ChatGPTを筆頭に、この1〜2年で業務にAIを取り入れる人は急激に増えたのではないでしょうか。一方で、まだ取り入れ方がわからない、使ったことがないという人も多いように感じます。
今回は、全社で積極的にAIを取り入れているwevnalの現場メンバーが実際、どのようにAIと向き合っているのかを3人のメンバーに聞きました。
目次
- AIは、使い方次第で良き相談相手や秘書、実務戦力になる
- AIと人間の対応範囲を分け、効果的にAIを使うことが大事
- 「AIは当たり前の手段」とし、提案の質やスピードを上げたい
<プロフィール>
山本 七海
BOTCHAN AI CS サブマネージャー
2021年4月、新卒でwevnalに入社。BOTCHAN Payment事業部のQAメンバーを経て、BOTCHAN Keeper事業部立ち上げのタイミングで開発ディレクターとして異動。リーダーとしてプロダクト納品におけるプロジェクト管理も経験する。2023年3月にBOTCHAN AI事業部へ異動、同年9月よりCSサブマネージャーとして従事。
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山本萌
BOTCHAN Engagement クリエイティブチーム チーフ
大学在学中、プライベートサロン運営とオリジナル化粧品の開発・販売を主事業とする会社を設立。約5年間、取締役専務として商品パッケージ・パンフレット等のデザイン、ホームページの制作・管理などを担う。2024年4月、wevnalへ入社。BOTCHAN Engagementのクリエイティブディレクターとしてディレクション・制作を担当。2025年3月にチーフへ昇格。
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長谷川愛梨
BOTCHAN Payment カスタマーサクセス リーダー
3歳〜10代まではクラシックバレエに注力し、大学では教育について学ぶ。2020年4月、wevnalに新卒入社。BOTCHAN PaymentのCSに配属され、お客様の導入サポートやCVR改善活動に従事。2022年9月、BOTCHAN PaymentのCSのリーダーに昇進。
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AIは、使い方次第で良き相談相手や秘書、実務戦力になる
——日本でAIが注目されるようになったとき、どのように思いましたか? また初めて触れたときのお気持ちを教えてください。
七海:私がChatGPTを初めて知ったのは2023年ごろです。きっかけは、CTOの鈴木さんが、全社員用のSlackチャンネルにChatGPTを呼び出せる設定をしてくれたことでした。
便利そうなのが出てきたなーというのが正直な感想で、とりあえず当時ずっと悩んでいた「エラー分類」について相談してみたのを覚えています。自分にはない観点を教えてもらえて、相談相手としての使い勝手の良さを感じましたね。
いまも相談相手として使うことが多く、チームメンバーや上司とディスカッションする前に、自分の考えを伝えて漏れていた観点に気づかせてもらったり、自分の意見を後押ししてもらったりしています。
長谷川:最初にAIを知ったとき、「何でも回答してくれる“もの知りさん”」という印象を抱きました。社内ではAIに対して「こわい」「人間の仕事がなくなるのではないか」とマイナスな声も聞こえましたが、私はワクワクする気持ちが勝っていましたね。
ただ初めのうちは、仕事にどう活かしたら良いのかがつかめず、最初に聞いたのは全く仕事に関係のない「ランニングとウォーキングのどっちが脂肪燃焼するか」でした(笑)。プライベートのことをいろいろ聞いていくうちに、少しずつ仕事での使い方が見えてきて、いまでは「すごく仕事ができる秘書」的な欠かせない存在となっています。
萌:正直、2024年の終わりごろまでは生成AIに対して“優秀”という印象がなく懐疑的でした。私の業務はクリエイティブ領域で、AIといえば著作権などの権利問題でリスクが多いイメージだったので、使用することへの抵抗感もありました。当時はAIに頼みたいことはほとんどないと思っていましたね。
しかし2025年2月ごろから全社で「AIを活用していこう」という動きになり、会社から求められるがままにAIに触れ始めました。触れる前は「AI=誰でも使える便利ツール」という認識でしたが、実際に触れてみたら、使う側の発想力や問題発見能力、ディレクション力によって得られるアウトプットが変わるのが面白いなと。活用方法の考え甲斐があると感じました。
いまではChatGPTには毎日のように相談していますし、その他の生成AIツールも日々の業務の中で活用するようになりました。
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——それぞれの事業部では、どのようにAIを取り入れていますか?
