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MEMBER
ANA X株式会社
デジタルマーケティング部 デジタル戦略チーム マネジャー 大日向 健人氏
デジタルマーケティング部 コミュニケーション企画チーム 飯田 ちなつ氏
デジタルマーケティング部 コミュニケーション企画チーム 猪狩 智美氏
アポロ株式会社
Business Division Consulting Unit マネジャー 熊坂 惟
Business Division Consulting Unit コンサルタント 小原 真平
DDD Division DS・AI Unit コンサルタント 早川 朝康
プロジェクトサマリー
背景
ANAグループは近年デジタルマーケティングの領域に注力している。ANAグループの顧客マーケティングを担うANA X社においても約4,000万人のマイレージクラブ会員に対して、個々の要望・嗜好性に寄り添った施策(パーソナライズ施策)を推進しており、年間100本以上の施策を行っている。
課題
施策の推進・拡大にあたって、課題となっているポイントが2つあった。
1つ目は、施策の管理がアナログで行われ煩雑化していたということ。
施策の企画・実行における各種情報の管理をエクセルやスプレッドシートによって行っていたため、情報の正確性や網羅性を管理するには社員の業務量の多くを使用している状態であった。これにより施策1本あたりに要する時間も多くなっていた。
2つ目は、ターゲティングや効果試算・検証におけるデータスキルが不足していたこと。
施策が高度化するにつれて、対象者の選定や効果試算及び検証もより複雑になり、社員が扱えるデータ環境も限られていたことから、データの取り扱い全般を外部ベンダーに委託していた。これにより、施策実行のコスト増になり、コスト効率が悪化する状況になっていた。
これらの課題は以前から認識しつつも、どちらの改善も一時的には施策の本数を減らすか、一時的な増員を図るかが必要であり、なかなか改善に着手できずにいた。
結果として、コスト効率が低く、施策本数も頭打ちの状況にあったと言える。
解決
アポロは、ANA Xのデジマケ業務に関する知見及びデータ分析を支援してきた実績から、前述の2つの課題を同時に解決するためのツール開発を提案した。
ツールは、施策管理部分についても一般のMAツールでは対応しきれないANA X特有の業務実態に対応可能なものであり、対象者選定や効果検証などのデータを扱う業務においても、複雑なデータ分析のスキルを要することなく、スムーズに実施できる仕組みを提供するものであった。
これにより、従来から抱えていた業務改善のジレンマを一気に解消することができ、今後の施策本数の増加や外部委託コストの削減を可能にする業務環境を整えることができた。
(左手前)ANA X株式会社 デジタルマーケティング部 デジタル戦略チーム マネジャー 大日向 健人氏, (左中央)デジタルマーケティング部 コミュニケーション企画チーム 飯田 ちなつ氏, (左奥)デジタルマーケティング部 コミュニケーション企画チーム 猪狩 智美氏, (右手前)アポロ株式会社 Business Division Consulting Unit マネジャー 熊坂 惟, (右中央)Business Division Consulting Unit コンサルタント 小原 真平, (右奥)DDD Division DS・AI Unit コンサルタント 早川 朝康
年間100本以上のパーソナライズ施策を行う上での課題とは
ANA X 大日向氏(以下、大日向):
我々デジタルマーケティング部コミュニケーション企画チームでは、約4,000万人のANAマイレージクラブ会員のお客様に、ANAの主力事業である航空旅客サービスに加え、旅行やEC等のライフソリューションサービスといったANAグループが展開する商品やサービスの認知向上・利用促進を目的としたデジタルマーケティング施策の立案・設計・実行を行っています。
特に昨今では、全会員に対し同一の施策を行うのではなく、商品・サービスの利用実績等が蓄積された顧客データを利用することで、お客様一人ひとりに寄り添ったメールの配信や、Web掲出バナーの出し分け、アプリ通知等の施策を実施することに注力しています。これを”パーソナライズ施策”と呼んでいます。
例えば、航空券をご予約頂いたお客様にホテルやレンタカーをおすすめしたり、空席照会を頂いたが予約に至っていないお客様に対しリマインドのメールを配信するといったことを行っています。
