※このストーリーは、noteで発信した記事を転載しています。
はじめに
こんにちは。株式会社カンリー AX部 兼 AI推進室の村口です。
カンリーは現在、第2創業期としてAIを経営の中核に据えた変革を進めています。これまでのnoteでも、その背景や想いをお伝えしてきました。
・第2創業期の羅針盤──カンリーらしい、AIで変わり続ける組織づくり
・「AIを活用し、お客様の提供価値に集中できる環境を創る」AI推進室が語る "第2創業期" のリアル
今回は、その取り組みの一つであるGensparkの全社活用について、Genspark主催の招待制イベント「Genspark Exclusive Event 2026(2026/3/26)」に登壇する機会をいただきました。本記事では、その内容をお伝えできればと思います。
会場は新丸の内ビルディング10階のEGG Japanで、約100名の新規事業開発・AI推進の担当者の方々がご参加されていました。
ケーススタディ枠ではカンリーと株式会社Hakuhodo DY ONEさんの2社が登壇しました。大手企業の取り組みと並んでカンリーのAI推進の事例をお伝えできたことは、私たちにとって大きな意味があったと思います。
カンリーのビジョンとAI推進
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会場後方から。スクリーンに映るカンリーの紹介スライド
カンリーは「店舗経営を支える、世界的なインフラを創る」をミッションに掲げ、店舗集客の支援サービス「カンリー店舗集客」を中心に事業を展開しています。130,000店舗超の導入実績を持ち、国内シェアNo.1*[1]のポジションを築いてきました。
そして第2創業期を迎えた現在、ビジョンを「ヒトとAIの力で、店舗の集客力を上げる」に刷新しています。AIを経営の中核に据え、社内ではAI推進を3つの層で進めています。
- トップダウン: 経営直下でAI前提の事業構造を再設計
- ミドル: 各部門のアンバサダーが自チームの業務改善を探索
- ボトムアップ: 全社員が日々の業務で生成AIを活用
今回登壇でお話ししたGensparkの全社活用は、このビジョン実現に向けた弊社の実践としての事例になります。
もっとお客様に向き合いたい──CS業務とAIの接点
カンリーの強みの一つは、ハイタッチなカスタマーサクセス(CS)と運用支援のノウハウです。130,000店舗の支援実績を通じて蓄積された集客ノウハウを、専任コンサルタントの伴走支援により提供しています。
そのCS業務を、さらに進化させたいと考えていました。
各CSメンバーが向きあうお客様が多く、毎日複数件のアポイントをこなす中で、月次定例の提案資料を事前に準備していく必要があります。
例えば、お客様の店舗のGBP(Google ビジネスプロフィール)のデータを分析し、インサイトを導き出し、効果・課題・改善策を構成してスライドに落とし込む。質の高い提案資料をつくるためには、相応の時間と労力が必要になります。
本来もっと時間を使いたいのは、お客様の課題に向き合い、戦略を一緒に考え、価値を提供すること。資料作成の工数を圧縮しつつクオリティを底上げし、本来業務にもっと集中できるようにしたい──そんな想いがありました。
「ヒトとAIの力で」のビジョンの実現に向け、AIの力でCS業務をさらに進化させられないか?これがGenspark活用のキッカケとなりました。
なぜGensparkを選んだか
複数のAIツールを比較検討しました。弊社はGoogle Workspaceを使っていることから、GAS(Google Apps Script)とGeminiを組み合わせた内製も検討しましたが、最終的にGensparkを選定しました。
決め手は、大きく3つです。
1. アウトプット品質
デザイン性・構成力が実務レベルで使える品質でした。単にスライドを生成するだけでなく、アップセル・クロスセル提案のストーリー展開まで一定情報を入れると作成をサポートしてくれる点は、他のツールと比較して圧倒的でした。
2. 業務との親和性
自社テンプレートの登録や、Googleスライドへの直接出力が可能で、既存のワークフローにスムーズに組み込める点が、現場への導入ハードルを大きく下げてくれました。
3. プロダクトの進化スピード
プロダクトが常に改善されているため、使い続けるほどROIが高まっていく期待がありました。生成AIの進化に追従し続けている点も、長期的な投資判断として重要でした。
