- A.C.O. Journal Desk
- 2021.09.06
「BX Camp」とは、サービスを成功に導くため、クライアントとともにブランド体験をつくりあげる、デザインプログラムです。BX Campでどのような課題が解決できるのか、どのような成果が得られるのか、具体的なサービス概要や事例とともにご紹介します。今回は、2021年6月に実施された株式会社モンスター・ラボ主催のウェビナーをレポートします。
登壇者
川北奈津(かわきたなつ) 株式会社A.C.O. UX/IA部マネージャー/UXディレクター
沖山直子(おきやまなおこ) 株式会社A.C.O. デザイン部マネージャー/アートディレクター
アジェンダ
①ブランド体験とは何か
沖山直子(以下、沖山):ブランド体験とは「1つのサービスブランドに関わる体験のすべて」を意味する言葉で、ブランドエクスペリエンス(BX)とも呼ばれます。一連の体験を通して、そのサービスを好きになること。それ自体を、意味のある「ブランド体験」と捉えていただければと思います。
時代は変わり、消費者は「モノ自体を買う」というより「体験や状態を買いたい」と考えています。ただ「便利なツール」を作るだけだと、他に同じ機能をもったサービスが出てきた途端、それに取って代わられてしまう。そうではなく、生活の中で必需品になるもの、絆の深いもの、そういうサービスをつくっていくことが、これから重要なポイントになっていきます。
機能だけでなく、なぜやるのか?と“らしさ”の追求が必要
沖山:サービスを作る上で、UXデザインは基本的に必要なものです。ただ、体験の設計や問題解決だけでなく、「なぜやるのか」や「らしさ」の追求が必要不可欠。その2つが一緒になって初めて、顧客と絆のあるサービスができるのだろうと考えています。
【顧客と絆のあるサービス】
UX Design(問題解決や体験設計)+Brand Design(存在理由や価値基準)
「Brand Design」という言葉自体は捉え方が幅広いのですが、ここでは存在理由や価値基準だと考えていただければ。BX Campは、基本的なものと、ブランドを1つにして考えられるように作られたデザインプログラムだとご理解ください。
BX Campはお客様と私たちが一緒にブランド体験をつくるデザインプログラム
沖山:私たちは、BX Campの方針を以下のように定義しています。
【BX Campの方針】
ブランド体験のデザインはモノや企業だけでなく、サービスにこそ必要です。サービスを成功させるためのベースとなるのは、独自の信念をもち、共感しあえるチームをつくること。そして、チーム全員が一丸となって、感情移入を促すユーザー体験を生み出すことが重要です。ワークショップを通して、私たちと一緒に作っていきましょう。
また、チーム作りにもこだわるのが、このプログラムの特徴でもあります。我々と、クライアント様、運営チームの中の共感度をきちんと作っていくことが大切です。
②サービスの質に関わる2つのポイント
沖山:BX Campを進める上で、注目すべき2つのポイントについてご説明します。
コモディティ化してしまう
沖山:いわゆる、同質化問題。独自の価値がないサービスは市場で埋もれ、価格競争に陥ってしまいます。これを解決するためには、「ここにしかない魅力を見つける」ということが重要です。差別化ですね。また、プロジェクトメンバーが目指すべき方向性に共感できていないと、良いサービスは生み出せません。チーム全員がサービスの魅力に共感することが質の向上につながり、ブランドの価値を高めます。
ユーザーに定着しない
沖山:ユーザーに定着させるためには、何ができるのか。UXの手法を用いて、ユーザーの利用状況などを可視化し、生活の中に接点を持つことも大事ですが、単純に「好き」という感情の部分もきちんと設計していかないといけない。なので、ポイントは「“好き”を生み出す設計と世界観」です。ブランドの持つ価値を正しくユーザーに届けるには、世界観を演出するビジュアルや使い心地のいいUIも重要。「好き」という感情を引き出し、ユーザーの心を掴むブランド体験の設計が欠かせません。
③プログラムの工程や進め方
川北奈津(以下、川北):BX Campでできる、6つのことをご紹介します。UXデザインのプロセスをベースに、③と⑤をプラスしたプログラムになっています。
次に、BX Campのプロセスをご紹介します。ポイントは「③サービス機能開発」と「④ブランド開発」。ブランド開発では、ブランドのビジョンやパーソナリティーをさまざまな角度から言語化しますが、それの“種”になるものを「サービス機能開発」のフェーズで、ワークショップを用いて抽出します。
また、これらのプロセスは、クライアント様の課題や予算、スケジュールによってカスタマイズしています。
④多様なメンバーと一体となって考える時間
川北:BX Campのワークを行う上で基本となるのが「インプット」と「アウトプット」です。
多様なメンバーが集まって、クライアントのみなさまとの「考える場」を作りますが、いかに質の高いインプットを得られるかということと、ファシリテーションしてリードするかということがとても重要です。ここが、A.C.O.でのUXデザイナーの役割であると考えています。
ワークを行う上で大事にしていること
川北:私たちがワークを行う上で大切にしていることは、以下の3点です。
- ①正確に理解する
メンバーは、現状/業界/競合他社の理解をし、一緒に考えられるレベルにする - ②ワンチームになる
クライアントとA.C.O.の境界を超えてワークする - ③全方位的メンバー構成
