未経験から最短5ヶ月で世界に通用するエンジニアを育成する、女性のためのフルリモート型プログラミングブートキャンプ『Ms.Engineer』。2021年春の開講後、すでに複数人の卒業生がエンジニアに転身し、現場で活躍しています。
Ms.Engineerのだむはさんは、2022年6月に開講した3期から講師を務める現役エンジニア。今回は、女性エンジニアのキャリア支援を行うbgrass株式会社・代表でもある彼女に話を聞きました。
ブートキャンプ中、「感動で思わず泣いてしまった」こともあるという彼女。
エンジニアになるために懸命に努力する女性たちをすぐそばで見守りながら、受講生の変化にどのような思いを感じているのでしょうか? 講師自らも心を動かされる、Ms.Engineerの“人生を変える”カリキュラムとは——。
先生ではなく「OJT担当の上司」のように接する
——まずはじめに、現在Ms.Engineerのカリキュラムについて教えて下さい。。
現在は、スターターコースとブートキャンプの2つのコースを用意していて、私は両方のコースで講師をしています。スターターコースは平日の夜や土曜日に開講される4週間のプログラムで、HTMLやCSSだけでなく、Javascriptまで学べて、自分で簡単なWebサイトまで作れるようになるコースです。
スターターコース受講後、トライアウトに通過すると、ブートキャンプのコースを受講することが出来ます。こちらは、短期集中でエンジニア転向を目指すコース。みなさん人生をかけて参加してくださっています。
——だむはさんのMs.Engineerとの関わり方を教えてください。
私はもともとSIerで働いていて、2020年にキャリアチェンジしてWebエンジニアとして働くようになったのですが、当時からIT業界における男女のジェンダーギャップに課題感を抱いていました。女性エンジニア向けの相談・支援プラットフォーム『sister』をつくって、会社立ち上げもしています。
Ms.Engineerでは、2022年3月から、主にシステム開発と講師を並行してやらせていただいています。講師業のほかにも、カリキュラムやコンテンツの作成、スターターコース・ブートキャンプの企画からトライアウト(テスト運用)まで、Ms.Engineerの運用全般にかかわっています。
——指導する際に意識されていることはありますか?
「Ms.Engineerは学校じゃない」とみなさんには伝えていて、私たち講師陣も、先生というより“OJT担当の上司”のような存在になれるように意識しているんです。卒業したらすぐに業界で求められるようなエンジニアになることを目指すカリキュラムなので、指導も、実務のつもりで本気でやっています。
——具体的にはどういった指導をされるのでしょうか?
「どうやってつくればいいですか?」と聞かれても、答えを教えるのではなく、みなさんのやり方を尊重して「今はどうやって作ろうとしているの?」「どうしてそう考えたの?」と投げかけるようにしています。そうすることで、答えを覚えるのではなく、まずは自分で考えてみる力がつくと考えているんです。
コースの内容から、「ハードルが高い」と感じる人もいるかもしれませんが、Ms.Engineerの特徴として、サポート体制も手厚いんです。授業中は講師の他に、私がDiscordで「わからないことはいつでも聞いてください」と伝えて常時待機しているので、もしわからないことがあればすぐに質問することができます。グループワークをする際には、チームごとにメンターがついて、設計上の進め方の認識合わせから相談に乗りますし、受講中は1on1のフォローアップも頻繁に行っているんです。。
個々に対する手厚いフォローがあるので、みなさん最後には難しい課題も自走して取り組めるほど成長しますよ。
少しでも良いモノを仕上げるために懸命に努力する受講生の気合に思わず涙
——だむはさんのなかで、とくに印象にのこっている受講生とのエピソードはありますか?