選定後、3ヶ月間PoCを実行しました。
CS部全体と各部門のアンバサダーを対象に、ROIと業務オペレーションの親和性の観点で検証しました。「なんとなく良さそう」ではなく、数字で意思決定するためのPoCです。
PoC成果: 数字で語るインパクト
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PoC成果の紹介
3ヶ月のPoCの結果、明確な結果が出ました。
定量インパクト
一人当たりの削減率: 約40%
年間削減見込み: 4,000時間超
また、PoCに参加した方の63%が、作業時間50%以上の短縮となりました。
定性インパクト
定性面で印象的だったのは、回答者の100%が品質の向上を実感していました(「明らかに向上」43%、「やや向上」57%)。なお品質低下は0%でした。
具体的に向上した内容としては、以下が多かったです。
- 資料作成における着手の初速が上がった
- 表現や構成が洗練された
- 思考の抜け漏れが減少した
現場の声
当日のイベントでは、PoCに参加したメンバーの声もいくつかご紹介しました。
Aさん「2時間かかっていた資料作成が10分に。着手ハードルが劇的に下がりました」
Bさん「同じことを自分でやろうとしたら20時間はくだらない。できなかったことができるようになっています」
Cさん「初速が向上し、表現も洗練されました。レビュー修正回数も減っています」
つまり、「時間削減」と「品質向上」を同時に実現した、とうことになり、これがPoCで確認できた最も大きな成果でした。
スライドを超えて広がった活用
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その他の活用事例の紹介
PoCを進める中で、各部門のアンバサダーや現場メンバーから、スライド以外にも多くの活用事例が自発的に生まれました。
- AIシートでの突合業務: 数百件の店舗リスト突合が、3〜4時間 → 10分で完了。作業時間95%以上の削減
- AI Developerでのアプリ開発: Chrome拡張機能を30分で開発・デプロイ。社内で複数のツールが稼働中
- 議事録のスライド化: 文字起こし→議事録→スライド化まで一気通貫で処理
- 投資家対応: Q&Aシートの整備と一次回答の作成を効率化
いろんな業務で小さな成功体験を積み重ねて組織全体を底上げする、が今回のPoCでも起きたと捉えています。これが汎用性の高い生成AIの強みとも言えると思います。
最終的に、PoCでスライド作成を中心に明確なROIが確認できたことから、全社展開を意思決定に至りました。現在は、約50名の方が日々活用しています。
どうやって全社展開に繋がったか
全社展開に繋げるためにPoCで成果を出すためのプロセスは、大きく以下の5つのステップで整理しました。
1. 3ヶ月PoC開始
数字で「本当に使える」かの検証の開始です。PoCメンバーとキックオフを行いました。
2. 勉強会
Gensparkアンバサダーや社内で特に活用されている方の協力を得ながら、社内勉強会を実施。メンバー主導の自発的な勉強会も開催していました。
3. Slackナレッジシェア
「#genspark使おうよ」チャンネルで、成功事例やノウハウを共有。ここで、気軽に質問ややってみたこと等を投稿し、試行錯誤しながらナレッジを蓄積していく流れが生まれました。
4. 自走文化の形成
Slackや勉強会を通じながら、「これどうやるの?」に対して、活用している社員同士で教え合う流れが生まれてきました。例えば、テンプレートはこうやって設定すると上手った、というナレッジもここで広がったと感じています。
5. 全社展開
最終的にアンケートにて効果を定量・定性の両面で評価を行い、ROIが見えた業務ベースで拡大する、という流れになります。
定着の鍵は、「同じチームの人の活用を見て、自分もやってみよう」と感じてもらえる状態をつくれたことだと考えています。
推進側が一方的に情報を提供するのではなく、どんなに小さくても同じ立場の人の活用事例を聞き、自分の業務にも活用できそう、というイメージを持ち、実際に使ってみる。そして分かりやすい効果を実感してもらうこと。この一歩をどれだけ早く多くの方に実行していただけるかが、立ち上がりで大事だなと改めて感じました。
パネルディスカッション
