2024年9月、シャープは「SHARP Tech-Day’24」という単独の大規模技術展示イベントで、EVコンセプトモデル『LDK+』を発表しました。全社横断プロジェクトを発足し、自家用車の“止まっている時間にフォーカス”するという、これまでにない全く新しい概念のEV開発に乗り出したのです。家電を手掛けてきたシャープが、なぜ自動車業界に飛び込もうとしているのか。プロジェクトチーフの長田さんに、その全容を聞きました。
目次
シャープのDNAを存分に活かし、“家のリビングと一体化したEV”をつくる!
家電の知見×エッジAI技術×フォックスコン(鴻海)のベースモデルで、開発に拍車!
シャープのEVで、暮らし方が変わる。クルマはより身近な存在になる
プロジェクトは「チームワーク」がすべて!一体感ある職場づくりが使命
ヒラメキをカタチにできる場所で、“新しい文化”を生み出そう
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EV(電気自動車)コンセプトモデル「LDK+」紹介動画
シャープのDNAを存分に活かし、“家のリビングと一体化したEV”をつくる!
――このプロジェクトが立ち上がった経緯を教えてください
2024年5月に発表された「中期経営方針」の中で、シャープがこれから目指す方向が示されました。成長モデルの確立の中で掲げられたテーマは、「AI・次世代通信・EVの領域を中心に、鴻海のリソースも有効活用し、Next Innovationを探索」。親会社である鴻海が取り組んでいる事業領域に対して、シャープの独自技術やブランドが生かせるNext Innovationの切り口として、AI、次世代通信、EVが設定されました。
世界的に市場やニーズが大きく変化しつつある自動車業界において、クルマは電気で動く時代。環境意識の高まりを受けてEV市場が拡大する中、同時に「もっと車内で快適に過ごしたい」というニーズも増しています。ならば、生活に合わせた利便性もさらに求められていくはず。そこにシャープが培ってきたノウハウが存分に活かせるのではと考えたのです。
とはいえ、シャープに自動車開発部門はありません。そこで、CTO直轄の組織として『イノベーション アクセラレート プロジェクト(通称I-Pro)』が発足した。これが大まかな経緯ですね。
白物家電やエネルギー系、オーディオなど、様々な部署で活躍しているメンバーが集まり、EV開発チーム「I-001」が結成されました。
――具体的に、どんなEV開発を目指すのですか?
SHARP Tech-Dayで初公開したコンセプトモデル『LDK+』は、車内を“リビングルームの拡張空間”として捉え、止まっている時間にフォーカスしたEVです。掲げたコンセプトは、「走る以外の価値提供」!
たとえば、ソファー仕様の座席が回転し、後部に設置された65V型スクリーンで映画やゲーム、好きな動画などを大音響で楽しめます。また、リモートワークにも活かせるよう、スクリーンの前のローテーブルがソファーまで自動で可動し、高さもデスクポジションに調整されるようにしました。加えて、サイドのウィンドウには、外部からの視線をシャットアウトできる「液晶シャッター」を採用。もちろん、コンセントがあるので家電もそのまま使えます。つまり、もはやクルマは“移動手段”だけではなく、“リビングそのもの”となるのです。今後このモデルを進化させ、数年後の市販モデルへの移行を目指しています。
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家電の知見×エッジAI技術×フォックスコン(鴻海)のベースモデルで、開発に拍車!
――数年後の市販を実現できる“勝算”は?
私たちには、いくつもの強みがあります。まず、協業関係にあるフォックスコンは台湾でEVのプラットフォームをもっており、そのひとつである『Model A』を、今回開発するコンセプトカーのベースにできる。これは非常に大きいと思います。もちろん、シャープの家電技術を存分に活かせることも強みのひとつです。タッチ操作や音声操作などのUIに、IoTの機器連携、エネルギーのつながり、人とのつながり…それらの技術をクルマに応用すれば、「快適な車内空間がほしい」というユーザーニーズにマッチできるでしょう。
もうひとつ、シャープはAIに強い会社だということをご存知ですか?たとえば、シャープ独自のAI技術「CE-LLM」は、機器そのもののエッジデバイスにAIモデルを組み込む“エッジAI”。従来型AIのようにクラウドを介さないので、より快適なインターフェイスを実現できます。エアコンや照明など、自宅の家電と連携して、ユーザーの好みや使用パターンを学習することも可能ですから、クルマと家庭の境界線はいっそう曖昧になるはずです。
シャープのEVで、暮らし方が変わる。クルマはより身近な存在になる
――EVが世に出れば、私たちの暮らしはどう変わりますか?
