ」や珪藻土配合の「大津」「土紀」など、多くのベストセラーを販売いたしております。
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機動戦士ガンダムシリーズを世に送り出した稀代のアニメーター、富野由悠季監督の言葉です。この言葉は、あらゆる分野で見識を広めることの重要性を示唆しています。
Local Design株式会社では定期的に社外研修を実施し、色々な場所を訪れて見識を広め、業務のクオリティを高めていっています。
今回、私も含めた研修参加メンバー15名が訪れたのは、福岡県田川市。この地で1924年に創業した『100年続く漆喰(しっくい)メーカー』田川産業株式会社様(以下、田川産業)を訪問させていただきました。今回はその様子をレポートさせていただきます。
企業ロゴはひらがなの「し」「っ」「く」「い」を組み合わせてデザインされています。わかるかな?研修は田川産業の代表取締役社長である行平 史門様(以下、行平さん)のひとことから始まりました。
田川市といえば石炭産業。田川市を含む遠賀川水系の流域は石炭の一大産地でした。田川市を含む市町村が形成する「筑豊炭田」は日本最大の石炭産出量を誇り、最盛期には全国の石炭生産量の約半分を占めるほど。こうした背景から田川=石炭(ブラック)を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は「石灰(ホワイト)」の一大産地でもあるのです。
そしてその石灰が、漆喰の原料となります。
真剣な表情で漆喰ができるまでの流れをお話しされる行平さん。手に持っているのは石灰石。石灰とは、運動場に白線を引くときに使う、あの石灰です(※)。
恥ずかしながら私は今回の研修を受けるまで、漆喰についての知識は「蔵やお城の壁に使われている」というくらいのもので、漆喰が何からできているかなんて考えもしませんでした。
行平さん曰く漆喰の歴史は1400年にわたり、蔵やお城だけでなく高松塚古墳の壁画や、ヨーロッパのフレスコ画にまで使われているそうです。そんな歴史ある建材があんなに身近な、子どものころから触れていたものでできていたと聞き、思わず驚いてしまいました。
※運動場のライン引きに使う石灰は、現在では他の素材に代替されているそうです。
田川産業に運ばれた石灰石はまず巨大な土中窯(どちゅうがま)の中で塩焼きされ、窯の温度は1000℃に達します。窯に近づくと熱気を感じました。五感を使って「体感」できる現地訪問の重要性に改めて気づかされます。
巨大な緑の物体が石灰石を焼く「土中窯」です。10mの崖をくりぬいて作られています。行平さんは焼かれた石灰石が漆喰になるまでの一連の流れを、化学式を使って説明してくれました。石灰石は、炭酸カルシウム(CaCO3)でできています。高温で焼くと、二酸化炭素(CO2)が放出され、酸化カルシウム(CaO)からなる生石灰に変化します。
行平さんはメンバー全員に石灰石と、生石灰を渡してくれました。重さを比べてみると全く重さが違うことに驚きます。軽くなった生石灰に触れ、二酸化炭素が失われたことを体で感じることが出来ました。
生石灰は水を加えることで消石灰、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)となります。
ボウルに入れた生石灰に行平さんが水をかけると化学反応が起こって湯気が立ち上り、生石灰が粉状の消石灰へと変化していきます。
生石灰に水をかけるシーン。美しい石灰が生まれる瞬間です。この興奮を動画で共有出来ないのが悔しい。目の前で起こる化学反応に、参加者全員から感嘆の声が上がります。グレーの灰にまみれた生石灰が割れ、中から真っ白な消石灰が出てくる様子は神秘的ですらありました。
こうして生まれた消石灰を、海藻を煮込んで作った糊と、麻すさという麻の繊維と混合して漆喰が出来上がります。
袋に入った海藻。かつては北海道や三陸で獲れましたが、現在では東日本大震災や海水温の上昇でなかなか獲れないそうです。保水性がある海藻糊には、漆喰が早く乾くのを防ぎ、施工できる時間を伸ばす役割があります。麻すさは漆喰が乾燥した後の強度を上昇させながら、ひび割れを防止する役割です。シンプルな自然素材の掛け合わせながら、計算されつくしたそれぞれの役割に素材としての機能美を感じずにはいられませんでした。
