『地方のできないをできるに』をミッションに掲げ、人材育成を中心に事業を展開する株式会社BottoK。「経営者の想いを具現化し、現場に落とし込む存在になることが、今の地方企業に必要」との考えのもと活動しています。今回は、フロント業務として営業を担当する井手さんに、これまでの経歴やBottoKでの仕事への思いなどを伺いました。
ー 自己紹介をお願いします
井手景子と申します。長崎県大村市で生まれ高校卒業まで過ごしました。大分県の大学に進学し、卒業後は北海道礼文島でのトレッキングガイドとしてキャリアをスタート。その後、異業種へ転職、国内外各地で働いてきました。2023年8月よりBottoKへ中途入社し、今年の7月から佐賀県を拠点に移し活動しています。
価値観がリセットされた、多文化共生の世界
大学生活が気づかせてくれたこと
ー 学生時代の井手さんについて、教えてください
高校卒業後、自然豊かな大分県の山の上にある、周りに何もない(笑)大学に進学しました。大学には世界中から多くの留学生が集まっており、教科書やネットの中でしか見たことのない世界が、まるで目の前に広がったようでした。彼らと過ごす中で、「同じ宗教や国籍でも、人それぞれ違う価値観や信念があるんだ」と実感し、それまで自分の中にあった常識が、一度リセットされたような感覚を覚えました。
アルバイトに明け暮れる日々の中、ワーキングホリデーを利用してカナダで10カ月ほど過ごしました。高校は英語に力を入れて学びたいと国際コミュニケーション科を専攻、チャンスがあれば留学したいと思っていたものの、部活に打ち込んでいたため諦めていました。大学では、多くの学生が休学をして当たり前のように留学やワーキングホリデーなどで海外に出ていて、「いつかは海外に。英語圏に行ってみたい」との思いを実現することができました。
海外生活では、人生において自分自身で取捨選択し意思決定をしている多くの人たちを目の当たりにして、自分はそれをしてこなかったのではと気づかされました。カナダでの生活は一つの転機とも言えると思います。
就職活動への葛藤と、キャリアのスタート
ー 卒業後は北海道の礼文島?!トレッキングガイドのお仕事を選択した背景は?
就職活動では、「自分は何のために働くのだろう?」「画一的な就職活動の意味は」という疑問が拭えず、商社、メーカー、大手企業も含めて会社説明会に参加したり面接に進んだ企業もあったのですが、どの企業に対してもワクワクできず「こんな気持ちでは、すぐにやめてしまうかもしれない」と思うようになり、一般的な就職活動を一旦やめました。
卒業後の働き方を考えている中、世界中を回るクルーズ船のスタッフがとても魅力的に感じ挑戦したかったのですが、時期的に難しく行き詰まっていたところ、海外求人サイトで見つけたツアーガイドの仕事が目に止まりました。日本とニュージーランドなどの南半球ではシーズンが逆になるため1年通して働けることも可能、中でも目に留まったのが「礼文島トレッキングツアーガイド」。産業のほとんどが漁業と観光のみで成り立つ、人口わずか2,700人の小さな島でのガイドの仕事に「なんだか面白そう!」と思い、就職することに決めました。
礼文島では、シーズン中は社長や先輩と同じ屋根の下で朝から晩までともに暮らし、仕事もオフの日も濃い時間を送り、環境適応能力はより高くなっていたと思います。ただ、3年間働く中で、学生時代に身につけた英語も使う機会がないと、あっという間に忘れてしまうことを実感するようになり、英語をもう一度学び直したいという思うようになっていました。また、当時の自分自身のテーマが「自分の苦手な領域にチャレンジしよう」であったことから、何か新しいことに挑戦してみよう、と考えるようになっていました。
セブ島へ留学、現地で就職
ー 新たなチャレンジの舞台はセブ島なんですね!?どのような挑戦が始まったのですか?