開講から6週目に、GMOあおぞらネット銀行さんのご協力で、2名ずつのペアに分かれ、GMOさんのシステムを使ってサービスを企画・開発する1週間のワークを実施したんです。スターターコースを終えたばかりだったので、私もすぐにフォローに入れるよう状況を見ていました。
ただ、月曜からの4日間で開発を終え、金曜に発表するスケジュールの中、木曜の時点で進捗が10%にも達していなかったんです。私は「もう、きついんじゃないかな……」と思っていて。
ただ、夜遅くまで一生懸命悩みながら完成に向けて努力しているみんなを見て、すごく頑張っていると思って見守っていました。
——発表前日で10%以下とは、受講生のみなさんも焦っていたでしょうね……。
それが、いざ金曜になると、想像の100倍くらいいいものが完成していたんです。もちろん、細かいバグもあったんですけど、それを補うためにプレゼンで伝え方を工夫したり、技術的な部分を説明したりしていて。
前日まで進捗が10%だったものを80%まで仕上げた、みんなの講座への姿勢や気合に、「めっちゃ頑張ったんだな」と、感動して泣いてしまいました。
——受講生は、このブートキャンプでどう変化したと思われますか?
みなさんつらい時期もあったと思いますが、誰も感情的になったりせず、むしろ想像以上の成果物を出してくれて驚いています。
技術力が身についたのはもちろんですが、私がそれ以上に重要だと思っているソフトスキルがめちゃくちゃ強くなったと思います。
たとえば質問力。Ms.Engineerでは、「まずは自分で調べましょう」と口を酸っぱくして伝えているんですが、その理由は、「相手の時間を無駄にしないこと」がエンジニア業界では求められる傾向にあるからなんです。
——質問の仕方は具体的に、どう変わったのでしょうか。
最初は「エラーが出ました。どうしたらいいですか?」という聞き方だった生徒さんも、今は、私たちが足りない情報を聞き返さなくてもいいように、「こんなエラーが出ています。○○を調べましたが、まだ○○なエラーが出ます。ヒントをください」と、質問をロジカルに組み立てて聞いてくれるようになりました。
もし私が企業の人間で、彼女たちが新人エンジニアとして入社してきたとしたら、「きちんと自己解決する力があるんだな」と関心するレベルに成長していると思います。
本気で人生を変えようとする“意思の強さ”に感銘を受けた
——Ms.Engineerで得られる学びを、独学で得るのは難しいでしょうか。
チーム開発やさっきお話したようなソフトスキルは、1人ではまず学べません。実際にお仕事をする場では、基本的にチームで開発する環境に置かれることが多いと思うので、最初から実践的な場で学べることはすごく価値のあることだと思います。
それに、Ms.Engineerでは(開発の前段階の)設計へのレビューも行っているのですが、独学だとレビューを貰うのも難しいですよね。私たちは“OJT担当の上司のように接する”と言いましたが、その点でも、独学とMs.Engineerのカリキュラムはまったく異なると思います。
——「チーム開発の経験」や「質問力」を独学で培うのは困難ですもんね。あらためて、だむはさんは今の受講生にどんな思いをお持ちですか。
本気でブートキャンプに取り組む意思の強さに、感銘を受けています。ハイレベルなカリキュラムを、これまでプログラミングに触れたことが無い人たちが「人生を変えるんだ」という強い思いで乗り越えている姿に、リスペクトしかありません。
決してみなさん特別なスキルがある方々なわけではなく、ごく一般の方なんです。そういった方々が自分の意志で努力し続けて、自分の足で立とうとしていることに私自身すごく影響を受けていますし、いろいろな場所で「こんなすごい人たちがいるんです!」と紹介しているくらいです。
——最後に、これからエンジニアを目指す女性たちにメッセージがあればお願いします。
私は高校生のときに父を突然亡くして、収入を一本化するリスクがどれだけ大きいかを見てきました。専業主婦(夫)の方を否定するつもりは一切ありませんが、そういった経験を経て、いつでも働き方を変えられる選択肢をもっておくのはやはり重要だと思っています。
日本のエンジニア業界は、男性が約8割。世界を牽引(けんいん)するIT分野に女性がほとんどいないのは危機的状況だと思っていますし、女性がIT業界に入ることで、さらに新しいサービスも増えるはずです。
女性がIT業界で働くことがあたり前になれば、女性の平均収入も上がり、自立しやすくなります。さらに、エンジニアになれば自分で自由にサービスが作れるようになるので、「サービスをつくりたい」「世界を変えられるようなプロダクトに携わりたい」と考えている人にとっては、とてもやりがいのある仕事です。
エンジニアを目指している女性たちには、「みなさんが選ぼうとしている道は間違っていない、どんどん進むべき」だとメッセージを送りたいです。
真に活躍する女性エンジニア育成•輩出を一緒にしませんか?