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パネルディスカッションの様子
ケーススタディ発表の後、パネルディスカッションがありました。会場から寄せられた質問の中から、いくつかご紹介します。
「他のAIツールとの使い分けは?」
NotebookLMなど他のツールとの棲み分けについて聞かれました。
弊社としては、目的が異なるという整理をしています。多くの生成AIツールは、何かをインプットしてアウトプットを得た後、それを別の処理にかけたい場合にツールを切り替える必要があるかと思います。
Gensparkは、スライド生成・シート処理・アプリ開発・リサーチまで同じプラットフォーム内で完結できる点が大きな強みです。
一方で、他のAIの進化も非常に速いので、特定領域だけでも常にキャッチアップしながら、最適なツールの組み合わせを模索し続けることが重要だと考えています。
「ベテランのスキルがコモディティ化する懸念にどう対応するか?」
AIの進化によって、経験豊富なメンバーの強みが薄れるのではないか、という質問です。
確かに技術の進化によってAIがカバーできる範囲は広がっていますが、完全に置き換わらない領域があると考えています。
お客様の文脈を深く理解した上でのストーリー設計や、信頼関係に基づく提案活動は、まさにベテランだからこそ発揮できる価値です。AIが「作業」を担うことで、むしろベテランの強みである「判断」や「提案」に集中できる時間が生まれることもあるかと思います。
また、ベテランの方のナレッジを、AIを通じて若い方の能力開発に活用することもできると思います。
あまり懸念しすぎず、まずやってみる姿勢も大事かな、と考えています。
登壇を終えて
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多くの方と意見交換させていただきました
登壇後の懇親会では、想像以上に多くの方に声をかけていただきました。
いただいた質問の一例をご紹介すると──
- 社内で予算を取りづらいが、どう提案すればよいか?
- PoCのテーマはどう設定するのか?
- 限られた予算の中でどう社内推進するか?
AIツールの導入を検討する企業は増えていますが、「PoCで効果を定量的に検証し、数字で意思決定する」「自走できる文化をつくる」というプロセスは、多くの企業がまさに今、取り組まれている段階だと感じます。カンリーの事例が少しでもお役に立てれば嬉しいな、と思います。
Hakuhodo DY ONEさんという大企業と同じ舞台でお話しできたことは、スタートアップである私たちにとって、AI推進の取り組みが業界の中でも一定の水準にあるという自信になりました。同時に、まだまだやるべきことがあるという実感も強まっています。
「ヒトとAIの力で、店舗の集客力を上げる」
このビジョンを掲げるカンリーだからこそ、まず自分たちがAI活用を徹底し、お客様への価値提供に集中できる環境をつくる。
AIにオールインし、ヒトがお客様に全力で向き合うために、引き続き邁進してまいります。
おわりに
現在弊社は第二創業期、また全社でAIオールインしており、部署関係なく全力でお客様に向き合うために日々多くの課題を解決し、その先の付加価値創出に向き合っています。
非常に成長チャンスが多い状態ですが、まだまだ同じ志を持つ仲間が必要です。
またカンリーでは、AI推進の取り組みを継続的に発信しています。ご興味のある方は、以下の記事もぜひご覧ください。
AI推進の取り組みをもっと知りたい方はこちら
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
#カンリー #AI活用 #生成AI #Genspark #AI推進 #登壇レポート #SaaS
【脚注】
*[1]出典:株式会社アイ・ティ・アール(ITR)の市場調査レポート「ITR Market View:メール/Webマーケティング市場2026」店舗集客・MEO対策支援システム市場におけるベンダー別売上金額シェア. 年商100億円以上の企業:2年連続 国内シェアNo.1(2024~2025年度予測). 定義は年商5,000億以上、1,000億〜5,000億未満、500億〜1,000億未満、100億〜500億未満の各市場の合算. 卸・小売業分野:3年連続 国内シェアNo.1(2023~2025年度予測)