七海:BOTCHAN AI事業部では、プロダクトにAIを組み込んでいるため「お客様に提供する立場」として毎日AIを使用しています。
日々、お客様からは「こういうことはできないの?」と聞かれ、チーム内からは「こんなことをやってみたい」と要望をもらうので、そこに対応して試行錯誤することで、AIに何ができて何ができないのかを見極めているところです。同時に、お客様からのAI関連の質問にお答えできるように、常に最新情報のキャッチアップを心がけています。
長谷川:BOTCHAN Payment事業部は、「わからないことは全部聞いてみよう」というスタンスでChatGPTを活用しています。少しずつみんなの意識を変えて、さらにAIの活用率を上げていこうとしているところです。
萌:クリエイティブチームは「良いツールがあったら積極的に試してみよう」というスタンスです。使用しているツールは幅広く、ChatGPTやGemini、Notion AIのほかに、画像生成にはAdobe FireflyやSora、情報収集にはNotebookLM、Feloなどを活用しています。
同時に、画像生成は著作権や肖像権を侵害するリスクがあるため、そのリスクを減らすためにルール策定も進めています。いまはCSメンバーがAIでラフを作成し、それをクリエイティブチームのメンバーがリスクがないかを含めてチェックしながら実際のバナーとして制作するという形での活用に留まっていますが、いずれはそのまま使用できるバナーを生成することも視野に入れてAIによる生産性向上を目指していきたいですね。
AIと人間の対応範囲を分け、効果的にAIを使うことが大事
——日常業務にAIを取り入れる上で意識していることを教えてください。
萌:AIに任せる範囲と、自分で責任を持つ範囲を明確に区別することです。AIは日々進化しているので、その進化に合わせてAIと自分の業務の棲み分けなどを随時アップデートしています。
現状、AIにはアイデア出しや、ルールが定まっている関数やコードの作成、簡易的なミスのチェックなどを主に任せている状況です。対して私たちは、AIが生成したものの情報における正確性やトンマナの整合性の確認を行うことで、最終的なアウトプットの品質担保に責任を持っています。
——実際にAIを業務で活用して効果を感じた事例を教えてください。
長谷川:2つあります。まずひとつは業務の効率化が進みました。これまで業務改善をしたいと思っていても、難易度が高くエンジニアレベルのコード生成スキルが必要でした。
しかしいまは、AIの活用により誰でもGoogle Apps Scriptを作成できるようになりました。また、JavaScriptの活用幅が圧倒的に広がっています。これにより、思いついた業務改善をすぐに実行できるようになっています。また、実際にこれまでかかっていた作業業務が1/10ほどの時間まで短縮できている事例もありました。
もうひとつが、思考するときのスピードと質の向上です。BOTCHAN Paymentでは日常的に施策のABテストを回しているのですが、その施策の仮説立てから検証後の考察までのスピードが上がっていると感じます。
個人的には、考察するときは自身の思考を深堀りできるようにプロンプトを投げているのですが、AIを通して思考のバリエーションが増えた結果、質も上がったと思います。
BOTCHAN Paymentは事業部としての歴史が古いぶん、正解パターンが固まりがちです。しかし新しいAIツールを入れることでまったく違う観点からのアドバイスをもらえるようになり、アイデアの幅が広がりました。実際、最近の施策には、これまでの発想では出てこなかったようなものもあります。
一方でこのようにAIに頼りすぎると、人間としての思考力がなくなるのではという恐怖もありますね。塩梅や線引きは事業部としてしっかり意識してやっていけるようにしたいです。
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——AIを活用するにあたって、注意すべきと感じていることがあったら教えてください。
七海:AIに任せるべきことは何かを、きちんと検証して取り入れることです。安定やリスクに関してはまだ試行錯誤段階なので、闇雲にAIに任せるのではなく一度考える癖をつけた方が良いと思います。
また冒頭で萌さんも話していましたが、現状のところまだAIは使う人によって差分が出やすいというのは強く実感しています。プロンプト、渡すデータ、選ぶモデルなどの掛け算で出力が変わってくるので、Aさんがやったらうまくいったけれど、Bさんがやったらうまくいかなかったというのが往々にあるのです。
現在は、GPTsなどを通じて他メンバーのプロンプトを共有・活用し、全員が同じ品質のアウトプットを得られる体制を整えています。
「AIは当たり前の手段」とし、提案の質やスピードを上げたい
——AIを活用するようになり、チームやプロジェクトにどのような変化がありましたか?
