- Web Engineer
- DX・AIコンサルタント
- Consulting
- Other occupations (17)
- Development
- Business
- Other
話を聞いたらいろいろ出てきそう。
ABEJAには、そう思わせる人たちがいます。何が好きで、どんなことが大事だと思っているのか。そんなことを聞き書きしていきます。
今回は加納峻佑さん。ABEJA Insight for Retailでカスタマーサポートを担当する一方、週末は各地のフェスでクラフトビールを売っています。
AIとクラフトビール、2つの世界を行ったり来たりするその越境感、どんな感じですか?
「自分は何が好きなんだ?」自問自答する日々
加納:大学を卒業して金融系ベンチャーのSIerを経てリクルートで営業してました。あの会社の人たち、3年5年くらいのスパンで自分は何をしていくのかという目標を明確に持っていて、飲み会でもそういう話が飛び交ってました。
ーー退職が前提ですか。
加納:僕はそういう文化の会社でしか働いたことがないですけど、リクルートは特に顕著だった気がします。今の仕事が将来自分がやりたいこととどう結びつくのか、ということをみんな常に考えていました。
ーー加納さんはどうだったんですか?
加納:正直、あまり考えてなかったから、飲み会で聞かれても答えられなかったです。歯がゆくて、週末「自分は何が好きなのか?」をノートにバーッと書き出しました。10個や20個ぐらい。「サッカー」「海」「みんなとワイワイする」その中に「ビール」と「飲む」も入ってました。
嫌いなことも書きました。「大企業は嫌」「人数が多すぎるのは嫌」と。少ない人数なら「歯車になりにくい」と思ってました。「役割が固定化されずに、結構自由に動ける」というイメージもあった。
ちょうどそのころ、同僚とビール祭りの「横浜オクトーバーフェスト」に行きました。そこに僕が働くことになる「サンクトガーレン」(SanktGallen Brewery)が店を出していました。
どのブースのビールも美味しかったのですが、その中でもサンクトガーレンのビールが一番好きだと感じました。とにかく香りが良くて「こんなビールがあるのか!」と驚きました。
ーー「うまい」が「働きたい」につながった。
加納:そう。「従業員を募集してますか?」とサンクトガーレンのサイトの問い合わせフォームから送りました。2週間ぐらい後、忘れていたころに「ちょうど募集しようとしてた」と返事がきて。
ーーITからクラフトビール。ずいぶん振り切りましたね。
加納:いつも「なんで?」と聞かれます。自分でも割と思い切ったかなあ。もうITの世界に戻るつもりはありませんでした、当時は。
ーークラフトビールって、どんなものか教えてもらえますか?
加納:一言で言うと、小規模な醸造所が作る個性的なビールです。1994年の酒税法改正を機に小規模のビール醸造が認められるようになったんです。それからブームの波が幾度か起きて、そのたびに進化を繰り返してきて今にいたります。このあたり、AIの進化と似ているなぁと僕は思ってます。
ちなみに、サンクトガーレンは酒税法改正前からサンフランシスコでビールをつくっていた、日本でもっとも古いクラフトビール会社なんです。
当時スタッフ4人のサンクトガーレンで、樽や醸造タンクの洗浄、ビールの出荷作業、イベント出店、Webショップ運営など、色々やっていました。
時には25キロの麦芽入りの袋を60袋くらい2階の倉庫まで運ぶということもやりました。
それまでデスクワークメインだったので、しばらくは毎日筋肉痛の日々でした。
加納:週末は関東一円のイベントに店を出してました。埼玉のイベントや横浜のオクトーバーフェスト、鎌倉のお祭り、代々木公園でやってるようなフェスや、湘南の海岸で開かれるイベントにも。
イベント出店は、その度に「小さな達成感」が得られる仕事なんです。テントを設営したり、看板を付けたりと、設営から大変です。でも販売をへて撤収が完了したときには「頑張ったなー」なんて振り返りながら達成感が湧き上がってくる。その日その日で売り上げも出て、白黒がはっきりと出るし。