英語とIT、ビジネスを学べるクラスがセブ島の留学機関にあることを知り、半年間留学することを決めました。英語の語学留学先として、セブ島は先進国と比較しても低価格で実現できます。また、語学学習と同時に、ブランディング、プログラミング、Webデザインなど、幅広い内容がカリキュラムに組み込まれており、苦手なIT領域に挑戦するという自分のテーマに合致していたこともセブ島留学を決めた理由です。PC一台でどこでも働ける自由な働き方が広がりつつある時代の流れも、影響があったかもしれません。
カリキュラム修了後、そのままセブ島で就職しました。シェアオフィス運営や不動産業をメインとしている福岡の企業が、ソフトフェア開発やIT事業をセブ島で展開しており、同社取締役が留学プログラムの特別講義を担当したご縁で知り合いました。学校の活動以外にも、現地でイベントの企画・開催をしており、その取締役の方が活動の様子を見ていたことがご縁で、現地駐在スタッフのポストを紹介してもらい採用に至りました。
入社してからはweb制作のディレクターとして、フィリピン人スタッフを率いた海外エンジニアのチームを統括したり、現地スタッフの採用・マネジメントも担当。主に日系企業向けのホームページ制作の事業を運営し、その後、辞令により福岡本社へ異動となりました。
人と人とを繋ぐ
シェアオフィス運営とコミュニティ支援
ー 帰国後は、どのようなお仕事を担当されたのですか
帰国後、福岡で事業展開していたスタートアップ支援の部門に異動になり、旧大名小学校を利活用した創業者支援施設で、コミュニティ構築やコワーキングスペースの運営に携わりました。施設の入居者やVCと銀行の担当者をつなげたり、イベントの企画・開催、海外からの入居者のサポートなどを経験しました。
これまでとは全く異なる業務内容で、始めは「スタートアップってなに?」といった状態のスタートでしたが、さまざまな入居者との関わりの中で1年が経過する頃には、短期間で急成長するJカーブの成長曲線を描くスタートアップ事業への理解も興味も深まり、また人と人とをつなげることで新たなビジネスが生まれたり関係が広がったりする、そんなコミュニティ事業の面白さも感じていました。
シェアオフィス運営担当として、恵まれたご縁と繋がり
ー BottoKとの出会いについて教えてください
その後、シェアオフィス事業部門に異動になりました。運営していたシェアオフィス『the company』という施設に、BottoKが創業のよく月くらいに入居してきたことが最初の出会いです。「すごい時期に創業した人が入居してきた!!」「この時期に会社立ち上げるのか?!」と、コロナ禍の影響がまだまだ残るこの時期に会社を創業した人がいる、ということに対して強烈な印象が残っています。
担当業務が入居者に対するヒアリングということもあり、「どのような人と繋がりたいか」「事業内容」「シェアオフィスのコミュニティで求めていること」などについて、坂田と直接話したのがご縁の始まりです。
その後2年ほどは、シェアオフィス運営側と入居者としての立場で関わってきました。コミュニティメンバーのミーティングなどにはたびたび参加し、時には意見を求められたり発言したりすることも。BottoKの運営会議にも顔を出す機会が多々あり、他のスタッフやBottoKに関わりのある企業の方とも自然と繋がりができていました。
ー シェアオフィスでの出会いが、BottoK入社に繋がるんですね
実は、一旦シェアオフィス事業の会社は退職したんです。ご縁のあった企業に転職するため上京することに。新しい職場では、初めて固定デスクでの仕事で、毎日同じ場所に行き同じ机に座りPCに向き合う日々、お客様を訪問する機会は無いに等しいくらい。トレッキングガイドの仕事からずっと『自然界フリーデスク』といった環境だったので、大きなギャップと違和感を感じていました。改めて自分が働く意義や価値観とは、、と感じた時間でした。また東京という地域の特性なのか、人と人とのコミュニケーションが希薄に感じてしまい、改めて人と人とが繋がる、人に会う、自分の大切にするものが何かを感じた気がしたんです。
上京した頃からBottoKで仕事をしないか、と坂田から定期的に声をかけてもらっていました。人と人とが繋がる大切さを身にしみて感じる時期でもあったため、純粋にありがたい思いとともに、自分に対してここまで熱量を持って声をかけてもらえる、必要としてもらえることは今後あるのか、と思うようになり最終的にBottoKでお世話になることに決めました。
ー 人との繋がりへのアツい思いを感じますね。BottoKが井手さんに期待されていたことは?
