「転職すれば年収が上がる」
近年の転職市場では、この感覚はかなり一般化しているのではないかと思います。
実際、国税庁の 「民間給与実態統計調査」では、給与水準や給与所得者数の推移が継続的に公表されています。
たとえば 「令和6年分 民間給与実態統計調査(概要)」では、給与総額や平均給与などの要点がまとまっています。
一方で、「年収が上がる」と「働きやすさ・幸福感」を感じやすくなるかというと、そう単純な話ではないようです。
厚生労働省の 「労働安全衛生調査(実態調査)」は、仕事や職業生活における不安・ストレス等の実態を継続的に示しています。
つまり、金銭条件が改善しても、ストレスや不安が目に見えて消えるとは限らない、という構図です。
では、なぜこのズレが起きるのでしょうか。
金銭報酬と「裁量・意味報酬」のズレが起きている
仕事の報酬というと、多くの人がまず思い浮かべるのは、給与や賞与といったお金の話だと思います。
これはいわゆる金銭報酬です。
一方で、仕事にはもう一つの報酬があります。
それが、
- どこまで自分で判断できるか
- 自分の仕事が何につながっているか分かるか
- 成長している実感があるか
といった、お金では測りにくい部分です。
これをここでは非金銭報酬と呼びます。
転職市場では、この数年で金銭報酬は比較的動かしやすくなりました。
人材不足もあり、オファー金額や給与テーブルは、競合や相場に合わせて調整されることが増えています。
一方で、非金銭報酬はそう簡単には変わりません。
意思決定の仕方や役割分担、評価の仕組みといったものは、組織の構造や日々の運用に深く関わっているからです。
この点を補助的に見る材料として、OpenWorkが公開している「社員クチコミ白書2024」があります。
これは、OpenWorkに蓄積された多くのクチコミや評価データをもとに分析したレポートです。
もちろん、クチコミなので厳密な因果関係を示すものではありません。
ただ、「働く人がどこに満足し、どこに不満を感じているか」という傾向を見るには十分参考になります。
そこから見えてくるのは、金銭報酬が改善されても、次のような状態が残っているケースが多いということです。
- 意思決定に関われる範囲があまり変わらない
- なぜその仕事をしているのかが分からず、作業感が強い
- 責任はあるのに、裁量や権限が伴わない
- 経験は積んでいるはずなのに、成長している実感が持てない
こうしたズレがあると、「給料は上がったけれど、仕事の感じは前と変わらない」という感覚が生まれます。
その結果、年収が上がっても、満足度や幸福感は思ったほど上がらない、という状況につながっていきます。
スタートアップ志向が増える背景は「報酬の中身の違い」です
最近は、あえてスタートアップや小規模な組織を選ぶ人が増えているようです。
この動きを「勢いがあるから」「夢があるから」とだけ説明してしまうと、少し雑になってしまいます。
実際には、もっと現実的な理由があると考えます。
それが、お金以外の報酬に対する期待です。
Wantedlyが公開している調査・記事 を見ると、転職時に重視されるポイントとして、「仕事内容のやりがい」や「働き方に対する意識の変化」が挙げられています。
また、少し前の調査発表 でも、「やりがい」が「給与水準」よりも上位に来る結果が示されています。
これらは、「給料がどうか」だけでなく、
その仕事をどう感じながら働けるか
が、転職の判断材料になっていることを示しています。
こうした文脈の中で、スタートアップ志向の理由としてよく語られるのが、次の3点です。
- 意思決定に関われる範囲が広い
- 自分の仕事が事業に与える影響を実感しやすい
- 役割が固定されすぎていない
どれも、給与の金額そのものではなく、「どう働くか」「どう関われるか」といった部分に関するものです。
言い換えると、スタートアップを選ぶ人が増えている背景には、「リスクを取りたい」という抽象的な話よりも、
どんな形で報酬を受け取りたいか(=報酬の中身)
という、かなり具体的な価値観の違いがあるように思います。
年収が上がる時代に、組織が向き合うべきこと
ここまでの話を整理すると、今の転職市場では次のような変化が起きています。
- 年収や市場価格は、以前より上がりやすくなった
- 一方で、満足度や幸福感を左右するのは、裁量や納得感、成長実感、影響の大きさといった要素になっている
- そのため、給与だけで人を集めても、長く一緒に働くのは難しくなっている
この状況で、組織側に求められているのは、単に賃金テーブルを更新することだけではありません。
- どこまで現場に判断を任せるのか
- 何を共有し、何を任せるのか
- 責任と権限をどうセットにするのか
- どんな経験を積めるように設計するのか
こうした点をあらかじめ考え、言語化し、運用していくこと。
つまり、非金銭報酬が自然に生まれる「働く構造」をつくれるかどうかが、これからの組織の大きな分かれ目になっています。
aciassの採用が見ているもの
aciassは、創業当初から「ワクワク」を大切にする会社であることを掲げてきました。
ただし、私たちが考えるワクワクは、気合や精神論で生まれるものではありません。
むしろ、ワクワクを阻害する要素をできるだけ減らしていくこと。
そのために、制度や構造を明確にし続けることが重要だと考えてきました。
たとえば、
- どこまで意思決定を委ねるのか
- 何を共有し、どこから先を個人に任せるのか
- 成果と責任、評価や報酬をどう結びつけるのか
こうした点を曖昧にしないことで、
「なんで自分がこれをやっているのか」
が見えやすくなり、余計なストレスを減らせると考えています。
また、aciassでは「やりがい」か「給与」か、どちらかを選ぶという考え方は取りません。
仕事の意味や面白さと同時に、生活を支える報酬も同じように大切にしています。
どちらかに偏るのではなく、そのバランスをどう設計するかが、組織としての責任だと捉えています。
もし、夢や理念だけでなく、現実的な制度や報酬、働き方とのバランスまで含めてキャリアを考えている方がいれば、一度お話ししてみませんか。
aciassの採用は、「期待を煽る場」ではなく、
ワクワクが継続するための条件を、互いに確認し合う場だと考えています。
参考資料(外部リンク)
- 国税庁:民間給与実態統計調査(トップ)
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/top.htm - 国税庁:令和6年分 民間給与実態統計調査(概要)
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2024.htm - 厚生労働省:令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)(ページ)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r06-46-50.html - 厚生労働省:令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r06-46-50_gaikyo.pdf - OpenWork:社員クチコミ白書2024(ページ)
https://www.openwork.jp/hatarakigai/whitepaper/ - OpenWork:社員クチコミ白書2024(PDF)
https://assets.openwork.jp/hatarakigai/pdf/whitepaper/OpenWork_whitepaper2024.pdf - Wantedly:転職と副業に関する調査結果(2023)
https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/pr_20231115/ - Wantedly(PR TIMES):コロナ禍の転職と副業に関する調査結果(2021)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000145.000021198.html