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ファンアクティビティカンパニー新CEOインタビュー
2025年8月、オリグレスの組織は新たなフェーズへ。社内カンパニー制への移行に伴い、「ファンアクティビティカンパニー」と「エンタメプラットフォームカンパニー」が発足します。アニメやゲーム、VtuberなどのIPとリアル体験をつなぐ「ファンアクティビティカンパニー」の新CEOに就任したのは、藤澤祐介さん。
KDDIでの法人営業やDX推進を経て、スタートアップ期のオリグレスに参画し、常にファンの熱量と向き合い続けてきました。今、新たな経済圏を形成しつつある「推し活」の最前線で、藤澤さんはどのようなビジョンを描き、新生カンパニーをリードしていくのでしょうか。その展望に迫ります。
「好き」を原動力に。ファンと推しをつなぐ体験のインフラを築く
——はじめに、これまでのご経歴やオリグレスに入社されたきっかけについてお聞かせください。
藤澤:前職のKDDIでは9年間、法人営業からDX推進まで幅広く担当し、AI、IoT、ビッグデータなど、最新技術に関するIT知識やプロジェクトマネジメント力、課題解決型の提案力など多様なスキルを学びました。30歳を迎えコロナ禍を経て、もっと人の心を動かす仕事がしたいと思い、当時少人数で立ち上げたばかりのオリグレス(旧ORIGRESS PARKS)にジョインしました。
入社後は定額制パス事業の営業組織の立ち上げから、CRMや業務フローの整備、大手企業とのアライアンス及び新規事業の立ち上げ、他にも観光庁の補助金事業や、OEM展開(他社ブランドでの共同展開)などを担当しました。その後、現状関わっているIPを活用した事業に取り組んでいます。
——藤澤さんがCEOを務めるファンアクティビティカンパニーについて、あらためてどのような組織かご紹介いただけますか?
藤澤:ファンアクティビティカンパニーは、アニメ・ゲームなどの作品やVtuber・アーティストなどのIPホルダーさまと連携し、全国のレジャー施設さまとのコラボイベントやグッズ開発を行っています。
私たちの役割は、ファンの方々が愛する作品やキャラクターを「リアルな体験」として楽しめる場をつくることでして、例えば、人気アニメの世界観を再現した期間限定イベントや、推しのキャラクターとの特別な体験ができる企画、さらにはその場でしか手に入らない限定グッズの開発まで、ファンの皆さまの「推し活」を支える幅広いサービスを提供しています。
この取り組みを行ううえでの私たちの大きな強みとして、オリグレスが培ってきた「レジャパス」というプラットフォームを通じて構築した施設ネットワークがあります。全国各地にある水族館、遊園地、温泉施設、ミュージアムなど、多様な施設と連携することで、IPの世界観に最も適した「場」を選んで、ファンの皆さまに特別な体験をお届けしています。
こういったイベントの企画を通して、「ファンとIPをつなぐ体験のインフラ」のような持続可能なエンターテインメントの仕組みを構築していきたいと考えています。
——ファンアクティビティカンパニーのCEOとして新たなスタートを切られましたが、現在の率直なお気持ちをお聞かせいただけますか?
藤澤:正直なところ、「ワクワク半分、身の引き締まる思い半分」というのが今の心境です。
ワクワクする理由は、何よりこの領域が私自身の「好き」に直結していますし、市場としても大きな可能性を感じているからです。グローバルのアニメ市場は2024年に約12.3兆円、2025年には13.5兆円に拡大し、2034年には30.6兆円になると予測されています(※1)。日本の推し活市場も約3.5兆円に膨らんでおり、推し活人口は1,400万人を超えました(※2)。
こういった大きな流れがある中で、オンラインで育ったファンが「リアルでも楽しみたい」と動き始めている流れが、世界中で加速していると感じてます。まさに今、ファンの皆さまが求める体験と市場の成長が重なり合う、絶好のタイミングだと感じています。
一方で、身の引き締まる思いがあるのは、カンパニーCEOという立場が独立採算の事業責任者である点です。8月から始まる社内カンパニー制では、予算も人事も事業の意思決定も、自分の責任で進めていく必要があります。
これまではイベントやプロジェクト単位で成果を積み上げてきましたが、これからは「組織として事業を育て切る」フェーズに入りました。視野も、目の前の案件から上場を目指すロードマップへと大きく広がっています。
※1 Precedence Research「Anime Market Size Hit Around USD 203.68 Billion by 2034」参照(外部サイトを開く)
※2 推し活総研「2025年 推し活実態アンケート調査」参照(外部サイトを開く)
三方よしの体験を実現するために。挑戦と設計で築くチームのかたち
——これまで培ってこられたご自身の強みを、ファンアクティビティカンパニーではどのように活かし、どんな組織づくりを目指していきたいとお考えですか?
