まったくの異業種からの転職が多いという特徴があるブックマークス。
別ジャンルの業界でキャリアをスタートした人たちが、なぜ勉強カフェを運営するブックマークスに惹かれるのか。
それは、人の意見に耳を傾け、今までの固定観念を捨てて新しい一歩を踏み出すことに、その自分の変化を楽しむことに、「大人の勉強」の本当の価値を見出すからかもしれません。
今回、話を聞かせてもらったのは佐羽 宏太(さば こうた)さん。
新型コロナウイルスの感染拡大により、勉強カフェも休業を余儀なくされた昨年、地元の三重県から出てブックマークスで働きたいと言ってくれたにもかかわらず、選考中に社員が充足になり志望に応えることができなかった佐羽さん。
佐羽さんはその後、アルバイトから社員を目指したいと上京を決め、約1年、前職のスキルを活かし塾講師との複業で勉強カフェのアルバイトスタッフとして入社してくれました。
今年、ブックマークスとしてのアフターコロナ戦略も固まりつつある中、社員拡充のタイミングでまっさきにマネジャー候補として正社員にスカウトしました。
そんな佐羽さんに、今の気持ちを聞いてみました。
堀川:やっと佐羽さんを社員として迎えることができました!
ブックマークスに入社するまで佐羽さんはどんなことをしてきたんですか?
佐羽:学生時代はバリバリの理系で、生物が好きだったので臨床検査学を学んでいました。
肉眼では見えない世界が見えることが感動的で、顕微鏡を覗くのが好きだったんです。
ですが、病気の発見という結果を見る検査よりも、健康でいるためについて考えることが増え、栄養管理を学びなおしました。
ファーストキャリアは細胞検査士の研修生として病院への配属です。
そこで、検査士の仕事へのミスマッチと人間関係とでパンクしてしまって、何も手につかなくなってしまったのですが、1ヶ月くらい経ったころ「学生時代アルバイトをしていた塾でもう一度働いてみようかな」と思い塾の講師の仕事をはじめました。
それを本業にしようと思ったのは生徒たちが「先生になったほうがいい」と言ってくれたからです。
自分はもともと学ぶことが好きでしたが、子どもたちにはそうではない子もたくさんいました。
そういう子たちが勉強を「おもしろい」と言ってくれる。
これを仕事にしたいなと思いました。
親に申し訳ない気持ちもありましたが、あのまま検査士を続けていたら自分が壊れてしまっていたと思うのでこれでよかったと思っています。
今でも医療や健康には興味はありますよ。
堀川:塾での仕事はどうでしたか?
佐羽:尊敬できる先輩と、子どもたちを通しての気付きが多かったです。
中でも「勝手に気を使って負のスパイラルに入っている自分」に気づけたことは大きいです。
その根っこは「怒られたらいやだな」「失敗したら恥ずかしいな」とか、「できて当然」「なるべくみんなが納得できるようにするべき」といった他人の目を気にしすぎた固定観念でした。
これをきっかけに、まず自分を大事にするようになりました。
そうするとじわじわと人を大事にできるようになるんですね。
堀川:その後、勉強カフェのスタッフとしての転職で上京してきて、並行して塾講師をしていますよね。
佐羽:はい。
そしてこの1年で埼玉から神奈川に引っ越し、複業の塾も転職しました。
最初の塾は少人数制で一人一人を見守る方針です。
勉強に興味を持てない子にはYouTubeの話からスタートしたり、まずは塾に来たいと思ってもらうため、生徒とたくさん話していました。
少し勉強カフェに似ています。
次の塾は映像授業で、個別に時間はかけられないのですが、学童に近いフランクな感じがとてもいいです。
先生は生徒たちに考えさせるのが上手だったり、巻き込むのが上手だったり、参考になります。
堀川:佐羽さんのアルバイト入社半年後に所属の田町スタジオの閉店が決定。
その後は横浜関内スタジオ所属と町田マルイスタジオの掛持ちと、1年でヘルプも含め、4スタジオも経験しているのですが、この経験から変化や気付きはありましたか?