スタートアップ支援に従事していた頃、非常に多くの方々とのご縁に恵まれ、ありがたいことに、時には「九州の人はみんな井手さんと知り合い」なんて冗談も言って頂いたこともありました。外部とのネットワーク構築などにおいて、さまざまな場に足を運び、人との交流を深めていくことがとても好きなので、ネットワークの広さなどの面で期待してもらえたのかもしれません。
また、今後新しい方を採用し社員が増えることも想定される中で、BottoKという組織における潤滑油的な役割、存在になって欲しいといった期待でしょうか。少人数であるがゆえに意見がぶつかり、あまり望ましくない空気が社内に流れることもあるかもしれません。自分の存在により職場の雰囲気がよくなったり、気持ちよく仕事ができる環境作りに貢献できたら、嬉しいですね。
ー 未経験分野への新たな挑戦、BottoKでのスタートはいかがでしたか
代表の坂田を含めた他メンバーとは、前職時代から飲みに行く機会も多く、またビジネスマッチングで繋がった人がBottoKに入社していた経緯もあり、入社前後でのギャップなどはありませんでした。社員が入退社する際の坂田の誠実な姿勢などもみていて、人柄なども既に知っていたことで、BottoKの環境にもソフトランディングできたと思います。入社後はいろいろな面でしっくりした感覚、メンバーたちの人柄のよさやコミュニケーションの取りやすさ、働きやすさなどを感じていました。
事業をともに作り上げていく醍醐味、
挑戦できる場所がBottoKにはある
ー BottoKでの業務内容は?
主にフロント業務を担当しています。営業やフィールドセールス、また人材育成を事業としているので、時には研修・セミナーの講師なども担当しています。お客様の抱える人材育成の課題などを伺い、サービスや支援内容をご提案したり、またアポイントをとるための電話営業など、日々活動しています。
取引企業は主に福岡県、佐賀県の中小企業で、業種は建設業、不動産業、家具製造業、医療機関など、多岐に渡ります。自治体案件なども取り扱っています。
ー 仕事でのやりがい、面白さは?
創業3年目と設立から日が浅く、事業のスケールもまだ大きくなっていないため、経営者がとても身近にいます。今は、経営者と社員とともに会社を作っていく、事業を組み立てていくフェーズだと思います。
会社経営や事業の方向性、事業内容についてともに意見を交わしながら前に進んでいく、その感覚が今はとても楽しく、面白みを感じています。「物事が進んでいる」「何かうまく行きそうだ」、その瞬間に出会える時はとてもワクワクしますね。
ー 入社してから大変なこと、苦労していることは?
日々、試練にぶつかっているという状況です。これまでの業務経験とは全く違う分野ですし、ほぼ未経験の状態で始めているので、ある意味修行のような感覚ですね。
前職のコミュニティ運営では、人の話を正しく聞く、引き出す、必要な方へ繋げる、というコミュニケーション能力の部分が必要とされており、話しやすさ、親しみやすさなども大切な要素でした。
現在の業務は、人材育成や人事領域に関するお客様の課題を正しく理解・把握し、課題の深掘りをしていかないといけません。その上で、課題に対して仮説を立て、解決へのご提案を準備しお客様に再び会いにいく、の繰り返しです。業務において非常に重要である、「言葉を正しく理解する・使う」という点でとても難しさを感じています。企業に所属していれば当たり前のように経験することかもしれませんが、私自身このプロセスを踏んでこなかったため、ほぼ全てが初めての経験のようなものです。
また、各企業ごとに抱える課題、業種、経営者の年齢・タイプ、企業規模、歴史、、全てが異なっています。様々なお客様と接することは、前職のコミュニティ運営で培ったコミュニケーション力でカバーできる部分もありますが、課題に対する解決策については答えが一つではなく、とても難しいと感じています。ゴールまでの道のりが簡単ではないからあえて挑戦する、そんなチャレンジできるステージを提供してもらえることは、とてもありがたいです。
ー お客様は多種多様とのこと。コミュニケーションをとる上で気をつけていること、大切にしていることなどありますか?
