ALT / 設立
卒展「ALT + >>」
# はじめに いま、この世界で、人間が「つくる」意味は果たしてどれくらいあるでしょうか。 AIが優れた絵を描き、計算資源がそのまま金融資本になり得るこの世界で、人間ができること。それは、「人間とは何か」という人間固有の悩みを基盤にした、人間の世界をつくり続けていくこと以外にあり得ません。 言い換えれば、人間の世界について問い続けることです。答えるよりも先に新たな問いを立て、世界の分岐をつくること。その価値判断を後世に委ねて、私たちはひたすら問い続けます。 いま、世界は大きな混乱の中で、未来を見出せずにいます。より恐ろしい未来の訪れに不安を抱いています。それでもアーティストたちが作品を遺し続けるのは、もっともっと先の未来を見据えているから。価値が何度も転回した先の、未来の発散を描いているからです。 芸術における未来といえば、20世紀はじめの未来派を想起します。彼らは産業化著しい社会の中で、科学技術の急激な発達や、劇的な世界の変化の速度を礼賛し、最終的には戦争や暴力をも積極的に肯定し、道徳を拒否し、フェミニズムを強烈に批判しました。彼らは未来への不安を、否定の力で美へと昇華させようとしたのです。 アートコレクティブALTは「ありうべき未来は、アートから生まれる。」という未来志向のステートメントと共に2021年に活動を開始しました。私たちは問い、考えることで未来を想望します。子どものように、あるいは職人のように、人間の全知性を以って構想するあらゆるありうべき世界への問いかけを未来と呼んでいます。 ALTは、起業家やその仲間のビジョンを素材に目で見て手で触れられるアートを作り、ギャラリーやオフィスにて参加型対話鑑賞を提供してきました。起業家とは、この世界を可塑的なものと捉え、他者と関わり合って世界を彫刻する全ての人です。ビジョンとはそれぞれの起業家が未来に託した可能性であり、関わる人たちと共に描く夢です。 アーティストと起業家は互いに全く異なる領域で活動していますが、共創の中で参加者が驚くのはその違いよりもむしろその類似性です。 両者とも、想望する世界のために自身を問いに曝しながら、作品や会社と向き合っています。その上で一つの作品を共につくり上げることで、互いの思考法や身振りが混ざり合っていき、ワークショップを終える頃にはそれが内面化されているのです。 私たちは具体的に一体何をしてきたのか。そこで謳われる「ありうべき未来」とはなんだったのか。それはそもそもアートと呼ばれる営みだったのか。本展示は、私たちの2年間の成果を世に刻むと共に、未来でしか生まれ得ない問いを、すなわちビジョンを、あなたと共に夢想する時間として提示します。 「ありうべき未来は、アートから生まれる。」 答えを待たず問い続け、足跡に芸術を残していく。ALTは人間たちの加速の運動です。 ALTを代表して 下山明彦 # プロジェクトについて ALTが結成以来の2年間で実践してきた活動を振り返るとともに,ALTの未来を提示する展覧会「ALT+>>」を開催.「ありうべき未来とは?」「アートとは?」「価値とは?」という大小さまざまの問いを通じて、ALTの活動を支えるビジョン・思想に光を当てる.展覧会を機に、結成以来制作してきた作品、ワークショップの記録、ALTの来し方行く末を多角的に分析するリサーチの成果等を一冊のカタログに集約した. # 展示空間について 本展示会では,東京藝術大学構内に地上2階建のプレハブを設置し,ALT Project が企業様向けワークショップ等のプロジェクトを通じて制作してきた作品群を一斉展示します.2階建のプレハブという展示空間を最大限に活用し,ALTのこれまでの活動を振り返ると同時に,これからの ALTが描く未来の世界観を表現します. # Time Line 2023年2月 東京藝術大学構内にて展覧会「ALT+>>」開催 カタログ「ALT+>>」発行