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2025年8月、オリグレスはカンパニー制へと移行し、新たな成長ステージへと舵を切りました。その一翼を担うのが、アニメやゲーム、VtuberなどのIPとリアル体験をつなぐ「ファンアクティビティカンパニー」。その新たなCEOに就任したのが、藤澤祐介さんです。
本記事では、代表取締役社長・吉武優さんとの対談を通じて、大企業での葛藤から始まった運命的な出会い、挑戦の連続だった創業期、そしてカンパニー制導入までの軌跡をたどります。
「好き」を仕事にしながらプロとして結果を出すには? 不確実なエンタメ市場で勝ち抜く組織とは? 次なるステージに挑む二人の熱い対話をお届けします。
──まず、藤澤さんの入社のきっかけについて教えてください。
藤澤:前職はKDDIだったのですが、あるときベンチャー企業のオフィスを訪れる機会があって、その勢いにすごく惹かれたんです。KDDIは本当にいい会社で、社員をしっかり守ってくれる。一方で、自分はもっと好き勝手やりたいという気持ちが強く、悶々とした日々を過ごしていました。
30代になって、「いまこそベンチャーで働きたい」と思い、転職サイトに登録したんです。すると、吉武さんから直接メッセージをいただいて。
吉武:当時のオリグレスは、今と比べて本当にアピールできることが何もありませんでした。ちょうど「レジャパス」のリリース前後で、社員も5人。職場もシェアオフィスでした。
そんな中で、藤澤くんから「一度お話を聞いてみたいです」と返信が来たんです。日中に面接して「なんかわからないけど、ここは合う気がしました」と言ってくれて。それでその日の夜にそのまま飲みに行って、二軒目でオファーを出したんです。でも、お互いかなり酔っ払ってしまって、解散も午前2時頃(笑)。翌朝「昨日って、結局どうなったっけ?」と確認する始末。後日、改めて会って、正式にオファーを出しました。
──初対面からそこまで意気投合したのはなぜだったのでしょうか?
吉武:いくつか共通点があったんですよね。たとえば、2人とも母子家庭で育ったこと。それから、大企業で働いていた20代後半〜30代前半の葛藤にも共感できました。
私も電通に勤めていた頃、30歳を前にしてキャリアに迷っていたんです。コンサルへの転職も考えたこともありました。だからこそ、藤澤くんの「このままでいいのか」という気持ちが痛いほどわかったし、「だったら行動しようよ」と素直に背中を押せたんです。
挑戦の現場を支える中間管理職として。二人三脚で築いた成長基盤
──入社してからまず、どんな業務を担当しましたか?
藤澤:最初に取り組んだのは、「レジャパス」の開拓営業です。全国の施設に導入提案をしながら、マネジメントも担当しました。マーケティング以外のほとんどすべてに関わって、「レジャフェス」の立ち上げや、パスシリーズのOEM版・エリア版の企画など、一通り経験させてもらいました。
吉武:私はけっこう突っ走るタイプで、当時は「これはいける!」と思ったら、ガーッと先に進んでしまっていたんです。でも気づくと、誰もついてきていない(笑)。
そこで必要だったのが、私の想いをちゃんとメンバーに伝えたり、彼らのやる気を引き出してくれる中間管理職の存在でした。藤澤くんはまさにその役割を担ってくれて、今に至るまで本当に重要なパートナーです。
途中からは私自身も「独りよがりじゃダメだ」と気づいて、ちゃんと周囲の声を聞くようになりました。たとえば、ある企画を私が「これはイケる」と思っていても、藤澤くんが「いや、それはちょっと……」というならやめるし、逆に彼も「それ、いいですね」と言うならGOする。いわば「藤澤フィルター」を通す仕組みを取り入れるようになりました。
──これまでのオリグレスを振り返って、どんな会社だったと思いますか?
