「この人は向いていない。」
組織では、そんな言葉を耳にすることがあります。
人前で話すのが苦手。
細かな作業が苦手。
複数の仕事を同時に進めるのが苦手。
一つひとつを見ると、弱みに見えるかもしれません。
でも私は、これまでさまざまな現場を経験する中で思うようになりました。
人には向き・不向きがあるのではなく、役割との相性がある。
それだけなのではないかと。
苦手は、場所が変われば強みになる
営業が苦手な人でも、
お客様の話をじっくり聞くことは得意かもしれません。
人前で話すことは苦手でも、
文章で伝えることは得意かもしれません。
判断を急ぐことは苦手でも、
ミスを見つけることは得意かもしれません。
一つの環境では弱みに見えていたことが、
役割を変えただけで強みになることがあります。
だから私は、
人を変えようとする前に、
役割を見直したいと思っています。
能力よりも、特性を見る
能力やスキルは、努力によって身につけることができます。
経験を積めば、
できることは増えていきます。
もちろん、それは大切なことです。
でも、
努力で身につけた能力だけで仕事を続けていると、
知らないうちに疲れが溜まっていきます。
頑張ればできる。
でも、頑張り続けなければできない。
それでは長く続きません。
一方で、
特性は違います。
本人は頑張っているつもりがない。
自然とできてしまう。
周りから感謝されても、
「そんなこと普通ですよ。」
と答える。
そこに、その人らしい強みがあります。
コンプレックスが武器になることもある
私は、
コンプレックスも大切な特性の一つだと思っています。
人前で話すことが苦手だから、
相手の話を最後まで聞ける人がいます。
失敗をたくさん経験したから、
同じことで悩む人に寄り添える人がいます。
細かなことが気になってしまうから、
ミスを見逃さない人もいます。
周りと違うことを気にしてきたから、
誰も気づかない違和感に気づける人もいます。
本人が「弱み」だと思っていたものが、
組織では必要とされる場面があります。
だから私は、
コンプレックスを無理に消そうとは思いません。
活かせる場所を探したいと思います。
障がい特性も同じです
障がい特性についても、
私は同じように考えています。
苦手なことがある一方で、
驚くほど高い集中力を発揮する人。
毎日同じ手順を正確に続けられる人。
細かな違いに気づける人。
一つのことを深く追求できる人。
もちろん、一人ひとり違います。
だから「障がいがあるから向いている」と言いたいわけではありません。
大切なのは、
その人の特性を知ることです。
苦手なことばかりを見るのではなく、
自然と力を発揮できる場面を見る。
そこから役割を考えることが、人員配置だと思っています。
人を変えるより、配置を変える
組織では、
「もっと頑張って。」
「苦手を克服しよう。」
と言われることがあります。
もちろん、挑戦することは大切です。
でも、
全員が同じ能力を目指す必要はありません。
得意な人が営業を担当する。
丁寧な人が経理を担当する。
全体を見られる人が統括を担当する。
相手の話を聞ける人が相談役になる。
それぞれの特性を活かせば、
組織全体はもっと自然に回ります。
人を変え続ける組織より、
人が活きる場所をつくる組織の方が、
長く続くと私は思います。
人員配置は、未来への投資
人員配置とは、
空いている席を埋めることではありません。
今日の人手不足を解消することでもありません。
その人が一年後も。
三年後も。
笑顔で力を発揮できる場所を考えることです。
能力だけで配置すれば、
短期的には成果が出るかもしれません。
しかし、
特性を活かして配置すれば、
その人は無理なく成長し、
組織も持続的に成長していきます。
私は、人員配置とは単なる仕事の割り振りではなく、
一人ひとりが自然と輝ける場所を設計することだと考えています。
それは、人を評価する仕事ではありません。
その人らしさが活きる場所を見つける仕事。
それこそが、組織づくりにおける本当の意味での「特性を活かした人員配置」ではないでしょうか。