「なんであの人はああしてくれないの?」「こっちの気持ち、少しくらい察してよ」「普通こうするでしょ」——
日常の中で、そんなモヤモヤを感じたことはありませんか?
職場の同僚に、家族に、友人に。関係性がギクシャクする時、多くの場合、その背景にあるのは“期待の押し付け”です。本人にそのつもりがなくても、「こうしてくれるはず」と一方的に期待し、それが裏切られたように感じてしまう。その積み重ねが、関係のひび割れを生むのです。
「がっかり」は、勝手に期待していた証拠
私たちは、つい無意識のうちに「相手はこうしてくれるだろう」と思い込んでしまいます。
たとえば、仕事を手伝ってくれると思っていたのに放っておかれた。誕生日を覚えてくれていると思ったのに何も言われなかった。そんなとき、「冷たい」「気が利かない」と、相手を責める気持ちが湧くかもしれません。
でも、それって本当に相手が悪いのでしょうか?
もしかすると、その期待は「あなたの中にだけあった基準」であり、相手には一切伝わっていなかったのではないでしょうか。
つまり、「がっかりした」という感情の多くは、相手の行動が悪いのではなく、「自分の中の期待」と「現実」とのギャップによって生まれているのです。
期待を“押し付け”にしないためには、伝えることが必要
期待を持つこと自体は悪いことではありません。人間関係にはある程度の期待や信頼が必要です。ただし、それを“前提”として相手に押し付けてしまうと、そこに摩擦が生まれます。
では、どうすればいいのか。
答えはシンプルです。**「自分が求めていることを、きちんと相手に伝える」**ということ。
「私はこういう時に声をかけてもらえると嬉しい」
「こういう対応をしてもらえると、助かる」
「大事な日は覚えてくれてると、安心できる」
こうした自分の価値観や望んでいる行動を言葉にして伝えることで、期待は“押し付け”から“共有”に変わります。
あなたの期待は、「前提」として伝えられてる?
もうひとつ大切なのが、「自分がどんな前提で相手を見ているか」に気づくことです。
たとえば「社会人ならメールの返信は24時間以内が常識」と思っているとします。でもそれは、あなたがそう教わってきた、あるいはその文化に慣れてきたからであって、相手にとってはそうではないかもしれません。
こうした“自分にとっての当たり前”が、相手にはまったく共有されていない可能性があります。
つまり、トラブルの原因は「価値観の不一致」ではなく、「価値観が共有されていなかった」という“前提の食い違い”にあるのです。
「私にとってこれって大事なことなんだ」と、事前に伝えること。それだけで無用な摩擦はかなり減らせます。
期待通りに返ってこなかったとき、まず“知る努力”を
それでも、こちらが望んでいた反応が返ってこないこともあります。
そんなときに大事なのは、相手を否定する前に、「この人はなぜそうしたのか」を知ろうとする姿勢です。
「なぜその言葉をかけなかったんだろう」
「どういう考えでその判断をしたんだろう」
相手の背景や価値観に目を向けてみると、自分とは違う正しさや優しさに気づくことがあります。たとえば「あえてそっとしておいた方がいいと思った」など、実は相手なりの思いやりだったというケースも少なくありません。
期待が裏切られたと感じたら、怒る前に、まず「なぜ?」を問いかけてみること。それが、関係を壊さずに済む知的なアプローチです。
「してくれるはず」「するのが当たり前」は、ちゃんと伝えよう
「親ならこれくらいしてくれるはず」
「恋人ならこれを気づくのが当然」
「上司ならこうあるべき」
——こんなふうに、私たちは知らず知らずのうちに、役割や立場に期待を重ねています。でもそれは、自分の中だけの基準でしかありません。
もし「〜するのが当たり前」と思うことがあるなら、イライラする前に、その基準を相手に共有することが大切です。
「私にとっては、こういう対応が普通なんだけど、あなたはどう思う?」
「これを大事にしてるから、やってくれると嬉しい」
そんなふうに対話を通じて、お互いの期待値を調整していく。それが、良好な関係を築くための基本です。
まとめ:伝えることで、関係は守れる
人間関係が壊れるとき、多くの場合「伝えていなかった期待」が関係をこじれさせています。
- 相手にがっかりするのは、期待を伝えていなかったからかもしれない
- 自分の求めていることを、正しく言葉で伝えよう
- 相手が悪いのではなく、前提が共有されていない可能性を考えてみよう
- 期待通りでないときは、相手の考えを理解しようとする姿勢が大切
- 「してくれるはず」と思う前に、その“基準”を話し合おう
「わかってくれない」と感じるとき、まず自分自身に問いかけてみてください。
「ちゃんと伝えようとしていたか?」
伝えようとする努力が、期待を押し付けではなく“信頼”に変える第一歩です。