何より新鮮な驚きだったのは、「漆喰は乾燥することで再び『石』へ戻っていく」ということ。この自然の循環こそが、漆喰が1400年の長きにわたって使用され続けてきた本質なのだと感じます。
田川産業では伝統的な塩焼き製法を守り、受け継いでいく一方で、焼かずにCO2を吸収させて固める「漆喰タイル(LIMIX)」など、現代の環境問題に即した技術開発も行っています。
さらに、ロシア・ウクライナ戦争で発生した瓦礫をアップサイクルしてウクライナの復興支援に役立てるプロジェクトなど、時代のニーズに合わせた革新的な挑戦も続けていらっしゃいます。
「変えてはいけない本質(コア)」を徹底的に守り抜くからこそ、「変えるべき手段(アウトプット)」を時代に合わせて柔軟に変化させられる。 これこそが、100年続くビジネスの条件なのだと痛感しました。
研修中、行平さんが仰った「ものづくりは得意だけど、PRはうまくない」という言葉が、メンバーの心に深く刺さりました。
これほどまでに素晴らしい技術、地球環境へのこだわりや企業としての歴史があるにもかかわらず、まだ世の中にその価値が十分に伝わっていない。日本や福岡のローカルには、まだ見つかっていない、あるいは発信しきれていない偉大な価値を持った企業や技術がたくさんあるのだと改めて気づかされました。
地域に眠る「価値ある何か」を発掘し、ホテルという「体験型のメディア」を通して、ゲストにそのストーリーや想いを正しく翻訳して届ける。 これが私たちLocal Designの存在意義であり、ローカルビジネスの使命でもあると感じました。
研修の最後に、実際に漆喰を施工したショールームを見学させていただきました。漆喰の壁に囲まれた部屋に入った瞬間に感じる、独特の安心感、静寂、そして凛とした空気感。
漆喰ならではの空間。本来なら巾木があるはずの床と壁の境目を漆喰で曲面にしています。熟練職人の施工技術とかけ合わせれば、可能性は無限大。田川産業は、ただ需要のある製品を販売するだけでなく「子供や家族が安心して暮らせる住環境」といった、「製品が使われている空間の完成形」をイメージしながら製品づくりをしていると感じました。
これは私たちのホテル運営にも全く同じことが言えます。客室という「ハード(手段)」を売るのではなく、ゲストがそこで過ごす「体験価値(目的)」を売っているということ。
製品が持つ機能だけでなく、それがもたらす「感情やライフスタイル」から逆算して空間やサービスをデザインしていくことの大切さを、改めて学びました。
研修後のアンケートでは、なんと参加メンバー15名全員が満足度「5(大変満足)」と回答!
「今回の学びをどうホテルに活かすか?」という問いには、メンバーから具体的なアイデアが次々と飛び出しました。
◦ 客室の「カビ・ニオイ・湿気」を根本解決するクリーンな客室づくりに使えそう
◦ ショールームで体感した静寂を味わう、読書や瞑想のための「ひとり時間特化型リラクゼーションルーム」をつくりたい
◦ 環境負荷の低い漆喰タイルをエントランスのアート壁に採用し、ホテルのブランディングに寄与する
◦ 「Local Design×田川産業」のオリジナル什器の制作
などなど。今回の研修では、五感で体感しながらメンバーの見識を広めることができ、非常に有意義な時間となりました。素晴らしい機会をくださった田川産業の皆様、本当にありがとうございました!
私たちLocal Design株式会社は、これからも地域の素晴らしい技術や文化に直接触れ、そこで得たインプットを「これまでにないホテル体験」としてカタチにしていきます。
わたしたちと一緒に、地域の魅力を発掘し、新しい価値を創造していきたい皆様のご応募をお待ちしております!
「しっくい」というかな読みは中国語の石灰(シークイ)から来ているという豆知識、田川産業が既調合の商品として漆喰を販売した第一人者だという先見性、大変貴重な漆喰塗装体験の感想、ウクライナ復興支援の取り組みの詳細、10mの土中窯くらい大きなド迫力のプレス機、漆喰で作られたランプシェードのたたずまいの可愛さ、漆喰アート、、、今回のストーリーで語りつくせなかったエピソードや紹介したい写真がめちゃくちゃあります。伝えたいことを絞るのが、こんなに、こんなに大変だとは思いませんでした。
このストーリー書きながら思ったんですが、私もう、田川産業のファンだと思います。