こういう達成感、実は日頃の仕事ではなかなか実感しづらい。例えば「四半期の目標を達成できた」と言った直後に、次の仕込みがもう始まっている。リリースが完了しても、その直後から問題の対応に追われる。収束する頃にはまた次の仕事がーーといった具合に。
ーー切れ目がない。
加納:そう、切れ目がないんですよ。その点、イベントでのビール売りは仕事の切れ目がはっきりしていて自分にはあってると思いました。
サンクトガーレンでちょうど1年ほど働いた頃、今度は自分でビールを作って売りたい気持ちが大きくなってきました。まあ、作る方は結局かなわないままでしたけど。
会社から独立してサンクトガーレンのビールを自分で売り始めました。自分で出店先のイベントを見つけて、大阪や富山のイベントにもワゴン車を借りて行きました。
「赤字」の厳しさも実感しました。ぜんぜんダメな時は、売り上げがたったの数千円。
富山であったフェスのときは台風が直撃してビールが全然売れなくて、レンタカーやホテル代を引くと、マイナス20万円ぐらいの赤字。ハワイあたりで遊んでいた方が全然よかった、という。
ーードーンと落ち込みますよね。
加納:ほんとに。店は学生時代の友だちに手伝ってもらっていたんですが、あのときは帰りの車内で2人、ずっと無言だった。
いつも手伝ってくれる高校時代の友人(左)と
加納:収入の波もあったし平日は時間があったので、平日は会社で働いていた時期もありましたが、ビールの仕事がだんだんと軌道に乗ってきてビール一本で生活できるようになりました。
妻とは、鎌倉のイベントでビールを売っていたときに出会いました。こじんまりとした、暇なイベントで、僕がビールを売る机の隣で、彼女はスモークチーズを売っていた。そこで話したのがきっかけです。
ーーそこからいま、ABEJAで働いているのは?
子どもが生まれて、頻繁に家を空けられなくなったことが大きいです。なので、もう一度会社で働くことにしてABEJAに。
ーークラフトビールの出店はまだ続けてるんですよね。
加納:はい。イベント出店はリフレッシュにもなるんです。僕の場合、温泉などでゆっくりしていても仕事が頭から離れないのに、店を設営している間に「このあたりをしっかり飾らないとな」なんていつの間にか切り替わっている。やっぱりこれがいいんです。達成感とあいまって、気持ちがリセットできるから。
ここ数年は同じイベントに出続けています。フジロックは5年くらい連続で出店しています。今年も1週間有給休暇をとって出店しました。
フジロックではBARとしての出店なので、クラフトビールだけではなくて、どちらかというとモヒートなどのカクテルの方がメインです=下写真、加納さん提供。
あのフェスに店を出すと毎日新車が買えてしまうくらいの売上になります。
各地のフェスで出会ったお客さんの中にはもう顔見知りの人もいます。僕のことをずっと「ビール屋さん」と思っている人もいるはずです。
ーーあっち側とこっち側を行き来する、「越境感」ですね。
加納:そうかもしれない。越境感はいいっすね。うん、確かに。
(取材=錦光山雅子 編集・撮影=神山かおり)
加納峻佑(かのう・しゅんすけ) 青山学院大学卒業。金融系SIerを経て株式会社リクルートに入社。企業向けIT製品情報サイトを活用したマーケティング施策を提案する企画営業に従事。その後、神奈川県厚木市の「地ビール蔵サンクトガーレン」に入社し、営業、ネットショップ運営、イベント出店等幅広く担当。その後独立し、平日はスタートアップで働き週末にはイベントでクラフトビールを販売するという複業生活を続ける。2018年よりABEJAに参画し、ABEJA Insight for Retailのカスタマーサポートを担当。IoT×AIという不確実性の高いサービスを監視し安定運用していく仕組みの構築がミッション。
(2019年12月3日掲載のTorusより転載)