『言わない遠慮より言う配慮』でしょうか。物事をオブラートに包むのではなく、しっかりと伝えることが誠実であると思っています。何か言葉で相手を制するということではなく、伝えることが相手を配慮し思いやることにつながる、と心がけています。
職場においても同じくです。言いづらいことや耳の痛いことでも、仲間だからこそしっかり伝える。逆に、自分自身にも言ってもらう、痛いことも受け入れる、という姿勢はとても大事だと思っています。
もう一つ大切にしていることは、『相手によって態度を変えない』です。もちろん、企業の経営者と対峙して議論する場合などは、以前は時に気後れしてしまうこともありましたが、今ではどのような立場の方とでも、同じ態度や心構えで接することができるようになってきたかな、と感じています。
BottoKのHPでは、『BottoKに合う10の価値観』を掲げています。その中に「人により態度を変えない人」「人からの指摘を受け入れる姿勢がある人」「自分の至らなさを内省できる人」「相手の立場を想像できる人」などがあり、まさに自分自身が大切にしている価値観とBottoKの価値観が合致しているのも、この会社で働きやすいと感じる所以かもしれません。
九州、いつかはもっと遠くの地方まで
BottoKの人材育成支援を届けたい
ー 今後、力を入れて取り組みたいことを教えてください
2つあります。1つ目は現在担当している営業です。今後、人材育成の事業や研修などの体系化とともに、営業担当として取り組みを加速、発展させて行きたいと思います。現在は、佐賀県、福岡県を中心としていますが、今後は九州圏のみならず、中小企業が奮闘している各地方に活動域を広げて行きたいと考えています。
2つ目は、現在運営・実施している『DXアルケミスト事業』をやり遂げたいですね。公益財団法人佐賀県産業振興機構さが産業ミライ創造ベースが実施する「DXアルケミスト事業」を受託したもので、「デジタルで稼ぐ」をテーマに、佐賀県の経営者・次期経営者を中心としたコミュニティを立ち上げ、運営しています。コミュニティ運営の経験・知見を生かし、盛り上がるコミュニティの企画運営を目指し、目下、奮闘中です。
事業が終わる来年2月頃には、主体的に参加される方が20名ほどになっているのが理想です。参加企業同士が交流を深め、協業や新たな事業創出につながり、単年度では終わらない継続的なコミュニティを目指したいですね。
月1回開催の読書会、学びを習慣化していく
ー BottoKでのキャリア構築、ポイントは何だと思いますか?
『BottoKに合う10の価値観』がご自身の価値観と合うかどうか、が大切だと思います。そして設立間もない企業ですので、他の企業と比較して『無いもの』が断然多い可能性は高いと思います。『無いもの』を仲間とともに作っていくプロセス、その変化を楽しんで行ける方は、BottoKにはそのチャンスが多くあると思います。
学ぶことが好きな方にとっても、とても良い職場だと思います。BottoKでは共通の課題本を毎月1冊決めて、1ヶ月かけて各自読みます。月に1回読書会が開催され、外部の企業の経営者や幹部の方も交えて、その課題本の感想を伝えあったり、テーマを設定して皆がどう考えるかなど、深掘りをするディスカッションをします。自分では普段あまり選ばないような、知らない分野の本を読む機会にもなりますし、複数人で「同じ本を読む」という取り組みに面白さを感じています。経営者の方が読むような本もあれば、『7つの習慣』といった自己啓発、リーダーシップ関連などもあり、ジャンルにとらわれず楽しく取り組んでいます。
本が好きな方はもちろん、読むことがちょっと苦手だけど克服したい、という方にも良い学びになると思います。何より、言葉を大切にする仕事柄、本を読む機会が増えることで語彙や知識が増えることが期待できます。BottoKでの社内教育の一環とも捉えています。
ライフステージの変化とともに生きる、女性として目指す未来
ー 思い描く目標、未来は?
キャリアを選択していく中で、自分で決めていることが3つあります。
1つ目は、決断する時は自分の心に素直になる、ということ。迷ったり悩んだりする中で、周りに相談したり意見を聞いたりしても、最終的に決断する時は自分の心に従う、ということです。2つ目は、その決断が自分に取ってワクワクするかということ。3つ目は、決めたらその選択を正解にする、その3つだけはずっと持ち続けています。
自分のライフステージの変化とともに、キャリア選択をせざるを得ないときもあるかもしれません。選択肢が常に持てるような状態、そして常に成果が出せる状態であることが必要だと考えています。今はそのためにも学び続けていきたいと思っています。
遠い未来になるかもしれませんが、女性のキャリア支援につながる活動も実現したいと思っています。特に女性は結婚や妊娠などのライフステージの中で、男性と全く同じようには働けないですよね。キャリアに関して同じような悩みや課題を持っている人たちを支援するような活動に、取り組んでいきたいと思っています。そのためにも、自分自身がライフステージに合わせてキャリアを諦めるのではなく、キャリアを築いていけるような、ひとりの人間になっていきたいですね。
ー このサイトをご覧の方へ、メッセージをお願いします
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。BottoKには、「BottoKに合う10の価値観」の元に集まる「良い人」がメンバーです。規模としてはまだ大きくはない会社ですが、ともに新しいものを作り上げ、『人材育成支援事業』という答えが一つではない難題、地方発展の課題に挑戦できる場所がここにはあると思います。事業内容はもちろんですが、ここに集まっているメンバーたちもBottoKの魅力の一つだと思います。