決定者(PO)、マーケティング、営業、デザイナーなどサービスに関わる人に参加してもらうことを推奨
特に③については、他部署も交えてご参加いただけるようお願いしています。たとえば、営業メンバーの皆さんが入ることで、初期にやるべきことを営業的な目線から考えられます。また、これからサービスを作っていく人たちが、自走できる状態になることも目指しています。
機能と情緒と行き来して、価値を絞り込む
川北:ここから、具体的なワークをご紹介します。ワークでは、「機能」と「情緒」を行き来して、価値を絞り込むということを大切にしています。
いくつかのフレームワークを組み合わせて実施しています。
まず「アイデアのストーリーボード」でアイデアの可視化をし、「ユーザーストーリーマッピング」で、機能化し、最小の価値を絞り込んでいきます。大体はここから開発に入ることが多いんですが、もう一つ「ターゲット・サービスベネフィット整理」のワークを入れています。これにより、機能だけでなくベネフィットの目線でも絞り込むことができるようになります。
サービスベネフィットを整理する
川北:サービスベネフィットを整理するワークです。左から機能・画面・仕様・メリットとありますが、ここまでは機能一覧で作るようなものですよね。それに対して、ターゲットと、その人たちにとって「いいこと」「嬉しいこと」をは何かを考えることで、ユーザー目線で機能を絞りこむことができます。
価値の絞り込みワーク
沖山:次に「属性と価値」というワークで、価値を絞り込んでいきます。
まず、さまざまなフレームワークやヒアリングで出てきた特性やサービスの特徴を書き出します。それを「感情的なもの」「機能的なもの」に振り分けます。そこから、「ここにしかないもの」「ならではのもの」など、外すことのできないものを絞り込む。さらにブラッシュアップして「ここが自分たちの価値であり、特徴である」ということを言語化していくというワークです。チームのみんなで投票したり、そのときに「なぜこれを選んだのか」ということを深堀りしたりしながらディスカッションできる、とても良いワークですね。
ブランドパーソナリティ発掘
沖山:このサービスを、一人の人格に置き換えると、一体どういう人なんだろう…と定義していくというワークショップです。
どんな喋り方をするのか、どんな表現が“それっぽい”のか。深堀りしていくうちに、このブランドらしさが何となく見えてくるんです。これも、先ほどと同様、投票やディスカッションを行います。チームのみんなの意思や、イメージが一つにまとまっていくのが体感できるワークショップですね。
ブランドらしさを言語化する
沖山:ここまでのフェーズでやってきたことは、あくまで「絵」にする前の段階。「1つの言葉にする」というのが、最終的な落としどころです。ビジョン、ブランドパーソナリティ、価値を全て言葉にしていく。それをデザイナーが担当しています。デザイナーの観察力とまとめる力が、ここで発揮できているのではないかと思いますね。
未来年表
川北:最後に、「未来年表」です。これは、目の前のことだけでなく、未来に向けてどんなことをやりたいのか、どのようなサービスをつくることが大事なのかを考えるワークです。たとえば、2030年を見据えて、
- ①世の中の変化
- ②サービスの周辺の動向
- ③顧客ニーズ
- ④問題
- ⑤業界的にあたり前にやっておくこと
- ⑥サービスは何をすべきか
という項目ごとに、考えられる事項を書き出していきます。ビジネス戦略に近いイメージですが、これを考えることによって差別化や、ポジションをどう創るのかということがクリアになっていきます。
⑤得られた成果
沖山:BX Campのプログラムを通して、クライアント様のサービスの成長や、組織づくりに貢献することができました。
事業承認のサポート
沖山:サービスを作って開発に繋げるところまでがゴールだとは思いますが、それ以外に事業承認のサポートができるという点も、すごく大きな成果だなと思っていて。「ブランドをつくる」ということの価値を、多くの人に伝えることって、すごく難しいんですね。なかなか数字に繋がりにくかったり、分かりやすい納品物が無かったりするなかでも、事業の承認を得なければ仕事として成立しません。
たとえば、「このブランドはこういうものです」と、プログラムに参加しなかった方にもわかるようにガイドラインをまとめています。さらに、このプログラムの必要性について、担当者さんと一緒に上長や経営層の方々とお話しする機会もいただいています。
川北:ワークショップに、事業を承認する立場の方々に入ってもらったこともあります。いわゆる、巻き込み型ですね。早い段階から理解していただいているので、承認までスムーズに進みました。
運営組織の強化
沖山:もう1つ、組織デザインに関わるところです。クライアントの皆さんが「ブランドの方向性」に共感され、それを社内に持ち帰ることで、私たちと離れたところでどんどんブランドが出来上がって、大きくなっていく。ブランドが成長していく様子をお聞きできることが、すごく嬉しいですね。そうして、自走できるチームができあがることは、我々にとってもすごく貢献度の高いことだと思っています。
終わりに
今回は「BX Camp」についてのウェビナーの様子をレポートしました。多様なメンバーと一緒に、チームとなって「ブランド体験」を生み出すこのプログラムにご興味のある企業のご担当者の方は、ぜひ一度お問い合わせください。
また、ブランド体験から企業価値をつくる私たちA.C.O.の考え方に興味を持ってくださった方。当社では現在、さまざまな職種でメンバーを募集しています。ぜひ、Wantedlyよりご連絡ください!お待ちしています。