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医療は科学か、それとも芸術か?AI時代に問い直す医師の役割
進化する科学と見過ごされてきた医療の本質現代医療は、科学の驚異的な発展を背景に、目覚ましい進歩を遂げてきました。感染症の克服、臓器移植、ゲノム医療など、かつては想像もできなかった治療法が現実となり、多くの人々の命と健康を守っています。病気のメカニズムを分子レベルで解明し、エビデンスに基づいた診断と治療を標準化する流れは、医療の質と安全性を向上させる上で不可欠なものでした。現代医療は紛れもなく”科学としての医学”に支えられています。しかし、科学の進歩に目を奪われる一方で、私たちは医療の本質、すなわち「人を診る」という原点に立ち返る必要性を強く感じています。「病気」という客観的な事象の背後に...
医師の仕事は、ただ“診る”ことではない
「医師の仕事って、結局なんだろう?」そんな問いを、僕はこれまでに何度も繰り返してきました。もちろん、病気を診断し、治療し、回復へ導くことが仕事です。そのために医学部で6年間、勉強をしてきました。でも、日々の診療の中で、「それだけで本当に十分なんだろうか」と感じる瞬間があります。医療とは科学なのか、人の心に触れる営みなのか。その答えを、ある患者さんとの出会いが教えてくれました。病名ではなく「日常」が奪われていた患者さんある日、僕の外来に長年副鼻腔炎に悩んできた患者さんがいらっしゃいました。鼻づまりがひどく、香りも味も感じられず、食事が楽しくない。季節の花の香りもわからない——そう話すその方...
医療者の誇りと患者の希望をつなぐ—カルテ入力より人と向き合う時間を取り戻す挑戦
「患者を診るより書類を書く医師」という矛盾「先生にもう少しこちらを見て話を聞いてほしい」誰もがたいていの医師に対してこう思うでしょう。僕自身が医療機関を受診したときも、ほぼ例外なくもっとこちらを見て対話してほしいと思います。患者さんの目を見るよりも、画面に向かってタイピングする時間のほうが長い——。 私が医師として働く中で、この違和感は日に日に強くなっていきました。でも、医師を含む医療者も、もっと患者さんに向き合いたいのです。そのために医療職を志したからです。でも、人でなくてもできる膨大な雑務、——カルテ入力、FAXでのやり取り、紹介状作成、電話での問い合わせ…——本来、患者さんのケアに...