七海:AIを使うという手段、選択肢が加わったことにより、設計段階で「AIを使うならこういう設計にした方が良い」という話題が生まれました。
例えばいま、事業部内でマニュアルを整備するプロジェクトが動いていますが、別のプロジェクトでAIを活用してツールとツールをつないでいることに鑑みて、AIが読み込みやすい形にしておくべきだよね、という話になったんです。
あらゆる場面でAIを使う前提にしておくことが当たり前になってきているのを感じます。
長谷川:変化は2つありました。ひとつはチーム全体で言語化能力が上がったことです。CSは営業色が強いのですが、営業は言葉にしにくい、個人の感覚が大きいと思うんですね。そういった部分をAIを活用していくために、感覚値をあえて言語化するようになったのは、いままでになかった現象です。
もうひとつは変化に対する障壁が低くなりました。AIを通して日々多くのアイデアに触れているせいか、すぐに「良いものはやってみよう」という発想になるんです。その良いものが、例え先週とは全く違うアイデアだとしても、柔軟に受け入れます。
AIの活用でアイデアのバリエーションが増えたことにより、お客様から「表現の幅が広がった」「どんどん新しいものを持ってきてくれる」と褒めていただけることが増えました。
萌:粒度は粗くとも大量かつ幅のあるアイデア出しをAIに任せられることにより、出てきたアイデアのブラッシュアップや改善に注力できるようになったため、BOTCHAN Engagementでも全体の制作物や配信内容のクオリティが上がっていると感じています。
あとは、業務に対して「より効率を上げられる部分はないか」を常に意識するようになりました。。結果的にAIではない解決手段をとる場合もありますが、意識の変化によってあらゆる部分で効率化が進んでいますね。
——今後、wevnalとして生成AIをどのように活用していきたいですか?
七海:AIは業界自体がとても速いスピードで進化しているので、このスピード感の中で一緒に走っていきたいです。とはいえどこもまだ手探り状態なので、私たちがプロダクトを通して「こんなことができるようになった」というのを示していけたら良いですね。
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萌:いまはまだ全社的に「AIを活用しなきゃ」という意識の人が多く、活用すること自体が目的になりがちです。それを「AIを使うのは当たり前の手段」と言える状態に、できるだけ早く持っていきたいと思っています。
クリエイティブチームとしては、バナーをAIで生成できるようになり、お客様によりよいクリエイティブをスピーディーに提供できるようにすることを目標の一つにしています微調整すれば使えるというレベルにはすぐに到達できそうですが、バナー生成の完全自動化へはさらなる技術革新が必要だと思います。
なので私たちは、来る日に備えてプロンプトの精度を上げつつルールを整備しておくつもりです。
長谷川:事業部としてはまだまだAI活用ができる箇所がおおいと考えています。、まずは現場での活用レベルを上げていきたいです。また、CSとしてあえて属人的にするべきポイントは残しつつも、お客様に提案する際のフロー、PDCAの回し方などの基本レベルの水準の底上げをAIを活用しながら取り組みたいと思っています。
wevnalのプロダクトがこれからより多くのお客様に選ばれ続けるためには、提案の質やスピードが大事になってくるでしょう。AIを活用して最適な形を模索し、全社一体で成長していきたいですね。
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取材協力:CASTER BIZ recruiting