自然な流れで、クルマと家を一体化させることが私たちのミッションです。今は、「どこかに行くため」にクルマに乗りますよね。それが常識です。けれど、リビングの延長として使えるクルマができれば、「お風呂上りに乗り込んで、大画面で映画を楽しむ」なんてシーンも、普通になってくるでしょう。
それを実現させるために、昨年発表した『LDK+』のブラッシュアップに本気で挑んでいるところです。次に発表するモデルは、『LDK+』よりも小型なコンパクトミニバンのサイズ感となりますが、車内空間をかなり広く取れるよう設計しています。そこにこれから、シャープの家電ノウハウやAI技術がどう組み込まれるのか、ぜひ楽しみにしてほしいですね。今年10月に開催される『ジャパンモビリティショー2025』への出展が決まり、チームの士気も大いに高まっているところ。シャープが表現する世界観を存分に味わっていただきたいです。
プロジェクトは「チームワーク」がすべて!一体感ある職場づくりが使命
――リーダーとして、大切にされていることを教えてください
私はこのI-001プロジェクトに携わるまでに、液晶テレビやオーディオなどの事業部で様々な開発プロジェクトチームを任されてきました。その全てで重視してきたのが、「チームワーク」です。“みんなで一緒にがんばろうよ!”という一体感が、何より大事だと思いますね。仕事は楽しいことばかりじゃないので、つらい時に気兼ねなく仲間に相談できるようなチームでありたいと思うんです。
先日もメンバーが結婚すると聞いて、部署内で「なんちゃって披露宴」を開こうと考えつきました。メンバーが牧師役になって、ケーキ入刀やビデオレターなども企画して2時間かけてやりましたね。サプライズだったので、本人はすごく驚いていましたが(笑)。
今、私たちのチームはとても良い雰囲気でプロジェクトに挑んでいます。もちろん挑戦には失敗が付きものですが、そんな時こそ“チームワーク”がものをいう。みんなの力を集結して解決しながら、一歩一歩前に進んでいます。
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ヒラメキをカタチにできる場所で、“新しい文化”を生み出そう
――シャープの開発者に必要なものは何ですか?
好奇心と行動力。そこに、「既存の概念を打ち破れる」ような気概があれば最強ですね。入社して27年間、シャープの開発現場でモノづくりに携わってきましたが、私は「やりたいこと」を一度も否定されたことがありません。言い換えれば、「やりたいこと」を何でもやらせてくれる会社。特に今、これまでの常識に縛られないEV開発の現場で、そのことを強く感じています。
――最後に、転職活動中の方へのメッセージをお願いします
2025年5月に発表された「中期経営計画」の中で、シャープが目指す方向性として、「独創的なモノやサービスを通じて“新しい文化”をつくる会社へ」なることが示されました。シャープはこれから、モノづくりを通じて“新しい文化”をつくっていこうとしています。それは決して簡単なことではないけれど、全力で挑む価値のあるものです。私たちが取り組んでいるI-001プロジェクトも、数年後に世の中の常識を変えてしまうかもしれない。開発者にとって、こんなに胸がおどる仕事はそうはないでしょう。「新しい考え方で、社会を変えていきたい」と思える方に、この会社でどんどん活躍してほしいですね。シャープはそれができる場所だと思います。
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※記事内の部門名、役職名、内容はインタビュー当時ならびに掲載当時のものです。
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EV(電気自動車)コンセプトモデル「LDK+」紹介動画
「LDK+」のプロモーションムービーを、YouTube のSHARP公式チャンネルからご覧いただけます。