藤澤:本当に、ずっと挑戦の連続でしたね。管理された組織というよりは、個々が走りながらかたちをつくっていく。みんなで必死に頑張る、そんな雰囲気でした。
良く言えば大胆で挑戦的、悪く言えば無秩序。でも、スタートアップってどこもそういう時期を通るものだと思っています。
吉武:ほんと、生きるのに必死だった(笑)。
藤澤:明日どうするか、来月どう乗り切るか。そんな短期的かつ短絡的な目線で働かざるを得ない時期がありました。でも、資金調達を経て、少しずつ会社としての安定感が出てきました。そうなると、自然と次のフェーズ、つまり体制を整えることが求められてくるんです。
ただし、「整える=保守的になる」というわけではありません。僕たちはベンチャーなので、挑戦の火は消しちゃいけないと思っていて。無秩序の中で生まれたカルチャー、たとえば、みんなが全力でやり切ること、誰もサボらないこと、しんどいときでも励まし合う空気感。それは守っていきたいですね。
そのうえで、これからは“秩序ある挑戦”が大事になると思います。個人の情熱を土台にしながら、しっかりと管理体制や仕組みも整えて、もう一段高いレベルで挑戦し続ける会社になっていきたいですね。
吉武:藤澤くんには、私にないものを持っているんです。だからこそ、彼の強みを活かしながら、さらに彼が成長するステージを用意したいと思いました。成長を後押しするのも、社長としての自分の役割だと考えています。
「ここにいる意味」がある。カンパニー制で始まる、新たな旗振り役としての覚悟
──その一手が、今回のカンパニー制の導入ということですね。
吉武:はい、そうです。会社としても、次の成長段階、つまり上場を視野に入れるなら、今のままの体制では限界があります。もっと私が先に進めるような体制をつくる必要があるし、同時に若手が裁量を持って自分のテリトリーをしっかりと守りながら攻めていくような組織にしたい。そのための「カンパニー制」なのです。
吉武:これまでは、私が前に立って突っ走り、藤澤くんには中間管理職的な立場で、現場の声を拾ってボトムアップしてもらっていました。でもこれからは、ファンアクティビティカンパニーのCEOとして、自らが旗を振って、みんなを引っ張っていってほしいです。
もちろん、今の強みだけでやりきれるとは思っていません。必ず課題は出てくるし、それを克服し、軌道修正しながら進んでいくことで、より肉厚なビジネスマンになっていってほしい。そんな成長への期待を込めています。
藤澤:このお話をいただいたときは、とてもありがたかったです。自分は特別上昇志向が強いタイプではないんですが、それでもこの機会は貴重だと感じました。というのも、こういう経験って、ベンチャーだからこそ得られるものですし、何よりも「ここにいる意味」がそこにあると思ったんです。
ワクワクする気持ちはもちろんあります。ただ同時に、それだけ厳しい環境であることも自覚しているので、身が引き締まる思いです。
──藤澤さんは、ファンアクティビティカンパニーをどのような組織にしていきたいと考えていますか?
藤澤:まず大前提として、このカンパニーは、今まさにマーケットが広がっているエンタメ領域を事業対象にしています。だからこそ、最も重要なのは人材だと思っています。プロフェッショナルな人材がしっかり育てば、ビジネスは成功すると信じています。
私が目指しているのは、「プロとしてのスキル」と「エンタメへの好奇心・情熱」を兼ね備えた人たちが集まる組織です。単なる「好き」ではなく、それを仕事として磨ける人。その両輪を持つ人材が集まれば、結果として数字は自然とついてくると考えています。
──「好き」という気持ちを、仕事に活かすために必要なことは何だと思いますか?
藤澤:なぜその作品が好きなのか、どの部分に心が動いたのかを、ちゃんと自分で分解して、理解することが大切だと思います。そうやって感情の解像度を高めていくと、他の作品や、ジャンルの違うエンタメにも応用が効くようになります。
だからこそ、私はよく「好きを大切にしてね」とメンバーに伝えています。なぜかというと、もし「好き」という感情そのものを失ってしまったら、たとえ他のコンテンツを担当することになっても、ファンの気持ちがわからなくなってしまうからです。
でも自分の中に、「自分はこういう部分に感動した」「こういう体験が好きだった」という原体験が残っていれば、「自分がこうだったから、ファンもこう感じているんじゃないか」と、ちゃんと想像できるようになる。それが、この業界でプロフェッショナルとして生きていくうえで、すごく重要だと思っています。
「楽しい」だけでは終わらせない。“勝ち癖”で証明する象徴としての使命
──吉武さんが、藤澤さんやファンアクティビティカンパニーに期待していることは何ですか?
