仕事の資料って、だいたい誰かの要約つきで回ってきます。「これで確定です」「先方はこの条件でOKでした」。ありがたいし、そのまま信じて動けば速い。僕もずっとそうしていました。で、何度か痛い目を見ています。だいたい、その要約が二つ前の版だったり、言った本人の記憶だったりする。
厄介なのは、伝聞は間違っていても止まらないところだと思っています。システムのエラーみたいに赤く光ってくれない。合意したはずの数字がずれたまま、三週間くらい平気で走ります。で、気づくのはいつも、相手と自分の資料を並べた瞬間。あの空気、何度味わっても慣れないです。
白状すると、いちばんやらかしているのは自分です。ファイル名に「確定版」と入っているのを見て、中身を読まずに前提として使った。あとで開いたら、同じ資料の中で二つの数字が食い違っていた。確定版という文字は、誰かが保存したときの気分であって、事実ではないんですよね。ファイル名を信じるな、は割と真理だと思っています。
なので最近は、判断の前にひとつだけ質問を置くようにしています。「これの一次資料はどれですか」。原本はどれで、いつの版で、誰が決めたのか。聞けば数十秒で終わることが多いし、たまに「あ、たしかに確認します」で一回止まる。この止まりがいちばん価値がある。スピードは大事ですが、速く走る前に、走る方向が二つ前の版じゃないかだけは見ておきたい。