「地域に必要とされる、本当に意味のある新しい路線を検討してほしい」——。
地方都市における交通インフラの維持・拡張は、観光振興や地域住民の利便性向上において極めて重要なテーマです。しかし、既存の路線バスやタクシー網だけではカバーしきれない移動需要を把握し、交通事業者が納得して事業化へと踏み切れる「根拠のある数字」を提示することは容易ではありません
こうした課題に対し、GEOTRAが挑んだのが、鳥取空港における二次交通の最適化を目指したコンサルティング・プロジェクトです。単なる人流データの納品にとどまらず、観光や地域移動を支えるための「移動の需要と供給のズレ(需給ギャップ)」を徹底的に可視化。交通事業者が「これなら本気で新規路線を検討できる」と思える、精緻な判断材料を提示しました。
このプロジェクトを現場で牽引したのが、データサイエンティストの江端杏奈です。
担当者紹介
江端杏奈
筑波大学大学院システム情報工学研究科社会工学専攻修了。
大学では都市工学を学ぶ。特に空間統計学を専門とし、CO2排出量の時空間変動推計の研究を行っていた。2020年にKDDIに新卒入社し、BtoCマーケティング企画とデータマネジメントプラットフォーム開発に従事。2022年12月にGEOTRAに参画し、データサイエンティストとしてお客様の課題に基づいたデータ分析、提案を行っている。
空港という特殊な環境でのデータ解析
本プロジェクトでは、空港利用者の推定から目的地への移動、さらには県外来訪者の動態へと段階的にデータの解像度を高めていくことで、感覚的な議論になりがちな交通計画に対し、確かな「根拠」を提示することに成功しました。
しかし、その成功の裏には、空港という特殊な環境でのデータ分析の壁や、実測データとのすり合わせにおける試行錯誤の連続がありました。
データサイエンティスト・江端が直面した困難と、それを乗り越えた「伴走力」のリアルを、インタビュー形式のストーリーでお届けします。
プロジェクトの裏側:直面した「壁」と、突破への試行錯誤
1. 「15分」の壁——通過点である空港の人流定義
空港は多くの人々が「短時間で通過する場所」です。従来のデータ定義のままでは、分析の前提から崩れてしまう危険性がありました。
江端:
「空港のような『通過点』の人流をどう定義・分析するかが想像以上に難しく、初期段階ではかなり頭を抱えました。
当時のデータ仕様上、15分以上滞在した人しかピックアップできないという精度の壁があり、短時間で移動してしまう県外来訪者を抽出しきれず、発着人数が実態よりも少なく見えてしまっていたんです。自治体や事業者様からは『この数字は本当にビジネス判断として使える精度なのか?』と厳しい視線が注がれる場面もあり、難しかったですね。」
ビジネスの実行可能性を担保するためには、納得感のある精度への底上げが絶対条件でした。
2. 実測データとの泥臭い突き合わせと、関係者との合意形成
この壁を突破するため、江端は「データの磨き込み」と「泥臭い対話」を同時に押し進めました。
江端:
「まずは実際の搭乗実績などの実測データを取り寄せ、人流データの傾向と何度も突き合わせて集計ロジックを磨き直しました。過去の交通量調査とも比較を行い、ビジネス判断に耐えうる精度であることを一つひとつ確認していったんです。
また、観光エリアの区切り方一つをとっても、関係者のみなさんと『どの定義が一番現場の実態に即しているか』を徹底的にすり合わせました。代表ルートの利用人数については、データの秘匿性を保ちつつ実用性を損なわないよう割合(%)表示に切り替えるなど、柔軟な仕様変更を重ねながら着実に合意を握っていきました。」
技術的な正しさを追うだけでなく、利用者が判断しやすい「見せ方のロジック」を構築することで、プロジェクトは大きな前進を果たします。
3. ピークの合致と使いやすさの称賛、「これぞジオトラ」と感じた瞬間
地道な改善を重ねた結果、分析結果が鮮やかにハマる瞬間が訪れます。
江端:
「精緻化した空港利用者の推定値が、実測データのピーク傾向とぴったり合致した瞬間は、本当に嬉しかったです。
さらに、最終的に納品した分析ダッシュボードに対して、お客様から『他社のデータツールより直感的で、圧倒的に使いやすい』とお褒めの言葉をいただけた時は最高に嬉しかったですね。」
鳥取市内の主要施設間における需要ギャップイメージ
また、このプロジェクトを通じて江端が強く実感したのは、GEOTRAが持つ「課題解決へのスピード感と柔軟性」でした。
江端:
「技術的に難しい局面にぶつかっても、『できません』で終わらせずに条件を握り直して前に進める姿勢が、すごくGEOTRAらしいと感じます。
細かい仕様確認が続くハードな現場でも、即答できることはその場で打ち返し、持ち帰りが必要な難しい要望に対しても、ただ断るのではなく『こういう代替案なら可能です』とスピーディーに提示する。関係者を巻き込みながらスピード感を持って合意形成していくスタンスは、社内全体に根付いている強みだと思います。」
おわりに:データを「意思決定を後押しする材料」へ
今回の鳥取空港での実績を経て、江端の視線はすでに全国の地域課題の現場へと向けられています。
江端:
「行政、交通事業者、そして地域住民の方々など、それぞれの利害や想いが複雑に絡み合う場面において、データを単なる『統計』ではなく『全員が前に進むための意思決定の材料』として設計するプロセスを確立できたことは、大きな収穫でした。このアプローチを全国の他地域にも広く展開していきたいです。
今回のプロジェクトで見えた『短時間滞在者の抽出精度』といった課題にも引き続き向き合い、分析の解像度をさらに高めていきます。データで可視化するだけでなく、合意形成まで泥臭く伴走できるGEOTRAの強みを、これからも磨き続けていきたいですね。」
高度なデータ解析と現場の声を掛け合わせ、地域社会の移動を支えていく――。
GEOTRAではこれからも、社員一人ひとりの想いと熱量を原動力に、データで社会の課題を解決する挑戦を続けていきます。
また本記事を通じて、様々な企業や自治体での人流データ活用の最新事例や、位置情報領域における市場トレンドなどについて、より深く知りたいと思っていただいた方々に向けて、過去のセミナー動画を限定公開しております。詳細は、以下のリンクよりご確認いただけますので、ぜひご覧ください。
セミナー | 株式会社GEOTRA(ジオトラ)

株式会社GEOTRA 公式note|note