アポロ 熊坂:
パーソナライズ施策は順調に進化・拡大を遂げているように見えますが、何か課題はあるのでしょうか。
大日向:
1本の施策を立案・設計・実行するには、まずデータ分析から仮説を抽出し、仮説に沿った施策設計と実装(コンテンツの制作や配信ツールへの設定等)、施策の配信、配信の結果どういったお客様にどれだけ反応頂けたか、当該施策による増収効果はどの程度あったかを検証する、という一連の流れを踏む必要があります。
私たちは、この一連の流れを主にエクセルやスプレッドシートを使って管理・運用してきました。しかしながら、年間100本以上のパーソナライズ施策を配信する中で、配信中の施策およびその対象者の重複や、増収効果を積み上げた結果として目標に対しどれだけ進捗しているか等の各種管理・業務プロセスが煩雑化し、1本の施策を実行するのに時間を要し、社員の業務の多くを占めるようになった結果、現有体制での施策本数増加に限界が来ていました。
また、施策の企画段階における対象者の属性把握等の事前分析や、対象者リストの抽出、効果を検証するためのデータ分析業務について、データ環境やスキル不足を理由に外部の分析ベンダーに頼ってきたこともあり、外部委託コストの高止まりが課題となっていました。
本来は、年間の本数を増やすための業務改善や、コスト効率を高めるための外部委託の内製化を図っていく必要があったのですが、いずれの課題解決もコストや効率を一定犠牲にする必要があり、抜本的な解決方法を考えあぐねていました。
課題解決に向けたマーケティング業務支援ツールの開発
アポロにはマーケティング領域におけるコンサルティング経験が豊富なメンバーが多く、ANA Xのような課題は他のクライアントでもよくあるケースだと認識していましたが、既存のマーケティングオートメーション(MA)ツールで、ANA Xの課題を解決できるものが存在しないことも理解していました。
また、アポロは、これまでパーソナライズを実現するデータ分析支援を行っており、ANA Xで必要な分析レベルも熟知していました。
こうした状況を踏まえ、煩雑化した各種業務プロセスを集約し、効率的に管理するとともに、外部分析ベンダーに依頼してきたデータ分析業務が比較的容易に行える、これまでにない新しいマーケティング業務支援ツールの開発を提案しました。
熊坂:
なぜ弊社のご提案を採用頂けたのでしょうか。その決め手となったポイントを教えて頂きたいです。
ANA X 飯田氏(以下、飯田):
私たちの抱えていた課題は、施策の企画から実行後に至るまでの一連の業務プロセスに亘るものであり、その過程で発生した様々な課題を解決できるツールは見つけることができませんでした。加えて私たちの業務や課題を深く理解頂いた上で、施策が対象とするお客様の重複状況を可視化する機能や、専門性の高い効果検証に対応する機能など、私たちが困っているポイントやこだわりたいポイントに対する提案を頂いたことが決め手となりました。さらに作って終わりではなく、その先の利用の定着や実務での活用までサポートしてもらえるという点も魅力的でまさにコンサルならではの提案でした。
熊坂:
一般的に、業務支援ツールの開発案件となると現場のご担当者様も現行業務の棚卸やツールを活用した新しい業務プロセスに関する討議、要件の確認等、かなりの量のタスクが発生します。今回のマーケティング業務支援ツールの開発フェーズにおいて、どのような点が最も苦労されましたか。
飯田:
私達が行っている業務をツールに反映していく過程に最も時間を要しました。一例を挙げると、施策の企画から設計段階において、これまでは企画担当者が施策の企画書を作成し、会議体の中で設計担当者に対しツールの配信設定等に必要な情報を説明、設計担当者が施策設計シートを書き起こすというプロセスを運用してきました。これをツール上で企画担当者が施策情報を入力するだけで完結する形に置き換える。そのために必要な入力情報は何か、どういった記述・入力方法が良いか、出力フォーマットはどうあるべきか、等を定義する。これを各業務について行っていきました。
本業の傍らで実施するのは大変な作業でしたが、私たちの業務に対する理解が深いアポロのメンバーに担当・推進してもらえたことで、確実に推進することが出来ました。苦労はありましたが、この細かい要件定義をきちんと行ったことが、ツールの実用性を高めることに繋がったと思っています。
ツール導入後の活用と効果
今回開発したツールは、デジタルマーケティング施策の企画から実行まで一連の業務を対象として、これまでの課題を一気に解決するような便利な機能を有しています。