佐羽:失敗に対しての認識が変わり、打たれ強くなりました。
最初の田町スタジオで吉村さん(マネジャー)にしごかれて(笑)
入社してすぐ、手続きミスなどを多発した時期があったんです。
その時、当時のマネジャーは、ミスをしたことを責めるのではなく、どうして今の行動はよかったのか、どうして今の行動がダメだったのか、しっかり理由をつけて教えてくれました。
そのうえで、リカバリーするか、どう次に活かすかという方針でサポートしてくれました。
自分でも結果は結果として受け止め、起きてしまったことに「どうしよう……」ではなく、同じ失敗を繰り返さない工夫を考えるようになりました。
スタートが田町スタジオでよかったです。
その後、新店舗の応援に行くようになって「教える立場が一番学べる」と気づきました。
教え方を考える中で自分の理解が一番深まりますよね。
町田スタジオで吉村さんとはまた違ったリーダーシップを吉澤さんに教わりました。
吉澤さんは助けたくなるリーダーで、心に伝わる気持ちの届け方を学びました。
社員になって吉祥寺スタジオを経験していますが、吉祥寺スタジオは既に理想に近いコミュニティが出来上がってるんですよね。
なので、鹿取さんからは、場づくりを学ばせてもらい、このコミュニティを通過点にしてやりたいことの実現につなげるていきたいと考えています。
堀川:やりたいことの実現。
佐羽さんのやりたいことってなんですか?
佐羽:まずブックマークスでは、勉強カフェを使う人を増やしていきたいです。
イメージは「セーブポイント」です。
まだまだ勉強カフェは「作業場所」としてご利用になる方が多いですが、精神的健康を保てる場所としても使ってほしいです。
会員さまとスタッフという他人だからこそ打ち明けられることがあると思うんです。
堀川:「依存」になってしまわないかのバランスが難しそうです。
佐羽:「依存場所の1つ」として存在するならありだと思います。
ここだけに留まらない、他の場所や新しい選択肢の提案など、勉強カフェがきっかけが与えられる場所だといいですよね。
家や職場から離れ、非日常の「経験」から学ぶ場を提供する、勉強する大人のゲストハウスを作りたいと思っているんです。
勉強カフェの会員さまを応援したいという思っているので、ブックマークスで実現できたらと、山村さんにも先日話しました。
自然の中にいるのは開放的で気持ちいですよね。できたらお寺と関わって、山でゆったりできる空間でゲストハウスができないかな。
最近「ここは!」と思った場所は松島の円通院です。
堀川:価値観カードを使って佐羽さんの価値観について話してもらいたいのですがいいですか?
《価値観カード》
――― 1回目の仕分けで「正義」が「大切じゃない」へ行くのを見て
堀川:正義感が強そうな印象だったから「正義」が大切じゃないのがちょっと意外。
佐羽:誰かにとっての「正義」でも、他の誰かにとっては「悪」のこともある。
固定観念が大きく影響していそうなので大事にしすぎないようにと思っています。
――― 3回ほど仕分けを繰り返し、「とっても大切」に8枚が残る
自分を受け入れること
正直さ
セルフコントロール
健康
面白さ
単純さ
徳
貢献
堀川:選んだ価値観にそれぞれどのような思いがあるのか聞かせてもらってもいいですか?
佐羽:『自分を受け入れること』と『セルフコントロール』には、“理不尽に自分を傷つけない”という思いがあります。
前職の塾で、ありのままの姿で働いている先輩を信頼でき、尊敬できる人だと感じたこと。
同じくらいのタイミングでの師匠と呼べる人との出会い。
この2つのきっかけで、今までの生き方は自分主体じゃなかったと気づきました。
最近、ブレディみかこさんと鴻上 尚史さんの対談を読んで、自分主体で生きられなかった、目に見えない生きづらさの正体について考えるようになりました。
それが、他人の目を意識しすぎた固定観念です。
今は自分がまず楽しむ。そうしたらその楽しいは空気として伝わって相手に届き、相手も楽しめるんじゃないかなって。
これは『面白さ』『単純さ』にもつながってきます。
『自分を受け入れる』というのは外見も内面も含めて「自分の立ち位置を知ること」から始まるので最初は怖さがあります。
自分の場合は“打たれ弱い自分”を受け入れる必要があった。
でも“打たれ弱い自分”というコンプレックスも、ものは使いようなんですよね。
『正直さ』というのは「自分に嘘をつかない」ことです。
“罪悪感を感じるかどうか”が自分にとっての基準です。
自分が基準なので少し「正義」と似ているかもしれないですね。
武士道の「武士に二言なし」という言葉が好きなんですが、これは気持ちを言葉にするまでに内省し、自分が発する言葉を大切にするのだと思います。
そこに噓がなければなにより精神的『健康』につながって、それが身体の健康の健康にもつながると思っています。
20代までは自分のエゴでやりたいように生きていい時期だと思っているので、『徳』『貢献』は30代以降を考えています。
ひとりの人間として確立したら、次は家族や身近な組織に、次は地域、国へと自分が幸せにできる人を増やしていきたい。
自分にとってはゲストハウスの実現がここですね。
堀川:ブックマークスのクレド(Light house)に沿っても価値観を聞いていきたいな、と思います。
COREVALUEにある『 HONESTY / 誠実である』について、佐羽さんの誠実な部分ってどこですか?
