今回は、雲紙舎が初めてお届けするストーリーをご紹介します。独学でプログラミングを学び、2009年にはmixiソーシャルアプリケーションアワードでグーグル賞を受賞した代表の長屋がどのようにビジネスを立ち上げ、介護福祉分野を対象としたBPO事業に取り組むことになったのか、その軌跡を詳しく語ります。
目次
ビジネスの持つ力に魅了—追い詰められた時にこそ成長できる
最下位エリアを最速で全国1位へ!熱意が最高のパフォーマンスを発揮させた
本の電子化サービスで突然の訴訟。前例のない著作権裁判で得たもの?!
時代を先取りする!介護業界のニーズに応えるBPO事業を開始
請求業務の自動化で、介護業界の「超」生産性向上に挑戦!
ビジネスの持つ力に魅了—追い詰められた時にこそ成長できる
ーこれまでの経歴・起業したいと思った理由を教えてください。
高校時代は将来やりたいことも見つけられず、部活動も中途半端で何とも煮え切らない学生生活を送っていました。日々悶々とした生活を送っていたので友人らしい友人も出来ず、家族の中では私一人だけが浮いている状態。人生の目標を見つけなければという焦りとその目標がなかなか見つからない苛立ち。今振り返ってみると、思春期あるあるな高校生の一人だったと思います。そんな自分の人生を変えるきっかけを作ったのが、名古屋駅の本屋でたまたま手に取ったビジネス書でした。その書籍はビジネスが世の中に与える影響力について書かれていて、政治に嫌気をさしていた自分は「ビジネスって凄い!こんな力があるんだ」と興奮し、初めて人生の目標を見つけた気分になったことを今でも覚えています。
人生の目標を見つけた気分になってからは、その目標を目指してひたすら突き進みました。大学1年生のとき、起業家を目指す学生団体「ETIC.(エティック)」に参加し、大手企業創業者の講演会や、インターンシップマッチングフェアの運営手伝いを中心とした学生生活を送っていました。当時はまだインターンシップって何?という時代で、ETIC.は日本で初めて国内学生向けのインターンシップを事業として展開しようとしていたんですね。やりたいことを見つけてETIC.に辿り着いた自分にとっては、インターンシップでやりたいことを見つけるという事業に妙に共感してしまい、昼も夜もETIC.中心の学生生活を送る破目になってしまいました。
大学卒業後はすぐに起業する意気込みでいたものの、なかなか自分の取り組みたいテーマを見つけることはできませんでした。そのため、一度社会人経験を積もうと決意し、チェーン店を全国展開する大手企業の子会社に新卒で入社することにしたんですね。
最下位エリアを最速で全国1位へ!熱意が最高のパフォーマンスを発揮させた
ー就職してみて気づいたこと、苦労や良かったことを教えてください。
その会社に決めた理由は、たまたま就職説明会で担当者と話す機会があり、印象が良かったからです。競争の激しい大手企業や人気IT企業といった勝ち組企業よりも、中小企業の方が競争が少なく幅広いビジネス経験が積めるのではないかという逆張りの考えがありました。
私の仕事は、担当エリアの複数の店舗マネジメントを一人で行うというものでした。もともとサラリーマンになるつもりはなかったですし、当時は自意識も高すぎて周囲は皆「馬鹿」に見えてしまい、上司の話も素直に聞けませんでした。こんな社員は会社の人全員から協力してもらえるはずもありません。入社して仕事にも慣れ始めた3年目には上司といざこざを起こしたことがきっかけで岐阜から山口に転勤という辞令が発令。前任者がほとんど仕事をしていない、全国で売上最下位のエリアに飛ばされてしまいました。
他のエリアでの店舗経験でPDCAを回して数値を改善する経験があったため、店舗改善の勝ち筋(仮説)は既に見つけていましたが、一人では何もできません。どんなに業績がボロボロの店舗でも、残されたスタッフの中には一緒に改善に向けて頑張ってくれる熱意あるスタッフはいるものです。そんなスタッフを見つけスタッフの将来ビジョンを共有し、改善に向けて走り始めると、「えっ、こんなに頑張るの?凄い!」と私がドン引きするぐらい自走してくれたんですね。スタッフの自走ぶりに慌ててついていく(フォローする)だけの私。ただそれだけで、全国最下位だったエリアがわずか10カ月で最上位に急上昇したのです。遠くへ行きたい(大きなことを成したい)ならみんなで行け!を初めて体感した出来事でした。
本の電子化サービスで突然の訴訟。前例のない著作権裁判で得たもの?!
