人材不足ではなく「構造不足」かもしれない
「人が足りない。」
経営者や現場責任者から、最もよく聞く言葉の一つです。
求人を出しても応募が来ない。
採用しても定着しない。
人が辞めるたびに残った人の負担が増え、さらに辞める人が出てくる。
そんな状況を見るたびに、私は一つ考えることがあります。
本当に足りないのは、「人」なのでしょうか。
人を増やしても楽にならない理由
人が増えれば、仕事は楽になる。
そう思われがちですが、実際にはそうならないことも少なくありません。
新しい人が入る。
教育が必要になる。
質問が増える。
確認が増える。
結局、今まで忙しかった人に仕事が集中してしまう。
教育係は教えることに疲れ、
新人は覚えることに疲れる。
そして、「やっぱり自分たちでやった方が早い」という空気が生まれます。
教育は後回しになり、新人は早期退職する。
そしてまた人員募集を繰り返す。
このサイクルから抜け出せなくなってしまいます。
これは、教育係の教え方が悪いのでしょうか。
それとも、新人の覚える能力がなかったのでしょうか。
原因は、人ではありません。
仕事の流れが整理されていないことにあります。
「誰に聞けばいいですか?」
現場では、この質問が何度も繰り返されます。
「これは誰の担当ですか。」
「誰が決裁しますか。」
「この資料はどこですか。」
一つひとつは小さな質問です。
しかし、一日に何十回も繰り返されると、それだけで担当者の時間は奪われていきます。
人を増やす前に、
問い合わせ先は整理されているか。
資料は探しやすい場所にあるか。
判断基準は共有されているか。
そんな仕組みを見直すだけで、現場の負担が大きく減ることがあります。
「優秀な人」が忙しくなる組織
優秀な人ほど、
「私がやった方が早い。」
と言います。
その結果、
判断も確認も、その人に集まります。
最初は効率的です。
でも、その状態が続くと、
休めない。
引き継げない。
辞められない。
そんな組織になってしまいます。
そして「あの人に聞かないとわからない」状態が
組織の情報共有を退化させていきます。
優秀な人を増やすことではなく、
優秀な人しかできない仕事を減らすこと。
それも大切な経営判断だと思っています。
構造が変わると、人は動きやすくなる
私は、人を変えることは難しいと思っています。
でも、仕組みは変えられます。
問い合わせ窓口を一つにする。
マニュアルを整える。
決裁フローを明確にする。
役割を見える化する。
それだけでも、
「これ、誰に聞けばいいんだろう。」
という時間は確実に減ります。
人が頑張る前に、仕組みが頑張る。
そんな状態を作ることが、組織全体の負担を軽くする第一歩ではないでしょうか。
人材不足という言葉の裏側
もちろん、本当に人手が必要な場面もあります。
しかし、
人が辞める。
採用しても定着しない。
同じポジションばかり募集している。
そんな状況が続いているなら、一度立ち止まって考えてみてほしいのです。
人が足りないのではなく、
人が定着しにくい構造になっていないか。
人を増やす前に、仕事の流れを見直せないか。
その視点を持つだけで、見える景色は大きく変わります。
最後に
私はこれまで、さまざまな組織のバックオフィスに携わってきました。
そこで感じたのは、
問題の多くは「人」ではなく「構造」にあるということです。
誰か一人の頑張りで成り立つ組織は、その人が疲れてしまえば止まってしまいます。
だから私は、
担当者が休んでも止まらない。
引き継ぎで慌てない。
社長がいなくても回る。
そんな組織を増やしたいと思っています。
人材不足を嘆く前に、一度「構造不足」という視点で組織を見直してみる。
人を増やすことより、仕組みを育てること。
それが、長く続く組織への第一歩なのかもしれません。