吉武:藤澤くんのもとに集まるメンバーはすごくモチベーションが高くて、団結力もあります。だから、良い雰囲気で仕事が進むこと自体には全く心配していません。
ただ、ビジネスとしてプロである以上、「楽しい」だけでは不十分です。これまでの経験上、結果が伴わないと、だんだん不安が募ってきてしまう。「まあ未達だけど、そのうち…」と見て見ぬふりをすると、それが組織の中でわだかまりの種になる。
そうならないように、ちゃんと中間中間で成果を出していこうよと。いきなり大きな花を咲かせることも大切だけど、むしろ各メンバーが小さな成功体験を積み重ねて勝ち癖をつけていくことのほうが、今は重要だと思っています。
ファンアクティビティカンパニーが、序盤の3か月でしっかりと「いい立ち上がり」を見せてくれたら、きっと他のチームも注目して、やり方を真似するようになります。8月〜10月が勝負ですね。「お、イケそうじゃん」と思わせてほしいですね。
藤澤:私も「結果が出せなければ、それは仕事じゃない」と思っています。なので、結果に対する意識付けは、これからもしっかり行っていきます。
ただ、「結果を出そう」と言うだけでは足りなくて、どうすればその結果にたどり着けるのか、道筋を明確にすることが重要です。
「この結果を出したいなら、AではなくBを選ぶべきだよ」といった具合に、ゴールから逆算して導いていくこと。それを徹底してやっていきたいと思っています。
吉武:ファンアクティビティカンパニーって、オリグレスの中でも比較的、社歴が長い社員が多いチームなんです。だから、一番カルチャーを色濃く継承している組織だと思っています。
いい意味でオリグレスらしさが凝縮されていて、会社の象徴的な存在。ある種の華やかさもあるので、逆に言えば、ここが失速してしまうと、会社全体にネガティブな影響が波及しかねないと感じています。
そこは正直、賭けの側面もあるけど、私は「うまくいく」と信じて、そこに全力で張ったつもりです。
藤澤:私もその自覚はあって、すごくエネルギッシュで、本音で向き合えるメンバーが揃っていると感じています。
「これって本当に面白いんだっけ?」とか、「ユーザーは本当に満足してくれてる?」とか、そういう血の通った問いをきちんと立てられる。そういう意味でも、ビジネスの筋が通っているチームだと思います。
不確実なエンタメ市場を攻略せよ!成果を生むPDCAと「組織効力感」を高める文化
──初速で結果を出すことが求められていますが、実現するために何をすべきかを考えていますか?
藤澤:大切だと思っていることが2つあります。1つ目は、「再現性のあるPDCAロジックをつくる力」です。エンタメビジネスって、波が非常に激しい業界です。たとえばITビジネスなら、「この課題にはこのソリューションを」とある程度予測が立てられますが、エンタメは突然のトレンドや社会的なムーブメントによって状況が一変します。
だからこそ、不確実性の高い中でも、確実に回せるPDCAの型をつくることが必要だと思っています。チームには、その力をこれから養ってほしいですね。
2つ目は、「褒め合う文化の強化」です。どれだけ力があっても、自分の貢献が実感できない環境だと、人はモチベーションを失ってしまいます。だから、「この組織に貢献できている」「このチームなら達成できる」という実感=組織効力感を、ちゃんと可視化することが大事だと思うんです。
そのためには、お互いをきちんと褒め合う文化を育てていく必要があります。「ちゃんと見られている」「認められている」と感じられる環境が、人を強くすると思っています。
この再現性のある仕組みと、お互いを認め合う文化を根づかせていくことで、ファンアクティビティカンパニーはさらに強いチームになれると信じています。
──最後に、吉武さんから藤澤さんへのメッセージをお願いします。
吉武:まずは「自分なりにやってみてほしい」と考えています。自分で決断する回数こそが、本当の成長につながると思うんです。
藤澤くんの今の実力だけじゃなくて、これまでの実績やこれからの可能性を見ても、十分にそれが実現できるポテンシャルがあると思っているからこそ、こうして抜擢しました。
もちろん、最初から大きく勝とうとしすぎると無理が出る。だからこそ、ローゲーム(コスト意識を重視した筋肉質なマネジメント)で勝利してほしいです。それが板についてきたら、大きく勝負していく。最終的には競合と双璧をなし、超えていく存在になっていってほしいです。このファンアクティビティカンパニーに所属している社員全員が、「我こそがオリグレスを牽引しているんだ」と、自覚が芽生える状態を目指したいですね。