佐羽:人と話すのが楽しいと思えることです。それは自分の心と言動が一致していて、建前ではない誠実な自分だからだと思います。
やっぱり、自分にも、人の反応にも、期待していたことが起こらないと落ち込んでしまいます。
「分かってくれるはず」とか「自分はもっとできるはず」
自分がやりたいからやっていると、相手の反応に期待しなくなってからそう思えるようになりました。
存在してくれていること自体に「ありがとう」と思える。
そうなると、人と話すのが楽しくてしょうがないんです。
堀川:佐羽さんの話には『楽しむ』という言葉がたくさん出てきますね。
佐羽さんにとって『ENJOY / 楽しむ』はどんなものですか?
佐羽:今まさに現在進行形で楽しんでます。
特にイベント開催は、企画を練って場を作り、きっかけを提供する。
自分の信念で行動できていると感じて楽しいです。
ゲストハウスについて考えているときなども楽しいです。
上京をきっかけに、塾のアルバイトや趣味のバドミントンサークルへ参加など、新しい関係性作りをスタートして、人間関係がぐっとよくなりました。
そのせいもあって、人生がより楽しくなっています。
人を笑顔にできる人でありたいと思っています。
その一環でこんどは三味線も始めます。
音楽はいいですよね。
和風のゲームのBGMを聞いて、JPOPを三味線で演奏したいんです。
「行動して変化を楽しめる人でありたい」というのが自分の信念です。
堀川:昨年、社員採用で見送りになってしまったとき、「アルバイトスタッフで働けないか」と言ってくれて、アルバイト採用の案内を出したら即決で三重から上京してくることに……とすごいスピード感だったと思うんですが、『Do It Now / 今すぐやる』で意識していることはありますか?
佐羽:失敗を想定しすぎるとブレーキになってしまうので、深く考えずに行動し、やりながら振り返るようにしています。
堀川:『On My Own / 自分で決める』ために気をつけていることは?
佐羽:自分の考えを一回疑って、客観視する。
それから「一旦」決めます。
最近の大きな決断は、やっぱり東京に出てきたことです。
コロナ禍で周りに納得してもらうのは大変でしたが、やっぱり最後は自分で決めました。
自分で決めている“実感”があることがポイントです。
堀川:そんな佐羽さんのチャレンジを阻害する「~すべき」みたいなものってありますか?
佐羽:大学生くらいまで「真面目にすべき」と思っていましたが、今は真面目さとラフさ、半分半分くらいがちょうどいいと思っています。
自分の考えがガラッと変わったように、行動、発想の転換のきっかけづくりができたらいいなと思っています。
そのためにはまず相手の前提を知ることが大切です。
だから今はパラーレ(会員さまとの挨拶+αのコミュニケーション)を楽しんでいます。
堀川:佐羽さんにとって勉強とはどんなものですか?
佐羽:勉強の一番の醍醐味は自分が知らない世界を知ることではないでしょうか。
実は自分は一人でも勉強できるんです。
でも学んだことを話せる相手は欲しい。
必ずしも同じ時に同じ場所にいなくてもいいんですけど。
それから、家はリラックスしすぎてなにもやらなくなってしまうのでダメなので、集中できる環境は大事です。
いま高めていきたいのは言語化力です。
上京してくる少し前くらいに、深い質問に対して自分が浅い回答しかできず、すごく悔しい思いをしました。
それをきっかけに講座を受講して具体と抽象の往き来の癖をつけました。
言葉に具体性が生まれるようになって共感される機会も、応援してくれる人も増えたと感じます。
「まあ」とか「たぶん」とか、口癖なんですけど、これは不安で自分に保険をかけてるんだと思うんです。あまりよくないなという思いと、あいまいさも残しておきたいという思いがあるので、意識的に使えるようになるといいなと思っています。
堀川:ちなみに今回は、佐羽さんの名前にちなんで、サバTシャツと名刺代わりの鯖缶を用意して、全員がZOOM参加のWelcome!となったわけですが、どんな気持ちでした?
佐羽:安心できる場所だと思いましたよ。
だれを頼ってもだいじょうぶなんだなと、Welcome!の気持ちで迎えられている気がしました。
堀川:よかった!
そんな佐羽さんのInstagramのIDはこちら(@sha_ba0323)