具体例としては、
- 事前分析や効果検証といったより良い施策を立案するためのデータ活用を支援する機能
- 特定施策の対象者を除外したり、配信本数の少ない顧客群を把握するなど、様々な条件で顧客の絞込みを行う機能
- 企画担当により立案・設計された施策情報やツール上で抽出した対象者リストを配信担当者やMAツールにスムーズに連携する機能
- 施策効果を検証し、増収効果額を算出した上で、目標に対する進捗を管理する機能
などが挙げられます。
熊坂:
実際に活用を開始してみて、特にどのような点が便利だと感じていますか。
ANA X 猪狩氏(以下、猪狩):
これまでエクセルやスプレッドシートに点在していた情報が集約されたことによって、施策をカレンダー形式で一覧表示し、いま配信中の施策や来週配信予定の施策が一目で分かるようになった点や、施策対象者を選定する際に特定条件で絞込みを行ったお客様の属性分布を簡単に把握できるようになった点、効果検証のためのSQLクエリが一元管理されツール上で簡単に実行できるようになった点等が挙げられます。特に属性分布の把握や効果検証は、これまで外部委託先の分析官に依頼していたものであり、確実に当初の目的であった業務効率化・外部委託業務の内製化を達成できているものと考えています。
熊坂:
導入したものの定着せずに結局使われなくなるツールもある中で、活用を推進する上で意識されていることを教えて頂きたいです。
猪狩:
今回のツール導入により、これまでの業務が確実に改善されることは部内でも疑いの余地はありませんでした。一方で、既存業務のやり方を変更する過程や、メンバー全員にツールの活用に慣れてもらう、という点は一筋縄ではいかないであろうと考えていました。これについては、マニュアルの配布や操作説明だけで終わらせずに、アポロ社にハンズオン形式で伴走をしてもらうことで、メンバー一人ひとりのツールに対する理解を深めてもらうと同時に、ツールを活用した業務の経験値を高めていきました。
また、ツールや業務がどうすれば今よりも効率的になるか、どのような機能を追加すれば、より内製化が進むか等、メンバーからの意見や要望を吸い上げる仕組みを作ることで、ツール活用を常に自分事として捉えるような環境づくりを意識しました。実際にその中から追加開発に進み、内製化比率の向上に寄与したものも出てきています。
アポロ社は、活用フェーズにおいて、私たちが目指す業務とツールが提供する機能の橋渡し役を担ってくれたと思います。それは、マニュアル作成やハンズオン支援に加え、実際にツールを活用する中で発見した課題や追加要望についてタイムリーに実装することも含め、トータルでの支援があったからだと考えています。
より一層お客様が求める施策を提供できる状態を目指して
熊坂:
締め括りとして、ツール活用における今後の展望、目指す姿についてお聞かせください。
大日向:
業務活用はまだ始まったばかりで、これからが本番になります。現行業務からの移行などで使い始めるまでには当初の計画よりも時間を要しましたが、これから更に活用を進め、施策実行の効率化と外部委託業務の内製化を加速させていきたいと考えています。
また、効率化は目指していたところではありますが、その真の目的は、効率化によって浮いた時間を、業務・ビジネスの更なる発展に充てることにあります。
例えば前述の属性分布や効果検証結果等がツール上で可視化できるようになったことは、効率化・内製化が進んだともいえますが、同時に施策を企画する担当者がいままで以上にデータを読み解き、考えるための材料が増えたとも言えます。この機会を活かし、企画担当者一人ひとりが一層マーケティング視点を養い、ツールを使いこなすことで、よりお客様が求める施策を提供できる状態を目指していきたいと思います。
加えて、いまはデジタルマーケティング部の中でも、私が所属するコミュニケーション企画チームで扱うパーソナライズ施策のみをツールの利用対象としていますが、今後は他のチームにも展開し、部で行っているデジタルマーケティング施策全体を対象とすることで、このツールを軸としてビジネスとデジタルコミュニケーションの連動を図っていきたいと考えています。
アポロ社には、そのような構想を持つ私達と今後も二人三脚で取り組んでもらいたいです。
ANA X株式会社
https://www.ana-x.co.jp/
ANAマイレージクラブを顧客基盤とし、旅行事業、航空販促事業、
ライフサービス事業(EC事業、金融・決済事業、マイル提携)、ソリューション事業を展開。
ANAグループのプラットフォームへの基盤づくりを推進。