ーようやく自分のビジネスを始めた直後、裁判沙汰になったとお聞きしましたが?
最初から数年で辞めるつもりで入社した会社でしたが、4年間の経験を通じて、人を見る目を養い、育成し、人を動かし、お店をよくしていくというビジネスの本質に触れることができました。学生時代は人をまとめる等のリーダーシップを発揮することが苦手で、嫌なことがあるとすぐに顔に出てしまい他責にしてしまうような未熟な自分でも、人をマネジメントする環境に強制的に身を置くと何とかなるものだということが分かりました。
退職後、趣味で開発したアプリが2009年にmixiソーシャルアプリケーションアワードでグーグル賞を受賞したこともありましたが、本格的に事業を始めたのは、amazonが電子書籍リーダー「Kindle」を発売した時です。この新しい市場に可能性を感じ、専門家を対象とした紙冊子の電子化サービスをリリースすると、すぐに多くの反響を呼びました。しかし、予期せぬことに著作権侵害で訴えられ、窮地に追い込まれることになったのです。
違法性を主張する著名作家7名(大手出版社)に対し、著作者団体、利用者団体、弁護士、学者、政治家、大手電子機器メーカーからも協力を得ながら最高裁で棄却されるまで3年にも及ぶ裁判沙汰となりました。残念ながら勝訴は得られませんでしたが、利害関係者の利害を理解しながら支援者を巻き込み、共にゴールを目指すといった貴重な経験ができました。政治家を巻き込んだルールメイク(ロビイング)の現場にも同席。政治嫌いな私にビジネスの別の側面を気づかせてくれました。
時代を先取りする!介護業界のニーズに応えるBPO事業を開始
ー現在の介護分野を対象としたサービスを開始したのはいつからでしょう?
最高裁で上告を棄却されたのは2016年3月頃でした。それを機にC向けサービスを完全に終了し、企業が所有する紙文書を電子化するスキャンサービスや入力業務、DM発送を請け負うB向けのBPO事業に集約しました。
単発型のスキャンサービスに比べて、BPO事業は継続的にご利用いただけるためビジネスとして魅力があります。ある時、介護ソフトメーカーから介護事業所の実施記録のスキャンの相談をいただいたことがきっかけで、介護業界がいまだにペーパーレス化が進んでいないという実態に気が付きました。2018年当時、都内でタクシーに乗ればキャスタービズの広告が流れ、中小企業向けのリモートアシスタントサービスが話題になっていました。介護業界に特化した中小企業向けのBPO事業であれば、まだまだ勝算があるのではないかと事業立ち上げの準備を進めたのです。
2019年9月、現在の「ケアチーム」の前身となる介護保険の請求業務代行サービス「雲紙舎ケアサポート」を一人でそっと始めました。事業を始めるというよりは、本当に市場が存在するのかをテストするために、ランディングページを公開しただけという表現が適切かもしれません。もし問い合わせが来たら、そこから請求業務を学べば何とかなるだろうと考えていました。
請求業務の自動化で、介護業界の「超」生産性向上に挑戦!
ーこれまでを振り返って思うこと、今後の展望について教えてください。
これまでの人生は紆余曲折ありましたが、私自身が経験してきたことで一見無駄なように(運の悪いように)見えることも、今振り返ってみれば、それらの経験が一つ一つ繋がり、今のケアチームの事業に至っていると実感しています。店舗の立て直し、新規事業の立ち上げ、訴訟活動、mixiアプリの開発等、これらの経験が無ければ、今のケアチームの構想は存在しないと言えます。
昨年末時点で前年比約2倍の成長を達成し、経験豊富なスタッフも増え、組織で請求業務を代行する体制へと移行を進めています。これまで雲紙舎の1部門として行ってきた介護保険請求代行サービスに集中していくため、昨年4月にサービス名称を「ケアチーム」へ一新しました。
今後のBPO市場は、AIエージェントを活用した自動化が進みます。ケアチームのサービスもまだ人の手による部分が大きいのですが、現在開発中のシステムを導入することで一定の自動化が可能になります。近い将来、介護事務全般をAIエージェントを活用して自動化し、介護業界の「超」生産性向上を実現していきたいと考えています。