幸せな人間関係のつくり方
ここでは、心理学の一分野であるTA(交流分析)の知見をベースに、誰もが実践できる人間関係構築の技術と心構えを、僕自身の体験を交えながら分かりやすく解説します。
◯たった3日で父との関係を変えた「本当の挨拶」とは?
「挨拶なんて、ただの形式でしょ?」そう思っている方もいるかもしれません。しかし、日常のありふれた「挨拶」という行為には、こじれてしまった人間関係を劇的に改善するほどの、驚くべき力が秘められています。
伝説の「ナタ事件」の後、僕と父の関係は完全に冷え切っていました。この状況を何とかしたいと心理学の先生に相談した僕が受けたアドバイスは、あまりにシンプルなものでした。「毎朝、お父さんに『おはようございます』と挨拶しなさい」。
正直、半信半疑でした。案の定、2週間続けても父からの返事はなく、無視され続けました。先生に報告すると、「あなたはちゃんとやっていない」と言われます。「やってみせて」と言われ、僕が「お父さん、おはようございます」と言うと、先生はこう指摘しました。
「あなたはただ言葉を発しているだけ。お父さんと仲良くなりたいんでしょ?だったら、その想いを込めて、『私はあなたと仲良くなりたいと思っています』という気持ちを、表情と言葉と態度で表現しなさい」と。
目から鱗でした。僕は、ただの作業として挨拶をしていたのです。次の日から、僕は満面の笑みで、心からの想いを込めて「お父さん、おはようございます!!!」と挨拶を始めました。すると、どうでしょう。3日目には、父から「…おはよう」と小さな返事があったのです。そして1週間後には、父の方から挨拶をしてくれるようになりました。この体験は、僕にコミュニケーションの本質を教えてくれました。言葉そのものではなく、その裏にある「想い」や「意図」こそが、人の心を動かすのだと。
◯「自分を知る」ことからすべては始まる(TA交流分析入門)
人間関係の悩みの多くは、「なぜ、あの人はあんなことを言うのだろう」「なぜ、自分はこう感じてしまうのだろう」という、他者と自己への不理解から生まれます。他者との良好な関係を築くための、全ての土台となるのは、まず自分自身を深く知ること、つまり「自己理解」です。
僕が人間関係を学び直すきっかけとなったのが、**TA(交流分析)**という心理学の理論です。TAは、アメリカの精神分析医エリック・バーン博士によって開発されたもので、私たちのコミュニケーションや心の動きを、誰にでも分かりやすく分析できるようにしたシステムです。
TAの根底には、非常に力強く、希望に満ちた考え方があります。それは、創始者エリック・バーンのこの言葉に集約されています。
「過去と他人は変えられないが、自分と未来は変えられる」
私たちは、つい他人を変えようとしたり、過去を悔やんだりしてしまいますが、それは大変で不可能なことだと思います。
しかし、自分自身の考え方や行動、そして、それによって創られる未来は、いつでも自分の意志で変えることができる。
TAは、そのための自己理解と自己成長を促す、非常に実践的で強力なツールなのです。
この学びは、僕に「自分の問題は自分のものだ」という自覚と、「自分は変われる、未来は変えられる」という希望を与えてくれました