藤澤:私の強みは、大きく言うと「翻訳」と「設計」にあると考えています。
「翻訳」とは、ファンの方々が作品に注ぐ熱い想いと、ビジネス上の数字や制約とを行き来しながら、両者が同じゴールを描ける言葉に変換していく力です。IPホルダーの皆さまと向き合うときは、作品の世界観を丁寧に守りながら現実的な企画に落とし込み、施設運営者の方々とは、収支やオペレーション面の細かい部分まで確認しながら、関係者全員が納得できる形をつくるよう努めています。
ファンの理想とビジネスの制約の間には、どうしてもギャップが生まれます。だからこそ、その落としどころを丁寧に設計し、三者すべてが納得できるバランスに近づけていく。ファン、IPホルダー、体験施設さまの三者すべてが満足できる、三方よし状態の「設計」を追い求めています。
そのためには、組織自体の設計もとても重要になってきます。私がイメージしているのは、クリエイティブな感性と事業推進力をあわせ持ったチーム。作品の世界観を守りながらリアルイベントに落とし込む人、装飾や導線設計・グッズ開発までファン目線で仕切る人、そして現場運営を安心して任せられるオペレーションの司令塔。そうしたプロフェッショナルが一体となって動くことで、質の高い体験を、きちんと収益にもつなげられるようになると思っています。
その実現に向けて、私自身が大切にしているのは「愚直に学び、果敢に挑む」というシンプルな姿勢です。小さなPDCAを何度も繰り返しながら、まずはしっかりと基盤を築き、将来的にはその仕組みを国内全域・海外にも展開していく。そんな目標で頑張っております。
——今、感じている課題や乗り越えるべき壁はどのような点でしょうか?
藤澤:現時点では「手数が足りない中でのやりくり」です。ファンアクティビティカンパニーは今、少数精鋭のチームで動いていて、企画の密度や現場対応には自信を持っていますが、同時に走らせられる案件数には限界があります。
市場の成長スピードを考えれば、今以上のペースでイベントを展開しなければ、ファンの期待や、IPホルダー・施設さまからの引き合いに応えきれなくなる可能性があります。質を落とさずに人数を増やし、かつ組織をフラットなまま機能させていく。その人員計画と組織設計が、当面の第一のチャレンジです。
もう一つの課題は、「挑戦的な企画を打ち出す回数がまだ足りていない」という点です。これまで培ってきたノウハウを活かし、高品質なイベントを安定的に提供できる力はついてきましたが、ファンの皆さまからは「次はどんな驚きをくれるのか」という期待が常に向けられています。
そうした期待に応えるには、未知の技術や異業種とのコラボなど、少し枠をはみ出すような挑戦が欠かせません。こうしたチャレンジを繰り返す文化を、組織全体に根づかせていきたいですね。
感情が動く現場から、数字が動く組織へ。ファンの笑顔と事業成長をつなぐ
——オリグレスグループ全体のなかで、ファンアクティビティカンパニーにはどのような役割が期待されていると感じていますか?
藤澤:ファンアクティビティカンパニーは、オリグレス全体の「成長エンジン」だと捉えています。オリグレスにはBtoB向けの集客支援やプラットフォームなど多彩な事業がありますが、ファンと直接向き合い、リアルな反応や改善のヒントを受け取れるのは、私たちの現場だけです。
そんな私たちに求められる価値は、主に二つあると思っています。一つは、売上や利益といった数字で示せる成果。もう一つは、イベントの動線や購買行動、SNS上の熱量といった「生きたデータ」です。これは、新しいIP企画や他カンパニーのマーケティングを後押しする重要な材料になります。
リーダーとして大切にしているのは、その使命をチームの一人ひとりが自分ごととして語れるようにすることです。ただ数字に追われるのではなく、「自分が仕掛けた演出で、お客様が本気で喜んでくれた。その喜びが会社の力になる」という手応えを、プロジェクトを通じて実感してもらいたい。だからこそ私は、成功も失敗もオープンに共有し、決裁のスピードと振り返りの密度の両方を高めるチーム運営を心がけています。
こうした挑戦と学びの循環をチーム全体で回していくことで、ファンアクティビティカンパニーがオリグレスの成長をリードし、確実なものにしていきたいと思っています。
——これからファンアクティビティカンパニーでともに働くメンバーに向けて、どんなメッセージを伝えたいですか?
藤澤:まずお伝えしたいのは、遠慮せずに「好き」や好奇心をぶつけてほしいということです。私たちの仕事は、作品やキャラクターへの純粋な愛情がエネルギー源になります。好きだからこそ気づける細かなこだわりや、心を動かす演出、粘り強くやり切れる情熱、そうした感情が、最終的にファンの満足度を高め、ビジネスを前に進める原動力になります。
同時に、ファンアクティビティカンパニーはまだ成長途中のチームです。前例のないことにも多く直面しますし、明確な正解があるわけではありません。だからこそ、「まずはやってみる」「やったからには何かを学び取る」といった姿勢を大切にしていきたいです。挑戦のなかでミスや想定外が起きるのは当然のことですが、それを恐れるのではなく、学びに変えていく文化を、カンパニーのなかに根づかせていきたいと思っています。
私たちがつくる体験は、誰かの人生に残る大切な1ページになるかもしれません。その責任と誇りを胸に、アイデアを磨き、数字と向き合い、現場で汗をかく。そのプロセスを一緒に楽しみながら形にしていけたら嬉しいです。
——最後に、この記事を読んでくださっている皆さまへメッセージをお願いします。
藤澤: お客さまとして、応援サポーターとして、事業パートナーとして、あるいはチームの仲間として、どのようなかたちでも構いません。皆さまとご一緒できる日を、心から楽しみにしています。