【COO/CHRO代行のリアル①】採用弱者が、半年で3名採用できるようになるまで
【サマリー】
年商5億、従業員20名のベンチャー企業が、採用弱者から脱却。半年で新卒3名を採用し、毎年継続採用できる組織へ。CHRO代行として実践した「採用ファネル設計」の全プロセスを公開。採用は運ではなく、仕組みで変わる。
【この記事で分かること】
・年商3〜10億規模の企業が採用できるようになった具体的プロセス
・採用ファネルの5段階とボトルネック特定法
・大手に勝てない中小・ベンチャーが採用で勝つ方法
・半年で新卒3名採用を実現した仕組み化の全体像
【こんな経営者におすすめ】
・年商3〜10億、従業員10〜50名規模のベンチャー・中小企業
・事業は伸びているが、優秀な人材が採れずに困っている
・エージェント頼みの採用から脱却したい
・社長が採用に時間を取られすぎて、本業に集中できない
【本文】
なぜ、年商5億の会社は優秀な人材が採れないのか?
「うちには優秀な人が来ない」 「大手に勝てない」 「エージェントに頼んでも、良い人材が紹介されない」
年商3〜10億、従業員10〜50名規模のベンチャー・中小企業の経営者から、最も多く聞く悩みがこれだ。
事業は順調に伸びている。売上も上がっている。しかし、組織が追いついていない。優秀な人材を採用したいが、大手企業やメガベンチャーと比べて知名度がない。給与も勝てない。
結果、採用は「運任せ」になる。良い人が「たまたま」応募してくれるのを待つ。エージェントに「たまたま」良い人材がいることを期待する。
しかし、それでは事業成長は止まる。
今回紹介するのは、まさにそうした「採用弱者」だった企業(年商5億、従業員20名)が、半年で新卒3名を採用し、翌年も3名、さらにその翌年も継続的に採用できる組織へと変わった実例だ。
採用のボトルネックを特定する──5段階の採用ファネル
この企業(以下、A社)は典型的な成長企業だった。
売上は前年比130%で伸びている。新規事業も立ち上がりつつある。しかし、組織が追いついていない。社長は採用の必要性を痛感していたが、具体的に何をすればいいのか分からない。
- エージェントに依頼しても、紹介される人材はピンとこない
- 求人媒体に掲載しても、応募がほとんどない
- たまに応募があっても、選考で落ちるか、内定辞退される
「大手には勝てない」 社長はそう諦めかけていた。
しかし、私がCHRO代行として最初に伝えたのは、こうだ。
「採用は、大手と戦う必要はありません。仕組みで勝てます」
私は採用プロセス全体を可視化し、どこにボトルネックがあるのかを特定した。
採用は、以下の5つのステップに分解できる:
- 認知:求職者が会社を知る
- 応募:実際に応募する
- 選考:面接を通過する
- 入社:内定を承諾する
- 定着:入社後、活躍し続ける
この5つを「採用ファネル」と呼ぶ。
A社の問題は、このファネルのすべての段階でボトルネックがあったことだ。
- 認知:そもそも会社を知られていない(求人媒体に載せているだけ)
- 応募:訴求が弱く、魅力が伝わらない
- 選考:評価基準が曖昧で、「なんとなく」で判断
- 入社:内定後のフォローがなく、辞退される
- 定着:オンボーディングがなく、早期離職
大手に勝てないのではない。仕組みがないだけだった。
採用ファネルを設計し直す──中小企業が大手に勝つ5つの打ち手
私は社長と壁打ちしながら、各段階の打ち手を設計した。
打ち手①:認知──「社長の想い」を伝える採用ピッチ資料と動画
大手には知名度で勝てない。しかし、中小・ベンチャーには「社長の顔が見える」という武器がある。
私は社長と一緒に、「なぜこの会社で働くのか?」を徹底的に言語化した。ビジョン、ミッション、バリュー、働く魅力、成長機会。
それを1枚のピッチ資料にまとめ、さらに社長自らが語る2分間の採用動画を撮影した。
「大手の歯車になるのではなく、ベンチャーで経営を学びたい人」 「社長と直接働きたい人」
こうしたターゲットには、この動画が刺さった。認知が一気に広がった。
打ち手②:応募──エージェントの新規開拓とリファラル採用制度
既存のエージェント1社だけでは母数が足りない。私は新たに3社のエージェントを開拓し、A社の魅力を丁寧に説明した。
同時に、社員からの紹介(リファラル採用)を制度化した。紹介1名につき10万円のインセンティブを設定。また、会社で働く続ける魅力も改めて言語化するなど、社員が「この会社に友人を紹介したい」と思える環境を整えた。
打ち手③:選考──「行動」で見極める評価基準の明確化
それまでA社の面接は、「なんとなく良さそう」で判断していた。
私は社長と一緒に、求める人材像を「行動」の言葉で定義した。例えば:
- 「主体性」→「締切が危うい時、自らヘルプを取りに行く」
- 「成長意欲」→「業務外で月1冊以上のビジネス書を読んでいる」
こうした具体的な行動レベルに落とし込み、過去の行動事例を深掘りする「行動面接」を導入。見極めの精度が劇的に上がった。
打ち手④:入社──内定者を「仲間」にする内定後フォロー
内定を出した後、放置していては大手に持っていかれる。
私は内定者に対し、週1回のカジュアルな面談を設定。不安を聞き、会社の魅力を再度伝え、入社までのモチベーションを維持した。
さらに、内定者を社内イベントに招待し、「もう仲間だ」という感覚を持ってもらった。
打ち手⑤:定着──入社3ヶ月が勝負のオンボーディング設計
採用は、入社がゴールではない。定着して初めて成功だ。
私は、入社初日から3ヶ月間の「やることリスト」を作成し、誰が・いつ・何をサポートするかを明確にした。
さらに、月1回の1on1を制度化し、早期離職を防いだ。
結果:半年で新卒3名採用、翌年も3名──「運任せ」から「仕組み」へ
これらの打ち手を実行した結果、A社は半年で新卒3名を採用できた。
翌年も3名。さらにその翌年も継続的に採用できる組織へと変わった。
社長はこう語った。
「採用は運だと思っていました。大手には勝てないと。でも、仕組みだったんですね。中小企業でも、ちゃんと採用できるんだと分かりました」
まとめ:中小・ベンチャーは「仕組み」で大手に勝てる
採用弱者を脱するために必要なのは、大金をかけた採用広告でも、有名なエージェントでもない。
採用ファネルの各段階を設計し、ボトルネックを一つずつ潰していくこと。
大手には知名度で勝てない。給与でも勝てない。 しかし、「社長の顔が見える」「成長できる環境」「裁量権」。
こうした武器を言語化し、適切なターゲットに届ければ、中小・ベンチャーでも採用で勝てる。
これがCHRO代行としての私の仕事だ。
あなたの会社の採用ファネルは、設計されているだろうか?
次回予告:
第2回「事業成長の壁は、いつも『人』である──売上4億→10億円の裏で起きた組織課題」